大学生、上杉風太郎。インフルエンサーでホストやってます 作:れろれーろ
「それじゃあ、五つ子再会を祝って!」
「「「「かんぱーい!」」」
ガシャ!っと強くビールジョッキを叩きつけた音が響く。
「美味しいですね!幸せですね!これがA5牛肉ですよ!」
「ちょっと五月!取りすぎよ!抑えなさい!」「お店を選んだのは私なので権利があります!」「なんの権利よ!」
開始早々ワーワーと喧しい二人。
「くーっ!ビールは喉越しとは聞いてたけど、こういう事なんだ。あぁー20歳になったからようやく飲めるよー。お酒のCM案件とか来ないかなー?」
「んぐっ。私も初めてっ。んぐっ。ビール飲んだんだけどっ。んぐっ。結構いけるねこれ!」
と一気にビールを飲み干していく一花と四葉。この二人はウワバミ体質なのだろうか。五つ子だから限界量は同じはず。そう信じて一口飲んでみたものの酔うとか酔わない以前にまずい。これ飲み切れるかな…。
「そういえば聞いてよ!今日私と三玖で賃貸物件見に行ったんだけど、ご希望の条件の物件は無いですの一点張りなのよ!不動産屋ってあんなのばっかりなの!?」
「あれは二乃が悪いよ…条件出しすぎ…新築なのにペットOKする大家なんて稀に決まってるじゃん…」
「カワイイ猫飼って愛でる生活をインスタに載せたいのよ!今まではパパが嫌がってたから諦めたけど、今ならいけるわ」
「ペットを飼うのは大変ですよ二乃…外泊一つするにも猫のご飯を気にしないといけないですし」
「あんたはご飯の心配ばっかりね!」
「なっ!じ、事実ですよ!」
そしてまたワーワーと喧しくなる二乃と五月。お願い五月頑張って説得して。猫は可愛いけど広くない家でペット飼うのは可哀想だから私も反対派…。
「いやー。でも、まさかみんな東京に住むとは思わなかったよ。うーん。お仕事次第だけど私もこっちに引っ越そうかな…出版関係の東京の仕事も増えてきたし…。三玖は住みたい場所に希望とかないの?」
「私は秋葉原に住んでメイド喫茶のバイトしてみたいなって思ってたけど、学校から遠いのがネック。比較的、浅草にも歌舞伎座にも近いのも良い。渋くて落ち着く」
「あはは。三玖っぽいね。私は住むとしたらどこかなー」
「一花は六本木に住んでそう」
「なんか勝手なイメージだね!?」
「それは私もそう思う」
「四葉まで!?あ、そういえば四葉は女子体育大学の近くに住んでるんだよね?」
「うん!毎日玉川の土手を走ってるよー!自然が気持ちよくて良い場所なんだ!」
「四葉の毎日はすっごいストイックそうね…私には考えられないわ。しかも女子大なんて行ったら出会いとか無いでしょ?」
「『出会い』…?」
——ピシッ。
えっ。何今の音?あれ?四葉のグラスの取手ってそんな形だっけ?
「…あ、あははー!私にはそういうの必要無いよ!うん。全然無い!今は陸上に夢中だもん!」
そう言ってにこやかに笑う四葉に「だ、だよね!私達ならいつからだって、大丈夫よ!別に今じゃなくっても全然アレよ!」と慌てて二乃が返している。
い、今一瞬昔の四葉みたいな表情が見えた気がしたけど…。
「そ、そーよ!男は星の数ほど居て、こちとら無敵の美人五つ子よ!男なんて、よりどりみどりで、本来は男が私達を追いかけて私達はそれを選別する立場!そうでしょ一花!」
「ええっ!わ、私に振るの!?」
「なにカマトトぶってるのよ。もう私達二十歳よ二十歳。こうやって堂々とお酒も飲める立派なレディ。芸能界なんていうイケメンパラダイスに身を置いていて、まだ膜があるなんていう戯言を吐かないわよね!今夜は絶対根掘り葉掘り聞いてやるわ!」
「に、二乃!なんてハシタナイ!表現を考えてください!」
「こんなの大人のガールズトークの序の口よ!と言うか五月にだけは注意されたくないわね!むしろ五月が一番エロエロなんでしょうが!どうせ毎日毎日フー君とパコパコパコパコ怠惰で耽美な堕落した大学生活を送ってるんでしょう!羨ましい!一晩代わりなさい!」
「なあっ!わっ!わ、私と上杉君はそんな…!そんな…!」
「ホントなに言っちゃってるの二乃!?」
完全に火が着いた二乃にツッコむ一花。顔を真っ赤に染めて金魚の様にパクパクと口を開け閉めしているだけの五月。
「ふふふふ。こういう話になるとうまく躱されるのがいつもの流れだったけど、今日は違うわ!」
ドンっ!と完全に飲み切ったビールの大ジョッキを机に叩きつける二乃。「すいませーん!テキーラ5杯くださーい!」
「ええっ!焼肉屋にそんなのあるの!?」
「今夜は絶対逃がさないわ。私の勘が言っているのよ…5人の中の誰かがとてつもない隠し事をしているとね!」
♦︎♦︎♦︎
「すっかり遅れちまったな」
夕方に三玖から電話が来てたのに全然返せてなかった。
改めてスマホを見るとLINEが入っている。
フータロー今夜空いてる?会いたいな。
皆で集まってるんだよ。
長い時間いると思うから予定空いていたら、このお店に来てほしい。
▼マップピン共有
既読
「…もっと前に連絡してくれよ。まったく。でも場所は近いな…ん?」
ピロン
読んだね。
早く来た方が良い。
私もそろそろ自分を抑えられない。
既読
「…は?」
♦︎♦︎♦︎
「まず初めに告白してきたのは同じクラスのオムライス狂いのゴリラ。マッチョの癖に色白で三玖がホワイトゴレイヌって呼んでた奴よ。そいつが授業終わったら、私に手紙渡してきて呼び出してきたのよ。話したい事があります。って言う書き出しでね。もう私的にはその時点でナシだったわ。なんで手紙?とりあえずシャネルのバッグを貢がせたわ。
そんで次はキャラ付けなのか知らないけどいつもチュッパチャプス咥えてる金髪ポニテ。
こいつが授業でチョコレートケーキ作ってきて私に持ってきた。愛する君の為に。ってケーキにプレート付けてキザったらしくね。しかも生地の焼きが足りなくてマズイし。
とりあえずLINE交換してあげたらいきなり、君か。君以外か。とかいう謎のポエムと共に自撮り送ってくる奴で秒でブロック。アップルギフトカードを貢がせてるわ。
はい!私は話したから五月の番よ!フー君がどんな体位でするのが好きなのか教えなさい。あとエッチに入る時の導入の流れよ。映画見ながら身体くっつけてイチャイチャからの流れなのかしら。フー君から直球で「しようぜ」って言ってくるのかしら。それとも五月からさり気なくラブホに誘うのかしら。玉虫色の答えは要らないわ。きちんと描写して」
「私は告白とかされてないよ。だって俳優ってモテるから付き合うとか一人の女に縛られるのなんてやってらんねーって思考の持ち主ばっかりだからね。どいつもこいつもいきなり飲み。いきなりホテル誘い。俺はモテるから女に余裕ある。だからガッついたりはしないけど…君は特別だ。みたい余裕ある大人アピールしてくる人とかも多いけど、絶対内心凄い必死じゃん。私は演技とかそういうの分かるよ?みたいな。それでも仕事の同僚だから笑顔で受け流して、疲れたから、ファンの人の応援メッセージでも見ようと思ってインスタのDM開いたら、チンポコ画像の嵐だよ。一花ちゃん。俺の見てどう思う?ってなにさ。ちっさ。以外の何の感想を私に覚えろって言うの?私のインスタは君達のチンポコ日記帳じゃないって。しかもこのチンポコDM戦法、皆知ってる結構な有名な俳優も私にやってくるんだよ?一花。お前の映画見てたらこんなんなっちまった。責任取れよ。とか何でいきなり呼び捨てでオラオラ系彼氏風なの?現場じゃ普通にさん付けだったじゃん。私いつか訴えると思う。五月ちゃんが話したら私もこの俳優の名前出しちゃおうかな。あ、二乃の質問に答えた後でいいけど、私の質問はフータロー君とどんな所にデート行ってどんな事したりどんな物あげたら喜んだか詳細に教えてね。うん。二乃の質問の後でいいから」
「私は二乃ほどモテないから、あんまり面白くないけど…。この前、ずっと見てました!付き合ってください!って黒縁眼鏡の人に告白された。話した事無いのに。いつも見てました、って言ってたけど、もしかしてあの明らかにスケベな視線で私の事じろじろ見てくる事言ってるのかな。ショーケースに並ぶ金のトランペットを見つめる様な無垢な瞳で見つめてきたならまだ話は分かるけど、君の視線は違うよね。不快だからもう見てこないで。って言ったら、それっきり。皆の前で告白してきたのを振っちゃったから、あれ以降私は男子から腫れ物扱いだよ。じゃあ五月はフータローのピンで映ってる写真送って。私の持ってない奴で、彼氏とデートなうって距離感のやつ。あとは二乃と一花の質問に答えて、真面目にお願い」
「私は酷いよ。一番酷い。正直最近いつも場違い感に襲われてて…私って女子体育大学だから普段は男の人と話す機会も無いんだけど、頻繁に合コンに誘われるんだ。その気無くても良いから人数合わせで来て!お願い!って友達に言われて仕方なく行くんだけど、登場人物みんな同じ様な顔ぶれなんだよね。あぁいや、全く同じ人が合コンに来るって意味じゃなくて、同じような見た目の人が来るって意味ね。
合コンを組まれる相手が男子の体育大学とかどこかの大学の部活の強豪チームとかばかりで、みんな似た様なお顔をしたジャガイモさんばかりに私には見えまして。冷房ガンガンに効いたお店に入っても「ふーっ。あっついっスねー」「あぁ。暑い。んー暑いなぁー」とかこっちに聞こえる様に呟いて、鍛えた筋肉を見せ付ける様に服を脱ぎ出すんだよ?怖いよ。誰も見せてなんて頼んでないのに。全員短髪タンクトップにムッチムッチのスキニーパンツ。凄いド派手なスニーカーを履いて駅前に集合してる絵面だけでも怖いのに、お店に着いたら更に脱ぎ出す。一気飲みしだすって、文化が違いすぎて、私このまま帰りたいって毎回本気で思ってるんだ。
しかも合コンって自己紹介する流れとか絶対あるよね。「へー。名前かわいいね」とか「アイドルの鈴木ちゃんに似てるね!」とかで盛り上がるやつね。私が自己紹介すると「あ、女優の一花ちゃんに似てる!」って毎回言われるの。姉妹なんだから似てて当たり前じゃん…。でも本当の姉妹だって言うと質問攻めに合うから、笑って誤魔化すんだ。でも私が一花に似てるって気づいた瞬間、男子達は皆目の色変わって鼻息フンスカ荒くなって、凄い喋りかけてくるし、とにかく飲ませようとしてくるしで、もう私はダメです。ムラムラの瞳で私を通して一花を見ているんだよ。失礼だよ。無理だよこんなの。男の人なんて誰も信じられないよ。あとは察して…お願い。…五月は上杉さんっていう素晴らしい彼氏がいて幸せだよ。同じ東京に住んでるのに格差がすごいよ。今日この後、唯一信頼のおける清涼感ある男性である上杉さんの姿を見れるだけで少し私は救われます。五月への質問を私はしないから、その代わり今日は私の前で2人でイチャついたりはしないで…今の私はその光景に耐えきれる気がしないんだよ…」
テキーラショットを皆で飲み干した後いつの間にかこうなっていました。
皆手元は怪しく、真っ赤な顔をして時々しゃっくり上げながらどんどん圧力を増して私に近づいてきます。お手洗いにすら立てそうにありません。もう皆はベロベロで自分のエピソードを喋り続け、何故か私にも同じ様に赤裸々エピソードを話す事を強要する流れになってしまいました。これは陰謀です。大きな影が動いているんです!
「さぁ五月…!いつまでも黙ってちゃ分からないわよ…キリキリ吐きなさい。夜は長いわ。逃げられると思わない事ね」
ど、ど、どうしましょうか。
私は上杉君とお別れした事を皆にまだ言っていません。しかも私がしたのは…その…キスまでで、せ、せ、セックスなんてもっての他です!そしてそれをいきなり言える流れじゃありません。
「二乃。流石にいきなりエッチな話題はキツいからジャブから行かない?私的にはあの文化祭の夜に何があったかを聞いてもいいかなーって思うな〜。五月ちゃん。何かが言いづらいなら『隠す』事は隠したままで良いから、ちょっとずつ話してくれないかな?」
一花が助け舟を出してくれてます。
そ、それぐらいなら。まぁ。
「う、上杉君は、文化祭の夜に私のいた教室の扉を開けました。よぉ。って何でもない様な顔をして」
「ふんふん。それでそれで?」
「驚きました。これでも私の所だけは無いんだろうなって薄々思っていたので…」
「あー、うーん」「そうよ!私も絶対!私の所に来てくれるって思ってたのに!」「私も…本当は…ちょっと自信あった…」「…続きをお願い。五月」
「思っていたんですけどね!でも私の所まで一直線に歩いてきて、上杉君は…
「ごちゃごちゃ言うのは苦手だ。五月。俺はどうやらお前の事をずっと考えて生きていたみたいだ。そして、そういう状態の事を、人は恋と呼ぶらしいんだよ。つまり…好きだ。好きなんだよ、お前が。付き合ってくれ」
って…私の目を真っ直ぐ見て言うんですよ…!そしたら私、舞い上がっちゃって「はい…」って…」
「あぁぁぁぁ…」「み、三玖!気持ちは分かるけど机に頭を打ち付けるのをやめて!やめなさいって!」
「驚きました。あの上杉君なあんなに男らしく…。私を見つめる顔が本当に格好良くて…私も上杉君の事がその…好きだったんだなってその時気づきまして。フワフワした気持ちで続く言葉を聞いていました——
「よかった…。ははっ。叶っちまったよ…初恋。そうなんだよ。あの日、お前から始まったんだ。過去は過去。大切なのは今だ。と思っていたけどな。さっき聞いた武田の言葉が胸に響いてな。ほらアイツだよ。キザなやつ。あいつ宇宙飛行士になりたいらしくてな、そのキッカケは宇宙飛行士になった日本人、野口さんと昔直接話した事がキッカケだと言っていた。
『あの日、あの時の想いが僕を作っているんだ。人間を作るのは記憶。つまりは過去だ。親に言われたよ。お前はくだらない過去に囚われている、なんてね。でも、その責める言葉はあまりに無責任だ。誰もが過去に縛られている。過去とラインが繋がっているのさ。それは誰にも否定できる事じゃない。君の想いだってそうさ。誰にも否定させちゃいけない。そんな権利なんて無い。だから行くんだ!君の本当の気持ちの行き先に!』
って背中を押された勢いのまま俺は今ここにいる。友人って良いものだな。五月。お前には失礼な事をしたから先に謝っておく。すまん。実は誰の所に行くか最後の最後、マジのギリギリさっきまで悩んでたんだ。柄にも無く全てを明かして武田に相談するくらいだぜ。俺が優柔不断と言うよりは、お前ら五つ子は全員魅力的すぎる。でもこれからはお前の事だけを見ると約束する。大学も同じ東京だし、初めての彼女だ。付き合ってすぐ遠距離恋愛ってのも辛すぎるしな。お前と付き合えて…ホント良かったぜ」
——なーんてですね!
カッコイイ事言うんですよ!信じられますか、あの上杉君ですよ!?決める時は決める人なんですよホント。まさか、一年も前に食堂で喧嘩した事なんか持ち出してまで、情熱的に…。いやぁ〜確かにあの最悪な出会いがこんな風に転ぶなんて…」
「ちょっ。ちょっ。ちょっーと待って!お願い待って」
「どうしたんですか?一花。良いところで」
「フータロー君の言ってる全てが始まった『あの日』って…?」
「イヤですね一花!そんなの、私をマンションの壁に押しつけて『今日から俺がお前のパートナーだ!』って言ってくれた日に決まってるじゃないですか!あれ?この時皆いませんでしたっけ?」
マンションのエレベーター前でニアミスでしたっけ。ふふ。ストーカー扱いなんてされてましたよね上杉君。あの男に凄い台詞を言われたと皆にあの後すぐに報告した様な気がしますが、皆忘れているんでしょうね。
何故か一花は私を見て凄い百面相をした後に天を仰ぐと
「——あぁー、うん…なるほど。そういう事か………そういう事かぁ」
と私の肩をにっこりと笑って叩いてくれます。
三玖は頭から煙を上げながら
「最後まで悩んでたんだ…もう僕は腹括ってますっていう覚悟完了顔してたのに、内心すっごい悩んでたんだフータロー。あぁー…それさえ知ってれば…それさえ知っていれば…見栄を張らずに最後までポイントを取りに私は…」
とブツブツ呟いています。二乃は三玖の頭を冷やす氷を取りに店員さんの所に行って——
——あれ?四葉は?お手洗いでしょうか。
「あぁー!もう良いのよ!文化祭の時の話は!はいはい!ごちそーさま!…そんな事より、私からの質問への回答がまだだわ…!そっちを聞かせなさい五月!あんたは身を持って知っているはずよ!同じ想い人を持った私達にそれを伝える義務があるわ!ずばり!私達全員と同じ空間にいるにも関わらず、あんたホントにチンポコあるのかってくらいイヤらしい視線ひとつ送ってこない仏か何かの境地にいる性欲ポーカーフェイスのフー君はどんなセック———「うーっす。遅れて悪かったな。お前ら」ガラッ!
「「………。」」
「えっ。なんだこの空気。どうした?」