大空の影になりたい夜の子の話   作:雪の細道

21 / 31
20:ようらんのうた

鳴り止まぬ銃声。

 

絶え間なく聞こえる悲鳴。

 

どこからかうっすらと漂う火薬の臭いに桜は顔をしかめた。

 

苦しい胸の内を表すかのように毛布を頭から被って包まるが、建物のあちこちから響く異様な音はダイレクトに耳へと届く。

 

ついに始まってしまった、と桜は苦々しげに眉を寄せた。

 

ザンザスが真実を知って約半年──。

 

冬が終わり、気が緩む暖かい気候が訪れた頃に”それ”は起きた。

 

ひとつの銃声のような轟音と悲鳴から始まったクーデターの被害は瞬く間に広がり、離れた地点の部屋にいた桜にもすぐにそれは知らされた。

 

念の為にと、事前に九代目から持たされた無線で告げられた言葉を桜は脳裏で思い出す。

 

『君の部屋からも銃声や悲鳴が聞こえてるだろう?あの時の約束は覚えているね。君からの手出しは一切禁止だ。なるべく部屋からも出ないようにするんだよ』

 

念押しするようにそう告げ、桜は分かりましたとだけ返し無線は終わった。

 

九代目の重苦感を帯びた声色は桜を心配してのことなのか、それとも約束通り身内争いに踏み込むなという牽制を含んでいるのか。

 

桜にその真意を汲み取ることはできない。

 

保護されている身である故、当然ながら約束を破るつもりも逆らう気もあるわけがない。

 

しかし桜の心の奥底では未だに誰かの手助けをしたいという浅はかな考えがわずかに残っていた。

 

「うん、正当防衛ってことであればオーケーなわけだしね。助けられたから助けた、それくらいならきっと……」

 

そんな桜の考えを見透かされたのか、はたまた偶然か、桜の持つ無線に新たな通信が入り込む。

 

『……桜!無事か!?』

 

ザザ、とひどく雑音が混じった聞き馴染みのある声に桜はハッと我に返った。

 

「パパ?」

 

向こう側では爆音や銃撃の音が激しく、家光がその合間をかいくぐって連絡をしてくれたことが分かる。

 

『九代目からも言われたと思うが、くれぐれも部屋からは出るんじゃないぞ。そこら中にヴァリアーの幹部やら隊員が武器持ってうろついてるからな、お前ではおそらく対応できない』

 

「……大丈夫、分かってるよ」

 

『いいか?お前のことだ、無茶して誰かを助けようなんて考えてるかもしれんがそれだけは絶対にやめてくれよ。今そっちに向かってるから大人しく待ってるんだぞ』

 

案の定、自身の愚かな考えを見透かされていたことに桜は静かに苦笑した。

 

「パパも気をつけてね」

 

そうして無線を交わしてる間にも、部屋の外では徐々に戦渦の音が近づいていた。

 

自身の能力で耳をそばだてると、ヴァリアーからの攻撃に応戦すべく九代目側の構成員が向かっては次々と倒れていくのが聞き取れる。

 

「せめて……私があそこにいれば……」

 

傷つく人が減ったかも、と考えたところで桜は自身の両手が震えていることに気づいた。

 

いつ誰が襲ってきても抗戦できるようにと、護身用の拳銃を握り締めたその手は恐怖のためか小刻みに震えていたのだ。

 

そんな現実に桜は驚いたように目を見開く。

 

しかしそんなことはむしろ仕方がないとも言える。

 

転生して精神が大人びているとはいえ、やはり戦争とは無縁の日本で生まれ育っているのだ。

 

エストラーネオファミリーにいた時ですら、正当防衛として意識せず咄嗟に動いただけだ。

 

自分の頭でしっかり考えて他人を迎え撃つ行動を起こすのはこれが初めてといって過言ではない。

 

そんな事実に直面して震えた現実に、桜は己に打ち立てた覚悟というものがどれほど甘かったかを思い知らされた。

 

それと同時に、半年ほど前、ザンザスが出生の秘密を知った日に九代目に言われたことが脳裏に蘇る。

 

”まだ六歳” ”未熟な子”

 

庇護するべき対象として表したその言葉に、自分は他人から見ればただの六歳の幼い子供なのだと忘れていたことを思い出した。

 

そして九代目にその言葉をかけられた時、桜は自分で”自分の身は自分で守る”と反論もしていた。

 

その条件で修行をさせてもらった以上、手助けをした場合と同時に自分が怪我をしてしまったらその信用が無くなる可能性もある。

 

いつまでも震えていたら万が一の時に応戦ができないことは必至だ。

 

「手助けどころか自衛もろくにできてなかったら”それ見たことか”ってなるよね」

 

少しづつ騒がしくなる外の様子に桜は決意するように立ち上がった。

 

握り締めた拳銃は、九代目が桜のためにと女性向けの使いやすいタイプをさらに軽量化した改良型だ。

 

そして内側のグリップパネル部分には、桜が三歳になったばかりの頃に出会った……もとい、ナチュラル不法侵入した女性の左頬にあった紋章を刻んでいる。

 

エストラーネオファミリーでネックレスを返してくれた人も、桜の予想ではその時の女性だと踏んでいた。

 

忘れないための手掛かりと、これから先殺し屋として生きる目標にと桜はその紋章を刻み込んだ。

 

「うん、大丈夫。九代目との約束通り自分のことは自分で守れる。そして綱吉のことも影から支えられるように頑張るね」

 

まるで誰かに言い聞かせるように呟くと桜は出入口の直線上に立った。

 

「そのためにも能力はフルに使って慣れさせないとね。実験で無理やりされたものだからちょっと癪だけど」

 

外から聞こえるわずかな瞬間での連続した発砲や切り裂く音から推測して、どうやら桜のいる建物では片っ端から部屋を襲っているものとみられる。

 

いつこの部屋に辿り着いてもおかしくない状況になりつつあり、音だけで把握するより他の能力も使った方がいいと桜は神経を集中させた。

 

桜の人体実験により得られたものは聴覚や嗅覚など、五感を基本として動物並に研ぎ澄まされた器官が主な能力である。

 

普段は聴覚だけで遠くの音も聞き取っているが、今の状況は複数の敵が拳銃や刀剣などの様々な武器を持っている。

 

あらゆる音が入り交じった中では聴覚だけでは心もとないと判断し、触覚から付近の空気振動で距離感を把握したのだ。

 

「うーん……あと数mってところかな?そうだ、私のこの能力、超五感って呼ぼうかな。五感以外の能力は特になさそうだし」

 

超五感はちょっとダサかったかな、などと呟きながら銃口をドアの方へ向ける。

 

そのたった数秒後、勢いよくバン!と開けた出入口からは体格たくましいヴァリアー隊員が桜の姿を視界に入れるなり立ち止まった。

 

「なんだガキじゃねえか。あばよ」

 

一瞬呆気に取られるものの、言い終わるやいなやすぐに持っていたライフルを桜に向ける。

 

しかしそれよりも先に圧倒的な早さで隊員の眉間に穴が空き、為す術もなく地に崩れ落ちた。

 

「開けたらすぐ撃ってくるものだと思ってたなぁ……ヴァリアークオリティって言われるくらいだけど本当に強いのは幹部だけなのかな」

 

拍子抜けしたように床に沈む隊員を一瞥し、桜はそっと廊下を覗く。

 

本来ならば他の隊員や構成員に見つからないように、倒した敵は部屋に入れる予定であったが桜の力では難しいと判断したのだ。

 

もはや隠れることも不可能とし、桜は向かってくる銃弾と敵をギリギリ紙一重で躱しながら歩を進めた。

 

「初めての実戦はキツイな……ていうか九代目はどこにいるんだろう。原作で見たような地下なんて見たことも聞いたこともないんだよなぁ……」

 

ぶつぶつと半ば文句を垂れながら当てずっぽうで進むと曲がり角から急に人影が飛び出してくる。

 

「わぁ」

 

「桜!?」

 

足音と気配から敵ではないと分かっていたためにさほど驚きはしない桜。

 

そして人影の正体は先ほど無線で連絡を取っていたばかりの家光だった。

 

「お前どうしてこんなところに!部屋で待ってろって言っただろ、全く……」

 

桜ならやりかねないと分かっていたのか、苦笑気味で叱りつけるが怪我がないのを確認して安堵したようにため息をこぼす。

 

「ごめんなさい……急に襲われちゃったから仕方なく……」

 

「まあいい、怪我がなくて何よりだ。ひとまずお前を安全なところに連れてく」

 

「どうして?ここまで自力で戦えたし足手まといにはならないよ?それに九代目も探さないと」

 

無鉄砲な娘にやや呆れながらも、家光はしゃがんで桜と目を合わせた。

 

「それは分かってる。かすり傷ひとつなく返り血だけなのはお前の実力と能力あってこそだ」

 

「それなら……!」

 

「でも実戦経験は皆無だろ。ここまで生き残れたのはお前がまだ子供で、相手が運良く油断しただけだ」

 

桜の修行の成果を認めつつ、しかし戦場に残りたがる娘を家光は優しく諭す。

 

「お前は医療チームがいる安全なところにいてくれ。それに九代目の居場所も突き止めないといけないからな」

 

無線で九代目と連絡を取ろうと険しい顔つきになる家光に桜はここぞとばかりに畳みかけた。

 

「それなら私知ってるよ。白い柱がたくさんある地下のどこかにいる」

 

「お前……なんで、どこでそれを……」

 

家光は驚きで目を見開くが、桜に手を掴まれたことで我に返る。

 

「いいから早く!私を送り届ける時間なんてないんじゃない?」

 

「くっ……!でもこれからお前が経験するであろう任務と変わりないぞ、それで着いて来れなかったらすぐ医療チームのところに連れてくからな!」

 

「もちろん!」

 

桜の指し示す地下に心当たりがあるのか、走り出した家光は一言も口に出さずまっすぐどこかへ向かっていた。

 

階段をひたすら降り、割れて落ちた電灯を踏みつけながら廊下を幾度も通り抜けたところでまたもや人影とぶつかりそうになる。

 

「あぶね!っと、家光さん!」

 

角から飛び出してきたのはメッシュ髪の若い男性だった。

 

家光さん、と呼んだその男性はすぐさま九代目についての情報を交わす。

 

「そうか分かった。俺達もすぐに向かう」

 

「くれぐれもお気をつけて。……と、そちらは家光さんのご息女ですね?」

 

後ろに立っていた桜を確認すると、目線に合わせてしゃがみこんだ。

 

「前に一度だけ顔合わせで会ったよな。オレはガナッシュ・Ⅲだ。ちゃんとした初めての会話がこんな時とはな」

 

「いえ、クーデターじゃ仕方ありません。ガナッシュさんにもお怪我がなくて何よりです」

 

くしゃりと頭を撫でられ桜はやや気恥しそうにうつむいた。

 

ほんの数秒その場に和やかな空気が流れるが、直後に上階から複数の銃声が響き、すぐさま三人の顔つきが戻る。

 

「早く九代目の元へ!後ろは任せてください」

 

「ああ、頼んだ!」

 

暗い地下へと続く階段を駆け下りるが、照明はほとんど破壊され足元は敵味方の入り混じった死体がいくつも転がっていた。

 

「うっ……死体だらけ」

 

顔をしかめてボソリと呟いた桜に、躓かないように慎重に足を進める家光が声をかける。

 

「分かったか?これが戦争だ。今回はクーデターっていう内部抗争だったが、本来はボンゴレに盾突く敵を粛清するのがほとんどだ。恐れをなして話し合いだけで済むこともあるがな……」

 

水道管の損傷か、それとも死体から流れる血なのか。

 

薄暗がりでどちらとも分からないが、足元からは常にぴちゃぴちゃと液体を踏む音が静かに響いていた。

 

「大丈夫、ちゃんと分かってるよ。さっきも最初に一人殺しちゃったしね」

 

冷めたような口振りの娘に、やはり心境は複雑なのか家光は眉間に皺を寄せる。

 

「もうすぐだ、そこの角を曲がった扉の向こうが──」

 

そう言いかけた家光のすぐそばから雷撃が放たれる。

 

「危ない!」

 

壁や天井まで走る雷撃を見て、桜は咄嗟に前に出て家光を安全な後ろへ突き飛ばした。

 

その強力な一撃は瞬く間に地下の一部を崩落させる。

 

ガラガラと音を立てて崩れた瓦礫のすき間からは辛うじて桜の頭が見えた。

 

「桜!大丈夫か!?」

 

「こっちは大丈夫だよ!パパは怪我してない?」

 

「俺も大丈夫だ。それよりこの瓦礫が邪魔ですぐそっちには行けそうにない、お前一人で行けるか?」

 

「うん、九代目が心配だから私だけで行くよ。それより敵は近くにいないの?」

 

土煙で口元を抑えながらも、家光は周囲を注意深く見渡す。

 

「ああ、どうやら近くの戦闘でこっちまで雷撃が伝わっただけらしい。桜の方に敵が来るかもしれないから気をつけろよ」

 

「うん分かった、パパも気をつけてね」

 

気配で周りを探りつつ、桜は家光の言った扉を目指して走り出した。

 

クーデターが始まってから既に相当な時間が経っている。

 

かなり近い距離まで進んだはずだが、九代目とザンザスとの話し声や戦闘の音など聞こえてないことに桜は焦りを覚えていた。

 

しかし間に合ったところで桜に何かができるわけでもない。

 

一体何に対する焦りなのか自身の気持ちに疑問を抱きつつも、やっと辿り着いた重たげな扉をおそるおそる押し開けた。

 

その先は原作でも目にした、何本も白い柱が立ち並ぶ冷たい地下が眼前に広がっていた。

 

既に戦闘が行われた後なのだろう。

 

柱にはいくつもの無数の大小様々な穴が深く刻み込まれており、相当な戦闘の激しさが見て取れた。

 

「あれは……スクアーロ?」

 

慎重に歩を進めると、数十m先の柱の影で無造作に投げ出された足と銀髪が見え隠れしている。

 

ならばこの近くに──、と何歩か出たところでパキッと瓦礫を踏み潰す音が響く。

 

たまたま運良く柱の影にいたため、音がした方をそっと覗くとそこには九代目とザンザスが満身創痍で睨み合っていた。

 

「まさか おまえがここまでできるとは思わなかったぞ 老いぼれが……!!」

 

ザンザスの顔からは血が滴り、九代目は老いてもなおその強さがザンザスを上回っているのだと分かる。

 

「家光はおまえを殺すなと言ってくれた……だが、これだけの犠牲を出した以上、ボスとしておまえを生かしておくわけにはいかん……せめて…わしの手で……」

 

悲痛な面持ちで覚悟を決めようとするが、その言葉はザンザスには別の意味として受け取ってしまう。

 

「やっと本性を出したなジジィ!これでおまえの念願が叶うわけだ!!」

 

「なぜだ……なぜ おまえは……」

 

「うるせぇ!それはおまえが一番よく知ってるはずだ!」

 

吐き捨てるように紡がれた言葉に、影から聞いていた桜は思わず唇を噛みしめる。

 

何かほんの少しでも助けになれるようなことができていれば……と後悔する桜だったが、心苦しくもこれが本来あるべき展開だったのだと雑念を振り払うように目を閉じた。

 

「わかったら かっ消えろ!!」

 

「……皆すまん……やはり わしには……」

 

最後の一撃を決めるべく憤怒の炎を宿して向かってきたザンザスに、九代目は辛そうな面持ちでステッキを構える。

 

「なんだこの技は!?」

 

ゆらめく炎に続いて冷たく硬い牢獄がザンザスを包み込む。

 

その瞬間、桜の足は弾かれるように動き、気がつけばザンザスの前に飛び出していた。

 

既に下半身や背後のほとんどが氷漬けにされており、封印されるまで幾許もない。

 

「ザン兄……」

 

「桜……てめぇもだ……てめぇも許さねえからな!ぐわぁ゙ぁ゙ぁ゙!!」

 

ごめん、と謝りたかった言葉は声にならず、それが心に届くこともなくザンザスはひと時の眠りについた。

 

パキパキと氷の弾ける音が響く中、ザンザスを見つめる桜の肩に温かい手が置かれる。

 

「桜ちゃん……」

 

「九代目……約束ちゃんと守れなくてごめんなさい」

 

「いいんだよ。ここまでのことは家光から無線で聞いている。怪我もないようで良かったよ……うっ……」

 

穏やかに笑う九代目だったが、ザンザスとの戦闘で深手を負ったのか苦しそうに膝をつく。

 

「九代目!!早く手当てを……!」

 

 

その後、現場に到着した医療スタッフによって九代目を始めとした負傷者の手当てや、今回のクーデターによって命を落としたボンゴレやヴァリアーの構成員の回収でボンゴレアジトは対応に追われた。

 

 

───…………

────…………

 

 

 

「九代目、お加減はいかがですか」

 

クーデターから一週間が経ち、桜は九代目のお見舞いに訪れていた。

 

「ありがとう。大した怪我じゃなかったからこの通りすっかり良くなったよ」

 

「そうなんですか……?」

 

両手を軽く振ってみせるものの、頬にはガーゼが貼ってありシャツのすき間からは肩に巻かれた包帯が見えている。

 

桜がクーデターの日に見た時は到底一週間で回復できるような怪我ではなかったはずだ。

 

それを”大した怪我じゃない”と平然と言ってのける九代目はさすがマフィアのボスと言える。

 

「それで九代目、ザン兄……ヴァリアーはどうなったんですか」

 

クーデターが終わって一週間、反乱軍の首謀者が九代目の息子であるザンザスだったためか、まるで箝口令が敷かれたかのようにその話題に触れる者はいなかった。

 

大半は直接関わっていないために知らぬのは当然として、上層部などその一部は事実を隠蔽するかの如く誰も口を開かない。

 

桜がヴァリアーの処遇を聞きに行ってもゆるりとはぐらかされるのがほとんどであった。

 

「君はどうもザンザスと交流があったようだからね、気になるのも仕方ないだろう」

 

他のヴァリアー幹部とは面識はなかったものの、やはりザンザスを慕う者たちが厳しい処罰を受けると思えば心苦しいものはある。

 

「そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫だよ。マフィアと言えど拷問をするわけでなし。……ヴァリアーは無期限の謹慎処分とした。一部からは解体の声もあったがね」

 

「無期限の謹慎処分……」

 

「危険因子を手元に置いておくなんて、と言われたが、ヴァリアーほど仕事ができる人間は少ない。あの子達もこれから色んな人と関わって価値観も変わっていく。そう簡単に蔑ろにする理由はないだろう」

 

穏やかに語るその様子は、さすが歴代ボスの中でも穏健派とされるだけはある。

 

「さて、桜ちゃんが気になることはそれくらいかな?」

 

「はい。あまり厳しい処罰にならなかったようで安心しました」

 

「そうか……憂いが晴れたようで何よりだ。それでは私の話を聞いてもらおうか」

 

やや目つきが変わった九代目の様子を見て、桜は思わず緩みかけていた背筋を伸ばした。

 

「はは、そう緊張することはない。話と言っても君のこれからの活動についてだ」

 

合間にメイドが淹れてくれたミルクティーを口に運ぶと、ふぅと小さく息を吐く。

 

アールグレイの芳醇な香りが漂う中できりりとした引き締まる空気が流れる。

 

「ボンゴレの中でも随一のクオリティを誇るヴァリアーが謹慎処分になり、その隙を狙って色んな国の敵がボンゴレの人間を亡きものにしようと襲ってくる可能性が高い」

 

「それは私も……ってことでしょうか」

 

「そう考えていいだろうね。そのためにもこれからはより一層精進しなさい」

 

「もちろんそのつもりです。私が選んだ新たな名前……強さを意味する”fermezza(フェルメッツァ)”に恥じぬように」

 

決意を秘めた目で笑う桜に安心感を覚えたのか、九代目も穏やかに微笑む。

 

その時ふいに部屋の外から桜の名を呼ぶ声が響く。

 

涼やかな声質はきっと桜に修行をつけている師匠のものだろう。

 

一礼して背を向けた桜に、九代目は締めくくるように声をかけた。

 

「最後に私からプレゼントだ。殺し屋としての人生はとても苦しく厳しいものになるだろう。そんな幼い君に、毒使いの医者と適切にカスタムしてくれる武器職人を連れてきた。存分に協力してもらうといい」

 

「ありがとうございます。九代目のご期待に添えるよう精一杯頑張りますね」

 

そう言って笑うと、開かれた扉から射し込む光の中へ軽やかに消えていった。

 

 

そして物語は激動の中学生へと走り出す──

 

 

 

___to be continued.




*後書き*
2年前から始まったこの作品もやっと幼少期編が終わりを迎えました。
ずいぶんと長い時間が経ってしまいましたが、ようやく原作沿いに入れそうです。
そしてこの度、pictSQUAREにて本日19日22時から21日21時まで復活夢webオンリーイベントに参加します!
既刊(番外編)のみハーメルンでの展示になりますが、まだ番外編を読んでいない方はぜひこの機会に読んでいただけると嬉しいです。

また幼少期編完結というひとつの区切りを迎えたので、作品に対し読者の皆様がどういった感想や煩わしさを感じているかなど品質の向上に向けてGoogleフォームを活用したアンケートを実施します。3分足らずで終わる簡素な内容なのでこちらもぜひご協力お願いいたします。

ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
これからもより良い作品をお届けできたらと思うのでよろしくお願いします。

イベント会場はこちらから→https://pictsquare.net/gfimun7968m2moaxvp0e0l6b1w8d79a9

イベント参加作品(番外編)はこちら
https://syosetu.org/novel/330533/

アンケートはこちらから
https://forms.gle/dWjjZX2hkQx4dwE9A
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。