スーパー戦隊が大好きなので、デカマスターを目指そうと思います 作:ペペック
「ん……」
水底からゆっくりと浮上するようにクルーガーの意識が覚醒する。背中に当たる固い石の感触に、何があっただろうかと思考を巡らせれば答えはすぐに出た。
(ああそうか、俺は死んだのか)
となるとここはリスポーン地点である最初の町だろうか。ダンジョン攻略は完敗としか言い様のない結果だが、まあ初めてなので仕方がないだろう。ひとまず瞼を開けてみるが、視界に入った光景にクルーガーは眼を丸くした。
てっきり宿屋で目を覚ますと思っていたら、最初に見たのは石造りの天井だったのだ。一体ここはどこなのかと、状況を確認するためにゆっくりと上体を起こせばまた違和感がクルーガーを襲う。
「………ん?」
なんというか、表情筋の感覚がおかしいのだ。特に口の辺りがいつもより重く感じる。恐る恐る右手で触ってみると顔の下半分、口の形が明らかにおかしい。そして触れた右手が視界に入ったことでさらなる異常に気づく。
よくよく見れば両手が………というよりは地肌の色がおかしい。それは手の甲から腕、肩、胸、しまいには足先に至るまでが、黒光りする艶やかな光沢のふかふかの獣毛に包まれている。
「………俺、こんな手袋してたか?」
一瞬装備かと思い腕の表面に触れるクルーガーだったが、右手が触れる感覚は服越しのそれではない。確かに地肌に触れている。
「え………? なっ……!?」
あまりの事態に半ばパニックになると、ふとクルーガーの目の前に大きな姿見の鏡があることに気づき、そこに写る自分の姿に固まった。
「!?」
写っていたのは、犬の頭を持つ人間。毛並みの色こそ黒ではあるが、ドギー・クルーガー瓜二つの人外の姿の自分がそこにいた。
「なんじゃこりゃあああああああ!?」
「気がついたか」
「!?」
突然声をかけられてビクリ肩を跳ねさせてしまうクルーガーが振り向くと、そこにはあの犬獣人が立っていた。
「ボス!?」
ドギーと似ているだけで全く関係のないNPCだが、ついボス呼びになってしまう。
「すまなかった」
対する犬獣人は、なぜか申し訳なさそうに深々と頭を下げてきた。
「え?」
「先ほどは話も聞かず、いきなり斬りかかってしまって申し訳ない」
曰く彼はこのダンジョンに入ってきたクルーガーを、神殿の秘宝を奪いにきた悪人だと勘違いしたらしい。だが彼が瓦礫から犬獣人を庇う姿を見てそうではないと気づき、瀕死の彼を助けるために自分の力を分け与えて治療したのだという。
「一命を取り留めることには成功したが、そのせいで君を人間でなくしてしまった。本当に申し訳ない」
「いや、むしろ嬉しいんですけど……」
多分ダンジョンのイベントをクリアしたことでなんらかのスキルを取得したのかもしれないが、正直クルーガーとしては憧れのヒーローそっくりの姿になれたことに感激している。
「しかし君は不思議な人間だな。ここへ入りこむ生者は、冥王の秘宝を盗もうとする欲深い魂しかいないのに、君の魂は汚れがなく清んでいる」
一方で犬獣人は小首を傾げながら、数秒ほど考えこんでから納得したように頷いた。
「君のような正しき心の持ち主にならば、冥王の秘宝を託してもいいかもしれないな」
ここに来てまさかのお宝譲渡。一回助けてもらったとはいえ、そんな簡単に宝をあげていいのだろうか。ゲームのNPCとはいえなんだか心配になってしまうクルーガーをよそに、犬獣人はある部分を指差す。
「秘宝はそこの祭壇に保管されている。どうか正しき行いのために使ってくれ」
見れば玉座に座る巨大な神官の石像が祀られており、その足元にはエジプトのツタンカーメン王の棺のような箱がある。
「では俺はそろそろ次の魂の審判をしなければならない。これからもその心を忘れずにな」
そう言い残すと犬獣人の姿は青い炎となって消えるのだった。
「………これってもしかしなくて、ダンジョンのクリア報酬だよな?」
恐る恐る棺に歩み寄り、その蓋に手をかけてゆっくりと持ち上げる。
「っ………! こ、これは!?」
【ユニークシリーズ】
単独でかつボスを初回戦闘で撃破しダンジョンを攻略した者に贈られる攻略者だけの為の唯一無二の装備。
一ダンジョンに一つきり。取得した者はこの装備を譲渡出来ない。
『冥王の兜』
【AGI +30】【DEX +15】
【破壊不可】
スキル【
『冥王の鎧』
【VIT +30】【HP +100】
【破壊不可】
スキル【地獄の番犬】
『ベガの神剣』
【STR +30】【DEX +15】
【破壊不可】
スキル【百人斬り】
犬耳がデザインされたスチールブルーのヘルメット、胸部に100と描かれた黒に赤とスチールブルーの差し色が入ったアーマーと黒いインナースーツ、犬の頭がデザインされた鍔の長剣。
「え……? ええ!?」
見間違いだろうかとクルーガーは目をこすってもう一度装備を見るが、名前こそ違うがやはりそれはデカマスターのスーツだった。
「ええええええ!? 貰っていいのか!? これ本当に貰っていいのか!?」
今日だけで彼は何回驚いたことだろう。憧れのヒーローそっくりなNPCに出会えただけでも充分嬉しいのに、そのヒーローと同じ容姿になったうえに装備まで手に入れたのだ。
その後数分ほど喜びから床をゴロゴロと転がってから、クルーガーは装備を全てインベントリにしまいログアウトするのだった。
防振り二次チュートリアルその二、ユニークシリーズゲットです。
ぶっちゃけこれをやりたくてこの作品始めたようなもんです