大空の影になりたい夜の子の話   作:雪の細道

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15:進む道

桜の意識がゆるりと浮上し、瞼を開いたその目に映ったのはどこかの保護施設らしき部屋の天井だった。

 

確かめるように右手を見ると、治療されたのかガーゼを貼られたり包帯を巻かれたりしている。

 

ひた、と頬に触れるが鱗や羽毛らしき肌触りもなく、頭をまさぐってみるものの耳は人間の時と同じ状態に戻っていた。

 

「よかった…私……まだ人間になれたんだね……」

 

ふかふかのベッドで横たわったまま静かに泣いていると、ふいにガチャリと部屋の扉が開かれる。

 

パリンと音を立てコップが床に落ちる音にそちらを見やると、扉から入った光を背に立っていたのはずっとまた会いたいと願ってやまなかった家族だった。

 

「……パパ?」

 

「……~っ桜!」

 

悲痛そうな面持ちで駆け寄る父親に桜は待ち焦がれていたように両手を伸ばした。

 

ぎゅっと抱き締めた温もりと嗅ぎなれた懐かしい香りに桜は思わず涙が溢れる。

 

「パパ……!会いたかった……」

 

「本当に無事で良かった……!痛いところはないか?怪我してるようだったから治療してもらったが、一体何があったんだ?」

 

愛おしそうに涙を浮かべ頬を撫でる父に、桜は気まずそうに目線を下げた。

 

「そ、それは……」

 

「いやパパが悪かった、まだ思い出したくないこともあるもんな。大丈夫だ、ゆっくりでいい。怪我が治って落ち着いたら話そうな」

 

とにかく無事で良かった、と言い再び優しく抱き締めた父に、桜はふと拐われた時のことを思い出す。

 

「それよりパパ、ツナは大丈夫?ママはどうしてるの?」

 

スタンガンで気絶させられただけとはいえ、目の前で起きたショッキングな出来事は4歳児にはきついものがあるだろう。

 

自分の知らない後のことを心配し父に問いかけると、家光はバツが悪そうに顔を背けた。

 

「その……綱吉はなぁ……」

 

「なに?もしかして大怪我したの!?」

 

「いやいやそんなことはない!怪我もしてないし大丈夫だ!そういうんじゃなくてだな……」

 

歯切れの悪い言葉で濁す家光に桜は不安そうに見つめる。

 

「どうしたの?私は何を聞かされても平気だよ?」

 

「本当か?かなりショックなことになるぞ?」

 

「大丈夫だよ。あんなことがあったんだもん、どんなことになっててもおかしくないよ」

 

幼い娘の揺るがない瞳に根負けし、家光は絞り出すようにゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「その、な……目の前で桜を奪われたショックか……夜も寝られずに泣きじゃくってご飯も食えなくなったんだ」

 

「……それで?」

 

「あまりにも精神が不安定になって、医者にもこのままじゃ危ないって言われたんで……綱吉とお前には悪いと思ったが、綱吉の今後の生活を考えて……その、ちょっとした知り合いに頼んで、全部の記憶を封じてもらったんだ。つまり、今の綱吉には桜に関する記憶はない状態にある」

 

苦しげな表情で告げられた事実に、桜はゆっくりと息を吐いた。

 

何となく予想していたそれに驚くことも無く、やけに冷静な桜に家光は不思議そうな顔で首をかしげる。

 

「あんまり驚かないんだな?」

 

「まあ、何となく分かってたことだしね……ママは?」

 

「母さんも似たような状態だったが……綱吉ほどじゃない。一時期は自分に責任があったと責めていたが、それも治療と周りからのフォローで何とかなった」

 

「そう、良かった……」

 

安心したように静かに笑い、決意するように目を閉じた。

 

「その、ツナの記憶を封じた知り合いって今この屋内にいるんでしょ?」

 

「……桜?」

 

様子の変わった娘に家光が眉を寄せる。

 

「パパもきっと、私が何に巻き込まれて何を見たのかもう知ってるんじゃない?」

 

それが自らに課せられた道なのだと、受け入れるように悲しげに笑う桜に家光は観念するように両手を上げた。

 

「全く、この短い間でえらい成長したもんだな。

……そうだ、こちらでおおよそのことは調べてある。後で詳しく検査もすることになってる」

 

「それは私も知りたいところだよ。わりとしっかりした施設みたいだし、どういう身体にされたのか明らかにしてほしいね」

 

いつの間にか手にしていた資料らしきファイルを眺め話す家光に桜がそう返すと、家光は変な物を見るかのような目でこちらを見つめる。

 

「お前、なんか口調が変わってないか?まるで10年くらい年取ったみたいじゃないか」

 

十年というほどではないものの、転生前の元の年齢に今の肉体年齢を足せば桜の精神年齢はとっくに二十歳を超えている。

 

やけに大人びた雰囲気にツッコミをされ、桜は平静を装うようにあらぬ方向に視線を向けた。

 

「そ、そんなことないよ?色々あって大変だったからじゃないかな」

 

「そうか……まあそれならいいんだが。ともかく、桜はまず治療に専念してもらう。治ったらあの方……テオさんに会おうな」

 

九代目、とは言わず親しみのある名前で呼ぶその人物に桜はとうとうか……と思いつつ静かに頷くのだった。

 

 

転生後の人生、第二幕を告げるように温もりを帯びたイタリアの風がカーテンを揺らす。

 

 

───…………

────…………

 

 

「初めまして、君が桜ちゃんだね」

 

傷がだいぶ癒え暑さも本格的になった七月、一人の初老程の男性が部屋を訪ねてきた。

 

口髭をたくわえ優しげな目付きのその人に桜はすぐに誰なのか察した。

 

「もしかして……テオさん?」

 

二歳をすぎた頃、あの時会うはずだったその老人の名を呟くと、九代目は嬉しくもどこか悲しげに目を細めた。

 

「やっと会えたね……こんな形になってしまって申し訳なかった」

 

ベッド脇の椅子に腰掛け頭を下げた九代目に桜は慌てて両手を振る。

 

「そんな、顔を上げてください!これは誰のせいでもありません」

 

「いいや……本来なら君たち二人を守るのは我々の役目だったのだ。いずれ後継者を決めるために巻き込むことになるとはいえ、幼い一般人でもある君たちをちゃんと守れなかったのは紛れもなく私の責任だよ」

 

ゆっくりと首を左右に振り、すまなさそうに項垂れるその老人に桜は左手を握る九代目の手に己の手をそっと重ねた。

 

「それでも……それでも、これは誰の責任でもありません。強いて言えば、私を巻き込んでこんな身体にしたあの人達です」

 

醜悪な笑みを浮かべる白衣の大人たちを思い出し、桜は唇をきつく閉じる。

 

「ありがとう。君もやはり大空の子だね」

 

「大空ですか?……大空なのは綱吉の方ですよ。なんていうか、私は大空というより……それを影から支える夜空になりたいです」

 

澄んだ瞳で優しく微笑む桜に九代目はそうか、とだけ言い小さく頷いた。

 

「さて、そんな夜空になりたい桜ちゃんにひとつ大事な話がある。まだ幼い君にはかなり酷な話だが……聞いてくれるね?」

 

「わかりました」

 

顔つきが変わった桜の決意を宿す瞳を九代目は静かに受け取り、そして自身の仕事から始まる全ての顛末を話した。

 

イタリア最大のマフィア、ボンゴレファミリーの九代目であること。

綱吉と桜が初代の直系にあたり、九代目の後継者であること。

 

そしてやはりと言うべきか、桜が拐われた実験施設がエストラーネオファミリーだということ。

 

最後に、裏社会へと巻き込まれ否応なく実験体にされた桜の生きる道についても。

 

「検査は1ヶ月ほど前に受けてもらっただろうが、君の身体は急激な変化でずいぶんと悪い状態にある」

 

桜を傷つけないためか慎重に言葉を選んでくれているのだろう、九代目はゆっくりと穏やかに説明を進めてくれた。

 

「ある程度回復したら我々マフィアの子供達が通う学校に進んでもいいし、桜ちゃんのリハビリ次第ではこちらのサポートで日本の生活に戻ることも十分可能だ。君はどうしたい?」

 

最大限の配慮と優しさで最適な道を示してくれる九代目に対し、桜はかつて自身が思い描いたこの世界のあるべき姿を脳裏に浮かべて目を閉じる。

 

自身にまつわる記憶を消され、原作にほど近い状態へと変化した沢田綱吉。

そして否応なしに裏社会へと引きずり込まれ、やむを得ずそうなったとはいえ人を殺してしまった自分自身。

 

もはや表社会へと戻る道理もなく、桜はむしろこのまま裏社会へと身を置くのがあらゆる意味で好都合なのではと考えた。

 

己の犯した罪をどうするべきか、いつどのタイミングで話すべきかと密かに悩んでいた桜だったが、九代目が道を示してくれたおかげでどうやらその心残りも解消できそうだ。

 

「九代目は本当に……お優しいんですね」

 

この優しい人に、せっかく配慮をしてくれた行為に報えないことを後悔しながら桜は悲しげに微笑む。

 

その桜の表情に九代目は一瞬驚きで目を見開くが、すぐに何かを察したのだろう、大空を彷彿とさせる温かい目で桜を見つめ返した。

 

「いいんだよ、桜ちゃんの思った通りに言っていい」

 

「ごめんなさい……やっぱり私、表社会には戻れません。九代目と同じ道に行かせてください」

 

「それはやはり……あの実験施設であったことかい?」

 

桜の並々ならぬ様子に九代目は優しく桜の肩に手を置く。

 

その九代目の優しさを感じながら、桜はあの日の出来事を努めて冷静に説明した。

 

科学者の1人に襲われたこと、手を払い除けるつもりが握ったメスでその首を割いて人一人の命を終わらせてしまったこと。

 

「だから人を殺めてしまった私はもう表社会になんて戻れないんです。罪と向かい合って、罪を洗い流すにはその道しかないんです」

 

まるで教会の懺悔室にいるかのように、祈るように己の罪を告白した桜に九代目はゆっくりと肩から手を下ろす。

 

「そうか……すまない、まさかそんなことがあったとは」

 

「……さっき、私は大空を影から支える夜空になりたいと言いました。あれは、いずれ血に染まった道を歩むことになる綱吉のためでもあるんです。同時期にマフィアとなる友人は必ずいます、でも先を歩いて安心させてあげる人も必要だと思うんです」

 

「それが君ということかい?」

 

こくりと頷いた桜が続けて言葉を紡ぎ出す。

 

「大丈夫、私も一緒だよって、手を繋いであげたいんです。優しすぎるあの子には、一人でも多く支えられる人間がいた方がいいですから」

 

遥か先を見通し、全てを兄のためにと覚悟をその目に湛えた桜に九代目は観念するかのようにそっと小さく笑った。

 

「君はまるで、夜空を照らす月のようだね」

 

闇に覆われし大空を、柔らかな光で照らす月に喩える九代目。

 

「……反対しないんですか?」

 

「ここまで覚悟を決めた顔を見せられては反対なんぞできまいよ。全く、まだたったの四歳だというのに……」

 

慈しむように頭を撫でる九代目の言葉に、桜はふと前世のことについてはどうしようかと気を留めた。

 

自分が前世からの転生者であることは誰にも話していない。

というより、話したら何が起こるか分からないためだ。

 

まだ4年とはいえ、未だに桜の前には転生について説明してくれる人間が現れない。

 

非科学的なことは信じないタイプなため、何者かの意思によって何らかの方法で転生されたと、そう説明されないと桜の根本にある不安は拭えなかった。

 

そして何者かによる説明がされないということは自分の意思で介入した場合どういった影響が出るのか全く予想がつかないのだ。

 

最悪の場合、転生と原作について話した途端に分かりやすく悪影響が出るとも限らない。

 

しかしそれとは別に、今目の前で惜しみなく協力をしようとしてくれる九代目に隠し事をしたままでいいのかという気持ちもあった。

 

兄である綱吉のためではあるものの、忠誠を捧げて仕える相手は九代目この人しかいない。

 

何が起きるか覚悟して明かすか、それとも悪影響を考慮して隠しておくか。

 

気づかれないようにしていた桜だったか、やはり九代目の目はごまかせないのだろう。

 

頭を撫でる手がピタリと止まる。

 

「まだ、何か気にかかることでもあるのかい?」

 

「それは……その……」

 

話すべきか話さざるべきか。

 

どうにも決められない桜の手を九代目の温かな両手が包み込む。

 

「もし誰かに聞かれたくない内容なら、この部屋は完全防音だし盗聴器なんかの類いも気にする事はない。話すことそのものを悩んでるなら、いつか話せる時が来たら話してくれたらいい」

 

悩んでいる原因すら見通すその瞳に圧され、桜は諦めたように小さく息を吐いた。

 

「この秘密は……まだ誰にも話したことがありません。だから同じように九代目も他言無用でお願いします。お仕えする九代目への、忠誠の証として聞いてください」

 

四歳児には到底似合わない小難しい言葉を並べ、それが伏線かのように紡ぎ出された信じ難い非科学的な話を、九代目はまるで最初から分かっていたようにただ静かに耳を傾けていた。

 

 

「……話してくれてありがとう。これでようやく、桜ちゃんから感じていた不思議な感覚の正体を掴めたよ。安心するといい、これは誰にも話さないし、これからのことについて深く聞くこともしない」

 

「聞かないんですか?聞けば回避できる不幸もあるのに?」

 

「そうだね、きっとそうかもしれない。でも桜ちゃんが心配してる不幸はそれぞれ誰かのものであって君の不幸ではないんだよ。君が無闇やたらに入り込んで解決していいものではない。賢い君なら分かってくれるね?」

 

その真剣な瞳に気圧され、桜はついに何も言えなくなってしまう。

 

一年か二年後に起こることも、リング争奪戦で何があるのかも桜は話していない。

 

その展開を心配し九代目に言ったところで、おそらく自分の責任として受け入れてしまうのだろう。

 

桜の想いを汲み取るように九代目は朗らかに笑った。

 

「なに、桜ちゃんが心配することはない。その時が来たらそれはそれでどうにかすればいいさ。君は自分の人生を大事に生きなさい」

 

「ありがとうございます。それから、私が殺し屋になるに当たってもう一つお願いがあるんですが……」

 

恐る恐るという表情で伺うように言った桜に九代目は次の言葉を待つように見つめ返す。

 

九代目の優しい心に感謝しつつも、さすがに反対されそうかなと逡巡した後、桜は決心したように言葉を紡いだ。

 

「もし、私の生死に関することをまだ何も外部へ知らせていないなら、周りには私が死んだことにしてくれませんか」

 

自らの存在を否定するかのような突拍子もないその願いに、九代目は面食らったように目を見開いた。

 

「どうしてそんなことを……」

 

「先ほど話したことにも関係するんですが、私は本来なら存在しない人間です。私が知りうる流れに、私というあるはずのない人間が介入して何が起こるか分かりません。それなら、あの実験を逆手に取って"沢田桜"という人間は死んだことにしてもらって、私は綱吉の影として生きる方が色々やりやすいかと思うんです」

 

桜の自罰的とも言える説明に九代目は深いため息をつく。

 

歴代でも最高と言われるほど穏健派である九代目ならば、桜の願いは到底聞き入れられない内容のものだ。

 

しかし、桜自身がメリットとデメリットを最も理解しておりそれに見合う対処を導き出している。

 

はるか先のことを考え、己の存在を消してでも守りたいものがあるのだと見せつけられては穏健派と言われる九代目でも、その願いを否定する気持ちにはなれなかった。

 

「本当なら、君の願いは受け入れてはならないんだがね」

 

「そう、ですよね……」

 

当然そういう反応になることも見越していたものの、落ち込むように表情を暗くする桜。

 

「それでも、綱吉くんや家族を守りたいと思ってそこまでする君を拒否するほど私は厳しくもなれない」

 

「……! それじゃあ」

 

「あぁ……こんなことあまり賛成はしないがね。でも桜ちゃんの覚悟を無下にはしないよ。家光にも伝えてなるべく根回しをしておく」

 

「本当にありがとうございます。心苦しいことをさせてごめんなさい」

 

「いいんだよ。それで君の憂いが少しでも晴れるなら私がサポートしよう」

 

感謝するように項垂れる桜の頭を優しく撫で、九代目はよっこらしょと立ち上がる。

 

「さて、君が殺し屋になると決めたんなら準備が必要だね。それについてはこちらで手配しておくから、桜ちゃんはまずリハビリに専念しなさい」

 

「リハビリ?」

 

「そうだ。実験で身体を作り変えられてしまった以上、それは殺し屋としては最大の武器になるだろう。しっかり自分の意思でコントロールできるようにするのが君の課題だよ」

 

そう言うと九代目はまた来るよ、と言い残し扉の向こうへと姿を消した。

 

 

 

──……

───…………

 

肌を焦がすイタリアの夏も半ば近く、実験により受けた桜の傷も大部分が回復の兆しを見せていた。

 

熱を帯びた風を感じつつ、桜の手元には誕生日プレゼントとして貰ったネックレスのチャームが控えめに光る。

 

「実験やる時に取られちゃったけど、あの後抜け出す時に誰かが置いてってくれたんだよね……誰だったのかな」

 

謎の女性を思い出そうとするが、脳裏には霧がかかるように曖昧で上手く思い出せないでいた。

 

うーんと唸る桜がふと気配を感じ顔を上げると、風に吹かれて揺れるカーテンの向こう側のバルコニーに小さな影が映る。

 

艶やかな黒い毛並みに紺碧と深緑の瞳を湛えたその生き物は、桜を真っ直ぐと見つめ控えめに”にゃあ”と鳴いた。

 

「えっ……!?あの時の……?」

 

未だ痛みの残る身体を何とか動かしつつ、バルコニーへと歩み寄ると黒猫は何の警戒心もなく桜に近寄る。

 

幾度となく目の前に現れ桜の心を乱しては謎に消え失せる黒猫に、桜は小さくため息を零した。

 

「もう、本当にそろそろ教えてほしいんだからね。一体君は何なの?」

 

傍から見れば黒猫に話しかける怪しい人間だが、桜にとってはそれなりに重要なことだ。

 

この際、この場に誰が入ってこようと形振りかまっていられるほど余裕はなかった。

 

「私は何のためにこの世界に連れてこられたの?」

 

核心を突いたその質問に、黒猫は答えるわけもなく、はたまた小首を傾げるなどということもなくゆっくりと瞬きをする。

 

至極当然の結果に唖然とする桜の背後で、唐突にノック音と共にガチャリと扉が開かれた。

 

「おや?起きて大丈夫なのかい?」

 

「……九代目」

 

桜の様子にやや驚くものの、九代目はすぐさまソファに座り付き添いのメイドへ指示を出す。

 

「君もそんなところにいないでこっちへおいで。紹介したい人がいるんだ」

 

「……!あの今ここに黒猫が」

 

「猫?どこにそんな子が……?」

 

九代目の不思議そうな顔で元の方へ慌てて向き直るものの、そこに黒猫の姿は影も形も見当たらない。

 

今まで桜が見ていたものは一体なんだったのか。

 

九代目に誘われるままソファに座る桜だったが、まるで白昼夢でも見ていたかのような錯覚に軽く目眩を覚えた。

 

(「そう、そうだよね……考えてみたらここ3階だし……」)

 

外壁には侵入者が容易く入ってこれないようにと凸凹の少ない作りになっているため、とても猫が通れそうな道はない。

 

きっと幻か何かを見たのだろうと桜は半ば無理やりに納得し、出されたハーブティーの香りで忘れることにしたのだった。

 

 

 

___to be continued.




*後書き*
1ヶ月ぶりの更新です。
ついこの前投稿したと思っていたのに早くも1ヶ月経ちました。
2024年の幕開けは地震やら火事やらで大波乱でしたね。被災された方々が1日でも早く元の生活に戻れるようお祈り申し上げます。

そして3月という先の話にはなりますが、夢小説イベントにまた参加してみたいなーと密かに計画中であります。実際できるかどうかは別として。
本編と並行しつつイベント参加用の短編も書きたいと思っていますので、参加できた暁にはそちらもぜひ読んで貰えたら嬉しいです。

最近の話をします。ハーメルンを使ってて気づいたんですが、小説の最後にいつもつける「___to be continued.」を手打ちするのが面倒でここからコピペしよう!とコピー選択したら、なんと「ここ好き」がでてきました。いつどこで使えるものなのか全く知らず、ハーメルンなかなかに面白い機能を備えているのだなとひとつ賢くなりました。実際に使うかどうかは別として。

本編の展開がなかなか進まず申し訳ないところですが、読者の皆さまに読みやすく楽しんでいただけるよう尽力しますのでよろしくお願いします。
無駄に長い後書きとなりましたがここまで読んでいただきありがとうございました!
次回は2月末に更新予定となります。
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