スーパー戦隊が大好きなので、デカマスターを目指そうと思います 作:ペペック
探索を続けること一時間。道中はシルクスパイダーしか現れないため二人は順調に洞窟を進んでいった。
「だいぶ奥まで来たみたいだな」
「ああ」
ここで行き止まりと思われる岩壁につき当たり、クルーガーは周囲を見渡す。通路はここまで一本道で左右にはほかに通れそうな横穴はない。なので本来ならばこのまま帰るべきなのだろうが、ふとチラリと上に視線を向けてみて気づいた。
「………ん?」
目の前の壁の上の方に、ぼんやりと光る穴があったのだ。
「どうした?」
「あの上、何かあるんじゃないか?」
ニードルもクルーガーが指差す先にある穴に気付いて眼を見開く。
「掲示板にはあんな穴があるなんて情報、無かったはずだが……」
ニードルが怪訝そうに腕を組むが、それは無理もないことだった。この洞窟に続く道中には『状態異常攻撃を仕掛けてくるモンスター』が泥中から現れるうえに、到達できても『レアリティの低い素材しかドロップしないモンスター』しか出てこない。道中が厄介な割りに大した素材を入手出来ないため、資金集めとしても狩り場としてもあまり美味しくないのだ。それゆえこの洞窟をよく調べてみようと思うプレイヤーが今までいなかったため、誰も奥まで行こうとはしなかった。
しかし今回、本来欲しがろうとは思わない『シルクスパイダーの白糸』を大量に入手するためにやってきたニードルとクルーガーが、このゲームで初めて洞窟の奥まで到達したことで発見できたのだ。恐らく現時点でこのことを知るのは二人のみだろう。
「せっかくだし、あそこも調べてみるか?」
「個人的には行ってみたいが……俺のSTRじゃ、あそこまで高く跳べないからなあ」
生産職向けのステータス数値であるニードルは【跳躍】スキルも取得出来ていない。穴の高さから見てもとてもではないが届かないだろう。
「そうか………よし、だったらこうしよう」
「え……? は!?」
するとクルーガーは突然、ニードルの背中とひざ裏に腕を回して彼を抱き上げてきた。所謂『お姫様抱っこ』状態である。
「ちょ、何を!?」
「【跳躍】!」
混乱するニードルをよそにクルーガーはスキルを発動させてその場をジャンプする。スキルの効果でSTRが90を超えている彼にとって、成人男性を抱えてのジャンプなどどうということはなかったのだ。
一回のジャンプで穴に到達出来たクルーガーは、ニードルを下ろして穴の内部を見渡す。
「これは……!」
そこに広がっていたのは、岩肌から突きだして光を放つ無数の美しい水晶だった。
「初めて見る水晶だな。採掘出来るやつか?」
ニードルも生産職としての好奇心からか、インベントリから採掘用のピッケルを取り出して一つの水晶を砕いてみる。
クリアミスリル【レア】
透明な装備の素材になる金属。
【要DEX】
「レア素材だ! やったぞクルーガー、当たりだ!!」
「本当か! よかったなニードル!」
白糸を採取しに来ただけのつもりが、思いがけないレア素材を発見したことに二人はハイタッチして喜びあう。説明文を読む限り採掘するにはDEXが一定値無ければならないようだが、幸い二人ともDEXにポイントを振ってあるため容易に採掘できる。
その後二人は黙々と採掘をし始め、クリアミスリルを取れるだけ取っていく。途中【採掘Ⅰ】を取得してからはドロップ率が格段に上がり、たくさんのクリアミスリルを入手していくのだった。
「ふ~……これだけあれば【鍛冶】スキルの取得も出来そうだな」
ドロップしたクリアミスリルの内、ニードルは半分を護衛代としてクルーガーに渡して残りをインベントリに仕舞う。
「本当にいいのか? こんなに貴重な素材を換金に使っても」
「いいも何もクルーガーのおかげで入手できたわけだから、クルーガーの好きに使えばいいさ。ただもしかしたら、また素材を入手するためにここに来るかもしれないから、その時はよろしく頼むよ」
「わかった」
せっかくだからとお互いにフレンド登録をし合い、クルーガーは上機嫌になる。ゲームを初めてからまだ三日しか経っていないにも関わらず、スーパー戦隊を愛するプレイヤーとフレンドになれるとは思ってもみなかった。この出会いのきっかけをくれた理沙に内心で感謝しつつ、クルーガーはログアウトするためにウィンドウを開いた。
しかし
『この場所からはログアウト出来ません』
「………あれ?」
ウィンドウに表示された通知に首を傾げた。もう一度ログアウトしようとするも、やはり同じ通知が出るだけでログアウトできない。戸惑いつつニードルを見れば、どうやら彼も同じ状態らしく困ったようにクルーガーと視線を合わせる。
「ニードル、これは一体どういうことだ?」
「そういえばダンジョンの一部の部屋には、ログアウトできない場所があるって掲示板に書いてあったような……」
つまりこの採掘場所はレア素材を入手出来る代わりにログアウトできないらしい。ログアウトするためには場所を移動するなどしてやり直さなければならないのだという。
「面倒くさい仕様だな……まあいい、取り敢えずまた俺が抱き抱えて下に降ろそう」
「すまないな」
苦笑するニードルと帰路につこうとした瞬間だった。
『キュアアアアアアアアアアア!!』
自分達が入ってきた穴から、耳をつんざくほどのけたたましい鳴き声が響き渡ってきた。