少女も走り出した。『挑戦』を待つ為に。
「イロベ、『みずでっぽう』!」
「フーディン、『サイケこうせん』!」
リラと俺は、昔から仲が良かった。住んでいた環境からして、嫌でも顔を合わせる機会が多かったからというのもある。
ミナモの方に大きなショッピングモールが出来てそれを利用するために住人が移り住んだ。
元より最新版のタウンマップには名前も載ってないような、体裁として残っているような寂れた街。その過疎化が更に進んで、身近な同い年の子供なんて自分たちしかいなかった。
加えて、我が家は両親揃って街の外に単身赴任で仕事に出てしまっている。気がついたらリラと一緒に過ごすのが当たり前だったんだ。
互いに、好みや感性などもだいぶ違うことは知っていた。
バトルの戦い方、戦略の組み方。
聞く音楽の、読む本のジャンル。インドア派かアウトドア派か。料理を作るときは大雑把か正確にか。
とにかくほとほと呆れるくらい噛み合わない。
強いて言えばそこそこお互いポジティブだという事。それから、ポケモンに対する思いなんかは確実に共通点として挙げられる。
そんな噛み合わないようで噛み合っているような、よくわからない関係の中でも、俺たちは仲が良かったと思う。
お互いポケモンバトルが好きだから誰に言われずとも戦略を練り、トレーニングを重ねて。
気がついたらバトルの腕前はそこそこ以上で、周りの大人たちを圧倒してしまった。まあ、そもそもの話からしてそこまで住人もいないのでそこまでポケモンバトルというものに入れ込んでない大人たちが多かっただけの話だろう。
たまに下らない話をしたり、見知ったおじさんが経営するファストフード店で手作りハンバーガーを食べながら気軽にあけすけに物を言い合える気遣いのいらない、親友と呼べるような関係を築けていた。
だから、これからもこんな穏やかなで、けど偶に波立つ楽しい時間がずっと続くもんなのだと勘違いしてしまったんだ。
◆
その日は何時も通り、リラとバトルをするつもりだった。あいつの、特にフーディンを如何に突破するか策を巡らせていた。
タイプ相性もポケモンバトルにおいて重要なファクターではあるものの、それだけでは決まらない。
中には『効果がない? ならダメージが出るほど出力上げれば良いじゃない!』と力こそパワー、マッスルこと最強のバルクとかそんなノリで色々おかしい選択肢を取ってくる輩も居るくらいだ。
わかりやすい例としては現カントーリーグチャンピオンのワタルさんとか。
フェアリータイプに効くドラゴンタイプの技って何ぞやって思わさせられた。あの人のカイリューの『りゅうせいぐん』で対戦相手のフラージェスを一撃で倒したのをライブ中継で見た時は度肝を抜かれたものである。どれだけ練り上げられてるんだろうか、あのカイリュー。
本当に、本当に幸いなことにリラはその口ではない。状況判断や相手のポケモンの行動を読んで、詰められるところは徹底的に詰めて立ち回る将棋のような戦い方だ。
あのスタイル相手だと、よほどの搦手か前記したそんなのを一切合切無視するゴリ押しで戦うのがベストだと思う。
一応、そのゴリ押しを可能とするポケモンも今の手持ちにはいるから、イロベ──ゲコガシラを主軸に戦えればいいかと考えていた。
◆
今日は来るのがやけに遅い。
おかしいと思い始めたのは、待ち合わせ場所に30分経っても、リラが来る様子を毛程も見せなかったあたりからだった。
あいつの事だからバトルの戦略練りすぎて知恵熱でも出してそうだ。前科も2回くらいあるし。バトルバカめ。
もしくは少し前に出会った、どこぞのお偉いさんからの勧誘をまた食らってるんだろうか。
益もない事を考えて、リラの家に向かった。
歩いて10分もしないうちに辿り着いたのはリラの家のすぐ近所。時折チリーンやリーシャンが現れるパッとしない噴水が目印の、大通りというにはあまりに寂しい場所。
ただ、やけに人混みが激しい。こんな寂れた街で、である。
何ならほぼ全員見知った顔だ。
なんだなんだと野次馬根性を発揮して大人たちの隙間を縫って前に出て、一瞬、頭が真っ白になった。
リラが首を押さえつけられて、ナイフの先がその顔に向いていた。
あいつは、気丈にもその原因たる男を睨み付けるもの、目の端には涙が浮かび脚はわずかに震えている。
「おおお、お前らどけ!! このガキがどうなってもいいのか!!」
サングラスにマスク、ニット帽をかぶったいかにも不審者という装いの男はグラエナとドードリオを引き連れている。
ナイフを持つ腕には、小ぶりなバッグをぶら下げ、チャックの隙間からはみ出しているキラキラと光る時計やネックレスが見え隠れしている。
ああ、そういえばこの辺りには親父の知り合いが店主を務めているらしい宝石や貴重品を扱っている店があったな。
そんなことを何処か他人事のように考える。奇妙なくらいに冷静に観察できたのはここまでだった。
頭の中の血が沸き立つ音が聞こえた気がした。怒りに任せてボールを投げて、不審者の元へ走る。
悪いけど、そいつに怪我されるの、嫌なんだ。
「イロベ、頼む!」
「ガガッ!」
青い影がボールから飛び出した直後、ぬめり気のある水が強く打ち付けるような音。イロベが投擲した泡を纏った小石が男、グラエナとドードリオの目元に直撃した。
音と同時に不審者とそのポケモンたちがいきなり事によろけ、目に泡が入って怯んでいる間に、とにかくリラを取り戻さなくてはとの一心で駆ける。
リラも驚き一連の出来事で腰を抜かしてしまったのか座り込んでしまっている。
「ぐわっ!?」
「逃げるぞ! イロベ、『えんまく』、そのままあのポケモンたちへの牽制頼む!」
「ガッ」
「あ……シド」
腕を引っ張り上げ、無理やり立たせようとして僅かにたたらを踏む。背丈は大して変わらないから、単純に俺自身の力が不足しているんだろう。
もしもの話。この時、不審者の男を先に無力化させる方向で考えて動いていれば、また違う結果になったのだろう。
或いは別のポケモンたちも出していれば。
だけども。もうこれは終わった話。
過ぎてしまった過去の話。
だから、もう仕方がない事だ。
「ッの、クソガキィッ!!!」
「あやっべ」
「えっ?」
引っ張り上げてどうにか立ち上がらせたリラの背後から煙を押し裂いて現れたのは、片目を瞑って殺気を隠そうともせずにナイフを振り下ろそうとしている男の姿。
俺は、咄嗟に立たせようとしていたリラを自分の方に引っ張り、場所を入れ替えた。
俺の背後で倒れそうになるリラ。
リラ目掛けてナイフを振り下ろそうとする男。
リラを庇う為に無理矢理場所を入れ替えた俺。
「っ、ぁ──ヅゥ!」
「シドォ!!」
その凶刃は、確かに届いた。
焼けるような激痛と、垂れ流しに溢れ出る赤。砂嵐を吐き出す視野に、止まらない冷や汗。湧き出てくる悪寒。強く歯を食いしばって、声を出さないように必死に堪える。
食いしばった歯の隙間からヒーヒーと強く浅く呼吸を繰り返す。
此処で、この男が逃げてしまったら不味い。リラが襲われてしまったらもっとまずい。
妙に冷静だったのは、今にして思うとあまりに突飛すぎる出来事で、かつ、痛みのあまりアドレナリンでも出ていたからだろう。
ああ、だからこそ。
男が、錯乱していたとは言え、本当に傷つけてしまったことに動揺を隠しきれずに固まっている今こそ。
「──テッキィイ、『サイコキネシス』! そのまま! ジュンサーさんか誰か来るまで、頼む!」
「メンタァ!!!!」
「う、うわあ!!? く、くそ、離せクソガキ!」
『サイコキネシス』で地上から1mほどの高さまで持ち上げられてしまった男は、必死に脱出を試みるも、サイキッカーでもなんでもなさそうな男にテッキ、メタングの『サイコキネシス』を防げと言うのも土台無理な話だ。
やがて、諦めたのか体を動かすことをやめた男。イロベに戦闘不能まで追い詰められた男のポケモンたち。
そこまで見届けて、気が抜けた。グニャリと歪む視界に、襲い掛かる悪寒と激痛に耐えきれず、膝を突く。
「……リラ。あと、頼んだ」
「いや、いやぁ!! 死んじゃ駄目だよシド!」
死にやしないよ。
ちょっと横になるだけだから。
その言葉は出せず、弱々しい吐息となって吐き出されて、そのまま意識を失った。
× ○
目を覚ました時、鈍く走る痛みに、右側の視界が全く見えない事と共に成り行きを思い出して、まあだろうなと納得した。
意識を取り戻した後は医師から、右目が見えるようになることは無いであろうことが告げられたが、まあ仕方ないと諦めた。あんだけザックリブッスリやられれば仕方ない。
納得していた。その上で行動して、リラを、あいつを助けられたんだ。
命だってここにある。意識は明朗。仕事で街を出ている両親に迷惑と心配をかけたが、とりあえず生きている。
なら、問題はない。
こう語ると、母さんは深く落ち込んでしまった。対応を間違えてしまっただろうか。
親父は来なかったものの、手紙で俺のことを気遣うような文面を送ってきた。
同時に、少し褒めるようなことを書いてくれたのか嬉しかった。
来なかった事に対して特別思うことはない。基本的に家を空けっぱなしで、どんな仕事に就いているかも知らないけど、病院の手配や治療費関係を丸々対応してくれたのは他でもない親父だったからだ。
俺としては、俺の最大で最友のライバルが怪我しなくて良かった、とか。女の子に怪我をさせるわけには……くらいの思いだっただけに、凄くすれ違いを感じざるを得ないのだけども。
さて。
問題だったのはこの後だ。
まず失明した右目を一度摘出しなければならず、その為に街を離れてミナモシティの大きな病院に1ヶ月入院していた事。
まさか目を摘出することになるとは思ってもおらず、少し動揺してしまった。
今では右目のあった場所には義眼台と義眼が収められている。
もう一つ。単純に片目が見えなくなったせいで、距離感は掴めないし片目で見続けないといけない都合上左目の疲労がやばい。
というか、顔を切られた際に脳にも多少ダメージが入ってたらしく、残された左目の視力そのものが落ちていた。終始ピントが合わずハッキリ見えたりぼやけたりを繰り返すので吐きそうになってしまう。
多分この調子だとバトルにもモロに影響が出てそうだけど、なるようになるだろうと楽観視していた。
問題ないと思ってたんだ。
「困った」
「ガー……」
心配そうに鳴くイロベの声を聞いて、「大丈夫だよ」と濃紺の頭を撫でる。
片目での生活に慣れるまでは、倒れても危ないので手持ちのポケモンたちに介護まがいの手伝いをしてもらうことにした。
片手に四つ足杖を持って、いつものバトルコートで待ち人を待ち続けても、来る気配が全くない。
入院していた間も、結局一度も来なかったし。何となく、あいつが居ない日常というのはポッカリと胸の中に穴が空いたような気がして気持ち悪い。
「そしたら、イロベ。リラの家行くか」
「ガッ!」
アイアイサー! とでも言いたげに敬礼したイロベと横並びになって、リラの家を目指す。
幸いというか何というか。あの日とは違って人通りも閑散としていて、産まれた街ながら寂れてるなと思わざるを得ない。
10分程歩いた先、風鈴や鈴めいた音が水と戯れていそうな楽しげな音を聞き流してたどり着いたリラの家のチャイムを鳴らす。「はーい、今出ますねー」とリラのお母さんの声が聞こえて、扉を開けてこちらを見た直後に固まってしまった。
「こんにちは。リラ、いますか?」
「……シド君。リラのこと、ありがとう。ごめんね……ごめんねぇ……!」
泣いてしまったリラのお母さんに抱きしめられながら困惑する。「だ、大丈夫です。ほら、こうやって立って話せますし」なんて言ってもまるで効果がない。
それもそうか。多分俺の立場がそうだったら、こうなる自信しかない。
そうして解放されたのち、家の中に通された。
「リラ、あの事件の後から塞ぎ込んじゃって。ご飯は食べているんだけど、あんな事の後だから……」
「大丈夫です。あいつの事だ、また俺が元気な姿を見せればいつも通りです」
リラの部屋の前まで案内してもらって、そんな風に言って笑う。あとは部屋に閉じこもってしまったリラと話すだけ。
別に、気にしなくてもいいのに。
そんな甘いことを考えていた俺とリラとの認識とでは隔絶した差異があった。
考えてもみたら当然の話だったんだ。もしもリラが、俺のような怪我を負って。
その理由が自分にあるのだとしたら。
『別に、気にしなくてもいいのに。』
この言葉に、どれだけ傷つけてられるのか。
軽く扉をノックする。
返事はない。
もう一度、ノックする。
やはり返事はない。
「リラー?」と声を掛けるも、やはり返事はない。
眠っているのだろうかと一度出直そうかと考え始めた矢先、扉の開く音。
「フーム……」
「おっ、フーディン」
サイコキネシスで扉を開いてくれたのは、リラのフーディンだった。困り果てたような、弱りきった顔を俺に向ける。持っていたスプーンを宙に浮かせて、伸ばして変形させてを繰り返す。
「えーと『か、ら、だ、は、だ、い、じ、よ、う、ぶ、か』……ああ、この通り歩けるくらいには問題ないよ。右目はまあ、ダメだったけどね」
俺の返答を聞いて、彼は僅かに身体をこわばらせる様子を見せた。そして少し悩むようにして、手をこちらに来るように手を動かしてみせた。
この様子を見て、リラに何かあったんだろうとうっすら察してしまった。
「大丈夫だ。俺が来たんだ。任せておきな」
「フー」
ゆらりゆらりと頭を揺らし、ため息混じりに、困ったように部屋の中に戻るフーディンに続いて、リラの部屋の中に入る。
部屋は昼間だというのにカーテンも締め切られていて、とても薄暗い。
ベッドの上に、リラは眠っていた。軽やかで可愛らしく、しかしバトルの時になると凛々しくかっこよくなる俺のライバルらしくない。
何処か虚で儚く散ってしまいそうな、そんな印象を抱かせる。
よく見れば目の下には隈があった。顔色も悪い。魘されているようで、夢見も良くないらしい。
「フーディン、タオルとお湯、あとできたら飲み物を持ってきてもらえるかい? イロベもフーディンを手伝ってあげて欲しい」
「フン」
「ガッ」
フーディンとイロベに頼み事をして、改めてリラに向き合う。
「リラ、大丈夫か?」彼女を一度起こすことにして、声をかけてみるが、なかなか起きる気配がない。
手を握って、肩を揺すって少し声を張ってもう一度呼びかける。
「リラ、リーラー!」
「ぅ……おかあ、さん?」
「いいや、俺だ。シドだ」
「シ……ド?」
「よっ、おはよう」
寝ぼけ眼が俺を見据える。過去に一度リラの寝顔を見てしまい絶叫と共に手痛い一撃を顔にもらってしまった事がある。
そういう意味では、リラの今の精神状態を見るために敢えてこうした、というのもある。
正直言って異性の寝顔を見てしまうことに抵抗がないわけでもない。
だけども考えてみて欲しい。自分の最高のライバルが悪夢に魘され続けている所なんて誰もみたくないはずだ。俺には無理だ、とてもではないが耐えられない。
「…………シ、ド?」
しかし、予想は外れた。
慌てたように体を起こしたリラは、しかしその素早さとは裏腹に、腫れ物を触るように弱々しく俺を抱きしめた。
「よかった……よかったよぉ……」
なんて声を掛けたら良かったのだろう。
ただ、ポロポロと泣き続ける彼女に対して、背中を軽く叩く事しか出来なかった。
◆
「……」
「おーい、リラ。もう大丈夫だから。1人で動けるから」
「……やだ」
泣いたリラを落ち着かせ、ついでに戻ってきたフーディンに冷やせそうなものを持ってきてほしいとお願いしてからは、リラとこの1ヶ月間にあった事を話した。
右目を摘出することになり、その手術の為にミナモシティの病院に転院した事。
手術自体も無事に終わり、顔の傷の治療を含めて1ヶ月の間安静を言い渡された事。
現状杖をついているものの、片目に慣れれば杖を使わずとも移動は容易な事。
ぶっちゃけ、今回に関しては間が悪かっただけなので気にしなくていいと俺は思っている事。
最後の部分を伝えてから、再び、今度は思いっきり力を入れて抱き締められて内心頭を抱えていた。
その日はそれで一度解散となったんだけども、その日をもってリラが俺にベッタリになった。かなりベッタリしてる。
リラが、ベトベトンもかくやとばかりにベッタリなのだ。おまけに今までしなかったような事までするようになってきた。
あのクールで冷静で可愛いリラがまさかのビフォーアフターだよ。全く喜べない。
両親が基本的に居ない我が家に泊まりにくるようになったり。
ソファーや布団で横たわっている時もすぐ横に座ってジッとこちらを見てきたり。
病院内を軽く歩き回る時も杖をついていない方の手を持って支えてくれたり。
外に出てポケモンたちと触れ合う時も周りをひどく警戒するようになったり。
風呂やトレイの中にまで着いてこようとしたり。流石に止めたが。
……そして、バトルの誘いにも乗ってくれなくなった。
困った。本当に。
彼女がこうなった原因もわからない……なんて、甘ったれた妄言を吐くつもりはない。
彼女が本当に、ベトベトンのようにとまでは言わないけど……その内心を罪悪感という毒で浸して溺れてしまうのはいただけない。
端的に、俺のせいだ。俺のせいなのだ。
この傷はこの結果は、俺が招いたものだ。例えきっかけが偶然でも、それを背負った、背負う選択をしたのは俺なんだ。
理不尽に対する怒りも、納得に包んでとっくに飲み込んでる。
「リラー……何回でも言うけどさ。この怪我はお前のせいじゃない」
右手の親指を立てて右目を指差す。
同じ言葉を、同じ思いを重ねてリラに告げる。定期検診の合間に訪れた、のどかな院内広場を涼やかな風が吹き抜ける。
揺れる髪を気にも止めず、びくりとリラの体が跳ねる。隈の浮いた、どこか虚ろな目で、俺を見る。
「ち、違う、違う! ぼ、僕があの時、あ、あの、あの、あの男に捕まっていなければ、こんな、こんな事にはならなかった!」
焦燥しきって、目を泳がせながら悪い顔色で早口に口を回す彼女に、俺はここまでの重荷を背負わせてしまったんだなと深く自覚する。一人称まで『僕』ときたもんだ。
違う。違うんだ。お前が気にすることじゃない。だって、そうだろう。
──好きな子を庇ってできた傷が、名誉の負傷じゃなかったらなんだっていうんだ。
「それに、シド、……君は、もう、バトルが――」
「──んだと」
「ッ」
わずかに、自分の顔が引き攣ったことを悟った。眉間に皺が寄り、握った拳が痛みを発する。
明確に、これ以上無くリラの顔が強張った。
『片目ままでもバトルはできます。しかし、君の場合斬られた際、軽度とはいえ脳にもダメージを負っています』
少し前の、先生の話をこっそり聞かれていたのかもしれない。納得した。
ああそうか。ここ最近、彼女がバトルを断っていた理由を察せられた。
確かに視力も落ち、片目である以上視力的、視覚的にも無理が出ている。距離感もバランス感覚も怪しい現状、バトルの一瞬一瞬で切り替わる展開に付いていけないこともあるだろう。
間違いなく、俺は弱くなっている。
で。
だから、なんだというのか。
訓練と矯正を重ねさえすれば個人差はあっても、その辺りは修正が効くと先生は教えてくれた。メガネやコンタクトで視力そのものの、目そのものの矯正もある程度はできる。
ならば俺の頑張り次第でどうとでもなるんだろ。運命とやらがあるならふざけるなと大声を張り上げてやる。俺とリラとの関係に立ちはだかるような壁じゃない。
しかし、リラにその点を突かれた時、ちょっと──いや訂正、どうしようもなくイラついてしまったのが間違いなく本音であり。
そんな自分に嫌悪感で身を震わせたのも事実だった。
「……なら、証明してやるよ」
「あ……シド……」
暫くは顔を合わせたくない。いっそ、旅に出るのも良いかもしれない。そう思ったらもう、一直線だった。
ひたすらリラと距離を取ろうと駆け足で家に帰った。
「あ゛ー! ガキかよ俺!! クソ!!」
実際ガキだろ、まだ12歳だし。なんて自分に向けたツッコミは落ち着いてから内心で留めた。虚しいだけだ。
ガシガシと頭を掻いて、いつか旅に出ようと密かに揃えていた旅用の道具、缶詰やポケモンフードを引ったくるように集めて適当にバッグへ詰め込む。
留守番電話で両親へ暫く家を空けるとメッセージを残して、そそくさと町を後にした。
「……お前がそんなに心配するなら、下に見るなら 見とけよ! お前に立ち向かうのに、相応しくなってやるから!」
最後に、リラの家の方向に向けて思いっきり中指を立てた。
◆
何が、いけなかったんだろう。ポッカリと、心の中に穴ができたみたいだ。
彼が走り去った後、その場で動けなくなってしまった。
私が言おうとした事を遮った時、彼は本気で怒ってた。
間違いなく、彼の地雷に踏み込んだ。
こんなことになってしまった今、言い訳がましいかもしれないけど。私は、ただ彼に恩返しがしたかった。
カッコ良かったんだ。震えて動けない私を、助け出そうと動いてくれた彼が。大怪我を負っても、毅然とポケモンに指示を出す彼が。
友人として好きだったのが、異性として好きになったのは、きっとあの時からだ。
だから、恩返しをしなきゃいけない。彼の手助けをしなきゃいけない。彼を、守らなきゃいけない。それが私にできる償いだ。
もう彼があんな怪我を負わなくて良いように、強くなると決心した。
今は、形だけでも弱々しい『私』から決別できるように『僕』と一人称を改めて。
彼を守るんだと思い立って動いた途端に、焦って、余計なことまで口走って、これだ。
「……ぅ、うぇぇん……うぅぅ……」
いけない。視界がぼやける。泣いたところで、現実は覆らない。シドがあんなにも怒りに表情を歪ませて去ってしまった事実は、変わらない。
どうして、こんなに涙が止まらないんだろう。こんなにも、言葉にできない思いになりそこなった残骸が積み重なって頭の中を占領するんだろう。
『……なら、証明してやるよ』
なんでこんなに悲しいのに、罪悪感に駆られるのに、私に向けてくれた、あの宣戦布告のような言葉が──燃え盛るような怒りの篭った目線が、とても嬉しいんだろう。
──そうだろうね。君なら、私の幼馴染の君が、真っ先に『諦める』なんて選択を取るはずがない。
考えて、考えて、考えて、突き進んで、転んで、それでも起き上がって、それでもダメなら納得に包んで飲み込む。
君はそういう人だ。覚えている限りの8年間、ずっと側に居たんだ。知ってるとも。
ぐちゃぐちゃになった感情が、波打つような情緒に押し流されて出口を探してる。
ポロポロと溢れる涙が瞳から零れ落ち、息を詰まらせながらえずいてしまう。
悲しくて、苦しくて、嬉しくて、辛くて。
こんなにも弱い自分が、その弱さに浸っていた自分が唯々腹立たしくて。
「おや……君はいつかスカウトしたお嬢ちゃんじゃないか。こんな所でどうしたんだい? このエニシダお兄さんで良ければ、話を聞こうじゃないか」
◆
あれから、色々あった。本当に、色々あった。イロベとテッキが進化を果たし、ポケモンハンターに襲われていたポケモンを助け助けられて、なんやかんやの果てにゲットしたり。
……リラの顔を雑誌で見かけるようになったり。本当に色々あった。
カナズミ、ムロ、キンセツ、フエン、トウカ、ヒマワキ、トクサネ、ルネ。
8つのジムを回ってジムリーダー達にバトルを挑み、ジムバッジを受け取って回るのに1年が経っていた。
サイユウシティでホウエンリーグに挑み、カゲツさん、フヨウさん、プリムさんを突破し、最後の四天王ゲンジさんと引き分けて、そこでふと疑問に思ってしまった。
リラに勝つ為に、リラに認めてもらう為には、もっと強くならないといけない。
あいつに、もう二度とあんな顔をさせないように。安心させてやらないと。その為に強くならないと。
……恥ずかしい話、当時は手段と目的がこの時は入れ替わっていたようにも思う。
対戦後、ゲンジさん以外の四天王の方々からは心配するような雰囲気で見送られた。
『目が曇っているな。過去に囚われているように見える。しかし、ポケモンたちとの絆、それを育んだ心の正しさは本物、か。……難しいものだ』
四天王のゲンジさんからそんな言葉を掛けられ、内心を見透かされたような感覚に襲われた俺は、逃げるようにリーグを後にしてしまった。
ひたすらリラに自分の強さを証明する事を目指していたそれらは結局『それを言い訳にリラから離れようとしていた』になっていた。それが言葉としては最も正しいのだろう。
気がつけば、ホウエンの外に意識を向けていた。
そこから流れるようにホウエンを後にしていろんな地方を点々とした。シンオウ地方、イッシュ地方で新たな仲間をゲットしてジム巡りし、カントー地方、ジョウト地方に出向いてはシロガネ山に半年ほど山籠りをして修行した。
そんなこんなでホウエンを出てから三年が経って、仲間たちもみんな進化して、やっと自分の中で納得できる実力になったと感じられて山を降りた。
4年ぶりに自宅に戻ってきた時には16歳になっていた。
本当に早い物だと思う。しみじみ思う。
ふわりふわりと浮雲のように飛ぶキャモメの群れがよく映える夕焼けを背に、玄関の鍵を開ける。
家に帰ると、偶々家に帰っていたらしい母さんと再会した。
「シド……おかえりなさい!」
「あー、ただいま」
この後しみじみと一時間近く説教を食らいつつも、無事で良かったと家に帰ってきたことを喜ばれた。それもそうだろう。4年も音信不通で家を空けていたんだ。
帰ってきてそこそこに、身だしなみを整えたりご飯の準備を手伝ったりしている間に、夜もすっかり更けていた。
窓の外から見えるバルビートとイルミーゼの描く光の軌跡が、よく見える。
初夏の訪れを感じさせる。そのうち梅雨が来るんだろう。そうなるとジメジメして、少し右目が疼くようになってしまう。イロベには申し訳ないが、苦手な季節だ。
「シド、明日は暇?」
「まあ、暇だけど。帰ってきたばかりで何も予定無いし」
リラが今勤めている『バトルフロンティア』に興味があったが、戻ってきてすぐに行動に移すのも良くないだろうと考えてのことだった。
帰って暫くは家に腰を下ろして、それから先のことを考えるつもりだったのだ。
というか、流石に4年もの間音信不通になっておきながら、帰ってきた次の日には居なくなるとか流石に酷いと思う。
ほぼ顔も知らない親父より酷いレベルになってしまう。なんかどえらい大企業の社長か何かで、その仕事が忙しいことと、金持ちなのは知ってる。
……というか、『推定』親父と思しき人物とはこの4年間の間で2度ほど会って、なんならバトルをした可能性が浮上しているのだが。
「そうしたら、服買いに行きましょ! リラちゃんに会いに行くのに、あの服はちょっとダメよ」
「え?」
ぼろぼろのツナギを旅の間の服にしていたのは流石に如何なものかと言う母さんの言葉と、何故このタイミングでリラの名前が出てくるのかが分からないと思いつつも、母さんと買い物なんて小さい頃以来だと思い直し返事をして眠りに着いた。
◆
もしもし、リラちゃん? こんな時間にごめんなさいね。シドの母です。
えーっと、ね。帰ってきたわよ、うちの子。うん、ホントよホント!
え、ウチに来る? いやいやダメよ。あまり詳しくないけど、バトルフロンティアのフロンティアブレーンの業務ってそんな離れ続けて良い訳ではないでしょう?
それでね、ちょっとお願いがあるのよ。
バトルタワーって、チャレンジャーのバトルを観戦するのにチケットが必要だった筈よね?
…………ありがとう! いやー、うちの子がバトルしてるところ、実は見たことなくて。
リラちゃんはバトル施設の1つのトップを勤めるくらい、とってもバトルが強いって話だし、絶対見なきゃと思って。
……それに、シドには小さい頃から寂しい思いをさせ続けちゃったから、せめて、こういう時くらい見守ってあげたいのよ。あの怪我の時も、結局私たちは何も出来なかった。
たまたま2週間くらい休みが入ったから、こんな時くらい見守ってあげたいじゃない。
リラちゃん。うちの子を、シドを、どうかよろしくね。でも、情けも手加減は要らないわよ? やれるならボッコボコにしてやんなさい! むしろ手加減なんて……そんなことしたら、うちの子の事だし、またヘソ曲げて旅にでも出ちゃいそうだもの。ねえ?
もう。こんなところまで親子揃って似なくても良いのにね。あの人そっくりよ。
え? ……ああ、私の旦那の話。リラちゃんは会ったこと……ないか。
昔、歳下の男の子にバトルで負けて、それが相当堪えたみたいでね。今は修行漬けらしいわよ。
うちの子のバトルの才能とか、負けん気の強さとかは絶対旦那譲りよ。
えぇ、えぇ。わかったわ。じゃあね。
◆
起きてすぐ、あれよこれよとミナモシティの服屋に連れて行かれた俺は、そこから3時間ほど着せ替え人形になっていた。
ジョウト地方の着物にも似たデザインのジャケット。カロス地方の高名なデザイナーが考えた全身大きな穴の空いた奇妙なスーツ。
完全に着ぐるみとしか思えないような服まで。
まあ、正直とても楽しかったのも事実だ。これまで興味を向けてこなかった事柄に触れるというのは、とても新鮮で面白い。
最終的に、かの良くも悪くも有名なオーレ地方出身のデザイナーが考案したらしい、大きなフード付のジャケットに白のシャツ、黒のベストに袴風のズボン、ショートブーツを購入した。足以外全身黒ずくめである。
「もう、こんなところまであの人に似ないで良いのに!」
「あの人……ああ、親父?」
「そうよ! ずーっと黒いスーツ姿で……たまに茶色のスーツを着るくらいよ。
カッコいいんだけど、偶には普段着も見てみたいというか──」
「ああはいはい惚気ごちそうさま」
ジャケットの背後、左右から伸びるベルトにモンスターボールを3つずつ取り付けられるようになっているらしく、これまでのように小さくしてツナギのポケットにしまう必要が無いのは、かなりありがたい。盗まれそうになっても、うちのポケモンたちは自分から表に出てきて抵抗なり何なりするだろうし、あまり問題でもなかった。
エスパーポケモンたちの仕業だと話は変わるだろうが、そもそも5匹の手持ちの内2匹がエスパータイプのポケモンであるので、考えるのも野暮だ。というか1匹はどちらかと言えば『やらかす』側にしか思えないのでなんとも言い難い。いたずらっ子なのも考え物だ。
そのまま親子で昼食を取り、この後の予定を尋ねようとして、船乗り場まで連れて行かれてしまった。
そしてそのまま船に乗せられ、リラの勤め先……7人のフロンティアブレーンが住まうポケモンバトルの聖地、バトルフロンティアにたどり着いた。
「いやあの、母さん? ちょっと荷物が多くないかとか思ってたけど、そういうこと?」
「ふっふっふ……計画通り!」
『あっ、この人話聞いてねえ』と諦め、船を降りる。何でこうなった。
「今からシドには、バトルタワーに挑戦してもらいます! そして、リラちゃんに挑んでもらうわ!」
「……はぁ。さっき調べたけど、バトルタワーって予約必須だろ? 俺、昨日の時点で、してない。おわかり?
それに確か、34連勝しなきゃリラには挑めない筈だ」
「大丈夫、事前に予約は取ってあるもの。
それにシド、あなたのこれまでの戦績から、6連勝すれば7戦目にリラちゃんと戦えるように計らって貰えたの」
「何だそりゃ……なんでそんな話になってるの」
バトルタワーに2人で向かいつつ、最後の質問には「女には秘密が多いのよ!」なんてふざけた言葉ではぐらかされ、ちょっとキレそうになった。
というか他のチャレンジャーが頑張って連勝数を重ねてフロンティアブレーンに挑むのに、凄く居た堪れない。
だが同時に、見方を変えれば俺自身にとって大変都合がいい。
絶対に会わなきゃならない。
あの時、喧嘩別れのように離れてしまった彼女に、リラに会わなければいけない。
お前に立ち向かえるんだと証明する為に。お前と対等なんだと笑う為に。
視力のハンデが何だと、片目のハンデなんてクソ喰らえと中指を立て笑いあげて、お前に挑むんだ。
◆
シドが、ホウエンに帰ってきた。
突然彼のお母さんから電話を受け、その内容を耳にして思わず泣いてしまった。偶々側にいたオーナーに驚かれつつも、バトルタワーへの挑戦の予定を喜んで調整させてくれた。
「ふーむ……リラ。シド君のこれまでの公式戦の戦績を見たんだけどさ。これ、マジかい?」
「はい、本当ですよ。彼は僕と……いえ、私と戦う為にここまで練り上げて来てくれたんです」
「むしろこんな経歴のトレーナーの挑戦を蹴った、なんてしたらそれこそバッシングされるね。……うーん。正直尚のこと34戦を重ねてほしかった!」
「私としてはありがたい限りですけどね。彼を前に待たされるなんて、極上の料理を前にお預けさせられてる気分で……」
乾いたような、引き攣ったような、悔しそうな苦笑いを浮かべるオーナー。それもそうだろう。彼の戦績は並大抵のトレーナーのそれでは無い。
加えて、4年間の間に5つの地方へ渡り、それぞれの全てのジムを踏破している。かなりのハイペースであるし、それぞれのジムは挑戦者のその時のジムバッジの数に合わせてバトルに選出させるポケモンの強さを変える。
つまり、ホウエンを出てからのジムは、全て本気のジムリーダーたちと戦い、勝利を収めている事の証左に他ならない。
「はえー……お熱いねえ。これも、青春ってやつなのかな。全く、オジサンには眩しすぎてサングラス必須だね!」
サングラスを押し上げて胡散臭く笑う顔に「そんなんじゃ無いです!」と文句を言う。
こんな青春があってたまるかと自分でも思う。4年も経って、互いに距離が空いて、冷静じゃなかったなと思う私と、1日でも早く彼に会いたいと願う私が競合している。
彼に向ける後ろめたい、仄暗い感情や想いが無くなったわけじゃない。少しだけ、その性質が変わっただけ。
今でも彼のことを守らなきゃいけない、恩を返さないといけないという思い自体は変わらない。
ただ、彼が私のせいで傷を負った事を憐れむのは……『それだけ』で留まってしまうのは最低だと気が付いただけ。
4年ぶりだ。……バトルが終わったら、思い切って想いをぶつけるのも悪くないかもしれない。
改めてエニシダさんが作ってくれた資料に浮かぶ文字を読む。
カントー地方ジム全制覇。
ジョウト地方ジム全制覇。
ホウエン地方ジム全制覇。
サイユウリーグにて四天王ゲンジ氏と引き分け。
シンオウ地方ジム全制覇。
イッシュ地方ジム全制覇。
シロガネ山山頂登頂達成。
以上の戦績・実績を持ってチャレンジャー『シド』へバトルタワー挑戦時の特別措置を認めるものとする。
バトルフロンティア総括 エニシダ
◆
「トリデ、『あくび』そんでそのまま『なまけて』次に備えろ!」
「っちくしょう! ギャラドス、『たきのぼり』だ!」
バトルフィールドは大荒れだった。砂嵐は吹き荒れ視界は悪い。わざの効果で見えない鋭く尖った岩々が相手トレーナー側のフィールドにばら撒かれている。
俺の黒いカバルドン、トリデの耐久戦術のドツボにハマった対戦者のポケモンたちをあくびで無理やり交代せざるを得ない状態にしていなす。
居座ってきた相手には相手が眠ったことを確認してから別のポケモンを投げ、確実に倒す。
砂嵐による僅かなダメージ、場に撒かれたステルスロックによって受けるダメージ。
そして、トリデが四肢の付け根に取り付けられているゴツゴツメット。
それらは単体で見れば決して支障が出るダメージでは無いが、重なれば目に見えて大きな結果を呼ぶ。
結果として。水を纏った勢いある突撃をトリデに浴びせたのを最後に、対戦相手のギャラドスは倒れてしまった。
「ギャラドス、戦闘不能! よって勝者、チャレンジャーシド!」
「よっし」
「カーバー」
砂嵐を収め、体に纏っていた砂の山を押し除け呑気にのそのそと此方に歩いてくるトリデの鼻先を撫でる。審判に許可をもらってから、ベリブの実を口の中に入れてやると、トリデは嬉しそうに顔を綻ばせた。
この戦い方はトリデに大きな負担をかけてしまう。トリデとしては、人間の言葉・文字を理解できるテッキの通訳を通した話だと、『この戦い方は性に合っているのであまり気にしてはいない』とはハッキリ明言してくれている。実際、並大抵では済まないような弱点を突いた物理攻撃でも逆に押し留めてしまうくらいには、トリデの頑丈ぶりは尋常じゃない。
それはそれとして、トレーナーとしてはやはり居た堪れないのも事実なのでこうしてバトル後にはトリデにベリブの実をあげるようにしている。イロベやテッキ、他2匹も納得している。
というか、俺の手持ちだと間違いなく一番大変な戦い方をしているトリデを労る会みたいなのがトレーナーとトリデ以外の手持ちたちの間で出来上がっているあたりがもう、色々と酷いと思う。
「チャレンジャー、次で6戦目です。一度休息を取りますか?」
「30分ほど時間を下さい。トイレに行ったり、色々したいので。さっ、トリデ。お前はとりあえず治療を受けてこい」
「カーバー」
バトルタワーの職員さんにトリデの入ったボールを渡して、トイレに向かう。
1戦あたり長くても30分。早ければ15分としても、ここまで手持ちの簡易回復のインターバルを除いて5連戦ほぼノンストップだったのだから、多少はトイレ休憩くらい挟んでも良いだろう。
焦っているなと、僅かに苦笑いする。それもそうかとすぐに納得した。
もうすぐ、待ち望んだバトルができるんだ。急ぐなという方が無理な話だ。
◆
『イロベ、いつも通り行こう』
『ガガッ』
大きなモニター越しに息子のバトルを観戦する。出張先で息抜きにバトルの観戦なら多少したことはあった。
でも、シドのバトルは何か少し違う。なんとなく、説明もできないような、違和感のあるバトルを見つめる。私がポケモンバトルにそこまで熱狂的に追いかけていないから気が付けないのだろうか。
『イロベ、『みずしゅりけん』で牽制。そのまま詰めて顔目掛けて『えんまく』!』
『ガーッガ!』
『ライチュウ『ほうでん』で牽制するんだ! ゲッコウガを近寄らせるな!』
『ライライラーイ!!!』
飛んでいく水の塊と同じくらいのスピードでフィールドを駆けるイロベが、苦手な電気タイプのポケモンであるライチュウに臆することなく突撃していく。弱点であるタイプの攻撃が怖くないのか、その様子が逆に怖くすら感じる。
私のゲっくんはあんな風に前に前に突撃していく戦いをしていなかったから、昔の臆病なイロベを知っているからあんな風に前に出るのが信じられないというのもあるんだろう。
四方八方に電撃をばら撒くライチュウにそのまま突撃するのは諦めたらしいイロベが細かに跳ね回って、『えんまく』を撒きながら電撃を回避する。その動きはカントーの民話、伝承に伝わる『忍者』を彷彿とさせた。
『……イロベ! 『みずしゅりけん』を大きく、んで『まきびし』混ぜて!』
『ガッガ!』
跳ねたり走ったりと忙しなく疾駆するイロベくんに、シドの指示が飛ぶ。
やがてイロベを起点に煙がフィールドを覆い、モニター越しにもイロベの周囲の状況がつかめなくなってしまう。
ここで対戦相手の指示が一度止まった。が、ライチュウと共に警戒態勢を崩さないように集中しているのが見てとれる。
そして、白煙を切り裂くように現れ出た。猛然と、弧を描くようにフィールドを駆けるイロベの手には、形成された茶色の大盾めいた手裏剣が。
あれを作り出すための時間を稼いでいたのだろうか。
『チャンスだ! 『10まんボルト』で仕留めるんだ!』
『ラーイィィ!!!』
『そのままぶん投げて!! ──後は任せた!』
『ガ!? ガガ、ガーッ!』
電撃と手裏剣が交わり、響く爆発。手裏剣に混ざっていたまきびしが四方八方にばら撒かれていくのが僅かに見えた。しかしモニター越しでは煙越しに光が瞬いただけなので状況が全くつかめない。
次いで、まるで大砲の球が着弾したような、重く大きな音。あまりの衝撃にか、一瞬モニターにノイズが走る。
「えっ」
漏れ出た声は私の声だったのか。途方もない水の爆発、続いて滝のような大雨。
そうとしか表現できないような大量の水が打ち上げられ、土砂降りのようにフィールドに降り注いでで黒煙が晴らされていく。壁にめり込み目を回しているライチュウに、両手を前に突き出して構えたままのイロベ。
『ラ、ライチュウ戦闘不能! ゲッコウガの勝ち!』
『よっし、ナイスイロベ!』
『……ガーッ……』
やや遅れて、審判のジャッジが降る。
胡乱な目でシドを睨むゲッコウガは、のそのそと疲れたように歩いてシドに近づいたと思ったら、ゲシゲシと頭に軽いチョップを落としているのは、あの最後の指示に相当の無茶があったんだろうなあと思う。
そして、違和感の正体も何となく掴めた。
シド、バトル中ずっと右目しか開けていないんじゃないんだろうか。
◇
イロベの種として持っている特性は、他のポケモンたちと比べても類を見ないものだ。
『へんげんじさい』……自ら繰り出すわざと自分のタイプを同じにする、カクレオンたちが持っている『へんしょく』を能動的、攻撃的にしたかのような特性。
この特性、結構幅というか、融通が効くことに気がついたのはだいぶ昔。『みずしゅりけん』に『まきびし』を混ぜて着弾した先にまきびしがばら撒かれる嫌がらせのような攻撃を考案していた時だ。
この時のイロベは、即座にみずタイプにも、じめんタイプにも移り代われる状態だった。ラグラージやナマズンたちのように複合したタイプを持っていたわけじゃない。即時移ろえる、あまりに不安定な状態を維持できていた。イーブイのような状態だったというのが、適切だろうか。
だからこそ、奇襲の安全策、保険としてはこれ以上ない。『ほうでん』や『10まんボルト』を放つライチュウへと突貫することができたし、イロベもそれを汲み取って行動してくれた。最後の『ハイドロカノン』なんて、その延長線上の事だ。自分はダメージを限界まで抑えて、相手の虚をつくて最大火力で押し切る。
「……ガー」
「悪かったよ……本当に、ありがとな」
だからこそ、半目でジト目を向けられるのも、仕方ないといえば仕方ない。
テッキと並んで最も付き合いの長い、それこそ家族と言って差し控えない相棒だ。
長い付き合いだからこそ、そして何より言葉の通じ合えない部分を架け橋として取り持ってくれるテッキがいるからこそ、本来なら辿り着けなかった部分まで互いに知れている。
イロベは、とても頭が切れる。慎重かつ大胆で、だからこそ俺が無茶振りのような指示を出しても最適解を選び取ってくれる。
事実、爆発で視界が確保できない中突撃して、相手のライチュウにゼロ距離『ハイドロカノン』をぶっ放す──その筋書は俺のイメージとなんら変わらなかった。
しかしそれらの思慮深さ、行動力は元来持つ『臆病さ』の別側面に他ならない。
分からないことが怖いから、頭を回してよく考える。
傷付くことが怖いから、全力で避けて、やられる前にやる。
そういう側面で見れば、トリデとは別に無理をさせ続けてしまっている。性格が戦うことに向いていないのに、どうしようもないくらいバトルの素質があるから。だから戦ってもらってるなんて、無理をさせている以外になんて言えばいい。
休憩室でイロベに水を飲ませていると、ボールの1つが勝手に開いた。
現れたのはテッキ。四本の鉄脚を休憩所の床に接地させないようサイコパワーで僅かに浮いている。
「ガー……ガガー……ハァー……」
「メーター」
「ん、おぉ」
テッキのサイコキネシスで俺の懐に入っていたメモ帳とペンが宙を舞う。独りでにメモ帳が開かれ、そこに走るようにペンで文字が書かれていく。
3分としない内に、メモ帳はペンを挟んで俺の手元へ戻ってきた。そのままテッキも器用に脚の一本を自分のボールのスイッチに当てて、ボールの中へ戻っていった。
「……いつも、ありがとな」
軽くボールに手を添えて言葉を吐く。メモ帳を開けば、本当に3分程度の時間で書いたのかと思うくらいの長文が書かれていた。思わず目が眩む。
イロベ
オレは別にシドのために戦うのに怖いとか思ってない。
無策で突撃なんてさせられたら怖い。でも、シドはそうじゃない。ちゃんとオレが臆病なのを理解した上で、どう戦えばいいか考えてくれている。
傷つくのは怖い。でも、勝ちたいとも思う。
無茶振りもするしノリと勢いでやらかす、はっきり言ってバカだとは思う。
だからこそ信用信頼してる。相棒だと思ってる。
オレが怒ってたのは、好きな相手が最強張ってる場所で、いつもの癖を出したまま戦ってたこと。
あの子、昔も強かった。きっと、もっと強くなってる。
その道中を、舐めてかかられてたんだって。勘違いされて、嫌われても知らないよ』
テッキ
・イロベの怒りも理解できる。所謂『舐めプ』『煽り』に当たる行為とも取れる。
・しかし同時にシドには視覚的、脳へのダメージ等の多数の問題点から、集中力の限界値が低い。
・→実力的にも、リラへの思いの深さとしても、彼女への一戦に全てを注ぐのは仕方がない。
・→だからこそそういった聴覚やバトルの際に発生する衝撃を体感しそこから考える触覚に頼ったバトルを軸にしていたのだと考える。
・イロベもその点は理解しているが、彼の言い分の根本としては目を使った『慣らし』をしなくても良かったのかという心配。
・書き方の表現が悪かったのはヒトの言葉で表すならこのくらいの表現であったため。我々にシドへの叛意や悪意は無い
思わず頭を抱えた。崩れ落ちそうになった。確かに、としか返せない。
負荷を極力抑えるための癖が、今回ばかりはイロベ達の癪に触ったのか。成る程。
イロベたちは、特にオレの身の回りの話を気にしている節がある。
リラとの間に、これ以上何かしらの溝が生まれるのを防ぎたかったのだろう。
「そっか、そっかあ……。いやあ……うん、心配かけたなぁ」
流石に、そう思われても仕方ないかもしれない。
ヨロヨロと椅子に腰掛け、余っていた水を飲み干す。
「イロベ、悪い。そんなつもりはなかった。
ちょっとリラと戦うなら少しでも体力を温存していたかっただけ。正直それは、舐めてたって取られても仕方ないと思う。でも、それくらいリラには入れ込んでる。俺にとっての特別なんだ。……できる限りアイツとは万全で戦いたい。挑む側としてバトルの熱を抱いたまま戦いたい」
見苦しいと思う。バトルに臨む者として唾棄すべき態度だったと反省する。
しかし、そう後ろ指を刺されたとしてもそうするだけの理由があったのだと他ならない自分に言い聞かせる。
「──アイツに、もう心配しなくてもいいんだと証明したい。
……こんなバカで良ければ、手を貸してくれないか。イロベ、みんな」
「──ガッ」
俺が前には、片膝を付いたイロベがいた。呼応するように、ベルトに付けられた4つのボールが揺れる。
イロベのその佇まいは、忠義に厚い騎士のそれに見えて。忍者めいているのに騎士とは、どうにも可笑しくてちょっと笑ってしまった。そんな俺を見るイロベの目は『まーたなんか変なこと考えてるな』とでも言いたげて、余計に可笑しくて吹き出してしまった。
「さあ、さあ。行こうか」
◆
沈黙が、場を呑み込んでいた。
重く、落ちるように。しかし、負の感情は見当たらない。ただただ、『邪魔をすることは許さない』と宣告するように、鋭く研がれた刃めいた実体のない何か。
それは、今まさに見つめあっているトレーナー同士が放つプレッシャー。
片や示した実績から特例的な挑戦権が認められた、フードを被り目元を隠す黒尽くめのトレーナー。
片や数年前よりバトルフロンティアオーナーにその才覚を認められ、最年少ながらフロンティアブレーン最強の座を戴くタワータイクーン。
その2人が、同じ街で生まれ、同じ街で育ち。
そして、悲しい事件の末、一度は離れ離れになった。
そんな2人が、『確かな実力』……『そんな程度』では勝つことすら難しいとされるバトルタワーの最上階で、向き合っている。
その場の審判を務めた男は、震えていた。緊張、不安……そして、始まるであろうこれ以上ない極上のバトルを目の前で見届けられるという興奮、歓喜に。
「……」
「……」
少し間が空いて、先に口を開いたのはチャレンジャーだ。
「……待たせた。本当に、待たせた」
「待ちわびたよ。4年ぶり」
目を閉じてクスクスと上品に、リラックスしたように笑うタイクーンに、男は少し驚愕した。『この人は、こんな風に笑うことがあるのか』と。
鉄仮面。それがタワータイクーンとして名の知れる彼女が、陰で言われる呼び名。
執務、バトル、プライベートを通して、エニシダの前ですら表情を変えることが稀な彼女が、大きく表情を変える。それが、どれだけ珍しいことか。
そしてその表情を変えた相手が、幼馴染のチャレンジャー。
色恋話が大好物の他の女性ブレーンたちに教えたらどれだけキャーキャーとはしゃぐ事か。
「……正直。積もる話も、言いたいことも、伝えなきゃいけないことも、たくさんあるんだけどさ」
「……そうだな。今は、いい。全部このバトルが終わった後に、だな」
「――――絶対に手加減なんてしない事を誓おう。僕は負けないから。『チャレンジャー』」
「――――ハッ、言ってろ『タワータイクーン』。勝つのは俺だ」
タイクーンは宣戦布告のように告げ、チャレンジャーは獰猛な笑顔と共に中指を立てた。
きっと、名を呼び合わないのは、ある種の線引きか。
「それではこれより、『タワータイクーン・リラ』対『チャレンジャー・シド』のバトルを開始します。
使用ポケモンは3体のシングルバトル!
……両者、準備は問題ありませんか?」
「いつでも」
「問題なし!」
「――――バトル、開始!」
「Go My friend! カビゴン!」
「出番だ、トリデ!」
そうして、戦いの火蓋が切って落とされた。
◆
その後のバトル展開は、消耗戦の形を成した。
トリデが『ステルスロック』『あくび』での交代を強制させようとすれば、それを見越したリラにフーディンへと交代され、そのまま流れるように使われた『マジックコート』により弾き返され。その交代の隙を突いて突いて再び『ステルスロック』をばら撒けば、もう後はお分かりだろう。
幸いにも『あくび』を弾き返されることは無かったが、それでもじわじわとカビゴンとフーディンの攻勢にトリデは押され続けていた。
そして、明確に場が動いたのは試合開始から15分後。
(交代しない、――やっべ)
「トリデェ!! 『なまけ――!!」
「今だフーディン『サイコキネシス』!!」
空間を歪ませる程のサイコパワーが、単純かつ最も効率よくダメージを与えられる衝撃波として形を持って、トリデへと襲いかかる。
そしてそれは、合間合間に回復をしていたとはいえど、とても耐えられるものではなかった。
「ットリデ!!」
「カー…………バ……」
「カバルドン、戦闘不能!」
「だー……しくじったなあ。ごめんなトリデ。ゆっくり休んでくれ」
砂嵐が晴れると共に、どうするか考える。
流石にああまで無理矢理居座るのはよくなかった。結果的に数の分において不利を取ってしまう。しかし、こちらとしてはリラに挑むにあたり『見せたことのなかった新顔』がいる為、出来るだけ後に残しておきたかったのも本音だった。
しかし、滑り出しとしては上々だ。カビゴンとフーディン。手持ちの内2匹がわかった。
「よっし」
二拍、三拍と呼吸を整えて、腹をくくった。両目を開いて、パッチリと見開く。
一応フィールドがこうなるのも見越して『彼』を起用しなくて良かった。彼を起用していたら、流石に負けていただろう。ステルスロックのダメージが彼には大きすぎる。
「行くぞ、アーサー!」
「ファアーン」
青と白。大きく背から伸びる翼が目に付くジェット機にも似たシルエットのそのポケモン。かつてポケモンハンターに襲われていたところを助けたら懐かれ、手持ちに加わった、世界的に見ても極めて珍しいポケモン。
そして、俺の手持ちたちの中で随一のトラブルメーカーであり、悪戯好きで、構ってちゃんだ。スピード狂の気質があり、自慢するように飛び回る。
名前由来としては、ギャロップレース短距離部門でレコード記録を誇る『アーサー』から取らせてもらった訳だが。そのくらいノリにノッたら速いんだ。
それに、持たせてある持ち物からして、ここからは電撃戦だ。
「っ! ラティオス……フーディン戻って! Go my friend! カビゴン!」
「受けきらせねえよ! アーサー、『めいそう』!」
「シュオオオオオン……」
「ッッ『あく――』」
「そのまま『サイコキネシス』でぶっ飛ばせ!」
「フォオォォォン!」
『めいそう』によって高められたサイコパワーが単純明快な衝撃波として形を持って、カビゴンに襲い掛かる。
それは先程の意趣返しか、或いは皮肉か。焼き増しのような光景を以てして、リラのカビゴンを吹き飛ばした。
そして、高い特殊攻撃への耐性を持つカビゴンと言えど、事前に体力を消耗させられてはどうしようもない。
「……カビゴン、戦闘不能!」
「くっ……」
「うっし、ナイスだアーサー!」
自慢気に曲芸のような軌道でフィールドを飛び回るアーサー。こいつは少し褒めるとすぐこうなるのはいつもの事なので放置。
さあ、数の不利はこれで帳消しにできた。ただし、ここからは消耗戦ともいかない。
「……なるほど、ただ場に出て、わざを出しただけの割には少し疲弊している。ステルスロックだけじゃない。『いのちのたま』か」
「気づくの早すぎるだろ……」
あいも変わらない観察眼。そこから答えを導き出す回転の速い頭脳と知識。
AIかスパコンかアンドロイドか何かかとぼやきたくなる。実戦向けな頭脳明晰にも程度があるもんだよ。
「なら、こうするよ──Go my friend! エンテイ!」
「んな! エンテイ……」
「GoooOOOO!!」
ジョウト地方に残るホウオウの伝説。
その中においてホウオウの力によって蘇ったとも、或いは別のポケモンへと生まれ変わったともされる3体のポケモンの一角。
咆哮により火山を噴火させるとも、火山が生まれると共に生まれると伝わる、伝説。
大変、よろしくない事になった。少なくとも時間をかけることが有利には働かない。
情報とは、武器であり力だ。予備知識があるだけでもバトルにおいてのアドバンテージは強大な物になる。
わざわざニックネームでアーサーを呼んだのに、リラは種族名を言った。そして更に『めいそう』『サイコキネシス』を見せた以上、物理的な攻撃よりも特殊攻撃に重きを置いたポケモンなのだとバレている。
しかし、俺にはエンテイへの事前知識が全く持って不足している。
仮にも伝説のポケモンと伝わるポケモンだ。相応に能力は高いのだろう。しかしそれだけ。
リラほど観察眼に長ける訳ではない。目視しただけで『どういった立ち回りが得意で、どのくらいのスピードで動けるのか』なんて見極めは俺には難しい。
「ふー……参ったな」
考えろ、俺。何か、できること。
伝承からしてタイプはほぼほぼ『ほのお』タイプで確定でいいとして。
牙が生え揃ってるのを見るに『かみくだく』や『ほのおのキバ』屈強な四肢をしてる事を考えると『フレアドライブ』辺りは使ってきそうだ。つまるところ物理攻撃がメインと睨んでいい。
胴体はよく見れば『とつげきチョッキ』を着用しているのが見える。『めいそう』で能力が高まってると言っても、あれではアーサーの攻撃の通りも悪いだろうか。
しかしこちらは引くことができない。ラスイチがイロベだ。耐久力に難がある以上、『ステルスロック』が残るフィールドに何度も出すのは良くないし、『とつげきチョッキ』のせいで確実に倒し切れるか疑問が残る。今回使う予定の『わざ』の関係上どうしてもまだ出したくない。
しかしそれはリラ側も同じこと。フィールドに出た直後からやや消耗してるように見えないこともない。
せめて弱点のタイプで攻撃が──閃いた。
「エンテイ、突撃して『かみくだけ』!」
「GAaoo!」
「アーサー!! 悪い、ちょっと痛いぞ! 全速力で飛び回れ! 『サイコキネシス』!」
「ファアー!」
チリチリと頭に感じる違和感。1秒未満の僅かな間だけ感じとったそれに笑顔で返すと、アーサーは腕を折りたたんで中央無尽に飛び回り加速し続ける。こういう時、頭のいいエスパーポケモンたちは有難いと思う。
ちょっとしたズルの類ではあるけれど、ルール違反はしてないので許して欲しいが。
しかし、やはり『ステルスロック』がぶつかるのか大小少なくない傷が体にできていく。エンテイも同じだが、動き続けるアーサーの方が傷が遥かに多い。しかしそれでも止まらない。
「────フオオオオォオアアアアアアァ!!」
バトルが再開して、一分が経ったか経たないか。アーサーは少し息が上がっているが見て取れる。が、ノリにノッている。スピード狂の気質か速さは衰え知らず。
狭くはないが飛び回り続けるには手狭な屋内でよくもまあ、青い軌道が流星を描くかのようにフィールド上を駆け巡るものだ。
対してエンテイはほぼ無傷でこそあるものの、攻撃が当たらないことに若干の苛立ちが見れた。
そしてリラの顔には──焦りが見えた。恐らくだがこちらが狙っている事がバレているのだろう。何でバレたし。
そして、頭に違和感。つまるところアーサーからのサインが来た。そういう事だろう。なら、後は──
「……くっ、エンテイ! 距離を取って『せいなるほのお』!」
「GoOoAAAAAA!!」
「──『サイコキネシス』!!」
「フォオオオオオン!!」
エンテイの口から放たれる、蒼炎混じりの炎の大砲。
ラティオスの弾丸めいた形を伴って撃ち放たれた『サイコキネシス』が接触する。
大爆発。煙を伴ってフィールドを覆い隠す。そして、その隙にアーサーは確かに、やり切った。
「ナイス、アーサー」
煙が晴れた先には、フィールド上に倒れ伏すアーサーとエンテイの姿が、確かにあった。
◆
「いやー、柔軟な発想してるねえ」
「えっと、エニシダさん。今のは……?」
シドとリラちゃんとのバトルが始まる少し前。バトルフロンティアのオーナー、エニシダさんから観客席のVIPスペースに通され、間近に2人のバトルを眺めることができた。
でも、わからない。タイプ上の相性ではアーサー……シドの連れていた、青いポケモンが恐らく特殊攻撃を軸に戦う子なんだろうというのはわかった。
でも、リラちゃんのエンテイは特殊攻撃によるダメージを軽減する『とつげきチョッキ』を着用していた。いくら『めいそう』を使っていたからと言っても、限界はあるはずだ。
疑問に頭を捻っていると、エニシダさんが胡散臭い笑顔で淡々と語ってくれた。
「シド君のラティオス、彼がした事は単純ですよ。【フィールド上に漂っていた『ステルスロック』を使って攻撃した】んです」
「……え? でも、『ステルスロック』はばら撒かれた後は……」
「そう、見えない。透明になってしまう。しかし、分からないわけじゃない。目を凝らせば周囲の風景との違和感に気が付けるだろうし、もっと言えばラティオスはエスパータイプのポケモンでもある」
「推測の域を出ませんけど」と言葉を一度切ったエニシダさんは言葉を選ぶように口を開いた。
その様はどこかプレゼンを行い慣れているようにも見える。
「うーん……よし、これならしっくりくるな。
サイコパワーをソナー探知機のように使って、場所を把握して、文字通りフィールド中を飛び回って『サイコキネシス』でかき集めたんでしょうね」
「えー……凄い器用な事……」
「たぶん、傷ついてたのは『サイコキネシス』による『ステルスロック』の回収が自分の飛翔スピードに追いついてなかったんでしょう。それか、わざとぶつかって確実な位置を把握した上でキャッチしていた……いやー、それにしても凄い……思いついても中々出来ることじゃない」と語りながら唸るエニシダさんに、事の次第を把握した私はシドとアーサーのレベル……とでも言えばいいのだろうか。その高さ、深さにびっくりすることしかできない。
「リラもリラだ。ギリギリだけど気が付けた。まあ、あれだけ四方八方に逃げに徹するだけじゃラティオス側が一方的に消耗するだけだから、その違和感に気が付けたんでしょうね。だから最後『かみくだく』ではなく『せいなるほのお』で近づくことを拒否した。あれだけ消耗していれば、相性が悪い攻撃でも倒し切れると踏み切ったのでしょう。
しかし、今回はシド君の方が上手だ。エンテイの『せいなるほのお』を『サイコキネシス』で相殺しその余波で砂煙を立たせる。
後はフィールドが隠れている間に『ステルスロック』を『サイコキネシス』で操って『ストーンエッジ』のように攻撃したのでしょう」
「それで、エンテイも倒れてしまっていた、と……」
バトルの事は全然分からないけれど、深い知識を持つ人が解説してくれるだけでこうも変わるのかと、何処かワクワクしながらフィールドを眺める。
「さて……たぶん、ここからはあっという間ですよ」
◆
心臓が暴れるようだ。体の内に怪物が潜んでいるよう。
脳髄が煮えたぎるようだ。まるで自分を俯瞰的に観ているような、奇妙な万能感があった。
腹の中が燃え盛るようだ。怒りであれ興奮であれ、もっともっとと相手を求めて腹を空かせている。
闘争心は矛先を探していた。相手を打ち倒す為の矛は、互いの手に。
心は凪いでいた。澄み渡るように、しかして瞬く間に形を変える不安定さを表して。
視界はこれ以上なく澄んでいた。狭窄も慢心も、全て不要な目隠しに過ぎないと知っている。
ありとあらゆる要素勝つ為に冷静に俯瞰していた。
──終わらないで欲しいと、思ってしまう。
決着が──終わりがあるからこその美しさ、明確に線引きされた白黒。勝ち負けが決められるのに。どうしてこんなにも、この一瞬、刹那の内に満たされ続けるのか。
相手を見やる。穏やかな/楽しそうな笑顔をしていた。その瞳の奥に、煮えたぎる/静かな闘争心を湛えている。
きっと相手も/お互いにそうなのだろう。
自分と同じように。満ちて、飢えて、求めて、けれど──欲しくない。
決着がつけば、終わってしまう。
バトルの勝敗が決する。決してしまう。
それが嫌だった。混沌としたモノトーンマーブルでも、灰色でもいい。チープなままで。何度何度何度何度繰り返しても、この刹那を永遠に味わっていたい。
だけど。これではだめだと。
競い合う場だ。
お互いがお互いを、絶対に倒してやると気概を燃やして、命を削るように戦うのだ。
極上の御馳走が目の前にいるならそれを狙って獣にならない方が失礼だろう。
だから、だから。
名残惜しさを振り切って。
「──よっしゃ、いくぞイロベぇ!!」
「──Go! GoGoGo! Go my bestie! フーディン!!」
時計の針を、押し進めた。
◆
「フーディン!! 右手で『きあいだま』! 左手で『エナジーボール』!!」
「ヌウゥウン!!」
「っ! 無茶苦茶すん――『えんまく』だ!」
「ガッ!!」
苛烈な攻撃がイロベへ迫る。複数種の攻撃技を同時に繰り出す。言葉にすれば簡単だが、それがどれだけ難しい行為か。
『へんげんじざい』のイロベのような特性ではない。それはそうだ。リラのフーディンの特性は『シンクロ』──相手によって状態異常を発症した場合、その相手も同じ状態異常を発症させる。つまるところ、イロベのように特性等による先天的な『できる理由』がないままそれを実現させている。
幾ら高い頭脳、知能指数を誇るフーディンといえど、同種の中でも極めて高い才能、資質を持ち合わせる個体の中であっても並大抵の努力で実現できることではない。
だからこそリラの手持ちにおいて俺が知る限り最強の存在だし、『あのフーディンならやりかねない』なんて信頼もあった。
同時に、たぶんこの『えんまく』も既に対策済みだろうなあという確信も、またあった。
「────そこ! 『きあいだま』!」
「だろうな知ってた!! 『みずしゅりけん』! そのまま──」
俺ができる事がリラにできない筈もない。事前に予測していたが故に迎撃も間に合った。エネルギーと水の手裏剣群とが激しくぶつかり合い激しく白煙を上げる。
「そこ! 『テレポート』連続!」
「──は?」
一瞬の空白。白煙の先にイロベが掻き消え。
現れたのは俺に背を向ける、リラのフーディン。
「ガッ!?」
「イロベ! ……なるほど、ね」
その数瞬後には、白煙を押し退けて吹き飛ばされ、リラの方へと転がっていくイロベ。一目見て、かなりのダメージを負っているのが窺える。
フーディンのこなした事は、言葉にすれば容易だろう。自分は『テレポート』で『みずしゅりけん』を躱し、もう一度『テレポート』を使いイロベを『みずしゅりけん』の軌道上に移動させた。
テッキとアーサー。同じエスパータイプのポケモンを二匹扱うからこそわかる。サイコパワーという応用能力が極めて高いそれ。しかし、かなりの集中力が求められるそれを実戦で決める。
それがどれだけ難しいことか。
事実として、テッキもアーサーもテレポートを使えない。種族として扱い難いというのもある。が、それでも根気よく続けていればなんとか形にはなる。
問題は、ああも流れるように使えるかどうか。
「おいおい、仕上げすぎだろ……笑っちまう」
「君を守るために、力はどれだけあっても不足はないからね」
「カー! お熱いナイト様で。タイクーンから改称したらどうだよ」
「そうしたら、チャレンジャーじゃなくて私のプリンセスになるかい? お婿さん?」
「ハッ──キレちまったよ。ぶち飛ばすわ」
安い言葉の応酬を切り上げて、考える。実際のところリラのあの戦い方を攻略できないなら、俺のこれまでは水の泡と言っても過言じゃない。
お前に勝てない、証明できない強さなんて、それじゃあ意味がない。
「イロベー!! まだいけるかー!!」
少しふらついたのを自覚した。片目に映る情景が輪郭を乱して、気持ち悪く変容する。
イロベに尋ねるように、自分に言い聞かせるように。
「……ガ!!」
「オッケ、そうしたら……アレやるぞ!」
とにかく。『一方的に攻撃を当てつつ』『自身は攻撃を回避し続けられる』手札を見せてきた。たぶんフーディンの練度が頭おかしいだけな気もするけど。
昔似たようなことをリラにされた覚えがあるので、その派生・発展系だろう。
基礎として行っているのは、アーサーもよくやっている『サイコパワーをソナーのように使い周囲の状況を把握する』ことだ。それを使いフィールド全体に自身のサイコパワーを広げ、『えんまく』の目眩しも無視して、速度も段違いの『みずしゅりけん』もキッチリ来るタイミングを把握しきっている。いわば触覚の増幅と延長。空間そのものに神経を張り巡らせるようなもの。
そこに加えてフーディンそのものが有する判断能力の高さ。そしてそれを即時把握して最適解を打ち続けられるリラ。
唯一救いと言えそうなのは、リラとフーディンは昔からの付き合いだからこそわかる事実として。対戦相手の思考を読む……なんて事はしなさそうな事だろう。なんだかんだその手のプライドは高いのだと知っている。会っていなかった数年の間に変化もあったかも分からないけど、そうでないのならまだいける。
『サイコフィールド』とはまた違う感じだ。一度に大量のサイコパワーをフィールドに残留させて、敵味方問わずそのメリット、デメリットを被らせる代物であるあれとは根本的に別のもの。
──だから。
笑みが浮かぶのが抑えきれない。今回に関してはそれのおかげで助かった。
初見殺しだし、そもそもイロベじゃなかったらここまで戦えてたかも怪しい。
「『えんまく』を広範囲!! より濃く!!」
「ガッ!!」
「フーディン! 索敵しながら『エナジーボール』!」
「ヌウウゥウン!!!」
索敵なんて言葉が出る辺り、おおよそ想定していた通りだったらしい。何だったら、うちのアーサーと同じような『見えない合図』も多少はあったかもしれない。
そんな中で打ち出してきた攻撃は『エナジーボール』
『えんまく』の中からの『みずしゅりけん』による牽制を考慮した上で弱点となるタイプの攻撃に切り替えてきたか。『サイコキネシス』ではないのは『あくのはどう』を警戒しての事だろうか。
けれどこれで、仕込みは済んだ。そしてたぶん、ここが決定打。
「避けながらっ、『あくのはどう』を!!」
ああ、本当に。『きあいだま』だったら負けていたかもしれない。
掌の内で形作られる悪意の波が、フィールドを覆う『えんまく』に伝播し黒く染め上げる。通常であればこうはならない。ただ撒かれた『えんまく』を吹き飛ばすように『あくのはどう』がフーディンに襲い掛かるだけ。
だけど、イロベはとにかく器用だ。
例えば、そう。
『はどう』系のわざ──即ち『波動』の性質を使って、何かを伝播させ、染め上げるような真似も又、不可能じゃない。
「ッ! 『きあいだ──」
「ヌ!?」
時に。フーディンというポケモンは全身の筋肉が極めて弱いことで有名だ。特に首が弱く、自力では頭を支えきれない。
それどころか、嘘が本当か。自力では歩行すらままならないとか。
サイコパワーで体を外部的に操ることによりそれらの問題をカバーしている。
見えないパワードスーツを着込んでいるようなものだと思えば、わかりやすい。
そして、サイコパワーは不可思議な弱点がある。『あく』タイプのエネルギーや、その性質を持つもの、或いは場所においては影響が殆ど及ばず、そして十全に効力を発揮できなくなる。
「ヌ、ゥ!?」
「フーディン!?」
「イロベ!! 王手!」
黒い煙の向こうにうっすらと、確かに見えた。
フーディンの挙動が不自然なほどぎこちなくなる。手に持っていたスプーンが不自然にブレ、その鈍さは錆びついたブリキ人形のようだ。
この一手の為だけに、フーディンというポケモンの特徴を調べて調べて調べ尽くした。
そして、そんな隙を見逃すほど、悠長じゃない。
────だから!!
「イロベ、ゼロ距離で『ハイドロカノン』!!!」
「────ガァア!!!」
「……あーあ。負けちゃった。次は勝つよ」
「そりゃあ、無理だな。次も勝つからな」
「おかえり、シド」
「ただいま、リラ」
フーディンが倒れ伏し、イロベが片膝を着いて息を整えている。
薄暗い煙が、即席のゲリラ豪雨に落とされる。しとどに濡れて、闘志の火を消し止めた俺たちは、そこでやっと、笑い合った。
「──フーディン、戦闘不能! よって、勝者!
チャレンジャー、シド!」
ep.
「次からは『対シド用』のメタ戦術もしっかり練っておかないとね」
「やめろ本気でこっちの勝ち筋潰しにかかるな! タイクーン名乗ってるならもっとどっしり構えてくれ!?」
「そのタイクーンを倒したチャレンジャーが、よく言うよ」
あれから一夜明け、バトルタワー内にあるそこそこ有名なレストランで感想戦紛いの言い合いをしながら食事をしていた。
その第一声がこれである。バトルバカめ。
「だいたい、『えんまく』を『あくのはどう』で染め上げるって何なの?」
「元々は、『みずしゅりけん』に『まきびし』を混ぜられっかなーってやったら出来た副産物だな。それを足掛かりにフーディン対策に使えるんじゃないかって」
「絶句だよ」
マトマの辛みと共にやってくる力強い肉の旨味をコーラで押し流す。
「それを言うなら」と言って、フォークをリラの方に向ける。「行儀悪いよ」と言われるが黙殺する。
「こっちのセリフだよ。なんだよ2種類の技を同時に扱わせるとか」
「あれは『フーディンって頭が他のポケモンと比べてもとても良い』から『1つのわざに割く脳のリソースを分割できないか』って考えてやってみたら出来ちゃったというか……」
「絶句だよ」
思えば当時から間違いというか、本人の中でイケると判断したのならそれを無茶でも実行する。しかもそれは感覚的なもので、しかし本人的には出来るに足る理由があり、フーディンもできると思っているからリラの話に乗っているのだから極めてタチが悪い。
「……傍から見てたら、五十歩百歩なんだろうな……」
「甚だ遺憾だけどね。オーナー……エニシダさんからも、『こんなお似合いなカップルは見たことない!』だって」
「あー……」
やっぱり、ケジメというか。しっかりというべきだよな。
ムードも何も、てんで駄目だけど。
これくらいの明け透けで、どうしようもないくらいグッダグダで、底なしに居心地がいい。
数年ぶりに会っても、変わらない間柄だった。けど、その時計の針を押し進めても、誰も怒りはしないだろう。
「なあ、リラ。お前が良ければだけど」
「付き合わないかって?」
「全く君は……ムードもへったくれも無いね」と肩をすくめて心底呆れたように言う。まあ、そういうリアクションをされても仕方ない。奇妙なほどに恥ずかしくなって、ぬるくなったコーラを流し込むように飲んで、諦観と一緒に飲み込む。
ふわりと。花のような優しい香り。顔の横に、柔らかい感触。
顔を真っ赤にした、可愛い女の子がそこにいた。
「い、今は、これで。……これからも、よろしく」
「……よ、よろ、しく」
この後、パパラッチよろしくこの様子を見ていたバトルフロンティアオーナーのエニシダさんを通じて他のブレーンたちにも広まり、とんでもない二次災害を招くのだが、まあ今は関係ないことだ。
オリ主
・現地主人公。
・色々あって怪我をしたりハンデを背負うことになったけど持ち前の前を向き続ける精神性で乗り越えたやべーやつ。
・……が、それはそれとして好きな子を庇った為とはいえトラウマを作ってしまったのはかなり反省している。
・この度『証明』を果たした。
リラ
・ヒロイン兼ライバル。
・トラウマと罪悪感と守護らねば……でメンタルぐっちゃぐちゃにさせられた。割と被害者。
・月日が空いて『一方的に贖罪しようとするのって失礼過ぎるのでは』とSAN値チェックしつつ気が付けて持ち直した。
・フロンティアブレーンとしては『最強』。最善最高の指示を最速で飛ばしてくる。詰将棋のようなバトル。
・知識量も頭の回転も早い。想定外にも強い。