スーパー戦隊が大好きなので、デカマスターを目指そうと思います 作:ペペック
クルーガーはまず広場からも見えた森に向かうことにした。AGIが20あるためか到着にそれほど時間はかからず、そのまま森の奥へと進んでいく。
「ここが一番近そうだから入ってみたが、さすがに序盤向けの弱いモンスターしかいないよな?」
いまだLv1のクルーガーとしては強いモンスターとの遭遇は避けたいところだが、まだ発売して間もないせいか事前情報にはどんなモンスターが出て、どのくらい強いのか全くわからなかったのだ。そんな彼の言葉に反応したのかどうかわからないが、草むらからガサリと物音がした瞬間に何かが飛び出してきた。
「きゅう!」
「うお!?」
慌てて後ろに下がって見れば、クルーガーの目の前に現れたのは四足歩行で忙しなくグルグルと回転するリンゴのようなモンスターだった。
「……え、リンゴウサギ?」
「きゅきゅきゅきゅきゅきゅ!」
予想していたのとだいぶ違うファンシーなモンスターに唖然となってしまうが、ウサギは隙を見逃さないと言わんばかりにクルーガーに突進してきた。
「うわ!」
AGI20のおかげで難なく躱せたものの、なおもウサギは素早い動きで体当たりを繰り出してくる。
「このっ……かわいくても手加減は無用だ!」
クルーガーは必死に攻撃を躱しながら腰に刺した片手剣を抜き、ウサギに向けて剣を振りかざす。
「きゅう!!」
真正面から突進するだけのウサギにはそれを躱すことは出来ず、STR20から繰り出される一撃を受けて地面に叩きつけられると紫色のポリゴンとなって消えた。
『レベルが2に上がりました』
「まず一匹か、弱いモンスターで助かったな」
やはりLv1だとレベルアップが早いようで、確認のためにステータスを開いてみればステータスに振れるポイントが5増えていた。
「おお、これはちょうどいい数値じゃないか?」
現在のクルーガーのステータスはINTとMP以外の五つに均等に振ってある。つまりはそれぞれ1ポイントずつ振れるということになるのだ。
「1ポイントだが、塵も積もれば山となるって言うしな。あのリンゴウサギ一匹倒すだけでレベルが上がるなら、しばらくはあいつだけを倒していくか?」
クルーガーはポイントを振ってからウサギが出てきた草むらに入り、ほかにも同じ個体がいないか探してみる。
「きゅう!」
「きゅきゅう!」
すると今度は二体同時に草むらの奥から飛び出してきた。
「来たな!」
再び剣を構えたクルーガーは二体同時に迫ってくるウサギに剣を振りかざす。STRとAGIが1ポイント上がったおかげか、二体相手にも難なく勝利する。
『レベルが3に上がりました』
「よしポイントを………あれ?」
レベルが上がったため再びポイントを振ろうとしたが、今度はポイントが上がっていなかった。
「え、ちゃんと上がったよな? なんでだ?」
『NWO』では二の倍数の時にしかポイントが配布されないのだが、ゲーム初心者のクルーガーがそんなことを知るわけがなかった。そうこうしている内に草むらの奥から再び二体のウサギが飛び出してくる。
「「きゅきゅきゅう!!」」
「うわまたか!」
とは言え一度倒したモンスターなので、再び一太刀で倒す。
『レベルが4に上がりました』
再びステータスを開いて見れば、今度はちゃんと5ポイント増えている。
「………まさかこれ、偶数レベルじゃないと増えないのか?」
ここでようやくステータスポイントの仕様に気づいたクルーガーは、頭を掻いて項垂れてしまう。つまりステータス1ポイント分を上げるには、最低でも2レベル上げていかないわけだ。
「ん~、まあいいか。地道に弱いモンスターを倒していけば、レベルも上がるだろ」
しかしすぐ気持ちを切り替えて、再びウサギ探しを続けることにした。
そうして飛び出してくるウサギを切り伏せては奥へ切り伏せては奥へと繰り返し、ウサギの発生源を探すように森の奥へ進むこと数時間。倒したウサギの数がすでに四十体を越えようとした頃だった。
「………これは」
森を抜けて開けた場所に出てきたかと思えば、クルーガーは目の前の光景に目を見開いた。
「きゅきゅう!」
「きゅう!」
「きゅっきゅう!」
『きゅきゅっきゅう!』
そこにいたのは、何十頭ものウサギの群れであった。彼らは互いにおいかけっこをしたりすやすやと昼寝したりと可愛くじゃれあっており、とても愛らしい光景である。
(なるほど、リンゴウサギ達はここから出てきていたわけか)
もう少し様子を見てみようと息を潜めて隠れるクルーガーだったが、少し後ずさりした瞬間に落ちていた枝を踏んでしまった。
パキッ
「あ」
音は僅かなものであったが、ウサギ達の耳はそれを聞き逃さなかったらしい。それまでじゃれていたウサギ達は一斉に音の発生源であるクルーガーを発見すると、つぶらな目をわずかにつり上げて駆け出してきた。
『きゅううううううう!!』
「うわっとぉ!!」
慌ててその場をジャンプしたクルーガーは近くの木の枝に飛び乗り、ウサギの群れの連続体当たりを回避する。ウサギ達はジャンプ力はそこまでないらしく、クルーガーが乗る木の幹に何度も体当たりするだけで攻撃は当たらない。
そして何時間もウサギを倒してきたクルーガーは、彼らの行動パターンはすでに学習していた。少なくとも木の上にいる限りはダメージを受けることはないはず。
「仕方ない、ここは正当防衛として対処させてもらうぞ!」
クルーガーは木の枝からウサギ達の後方へと飛び降りると、一番後ろで前のウサギを小突く数体を剣で攻撃する。
『きゅう!』
クルーガーはここに来るまでにレベルが上がってSTRが増えた上に、DEXの効果でクリティカル率が上がったため一撃でウサギを倒せるほどになっていた。クルーガーが降りてきたのを見てウサギは今度こそ飛びかかろうとするも、彼は再びジャンプして別の木の枝に飛び移る。
『きゅー!』
「これは根比べになりそうだな……」
視界にいるだけでも五十体近くはありそうなウサギの群れは、全部倒すにはだいぶ時間がかかることは明白だった。しかしクルーガーには逃げるという選択肢は無かった。
「ステータスを上げるにはまだまだ経験値が足りないんだ。このチャンスを逃す手はない!」
こうしてクルーガーは一度降りては数体倒して木の上に避難し、また降りては倒すというやり方でウサギ達を徐々にだが確実に減らしていく。
『スキル【跳躍Ⅰ】を取得しました』
「ん?跳躍?」
電子音とともにアナウンスが響き、クルーガーは木の上でスキルの確認をしてみる。
【跳躍Ⅰ】
このスキルの所有者の跳躍力が上がる。
取得条件
一定回数ジャンプする。
「へ~、つまりジャンプ力が上がるスキルか」
試しにウサギの後方に向けてジャンプをしてみれば、最初よりも長い距離を飛べた。
『きゅきゅきゅう!!』
「さすがに逃げ続けるもの示しが悪いしな。ここからは真っ向勝負で行くぞ!」
それからのクルーガーは、広場を縦横無尽に駆け回りながらウサギ達を次々に倒していく。あれだけいたウサギ達の数は半分からさらに半分と減っていき、ついには残り一体にまで迫った。
『きゅううう!!』
「これで………終いだあ!!」
剣を大きく振り、最後の一体を倒せば辺りに静寂が訪れる。あれだけいたウサギの群れが嘘のようにいなくなったのを確認し、クルーガーは広場の真ん中で大の字になって倒れた。
「あ~、疲れた………弱いとはいえこう数が多いと骨が折れるというか……」
もう起き上がる気力もなく、そのまま眠りそうになるクルーガーだったが、
『レベルが10に上がりました』
『スキル【物理特化】を取得しました』
「……?」
ここでレベルアップと新しいスキル取得の通知が来たらしく、疲労で億劫になりながらもスキルの確認をしてみる。
【物理特化】
このスキルの所有者の【STR】【VIT】【AGI】【DEX】を二倍にする。【INT】にステータスポイントを振れなくなる。
取得条件
【STR】【VIT】【AGI】【DEX】の数値を同じにし、なおかつ【INT】にポイントを振らない状態で、同じ種類のモンスターを一日の内に百体倒す。
「………え、なんだこれ?」
取得したスキルの内容を一読すると、クルーガーの眠気が一気に吹き飛んだ。
「つまり………INT以外のステータス数値が常に二倍になるってことか? ああでも、その分INTを上げられないのか」
試しにレベル10になったことで増えたポイントをINTに入れてみるも、「ポイントを振れません」というメッセージ画面が浮かんで失敗する。
「ん~、どのみちMPにもINTにも上げるつもりはないし、このまま五つにだけ振っていくか」
クルーガーはHPとSTRとVITとAGIとDEXに、それぞれ均等にポイントを振っていく。
「あれ、まだLv10なのに5ポイント多い?」
10の倍数のレベル時のみ二倍のポイントを貰えるのがこのゲームの仕様なのだが、この時のクルーガーは知るよしもない。それに疲労のためにあまり深く考えられなかったのもあって、無心でステータスを振り終わる。
クルーガー
Lv10
HP 555/555
MP 20/20
【STR 26〈+15〉】
【VIT 26】
【AGI 26】
【DEX 26】
【INT ×】
装備
頭 【空欄】
身体 【空欄】
右手 【初心者の片手剣】
左手 【空欄】
足 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品
【空欄】
【空欄】
【空欄】
スキル
【跳躍Ⅰ】【物理特化】
「は~しかし、初日にしては随分長時間やりこんでしまったな」
時計を見れば午後六時を回っており、ゲームを始めたのがお昼頃だったのを考えると六時間もぶっ通しで遊んでいたことになる。
「でも………結構面白かったな」
向かってくる敵をばったばったと切り伏せたことを思い出し、ふとクルーガーはあることに気づいた。
「そういえば、六時間で百体倒したんだよな? これはまるでボスの『百人斬り』みたいだな!」
彼が憧れるデカマスターの強さを象徴する偉業、100体の戦闘員を一撃の元に倒す姿を思い出して思わず口角が上がってしまう。
「よし………こうなったらとことん物理を極めてやる。目指せリアル『百人斬り』! 」
仰向けのまま右手を天に掲げて意気込んでから、クルーガーは今日のプレイを終了するべくログアウトするのだった。
ステータス上は26ですが、二倍になったということは四つとも52です。STRは82
※HPを修正しました。