スーパー戦隊が大好きなので、デカマスターを目指そうと思います 作:ペペック
それから一週間後。
単独で念入りに周回し、時にはクルーガー達に手伝ってもらったりなどして、ブレイズはレベリングとスキル強化に励んだ。掲示板から役に立ちそうな新しいスキルもいくつか取得し、今一度ステータスを確認する。
ブレイズ
Lv25
HP 35/35
MP 700/700
【STR 32〈+15〉】
【VIT 32〈+10〉】
【AGI 32】
【DEX 0】
【INT 32】
装備
頭 【空欄】
身体 【空欄】
右手 【初心者の片手剣】
左手 【鉄の盾】
足 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品
【フォレストクインビーの指輪】
【空欄】
【空欄】
スキル
【火魔法Ⅱ】【HP強化小】【HP回復速度強化小】【MP強化小】【MPカット小】【MP回復速度強化小】【魔法戦士】【炎上耐性大】【剣の心得Ⅰ】【盾の心得Ⅰ】【魔法の心得Ⅰ】【跳躍Ⅰ】【貰い火】
ポーションはもちろんのこと、ダンジョンのギミックを考慮して初心者用装備で挑むが、万が一に備えてショップの装備もインベントリにいくつかしまってある。あとは日頃の成果を見せるのみだ。
「……じゃあ、行ってくる」
ダンジョンに入る前に、一度仲間達と向き合う。
「気をつけろ」
「頑張ってね!」
「焦りは禁物だぞ」
まるで今生の別れのごときやり取りをしつつクルーガー達に見送られ、ブレイズはついにダンジョンに足を踏み入れたのだった。
真っ赤な階段を下りながらブレイズは辺りを警戒する。【炎上耐性】のおかげか今のところ経過ダメージはなく、移動中は盾をインベントリにしまって耐久値の温存をするなど余裕を持つように心がけている。
すると早速、目の前に赤い鱗の蜥蜴が現れた。
「うおおおおおお!」
なるべくボス戦までポーションを温存しておきたいので、魔法は控えて物理攻撃のみで応戦していく。
クルーガー達が言うように道中は炎属性のモンスターのみがポップしており、炎の鳥・炎のライオン・炎の狼・炎のゴーレムとまさに炎モンスター尽くしである。
そうやって向かってくるモンスターを切っては倒し切っては倒しを繰り返し、どれくらい時間がたっただろうか。
『スキル【燃える炎】を取得しました』
「あ」
ここでスキル取得通知が鳴り、ステータスを開いて効果を確認してみる。
【燃える炎】
物理ダメージを与えた際、MPが1%回復する。
取得情報
一日の内に炎系モンスターを計五種類、物理攻撃のみで一定数ずつ倒す。
内容から推測するに剣で攻撃すればするだけMPが回復するらしく、MPの燃費が悪いブレイズとしてはこれはありがたいスキルだった。
「よし……」
便利なスキルを取得したことでブレイズの胸中にも余裕が生まれてきたようで、落ち着いて奥へと進むのだった。
それからまた歩き続けていくと、とうとう最奥と思われる大きな赤い鉱石の扉が目の前に現れた。一度立ち止まりクルーガー達からの情報を頼りにブレイズはイメージトレーニングをする。
「落ち着け……大丈夫だ……絶対勝つ…!」
最後に深呼吸し、扉に手をかけてゆっくりと開いていく。内部は思いの外広く、壁や地面のところどころを灼熱のマグマが流れる実に『らしい』フィールドだ。恐る恐る警戒しつつ足を踏み入れれば、ブレイズの背後でバタンと扉が閉じられた。
そしてズシンと身体が揺れるほどの地響きを鳴らし、目の前に巨大な影が現れる。炎そのものを纏ったような、深紅の毛並みをした巨大な二首の狼。
これこそがこのダンジョンのボスモンスター、『
『グオオオオオオオ!!』
二つの口から響く咆哮が洞窟内部を震わせ、炎狼の頭上にHPバーが表示される。それを見たブレイズはすぐさま盾を装備して構えた。
「来い!」
まず炎狼が口から炎弾を繰り出す体勢を取ったのを見て、ブレイズはすかさず回避に動く。極力スタミナ配分に注意しつつ走ると、まず炎狼の背後に回り魔法を放った。
「【ファイヤーボール】!」
後ろ足からダメージエフェクトが散り叫ぶ炎狼は、すぐさま振り向いて左首の顎を大きく開けて炎弾を吐き出してきた。回避しようとするが少しだけかすったらしく、ブレイズの胴から小さなダメージが入る。
「っ!!」
どうにか攻撃と回避が両立できそうな適切な距離を保とうと試みるブレイズだが、巨体を駆使したダッシュで迫る炎狼が大口を開けて襲いかかってくる。赤く光る鋭い牙から間一髪で逃げれば、そのまま地面を噛み砕いてしまう。
「このっ……【ファイヤーボール】!」
再び魔法を浴びせれば今度は胴にダメージを与え、【貰い火】の効果で受けたダメージが回復する。頭上のHPはほんの少ししか減っておらず、このまま戦っても長期戦は確実だろうとブレイズは察する。それでもHPポーション節約のため、微々たる量ながら魔法で攻撃していく。クルーガーからもらった【フォレストクインビーの指輪】があるとはいえ、念には念をと被ダメージを最小限に抑えるよう心がける。
できるだけ回避に努め、避けきれなさそうな場合は盾で凌ぎ、武器の耐久値が下がればインベントリから予備を取り出し……
そうやって少しずつ、だが確実に炎狼にダメージを与えていくこと数十分。そのかいあってか炎狼のHPがようやく残り半分を切ったのだった。
あと少しだと、僅かながら希望が見えてきたブレイズが地面に着地する。
「熱っ!?」
すると足元からダメージが入り、ブレイズは飛び上がった。このボス部屋はマグマに触れるとダメージ判定が入るのだが、ブレイズは長時間戦ってどのあたりにマグマが流れてどのあたりが安全な地面なのかをすでに学習している。今踏んだ場所は大丈夫なはずなのにどうしたことかと周囲を見てみれば、最初に比べて流れるマグマの量が増えており、安全な地面が狭まってきている。さらには【炎上耐性大】で無効化されていたはずの継続ダメージも出ていた。
「長期戦になるとフィールドが変わるのか!?」
クルーガー達が挑んだ時には出なかったギミック、これではブレイズの行動範囲が限られてしまう。やむなく残り一割を切ったタイミングでHPポーションを使い、攻撃を続行する。先ほどより蓄積するダメージが多くなってしまい【貰い火】だけでは回復が追い付かず、HPはとんどん減ってしまう。
『スキル【炎上耐性大】が【炎上無効】に進化しました』
それでも怯まず戦っていると新しく取得通知が鳴り、経過ダメージがなくなった。ここに来ての無効化スキルはブレイズとしてはありがたく、この勢いに乗って引き続き攻撃を繰り返す。
そして炎狼のHPが残り三割を切ったところだった。
『グオオオオオオオ!!』
炎狼が再び咆哮すると、広がるマグマから道中に現れたのと同種のポップモンスターが大量に出てきたのだ。
「うあっ……!?」
ただでさえ長期戦でスタミナもポーションもキツイのに、余計な手下が増えてしまった。これはマズイと一瞬だけ焦るが……
「いや違う………チャンスだ!」
すぐさま剣を構え直し、ブレイズはモンスター達を斬っていく。炎狼には物理攻撃が効かないがその他のモンスター達には物理攻撃が効く、つまり【燃える炎】の効果でMPを回復させることができるわけだ。
「【ファイヤーボール】!」
マグマの合間を飛び回りながら必死に炎弾を避け、モンスター達を余さず剣で斬り、MPがある程度回復したところで【ファイヤーボール】を放つ。かなり厳しい戦いではあるが、それでもブレイズはギリギリの綱渡りに挑む。
そしてとうとう炎狼のHPが残り一割になった。
『グオオ………』
ここどまた炎狼の攻撃パターンが変わった。
攻撃の貯めが少しだけ長くなったかと思えば、今度は足元に向けて口から炎を吐き出し始めた。先ほどまでと違ったのは炎を吐く時間が長いのと、ポップモンスターを巻き込んで広範囲の地面を燃やすところである。
「うわ!?」
まさに地獄絵図という言葉が似合う炎の大地は、ほんの少し肌に触れるだけでマグマより多いダメージを受けてしまう。
「くそっ……!」
ここまでの戦いでブレイズはポーションを使いきってしまい、MP回復に必要なモンスターは全滅。手持ちの装備も初心者用の剣が一本のみと、背水の陣となってしまった。救いがあるとすれば残りMPはあと一発分残っているのと、炎狼の残りHPがあと一発で倒せるほどだというところだろうか。
おそらくこれが最後のチャンス。
ならばあとはもう腹を括るしかない。
「【跳躍】!」
一か八かと炎を飛び越えるべくブレイズは助走をつける。その際にマグマを思い切り踏んでしまったためにダメージが入るが構うものか。
「うおおおお!!」
『グオオオオオオオ!!』
ギリギリ飛距離が間に合い接近すれば、炎狼も大口を開けて喰らいつかんと迫ってきた。
「【ファイヤーボール】!!」
その口に向けて最後の一撃を放てば、クリティカル判定が出て大ダメージが入った。
『ガアアアアアアアアアア!!』
ついに断末魔の雄叫びを上げ、炎狼がポリゴンとなって消えていった。
(終わった………、ああ……でも……)
長期戦に伴う脱力感で動けないブレイズにはもはや受け身を取れるだけの力もなく、燃え盛る炎に向けて落下していく。
(あと少し……だったんだが……)
『スキル【燃える炎】が【猛る烈火】に進化しました。これにより【炎上無効】が【