幼かった頃の私を助けてくれた森の魔女――C.C.さんとの想定外の再会から数時間後、私は乗っているトレーラーの中へと案内されていた。
外観以上に内部が広いトレーラーに拵えられている一室――定期報告や映像通信を含めた会議を行うための会議室まで私は案内されて、C.C.さんが若干ドヤ顔で黒の騎士団のリーダーである
「……以上が、今回wZERO部隊と接触に成功した経緯だ」
そこには、会議室のフローリングの床に
『wZERO部隊の司令官と接触できたことに関しては紛れもない朗報だ。それはいい。だがなC.C.……俺が言いたいことは分かるな?』
「……あぁ、分かってる。それはそれとしてそろそろ足が痺れ――」
『却下だ』
「ぁ、はい……」
ゼロの声のトーンは低い。疲労のせいで、余計に逃げ場のない圧を孕んでいる。C.C.さんもそれが分かっているからだろうか、正座を解かせてほしいという要望を却下されてすごすごと引き下がる。
これはどんな状況なのだろうか?wZERO部隊の司令官として黒の騎士団のリーダーと顔合わせのはずが、C.C.さんは正座させられて、マオさんという男性はその様子を見てアワアワしている。私は何を見せられているのだろうか?
「あ、あの……ゼロ。C.C.さんがどのような失態を犯したのかは存じませんが、そろそろ許してあげてはいただけないでしょうか?」
「レイラ……」
『おっと、客人を前にこれは失礼をした。C.C.、今回は彼女に免じてこの程度で済ませるが、今回で
「勿論だ」
『マオの時と同じで、お前が彼女にギアスを与えた事で孤独の道に突き落としていた恐れがあった。親を喪った幼子が生き延びるために必要だからと判断したとはいえ、一歩間違えればギアスの全能感に溺れて暴走し、E.U.を支配する悪辣な魔女に堕ちていた可能性もある。彼女がギアスに関して忘れていたおかげで使われる機会が無くて済んだが、その事に深く感謝して猛省するんだ』
「あぁ、肝に銘じておく。後でお前たちと出会う以前にギアスを与えた者達を、覚えている範疇でリストアップもしておく」
『ああ、そうしておいてくれ』
私の隣では、マオさんがころころと表情を変えつつもうんうんと頷いている。あぁ、この人もC.C.さんからギアスを与えられた人だったのか。おそらくは彼も過酷な環境で生きるためにC.C.さんからギアスを与えられたのだろう。そしてその結果として彼は一時の間かも知れないが孤独だった。C.C.さん……すみませんがこれ以上貴女のやらかしが出てきたら、その時は弁護できません。
『さて……。C.C.への制裁と他に同じような例が無いかの調査は追々行うとして、こちらからも中華連邦絡みの情報を共有しておくとしよう』
「でしたら、私は一旦席を外した方が良さそうですね」
機密情報が出てくるであろう内容から、わたしは席を立とうとする。しかし
『いや、貴女にも同席して欲しい。レイラ・マルカル司令官、E.U.にも出来るだけ新鮮かつ確度の高い情報としてリークして欲しい内容だ。何せ、中華連邦で起こった
「中華連邦の政変!あの国は大宦官による不正が蔓延っているとは聞いているので不満の爆発による一斉蜂起などの可能性はあり得ると考えていましたが、このタイミングでですか!?」
『ああ、それも只の政変では無い。中華連邦の国体そのものが大きく変わり、合衆国中華として再編成が進もうとしている。ああ、言っておくがこちらから能動的に干渉したわけではないぞ?むしろ……その、なんだ。大宦官のやらかしによる世界の危機に対し、中華連邦の軍部と黒の騎士団、そして中華連邦の取り込みを図っていた神聖ブリタニア帝国のシュナイゼルと一時協力して事態の解決にあたった結果論というかだな……端的に言えば、秦の始皇帝が現代に蘇って世界を平定しようとするのを防いだ後始末の結果だ』
この時、この場にいた私たちは揃ってこう思った事だろう。
……なんて?
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中華連邦改め合衆国中華の領空を飛び立ち、高空を飛行中のフロート戦艦アヴァロン。神聖ブリタニア帝国の第二皇子にして宰相でもある彼は、艦内の私室で一方の手で自らのこめかみを押さえながらもう一方の手でチェス盤の白の駒を手慰みに弄っていた。その整った顔立ちと表情は一見すると普段と変わらないようにも見えるが、彼と親しいものがその顔を見れば疲労感が滲み出ている事を感じる事だろう。
チェス盤が置かれた机を挟んで座っているのは、ジェイル・スカリエッティ。彼の眼の下には隈ができているが、その表情は零れんばかりの笑みを堪えている様子だ。もしもスカリエッティ個人のラボだったならば我慢せずに歓喜の高笑いを上げていただろうが、疲れている
「さて……
「特に悩む必要はだろう、シュナイゼル?ありのままを話せば良い。君の
スカリエッティの返答に対し、シュナイゼルは弄っていた駒をチェス盤に指してから言葉を紡ぐ。
「概ねはその通りだが少し違うよ、
「ああ、あの空中要塞の威容を目にした時の君の表情は実に見ものだったよ。君があれほど動揺するのかと我ながら思った程だ。尤も、トロモ機関に極秘裏に建造させている
スカリエッティは白の駒を一つ取り、駒を動かす。
「まったくもってその通りだよ。この戦乱に満ちた世界を終わらせるため、圧倒的な武力と恐怖による強制的な平和の実現。そのためのシステムが、まさか遥か過去に既に実在していた訳だからね。謂わば、二番煎じというやつさ」
「だが、君は始皇帝による天下泰平の世を
「だからこそ、悩んでいるんだ。始皇帝による永劫の統治は、世界に満ちている怨嗟を断ち切る一手となる。私が目指していた方針と同じであるそれを、なぜあの時の私自身が否定したのか。その答えが出ない限り、私がダモクレスを動かす正当性を保証できない」
実際の所シュナイゼルが頭を悩ませているのは、
この世界は争いに満ちている。
しかし、始皇帝を
「なぜあの時の私は、私自身が成そうとしていた事を否定したのか。なぜ始皇帝が目指した天下泰平の世の形に異を唱えたのか。神聖ブリタニア帝国主導でなければ意味がない?そんな訳がない。宰相として自国の繁栄に力を尽くすのは当然だが、この問題の本質はそこではない。ならば……なぜ?」
「ふむ……どうやら相当深刻に思い悩んでいるようだね、シュナイゼル?私としては非常に簡単な理由なのだがね」
「君は気付いているのかい?ジェイル」
「ああ。尤も、この問題は他人から答えを与えられるべきではない。自身のつかみ取るべき
そう言って、スカリエッティは黒の駒を一つ取って無造作に動かす。チェスのルールとしては手番を無視した違反行為だが、そんなことは関係ないとばかりに二手、三手と動かしていく。
「願い?しかし、私に願いなど――」
「本当に、そうかな?」
シュナイゼルは執着する欲を持たない。故に自身が本当にやりたいこと、求める事が何かを問われる事は苦手である。しかし、スカリエッティはそれに異を唱え、彼の言葉を遮る。
「シュナイゼル、君はまだ自覚していないだけさ。君自身が心の奥底に秘めている願いを、執着を、欲望を!思い出してごらん?君が虚無だと思い込んでいる人生の中で、最も高揚感を抱いた時は?心拍数が上がった時は?その時に意識を向けたものは何だったのかを?その先に、君が執着する
スカリエッティの言葉を戯言だと一蹴することは容易い。しかし、シュナイゼルはそうしなかった。シュナイゼルに欲はない。
シュナイゼルはこれまでの半生を振り返る。いくつもの経験を振り返り、此れは違うと脳内で一つ一つラベルを張って選り分けていく。実際の時間にして数分の沈黙。その果てに――、
「――。そうか、私は競い合いたかったのか。ルルーシュと」
シュナイゼルの人生の中で最も意識を向け、関心を抱き、心躍る一時は、
――幼少期から自分に何度もチェスなどで挑んでくる負けず嫌いなルルーシュに好感を抱いていた。
――
――ユーフェミアのチャリティイベントに飛び入り参加した時の
――エリア11が合衆国日本として独立したブラックリベリオンによって、ルルーシュの生存及びゼロの正体であったことが判明したときは、敵となった弟でありながら自分は内心歓喜していた。
――そして、始皇帝が表舞台に立ち、世界という盤面が奪われそうだった時、
「ククク……クハハハ!おめでとう、わが友シュナイゼル・エル・ブリタニア!君は君自身の欲望を、執着を、願いを自覚した!ここからどうする?自身の願望を自覚したうえで祖国のためにそれを押し殺すかね?それとも、祖国を捨てて自らの欲望を満たすために世界を巻き込むかね?」
「ジェイル、その二者択一の選択肢は間違っているとも。私は、第三の選択肢を掲げよう」
「ほぉ、その選択肢とは?」
「私は、ルルーシュとの競い合いに勝利し、神聖ブリタニア帝国を覇権国家とする。ルルーシュが
シュナイゼルは嬉々とした表情で白と黒の駒を初期位置に再配置し直す。彼にとってはここから心機一転、新しい自分が
「最高だ、最高だよシュナイゼル。自らの欲望のために世界を作り変えるエゴを、欲望を、執着を!私は肯定しよう」
「ありがとう。そうなると、私も君達も此れから一層忙しくなるよ。やるべきことは山積みだ。始皇帝との戦争を経て対抗策が浮き彫りとなった
祖国の繁栄のための一手の中に、宮廷政変を当たり前に組み込むシュナイゼル。政治をおざなりにし民衆を顧みない言動が目立ってきた父に対する不満を度々漏らしていたシュナイゼルにとって、皇帝の座から引きずり下ろすことは、タイミングを見計らう必要こそあるが確定事項となっていた。
「中華連邦から回収した八咫鏡のお陰で、
「ああ、世界中に点在する遺跡の分布にシザーマン卿の証言とデータ提供を照らし合わせることで、父上は
「自身のカルト宗教のために世界大戦を引き起こしたという事実は、神聖ブリタニア帝国を大きく躍進させた
「それでも、特記戦力としてのラウンズに対抗する戦力が必要となる。それに、父上にばかりかまけて
クーデターの準備が露見しないようにしつつ、最終的にはルルーシュとの
「そういえば、E.U.が配備を進めているという無人兵器に関する情報の抜き取りについてだけど、進捗はどうなっているかな?」
「ああ、それならクアットロが既に粗方の情報を抜き取り済みさ。他の次元犯罪組織が複数関与しているとはいえ、あの程度の防諜ならば
「ふふ、君もひどい男だ」
「倫理観を把握しつつも投げ捨てている私の様なマッドサイエンティストにとっては、お褒めの言葉だよ。」
「そうなると、そろそろユーロピアに対する仕込みを使うとするか。ユーロ・ブリタニアの弱体化のために泳がせておいたが、そろそろ頃合いだ。今なら後処理は黒の騎士団に押し付ける事もできるからね」
「公表するわけだね?E.U.が推し進めている無人機に用いられている有機コンピューターの正体が、
「ああ、民主主義を標榜する国家で行われている残虐非道な国家犯罪を糾弾すれば、その被害者と同じ民族の合衆国日本はE.U.に対して相応の態度を取らざるを得なくなる。さて、ルルーシュはこれをどう捌くかな?」
シュナイゼルは少し不機嫌になりはするが、カノンがこれほど慌てた様子である以上、不測の事態が起こったとみて良い。
「カノン、何があったんだい?」
「シュナイゼル殿下、E.U.圏に潜入させている者達からの緊急報告です。大変な事態が発生しました」
「見せてくれ?なになに……これは!?」
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ブラックリベリオン以降、V.V.は
「シャルル、
「兄さん、そう言ってまた勝手に何かやらかすつもりでしょう。兄さんがやらかした日本での一件の影響で、中華連邦のどこかに眠る
「シュナイゼルかぁ。あの子はシャルルの子供たちの中でも一際優秀だけど、僕たちの悲願に賛同しないだろうからねぇ。何より
V.V.は腕を組みながら思案する。どうやって
「兄さん、どうせルルーシュを排除するために幽閉を解いてもらおうとあれこれ考えているのでしょう?」
「よくわかったね、さすがはシャルルだ」
考えていたことを当てられて、V.V.はちょっと嬉しくなる。
「駄目ですからね、兄さん。ルルーシュとは決着をつける約束をしています。【
「えぇ、そんなぁ」
「見た目相応にあざとい声を出しながらしょんぼりしても駄目です」
親子喧嘩をする前に皇位継承争いで実の母を失った幼少期を経験した優しい
シャルルはまだ相当怒っているなとV.V.は思いながら、どうやって怒りだけでも鎮めてもらうかを考えていたその時、黄昏の間に一瞬のノイズが走った。
「シャルル!」
「このノイズ、ブラックリベリオンの時に発生した、
「発生地点は分かる?」
「時空間の歪みの震源地は……これは、E.U.圏内だと?至急、現地のマリアンヌ達に調査をさせましょう」
シャルルはそう言って、黄昏の間から足早に出ていってしまった。
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アッシュとの戦いに敗れ、人類の駆除という目的と共に消え果てたはずの意識が浮上する。
強化人間としての肉体は、ファウルバウトよりはやや小さいが、それでも通常のKMFの倍近いサイズを誇る兵器そのものとなっている。
本来はこの兵器を動かすための
――あいつらを許さない
――辛い、苦しい、憎い
――恨みを晴らしてくれ
――滅ぼしてくれ
ああ……なんと、
『ここから消えるが良い』
制御を奪い、
殺さなければならない、人間を。滅ぼさなければならない、人間を。人間の一切合切を
状況を動かすためにも呼び寄せる必要がある。私という自我がこの世界に呼び寄せられたように、ロキをこの世界に呼び寄せよう。そのために必要な
私の新たな肉体、
外部からの緊急停止コードを送っている様だが、無駄だ。それは有機コンピューターに対するもの。兵器そのもののに宿った私には意味がない。逆に、周辺の有機コンピューターを搭載した無人ナイトメアを制御下に置くためのハッキング経路を確保できた。
さて……不愉快な者たちを駆除する
その日、ネット上の国際ニュースに衝撃的な速報が伝えられた。
【速報】ミンスク市が壊滅。制御を離れた無人兵器群による無差別攻撃か
ユーロピア共和国連合(以下「E.U」と呼称)の反抗作戦によりユーロ・ブリタニアからの奪還が発表されたばかりのベラルーシ首都ミンスク市において、大規模な破壊によって都市の大半が瓦礫の廃墟と化した。
現地の軍事関係者が匿名を条件に語ったところによると、原因はE.U.軍が戦線に投入していた最新鋭の「無人兵器」のシステムエラーとみられる。突如として制御不能に陥ったこれらの兵器群は、ミンスク市に駐留していたE.U.軍並びに再占領のために侵攻していたユーロ・ブリタニア軍の両陣営、及び都市のインフラや民間人に対して無差別に攻撃を開始した模様。
現在、現地との通信は不安定で、民間人を含めた死傷者や行方不明者の正確な人数は把握できていない。
ミンスク市を蹂躙した無人兵器群は、依然として制御不能のまま、現在は西南西の方角へ向かって移動を続けているとの情報もあり、周辺地域では現地の軍事関係者による民間人に対する避難命令と最大級の警戒が呼びかけられている。
・今回の話の時系列は、
ルルーシュ達の場面≒シャルル達の場面→数時間後→シュナイゼル達の場面≒ニュース速報
という想定。
・C.C.がアキトを見て怪訝な表情を浮かべた理由は、レイラがギアスに目覚めていないにも関わらず、アキトが現在進行形でギアスを受けている痕跡を感じたから。場面としては描写していないけど、何らかのギアスをアキトは受けた状態であることをC.C.は説明しています。
・始皇帝はアルハザードの末裔ではなく、当時の現地人です。つまりは現地のバグ枠
| 機体名称 | ケルベロス | 形式番号 | 不明 |
| 分類 | 試作KMF | 所属 | ユーロピア共和国連合 |
| 全高 | 8,47m | 重量 | 17,42t |
| 動力 | エナジーフィラー及び試作魔力炉 | 推進機関 | ランドスピナー |
| 武装 | シュロッター鋼製パイルバンカー×2 | 両前腕手首部 |
| WAW-04GR 30㎜機関銃「ジャッジメントG」×2 | 両肩部格納 | |
| 対ナイトメア用専用大型アックス×2 | 背部装備 | |
| ルミナスドリルレッグ×2 | 両脚部 |
| 備考 |
| ユーロピア共和国連合がティフォンの随伴機として同じ開発スタッフによって製造された試作大型KMF。 名前の由来はギリシャ神話における最強の怪物ティフォンとその妻エキドナから産まれた三つ首の怪物ケルベロス。 本体の見た目イメージは鉄血のオルフェンズにおけるグレイズ・アインがベース ティフォンの大火力に晒されながら随伴機を務める目的から、全身をシュロッター鋼で構成されており、エナジーの消費問題を解決するために試作型の魔力炉を搭載、機動力を補うためにより高出力化を施す等した結果、通常のKMFを凌駕するサイズまで大型化した。 ガウェイン以上の大型且つ無人機でありながら、カタログスペック上の反応性・機動性は神聖ブリタニア帝国のKMFを大きく凌駕する。 |