ダンまち×FGO ~ 許されよ 我らが罪を~ 作:はしゅまる
頑張ります
僕はオラリオから少し離れた田舎で育った。
両親は僕が物心つく前に既に他界しており顔も声も知らない、一年前に育ての親の祖父が亡くなり保護者を失った後、残った財産を持って村を飛び出した。
言わずもがなダンジョンでの出会いを渇望していたからだ。
『男ならハーレム目指さなきゃな!』
幼い僕へ何度もそう言い聞かせていた祖父の清々しい笑みを、今でも鮮明に覚えている。
祖父が読み聞かせてくれた英雄譚が大好きだった。怪物を退治し、人々を救い、助けを求める女の子の元に颯爽と現れる、そんな格好良い英雄達のように自分もなりたいと、当時の僕は本気でそんな夢を見ていた。
オラリオに行けば、冒険者になれば、ダンジョンにもぐれば、その夢は叶うかもしれないと思っていた。
だけどオラリオに着いた先に待っていたのは、酷く冷たい洗礼だった。
オラリオに着いた僕は、最初にギルドに向かった。冒険者になりに来ました!と告げたけれど、冒険者になるには神様からの恩恵を授けてもらわないといけないらしい。僕の話を聞いてくれたエイナさんから探索系ファミリアの拠点の場所を教えてもらい、宿を取ってから入団試験を受けに向かった。
結果は惨敗。門前払いにされたし、身長とかバカにされたりした。オラリオについて3日目で資金は底をついた。宿からは追い出され、行く宛てもなかった。
それからはどこかの裏路地でずっとうずくまっていた。お腹がすいた。辺りは既に暗くなっていた。なんでここに来てしまったんだろうと考えることもあった。
僕の冒険は始まる前から終わってしまった。と絶望していたら。
「あの...大丈夫ですか?」
そんな透き通った声が聞こえてきた。
顔をあげればそこには金色の髪を月明かりに照らし、魔導師が持っていそうな杖を持ちながら心配する表情を浮かべている少女が立っていた。
「...ぇ...ぁ...大丈夫...です」
声が掠れている...そういえば水も飲んでいなかったな……なんて、そんなことを思っていた矢先、ぐゥと僕の腹が情けない声を吐いた。
「お腹空いてるんですか?」
「.........はぃ」
「だったらこれ...どうぞ」
そう言って僕に差し出してきたのは、茶色の食べ物...たしか...。
「これはジャガ丸くんです。お芋を潰して揚げただけのものなんですけどね、おやつに食べようと思って買ったのですが、少し買いすぎてしまって...もう冷めてしまってますが良かったら」
「ありがとう...ございます...」
僕は彼女からジャガ丸くんをひとつ貰い口に運ぶ。
なんてことは無い。普通の味のはずなのに。
「......っ......ぐぅっ.......うぅ...」
ちょっとしょっぱい、そしてとても温かい。すごく...すごく美味しい。
「......まだありますからゆっくり食べてください」
これお水です、と水も恵んでもらった。
久しぶりに人に優しくしてもらったからか…涙が止まらない。
その時の僕はみっともなく彼女の前で泣き続けた。
それから少し経ち、気持ちが落ち着いてきた、ジャガ丸くんでお腹も膨れて精神的にも余裕が出来た。
「それでどうしたんですか?こんなところに居たら風邪ひいちゃいますよ?」
「えっと...」
僕は簡潔に話した。今日までの出来事を、初対面の人に言うことではないのかもしれないけど、それでもこの人になら話しても大丈夫と確信を持っていた。
「なるほど冒険者に...」
「...はい」
「大変でしたね」
「......はいっ...」
「ふむ...」
いつの間にか隣に並んで座っていた彼女は、手を口に当て何かを考える、そして数秒後、意を決したように顔をこちらに向けて言った。
「私と来ませんか?」
「え?」
「実は私もやるべき事があってオラリオに来て冒険者に...というかファミリアに入りに来たんです」
「ですがどこに行ってもここだ!っていうところが無くて...それにまだオラリオに来て2日目で...土地勘も無くて...あはは...」
「それであの...2人でまだ行ってないファミリアに行ってみませんか?きっと私たちを入れてくれる所があるはずです」
そんな提案をされて僕はすごく驚いた。でも。
「僕が居たら...迷惑かけちゃいますよ?」
実際そうだろう。きっと彼女だけなら入れるとか言われて僕は断られちゃう。そんな考えが頭を支配する。
「なら私もそんな所には入りません」
「え...?」
「言ったでしょう?私たち2人を入れてくれるファミリアが見つかるまで探しましょうって」
と彼女は言う。まるで僕の考えが見透かされてるみたいだ。
「...ヤバ...あ...えっと...貴方結構顔に出やすいんですね!」
考えていることバレバレですよ!と言う彼女...まぁ村の人にもわかりやすいと言われてたし...え...そんなに?
「それにきっとこれは運命だったんです」
「はい?」
なにか言い出したぞ。この美少女。
「ビ!?...つまりですね…えっとなんかほっとけなかったんです!」
ええー。
「貴方がここにうずくまっていて私がたまたまここを通った、そしてほっとけなかったからつい声をかけてしまった。ほら運命でしょ?」
ええー...。
「なんなんですかその表情は、私のジャガ丸くん食べたんだから協力してくださいよ!」
そっちからくれたのに!?
「......ふふっ...冗談です...少しは元気が出たみたいですね」
からかわれてどっと疲れたけど、うん...少し気持ちが晴れたみたいだ。
「ありがとうございます。食べ物も頂いちゃって...」
「気にしないでください、あげたくてあげたんですから」
「それでどうしますか?一緒に来ます?」
再度問いかけられる。
「あっお金のことは気にしないでください。あなたを1週間は養えるぐらいはありますから」
「それに無くなったら作ればいいですし…」ボソ
えっ...今なんかやばいことが聞こえてきたぞ。
「...ンンッ...コホン...えっとそれで答えは?」
「本当に...いいんですか?」
「私の方から誘ってるんですよ?いいに決まってます」
「旅は道連れ世は情けという言葉が東洋にあるみたいですし、まさにそれです」
「じゃあ...よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
よいしょっと立ち上がる彼女。
「あ、そういえばまだ名前聞いていませんでしたね、私はトネリコ、ただのトネリコです。貴方は?」
「ベル...ベル・クラネルです」
「響きのいい名前ですね、ではベル、と...そう呼んでも?」
「はい、いいですよトネリコさん」
「さん付けはいいですよ。同年代でしょう?トネリコと呼んでください」
あと敬語もやめてくださいね?と言う彼女。
「...わかった、よろしくね。トネリコ」
「はい!これからよろしくお願いしますね!ベル」
と手を差し伸ばしてくる彼女の顔はとても...とても綺麗な笑顔だった。あぁ...そうか、僕はこの時、君に心を奪われたんだ。
ダンジョンの中ではなかったけれど、僕が助けられる側だったけれど、
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?』
再結論
僕は間違ってなんかいなかった。
だから今度は、僕が君の力になりたい...そう心に誓ったんだ。
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「穿て!シャスティフォルッ!」
そんな声が聞こえてきて、僕の意識は現実へと帰ってきた。
鋭い速さを持った光が彼女の持つ
『......!?』
振り上げていた黒腕を盾にして、その一撃から身を守るも、光の勢いで横に吹き飛んだ。
「ベルッ!生きていますか!?」
「............なんで...」
君がここにいるんだ。トネリコ...。
「あなたを追いかけてきたに決まってるでしょう!なんでこんな装備でダンジョンなんかにッ......死にたいんですか!」
そう声を荒らげる。当たり前だ。僕の今の服装はダンジョンに潜る用のものではなく。ただナイフを帯刀してただけの普段着だ。こんな装備でダンジョンに来れば自殺行為と思われても仕方ない。
「とにかく私の後ろにいてください!あれを排除します」
そして彼女は、僕を庇うように、怪物との間に入る。
庇われる。あの時と同じように。
まただ。また僕は彼女に助けられる。
さっき思い出したのに。僕の根源を、強くなりたい理由を。
「ぃ...やだ......」
「ベル?」
...立て。
......立てっ。
.........立てよッ!
何度助けられば、気が済むんだよっ!?
同じ時を繰り返すのはもう御免だ!
この人に助けられるだけの弱い自分なんて、絶対に、御免だ!
大切な人の前でこれ以上醜態を晒してどうする!
誰よりも想いを伝えたい人の前で、これ以上格好悪い姿を見せてどうするんだ!
「嫌だ...僕はもう...助けられるだけなんて...絶対嫌だ!」
そんなこと、耐えられない!
ここで格好をつけないで、いつ格好をつけるんだ!
ここで立ち上がらなくて、いつ立ち上がるっていうんだ!
ここで立ち向かわないで、立ち向かうっていうんだ!
「貴方はこんな時に何を言って「僕はッ!」......!?」
僕は立ち上がり、トネリコを真っ直ぐ見る。
「僕は、強くなりたい」
君の力になれるように。
君の支えになれるように。
「だから僕は、もう君に助けられてばかりではいられないんだッ!!」
彼女の手をつかみ、自分の背後に押しやる。僕は、自分の意志で彼女の前に出た。
背中に刻まれている【神聖文字】が、熱を帯びたような気がした。ここには居ない。もう1人の大事な人の笑顔が浮かぶ。
「行くぞ...!」
僕はあの怪物へと駆け出す。
『...!!!』
「勝負だッ!」
ナイフと右腕がぶつかり合う。
「くっ!」
だが相手の方が力が強く、後ろへと押し返される。
『......』
デッドフェイスは左腕を振るい追撃してくる。それを間一髪で躱し、すれ違いざまにナイフで腹を切り裂く。
だが、
「ぐっ!?」
その攻撃は、僕に直撃した、すごく痛い。
「ベルッ!」
悲痛な声が聞こえる。短剣を握りしめ、今にも助太刀してきそうだけど、どうやら見守ってくれるらしい。
なら。
「ああぁァァ!」
『...』
ナイフを振るい、黒腕を弾く。
戦法を変える。
一撃を与えたら、1歩引く。ヒットアンドアウェイというやつだ。
何とか一撃を貰わずに戦えている。けど。
攻撃は当たっているはずなのに...ダメージをちゃんと与えているはずなのに...こいつ全く怯まない!
モンスターは、生き物だ。痛覚もあるし、恐怖を感じる本能がある。なのにこいつにはまるでそれがない!
ただ腕を振り下ろす。1連の動作を繰り返すように、僕の命を削り取ろうとする。
不気味だ。まるで
「くっ!?」
『...』
常に攻撃し続けること。それがこんなにも脅威だなんて!?
どうすればいい。モンスターの弱点である魔石は、モースに取り憑かれた際、失っていると聞く。
この状態が続けば、僕の限界が先に来る。
大きく振りかぶった右腕を避け、反撃とばかりにナイフをデッドフェイスの
『...!!』
初めて...デッドフェイスは
「っ!?」
防御されるとは思わなかったからか、少し動揺してしまった。
それを見逃す相手ではない。体全体を使って突進してくるデッドフェイス。
「ぐぁっ!」
もろに食らってしまい後ろへと飛ばされるけど...確認しなければいけないことができた。
僕が吹き飛ばされたところには先程倒した1匹目のウォーシャドウの死骸から生まれた。灰にならなかったもの、ドロップアイテム『ウォーシャドウの指刃』が3本落ちていた。
それをひとつ拾い、相手の顔に目掛けて全力で投擲した。
今度はそれを
2本残った内の1本の指刃を拾い上げ、その即席の武器を左手に持つ。柄のない刀身だけの
──やってやる。
2つの武器を携えた僕は、狙いを一点に絞る。あの仮面を壊す。
「うああああァァァァァ!」
僕は、走る。
『...!!』
デッドフェイスも、こちらに向かってくる。
「はっ!」
『...』
剣同士がぶつかり合う。目の前の命を奪うために、剣戟を何度も繰り返す。
『...!!!』
そして大きく上げた左腕からの攻撃をナイフで逸らす。
するとデッドフェイスの赤い目は、細くなり、僕を嘲笑う。
左側から見える黒腕の攻撃、つまり先の攻撃は、囮だった。回避はできない。防御で受けきることもできない。当たれば死。それほどの一撃だけど。
僕の方が、速い。
「ふっ!」
デッドフェイスの黒腕が届く前に、左手に持った指刃を至近距離で相手に投げつける。
『...!?』
指刃は赤い両目の間に突き刺さる。けどまだ足りない。
「はあぁぁぁぁ!!」
右拳でナイフを握ったまま、突き刺さった指刃を殴り、さらに奥に刺しこむ。
『──────────』
デッドフェイスの動きが止まる。やがて仮面は...モースは黒い塵となって消えていく。それと同時にウォーシャドウの身体も塵になる。つまり。勝った。
僕は、倒した。あの災害を。
そんな事実を、認識した時。
限界が来たのか…体から力が抜け僕の視界は、真っ暗になった。
最後に見えたのは慌ててこちらに駆け寄ってくるトネリコの姿だった。
今まで出てきた(これから出す予定)魔導具解説
シャスティフォル=ビームが出る短剣、込める『魔力』に応じて威力が変わる。穿て!と言う必要は無いのです。
魔法のポーチ=簡単に言えば入れる物の大きさに制限がある四次元ポケット。
トネリコの杖=1番魔術が扱いやすくなるという理由で使っている。あと育ての母から貰ったもの。
爆弾=『魔力』を込めて使う。衝撃を与えると爆発するようになる。
煙幕=『魔力』を込めて使う。衝撃を与えると白い煙が出てくる。