スーパー戦隊が大好きなので、デカマスターを目指そうと思います 作:ペペック
ステータス画面を開きながら、クルーガーは本日の予定を思案している。
「さて、今日はどうするか……」
相変わらず道行くプレイヤー達の視線が気にはなるが、もうどうしようもないと割りきってからは気が楽になった。ニードルに依頼した装備の代金はすでに前払いしているようなものなので実質無料だが、ドギー似ボスモンスターとの戦いで使いきったポーション等を再び買い足さなければならない。となるとまずはゴールド集めに専念するべきかと、噴水の縁に座って次の狩り場をどこにするか考えていた時だった。
『デカマスター!?』
「!?」
突如デカマスターの名前を叫ぶ声が聞こえ、思わずバッと振り返ればそこに三人の男の姿があった。青い髪に片手剣を装備した剣士。紫の髪に杖を装備した魔法使い。赤い髪に金色の目の、剣と盾を装備した自分と同年代と思われる戦士だ。おそらく三人パーティーだろう。
「君達、デカマスターを知っているのか!?」
聞き間違えでなければ彼らは自分をデカマスターと呼んでいた。もしやと慌てて駆け寄るクルーガーに、男達は戸惑いながらも頷いて返す。
「そりゃだって、俺達もスーパー戦隊好きだし……」
「本当か!?」
パアッと眼を輝かせて思わず戦士の手を握り、クルーガーは歓喜に沸き立つ。
「俺もスーパー戦隊ファンなんだ!」
「え……マジか!」
目の前の犬人間が同好の士であったことに、戦士の顔から戸惑いの色が失せて嬉しそうに手をガッチリと握り返す。
「まんまボスの見た目だったからもしやと思っていたんだが、やっぱり君も仲間か!」
「それって装備なのか? 随分拘ったんだな……」
剣士がふむふむとクルーガーの顔を観察する。
「あ、いや……これは装備じゃなくて素顔なんだ」
『素顔!?』
しかしクルーガーの答えに三人は驚愕し、魔法使いが彼の両肩を掴んで揺する。
「NWOではアバターのスキンを人外に変えることができるの!? 教えて! 一体どうすれば変えられるの!? 獣人以外の種族にはできるの!?」
「ちょ、ま、一旦落ち着け……!」
「あ……」
つい興奮して食いついてしまったことに気づき、魔法使いは我に帰ってクルーガーから手を離す。周りを見ればプレイヤー達の視線が四人に集まっており、かなり目立っていたらしい。
「………取り敢えず、どっか座るか?」
「あ、うん………ごめん」
その後近くの店に入った四人はテーブル席に座りドリンクを注文した。
「俺はクルーガーだが、君達の名前は?」
ひとまず自己紹介をしようと、クルーガーから切り出す。
「私はフェザーだ」
剣士が手を軽く上げる。
「ショウです……」
魔法使いが恥ずかしそうに頷く。
「ブレイズだ。よろしく」
戦士が笑みで返す。
「それにしても、どうやって素顔を犬の顔にしたんだ?」
ブレイズがまず気になったのは、やはりクルーガーの顔についてだった。少なくとも彼らが見てきた中で、人外の見た目をしたプレイヤーはいない。実際このNWOでエルフ系を除く人外種族のプレイヤーは現状ではクルーガーだけなのだが、当人も含めてそれを知るよしもない。
「取得したスキルが関係しているんだが、その……」
対するクルーガーは目を泳がせて語尾が小さくなる。クルーガーの見た目は【アヌビス】の効果によるものなのだが、あまりスキルの詳細を公言してはいけないと姪のメモに書かれていたのを思い出したからだ。どう説明するべきかと悩む姿に、三人はクルーガーの内心をなんとなく察したらしい。
「あ、いや……すまない。他人のスキルを深入りするのはマナー違反だな」
申し訳なさそうに謝罪するフェザーに、理解があるプレイヤーであったことに内心でホッとするクルーガーだった。
それから四人の話題はスーパー戦隊に関することで多いに盛り上がっていく。
「ではやっぱり、クルーガーはボスが好きなのか」
「そりゃあもう! 俺にとって最高のヒーローは間違いなくボスだと断言できるさ!」
まさか勧められたゲームでボスそっくりの見た目になった末に、デカマスターの装備まで入手できるとは思ってもみなかったが。
「ブレイズ達は誰が好きなんだ?」
「俺はやっぱりブレイジェルだな!」
「私はトリンだ」
「僕はショウ司令です!」
どのヒーローが好きかという質問に三人は以下のように答えた。
ブレイズはブレイジェルこと、魔法戦隊マジレンジャーのウルザードファイヤー。
フェザーはトリンこと、獣電戦隊キョウリュウジャーのキョウリュウシルバー。
ショウはショウ司令こと、宇宙戦隊キュウレンジャーのリュウコマンダー。
それを聞いてふとクルーガーはあることに気づいた。
「もしかしてその装備は……」
「ああ、ウルザードを意識して選んだんだよ」
「同じく、トリンを意識して片手剣にした」
「本当はライフルにしたかったんだけど、このゲームにはないみたいだったから杖で妥協したんだ…」
やはり三人はいずれも自分が好きなヒーローのメインウェポンから選らんだらしい。となると彼らの髪の色などもヒーロー達のパーソナルカラーをもとに設定したのだろうか。
「同じ戦隊ファンがここで出会ったのも何かの縁だしな、お互いにフレンド登録しないか?」
『もちろん!』
ゲームを始めてから数日で四人も同じ趣味のプレイヤーに出会えたことに、ゲームを勧めてくれた姪に内心で感謝するクルーガーだった。
「なんならクルーガーも一緒にフィールドを回らないか? あ、もちろん時間に余裕あればだが……」
ブレイズの提案にクルーガーが即答する。
「全然いいぞ!」
本当はゴールド集めの予定のクルーガーだったが、せっかく出会えた仲間との冒険に心惹かれないはずもなく、二つ返事でパーティーを組むのだった。
お気づきかと思いますが、私は着ぐるみ系戦隊ヒーローキャラが好きです。