スーパー戦隊が大好きなので、デカマスターを目指そうと思います 作:ペペック
「………よし、出来た!」
クルーガーがダンジョン攻略に挑んでいた頃、ニードルは工房にて装備作成に没頭していた。まず手始めにクルーガーから貰った【アラクネの機織り機】がどのような効果を出すのか確認するために、【シルクスパイダーの白糸】で機織りをしてみたところ、数十分ほど時間を空けてから糸は真っ白い大きな布へと変わる。ここで布の詳細を調べてみると、ニードルはあることに気づく。
シルクスパイダーの織物
装備作成する際、通常の糸系素材を使用するよりも補正にボーナスが懸かる布素材。機織りで作った時だけ入手できる。
「これは………普通に糸を使うよりも武器を強化できるのか?」
試しに糸状態で作ったシャツと織物で作ったシャツをそれぞれ作り、補正値を比較してみる。
『白いシャツ』
【DEX+2】
『白織物のシャツ』
【DEX+5】
ほんの些細な差ではあるが、補正値が間違いなく上がっている。レアリティの低い【シルクスパイダーの白糸】でこれならば、今後レベルが上がって新しい糸系素材を入手した時により強化できるかもしれない。
思わぬ発見に喜びつつ、ニードルは次に塗料系の素材に手を伸ばす。説明によればこれらは一部の素材を着色できるそうだが、はたしてどう変わるだろうか。先ほど作ったシャツ二枚に赤い塗料を使ってみれば、白い布地はみるみる内に真っ赤に染まっていく。
『赤いシャツ』
【STR+2】
『赤織物のシャツ』
【STR+5】
「え、STRに変わってる!?」
先ほど確かにDEX補正のみだったはずのシャツは、数値そのままにSTRに変わっていた。これが塗料の効果なのだろうかと赤いシャツに今度は青い塗料を使ってみようとするが、『これ以上は染められません』という表示が出て出来なかった。
「素材一つに対して一回しか出来ないのか……」
ならばと再びシャツを作り、色ごとにわけてみる。何度か実験してみた結果、赤がSTR、青がINT、黄色がAGI、黒がVITの補正値にそれぞれ変換されることが明らかになった。ただ白い塗料だけは元から白い素材であるせいか使えなかったが。それでも素材一つに対し、色を変えれば好きなステータス補正値に出来るのは生産職にとって実にありがたい。
しかしここでふと、ニードルはあることを思い付く。
「………この塗料同士を混ぜたら、どうなるんだろう?」
塗料は全部で赤・青・黄・白・黒の五色で、うち三色は色の三原色を構成している。リアルの絵の具であればこれらの色を一定分量で混ぜることで様々な色になるのだが、このゲームの場合はどうなるのか……。
ニードルは試しに赤と白の塗料を混ぜてみた。
桃色の塗料
一部の素材・装備を桃色に染められる。塗料を混ぜた場合にのみ入手できる。
見事新しい色の塗料ができた。これで着色した場合はどう変わるのかと布を染めてみれば、白い布は桃色に変色する。
『桃織物のシャツ』
【STR+3】【VIT+3】
「おお………!」
早速桃色の布でシャツを作ってみれば、なんと補正値が二種類に増えている。糸素材をそのまま作った場合、一種類のみかつ補正値が+2なのを考慮するにかなり嬉しいボーナスだ。
「もっと色々作れないか?」
そこからのニードルはもう夢中になった。
赤と青で紫、赤と黄色でオレンジ、青と黄色で緑、黒と白で灰色と五色の塗料を次々と混ぜていき、気づけば作業台の上には十色もの塗料が増えていく。
『スキル【色彩Ⅰ】を取得しました』
「ん? 【色彩Ⅰ】?」
とここでスキル取得通知が鳴り、ニードルはどんなスキルなのかと確認する。
【色彩Ⅰ】
二色の塗料の割合を調節し、様々な色の塗料を作れる。
取得条件
二色の塗料を混ぜ、新しい塗料を一定数作る。
割合を調節とはどういう意味なのだろうか。試しに赤と青の塗料を手に取ってみる。
「【色彩】!」
スキル発動と同時に塗料の瓶の表面に赤が5で青が5とそれぞれ数字が浮かび上がる。数字の上下には小さな矢印があり、赤い数字の矢印を指先で触ってみると数字が6に変わり、逆に青い数字が4に変わった。おそらくこの矢印で数字の数を調節するということか。まず赤の数字を6に青の数字を4にした状態で塗料を混ぜてみる。
赤紫の塗料
一部の素材・装備を赤紫色に染められる。スキル【色彩】を発動し塗料を混ぜた場合にのみ入手できる。
今度は逆に青を6に赤を4にして混ぜてみる。
青紫の塗料
一部の素材・装備を青紫色に染められる。スキル【色彩】を発動し塗料を混ぜた場合にのみ入手できる。
先ほど作った紫の塗料に比べ、それぞれ赤み・青みの強い紫の塗料が出来た。
「そうか、数値の割合で様々な色の塗料を作れるのか!」
その結果に面白くなってきたニードルは【色彩】で次々と新しい色を作り出し、完成した色から織物を染め、織物が足りなくなればまた機織りをするを繰り返していった。時には糸そのものにも色を染めてみたり、染めた糸で布地に刺繍をしたりと、ニードルは思い付く限りの作成方法を試していく。
結果生産系スキルの一つである【裁縫Ⅰ】のほかに、いくつかの新しいスキルを取得していった。
【染物Ⅰ】
塗料で布系装備を着色した際、補正値にボーナスが懸かる。
取得条件
一定回数、塗料で布系素材を染める。
【機織Ⅰ】
機織り機で織物を作成した際に補正値にボーナスが懸かる。
取得条件
機織り機で織物を一定個数作成する。
【刺繍Ⅰ】
布系装備に刺繍を施した場合、補正値にボーナスが懸かる。
取得条件
糸系素材で一定回数刺繍する。
「こんなに新スキルが………! よっしゃラッキー!」
ここまで補正値ボーナスの生産系スキルが計四種類。これだけでも布系装備をぐんと強化できることにニードルは目を輝かせ、つい好きな作品のヒーローの口癖を叫び喜ぶ。次はどんな色を作ろうかと塗料に手を伸ばそうとするが手応えがなく、見れば作業台の上にあった原色の塗料五色は残り僅かになっていた。
どうやら塗料作りに没頭するあまり、すっかり素材を使い果たしてしまったようだ。
「もうこんな時間か……」
窓を見れば空は夕焼け色に染まっており、ゲーム時間では夜になろうとしている。まだ【煌めく塗料】を試していないニードルだが、今日のところは作業を止めて翌日以降また挑戦してみることにした。
「またあの洞窟に行ってみるか」
後日またクルーガーに護衛を頼むために、彼の予定を聞いておこう。作成したアイテムをインベントリにしまってからニードルはゲームをログアウトしたのだった。
イズさんが鍛冶専門の生産職ということで、ニードルさんは機織り・染物専門の生産職になりました。