スーパー戦隊が大好きなので、デカマスターを目指そうと思います 作:ペペック
「ユニークシリーズ!? どんなぶっ壊れアイテムだそれ!?」
「しかもデカマスター似の物凄く強いモンスターがいる隠しダンジョンだと!?」
「それでボスそっくりの種族になれる【アヌビス】取得とか、もう役満じゃん!!」
その後、一通り話せる範囲のものを話したクルーガーに、三人はそれぞれ驚愕する。やはり一番衝撃的だったのはユニークシリーズに関してだろう。
「いいなあ………羨ましい……」
ブレイズが物欲しそうにユニークシリーズをジッと見つめる視線に、大好きなヒーローの姿になりたいという願望が強く滲んでいるのがわかる。
「でも、探してみれば似たようなスキルがあるかも知れないぞ?」
デカマスターをモチーフにした装備やスキルがあるならば、ほかのキャラクターをモチーフにしたアイテムやスキルもあるかもしれない。そうクルーガーに言われてフェザーとショウがハッとする。
「確かに………犬人間になれるスキルがあるなら、鳥人間になれるスキルがあってもいいはずだ……!」
「もしかしたら竜人になれるスキルとかもあるかも……!?」
僅かな希望を見いだした二人の目が輝き、期待に沸き立つ。
「でもレベル上げがな~……」
しかし対するブレイズが憂鬱そうにため息をつくのを見て、二人はウッと言葉を詰まらせてしまった。
確かに先ほど見た限り、三人のステータスはAGIにかなり偏っているか、数値が均一すぎて平均より低くなっている。レベリングしようにもSTRやINTが低めなので、適正レベルのモンスターを倒すのは苦労しそうである。クルーガーは少し考えこむと、ここで三人にある提案をする。
「だったら、俺がレベリングに付き合おうか?」
『え?』
思いもよらなかった話に三人の視線が再びクルーガーに集まる。
「い、いいのか?」
「全然平気さ。同じ趣味のよしみで頑張ろう」
兜越しに笑顔を見せるクルーガーの姿に、三人はまるで石にでもなってしまったかのように硬直してしまう。
(え、この人本当にただのデカマスターファンの人?)
(画面からボスご本人が飛び出したとかじゃなくて?)
(メンタル聖人すぎじゃない? リアルヒーロー?)
彼から後光が射したのを幻視した三人が再び動き出したのは、一向に動かないのを見たクルーガーが声をかけてからだった。
森のさらに奥へ進むこと数十分、さっきよりも数の多いモンスターの群れを見つけてから一行は再び足をとめる。ゴブリン達より一回りほど大きいピエロのモンスター、上位種のホブゴブリンが計15体だ。
「ちなみにみんなは何レベルまで上げるつもりだ?」
一応確認のためにクルーガーは三人に視線を向ける。
「とりあえず16くらいには上げたいな……」
「私は12で」
「せめて10まで追い付きたいです……!」
今回三人のレベリングに関して、クルーガーには一つ考えがあった。冥王の兜に付与されているスキル【審判】により、【即死】状態の敵は一撃で倒せるのでそのまま三人に任せられる。対する【忍耐】は与ダメージが半減するのだが、裏を返せば一撃で相手が倒れる心配がないわけだ。だからまず、なるべく強そうかつ数の多いモンスターに狙いを定めることにしたわけである。
「じゃあ行くぞ………【審判】!」
スキルを発動すると同時に四人はそれぞれ段取り通りに動きだす。【審判】には使用回数がある上に、状態異常の効果時間は十秒とかなり短いので、一日でできるだけ無駄なく経験値を獲得しなければならないのだ。
『うおおおおおおお!!』
まず【即死】付与された5体の敵の内、手前のは近接装備のブレイズが、遠くのは一番AGIの高いフェザーが、中距離のはショウが魔法でそれぞれ倒していく。残りの【忍耐】付与された10体の敵は、クルーガーがHPをある程度削っていく。【剣豪】の効果で常にクリティカルが発生するので、なるべくダメージが入らないように一回だけ攻撃するように心がける。
【即死】付与されたモンスター達は数が少なかったのもあってか全て倒され、スキルの効果がなくなり残っていたのは【忍耐】付与でHPを削られたモンスター達だけである。
『スキル【峰打ち】を取得しました』
「ん?」
「どうしたクルーガー?」
ここで新しいスキル取得通知が来た。とはいえまだモンスター達はいるのでブレイズ達が急いで倒してから、クルーガーが確認のためにステータス画面を開いてみる。
【峰打ち】
一撃で倒せるモンスターをHP1で生き残らせる。スタン効果小。
取得条件
一撃で倒すことのできる相手を一回攻撃した際、相手の残りHPが10%以内であることを連続で10回繰り返す。スキル・アイテム使用可。
「お、いいタイミングで取得したな」
これはブレイズ達のレベリングにうってつけのスキルで、【審判】に回数制限があるクルーガーとしては正直助かる。
「見たところ回数制限もクールタイムもなさそうだし、今後はこっちでやっていかない?」
「そうだな」
ショウの言葉にクルーガーが頷き、またモンスターの群れを探しだす。今度はスキルを発動しての攻撃だ。
「【峰打ち】!」
本来であればその一撃で倒れていたであろうモンスターがHPが1で耐えた。そちらを背後にいるブレイズ達に譲り、クルーガーは視界に入るモンスター達のHPを次々と削っていくのだった。
そうして探索すること数十分後。
「予想よりレベルが上がったな」
倒したモンスターが強かったおかげか、ブレイズ達はかなり多くの経験値を得られた。ブレイズに至っては予定では16レベルまでいくはずだったのが、すでに19を越えたところだったくらいである。ここでまた経験値が入り、ブレイズのレベルが20に達した時だった。
『スキル【魔法戦士】を取得しました』
「……ん? なんかスキル取得した」
『え?』
ここでブレイズにスキル取得通知が届き、ステータスを開いて確認してみると……
【魔法戦士】
このスキルの所有者の【STR】【VIT】【AGI】【INT】を二倍にする。消費MP50%増。火・水・風・土・闇・光の中から一種類しか取得できなくなる。
取得条件
レベル20まで魔法を一つも取得せず、【INT】【STR】【VIT】【AGI】の数値を同じにする。
「ステータス二倍!?」
「なんだこのスキル!?」
それは【DEX】とHPとMP以外のステータスが常に二倍になるという、とんでもないスキルだった。ブレイズに見せられ横から覗きこんでいたフェザーとショウも信じられないと驚愕する。ただクルーガーは驚きはしたもののそこまでは動じていなかった。この【魔法戦士】の効果と取得条件は【物理特化】に少し似ている、恐らく対になるスキルだったのではないだろうか。
「あ~、でも【INT】が高くなる代わりにMPの消費が多くなるのか……」
説明文を読む限り、魔法を使うごとに通常より半分多くMPが消費されてしまうらしいうえに、魔法も一種類しか選べない。しかしブレイズはそれを見ても大して悩むことはなかった。
「【魔法戦士】か……なんかマジレンジャーみたいでかっこいいスキルじゃないか!」
どうやら物理攻撃と魔法攻撃を扱える点に、憧れのヒーローに近い部分を感じ取ったらしくブレイズは嬉しそうにしている。本人がいいならきっと大丈夫だろう。
「ん、そろそろ時間だな。俺はもうログアウトするよ」
「俺も初スキルを取得できたし、今日はもう切り上げるか」
「なら私も戻るか」
「じゃあ、また次に!」
時間がだいぶ経過したのもあり、ここで四人はゲームを切り上げてログアウトすることにしたのだった。
魔法戦士の取得条件に物凄く悩みました……(;´д`)