スーパー戦隊が大好きなので、デカマスターを目指そうと思います   作:ペペック

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特撮ファンと強敵

「!?」

 

「なんだ今のは!?」

 

驚く二人が慌てて穴から下を覗いてみると、そこには信じられない光景が広がっていた。

 

 

「シュルルル!!」

 

「グゲゲ! グゲゲ!」

 

「ゲゴゲゴ!」

 

 

大量のシルクスパイダーと、先ほど探索した時には影も形も見当たらなかったカラフルフロッグの群れ。

そしてその中央には、

 

 

『キュアアアアアアア!!』

 

 

馬ほどはあろうかという白い大蜘蛛の胴体に、長い白髪の女の上半身が生えたモンスターがいたのだ。

 

 

「なんだあれは………!?」

 

「嘘だろ………掲示板にはあんなモンスターが出るなんて情報無かったぞ!?」

 

初めて見るモンスターに驚くのはクルーガーだけではなく、事前に洞窟内に出現するモンスターを調べていたニードルも信じられないと目を見開く。

しかし二人がそれを知らなかったのは無理もないことだった。彼らが今いる『シルクスパイダーの洞窟』は、普通に探索するだけならばシルクスパイダーのみ出現するように設定されている。だが洞窟の最奥にある『クリアミスリルの鉱脈』を発見し、クリアミスリルを一定数ドロップするとこの洞窟の隠しモンスターである『アラクネ』が出現するようになっていたのだ。しかもこのアラクネは強さそのものはフォレスト・クインビーよりちょっと強い程度なのだが、AGIを下げるシルクスパイダーと状態異常をしかけてくるカラフルフロッグを大量に従えて出現するので、序盤のプレイヤーからすれば鬼畜としか言いようがない厄介なモンスターである。

 

『キュアアアアアアア!!』

 

最初の時と同じけたたましい鳴き声を上げ、アラクネは穴から顔を出す二人に向けて右手をつき出す。すると指先から銀色の細い糸が伸び、彼らに迫ってくる。

 

「危ない!」

 

クルーガーはとっさにニードルの背中を掴んで地面に押し付け、自身は間一髪で糸を躱した。

 

 

ザンッ!!

 

 

伸びた糸は穴の縁を掠め、まるでケーキを切る包丁のように岩肌を切り裂いた。

 

「っ………!」

 

その切れ味を見てゾッとするニードル、しかし彼らの攻撃はそれだけでは終わらない。

 

 

「シュルルル!」

 

「ゲッゲゲ!」

 

 

アラクネの攻撃に畳み掛けるようにほかのモンスター達も攻撃をしかけてきたのだ。AGIを下げるだけの糸と当たれば状態異常になる粘液弾。それぞれのみを相手にするならば大したことはない攻撃だが、これだけの数から繰り出される上にアラクネの斬糸攻撃が加われば最悪のフォーメーションとなる。

 

「そんな………どうやってこんな地獄絵図を脱出しろっていうんだよ!?」

 

掲示板の情報のみを頼りにしてろくに準備を整えて置かなかった自身を悔やむニードルをよそに、クルーガーは至って冷静にモンスター達の行動を観察する。先ほどのアラクネの攻撃が穴の内部に届かなかったうえに、ほかのモンスターの攻撃も穴の縁にしか当たっていない。つまりこの穴の内部にいる限り、彼らの攻撃を受けることはなさそうだ。だがこの穴の中からはログアウトできない。脱出するには目の前のモンスターの群れをなぎ払って洞窟から脱出するしかなさそうだが、この数ではそれも難しい。

 

「………」

 

しばし考えこんだのち、クルーガーはニードルに振り返る。

 

「ニードル、少し確かめたいことがある」

 

「え?」

 

そう言うとクルーガーは剣を抜き、穴の下の岩に思い切り突き刺した。そして彼は剣の柄を握ったまま穴から滑るように外に出たのだ。

 

「っ!? 何を!」

 

ニードルが慌てて駆け寄ろうとするも、再びアラクネの斬糸が穴の周りを切り裂いてくる。

 

「ぐあああ!!」

 

「クルーガー!」

 

安全地帯にいたままのニードルはノーダメージだったが、刺さった剣に掴まる形で外に出てしまったクルーガーはそのまま斬糸に身を切られてしまい、赤いダメージエフェクトが出る。しかも続けざまにカラフルフロッグとシルクスパイダーの攻撃が加わり、クルーガーの身体に白い糸が絡まっていくつかの状態異常が付与されてしまう。

 

「っ……手を!」

 

ダメージから来る痛みを堪えつつ片手のみで剣にぶら下がるクルーガーは、ニードルに向けて左手を伸ばす。ニードルは慌てて彼の手を握り返し、穴の中へと引っ張りあげる。

 

「はあ……はあ……」

 

インベントリから出した短剣でクルーガーの身を縛る糸を切り裂けば、AGIデバフが無くなり状態異常だけが残る。

 

「っ………俺は今、どんな状態だ?」

 

「毒に炎上に麻痺に氷結の重ねがけだ! この上睡眠にまでなっていたら間違いなく死んでいたぞ!?」

 

「どうりで……っ……身体が重いし、ジリジリ痛むわけだ……!」

 

継続ダメージの毒と炎上、一定時間動けなくなる麻痺と氷結。事前にショップで購入した耐性スキルのおかげである程度効果を抑えることはできていたが、一度に四つ同時に状態異常になるのはさすがに苦痛である。

ニードルが急いで状態異常回復ポーションを出して瓶を砕けば、クルーガーを蝕んでいた苦痛が全て消えていく。

 

「はあ……」

 

身体が楽になったのを感じて壁に寄りかかるクルーガーに、ニードルは罪悪感に顔を歪めて頭を下げてきた。

 

「………すまないクルーガー。俺の調べが甘かったせいで、面倒なことに巻き込んでしまった」

 

「気にするな。まだゲーム序盤なら、一般に知られていないこともたくさんあるだろうしな」

 

『NWO』発売からまだ三日目。自身を含めたプレイヤー達はこのゲームの世界の隠された要素をいまだ掴めていない者が大多数なのだから、今回のニードルのように予期しない事態に直面してもなんらおかしいことはない。

 

「それはそうとニードル。今外から出たことで、一つわかったことがある」

 

「?」

 

「穴から出れば、ログアウトはできるみたいだ」

 

ニードルはクルーガーの言葉に一瞬理解が及ばなかったが、やや間を開けてからハッとする。つまり彼がいきなり壁にぶら下がるように安全地帯から出たのは、この場所以外でログアウトが可能かどうかを確認するためだったのだ。

 

「だからまず、俺が先に出てモンスター達の気を反らす。お前は穴から出た瞬間にログアウトして脱出しろ」

 

「なっ……そんな無茶だ! あんな数を一人で相手するなんて!」

 

首を振って拒絶するニードルの肩をクルーガーがポンと叩く。

 

「心配するな、俺も隙を見てすぐログアウトする」

 

だから大丈夫だと笑みを見せるクルーガーにニードルは悲痛そうに顔を歪ませるが、生産職の自分では彼のお荷物になることは明白だった。しばし俯いてからグッと両手を握りしめ、ニードルはバッと顔を上げる。

 

「………わかった、だったら俺の手持ちのポーションを全部お前にやる」

 

「ああ、ありがとう」

 

お互いに覚悟を決め、ニードルはインベントリから回復ポーションとMPポーションを計十本ずつ全て取り出しクルーガーに譲る。これに自動回復効果を持つ【フォレストクインビーの指輪】三つと、MPを消費してHP1で耐える【頑強】があればなんとか凌げるだろう。

 

「じゃあ行くぞ」

 

再び穴のそばに立ち、眼下のモンスター達を見下ろせば、いまだ二人に向けて攻撃を続けている姿が見える。ニードルはいつでもログアウトできるようにウィンドウを開きながら、クルーガーの合図を待つ。

 

「今だ!!」

 

バッと飛び降りたクルーガーに続くようにニードルもジャンプすれば、ログアウト不可のメッセージからログアウトするかいなかのメッセージに切り替わる。すぐさまログアウトするを選択し、身体が消える寸前にニードルはこう叫んだ。

 

「必ず戻ってこいよ!」

 

「もちろんだ!」

 

クルーガーのその言葉がニードルに届いたかどうかはわからない。着地した彼の眼前に迫り来るモンスターに向けて、剣を向けて叫ぶ。

 

「来い!!」




急募:もしクルーガーさんがギルドを立ち上げる場合、どんな名前がいいかアイデアを下さいませ。


○○戦隊or○○レンジャー
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