オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
アイズ達がダンジョンに潜った頃、ベートは地上に居た。本来ならダンジョンに潜りたかったが酒場で酔った際に【ファミリア】の失態で死にかけた冒険者への暴言、アイズへのセクハラ発言などの罪で主神の奉仕を言い渡されロキの手伝いに。
こういうところが何気に律儀なのだ、彼は。
とはいえ不機嫌そうな顔のまま街を歩いているので視線を集める。
元々種族の女子達にもモテていた彼の容姿は成長してより端正なものとなり、第一級という裏打ちされた実力も示され女冒険者達がきゃあきゃあと黄色い声を上げながら見てくるが、ギロリと睨まれ慌てて去っていく。
「なんや〜、今の結構可愛い子やったのに追い払うなんて可哀想やないか」
「はん、強い雄に抱かれてえなら愛だの美の神以外なら誘うものに恥をかかせねえ馬鹿がいるだろうが」
と、吐き捨てるように言うベート。ヴァルドの事だろう。確かに彼が歓楽街に行くのは事前に誘いを受けていた場合が殆どだ。例外はヴァルドを嵌めイシュタルに食わせた【イシュタル・ファミリア】の元サポーターぐらいか。その例外というのも、ヴァルドの方から会いに行くというものだから「もしや英雄はあの娼婦を!?」などと都市で騒がれていたものだ。
なおリヴェリアに尋問された際は「俺はエルフが好きだ」と答えリヴェリアを狼狽させた。
「そんな事言って〜、アイズたんがヴァルに懐いてるのは知っとるやろ? ああ、そうなったらうちはどないすれば!?」
「一人で盛り上がんな。アイズがあの野郎に感じてるあれは父親とかに向ける類のもんだろうが」
「せやけどそうなると、途端にヴァルドが娘とその
自慢の(元)
「他の女だぁ? そういやババアがあの女とか言ってたな」
「ヴァルの奴な〜、7年前もその女連れて都市を出てるんよ。3ヶ月ぐらいで帰ってきたけど………てか、今更やけど生きとるんかあの女」
「病気でも患ってやがんのか?」
「せやで」
「なら何時ものお優しい英雄様の行動だろうよ」
「にしてはなぁ………」
違和感がある。
人を救うために常に身を削るのはヴァルドのあり方だ。あれもそうだと言われてしまえばそれまでなのだろうが、どうにも違和感が拭えない。だって薬がなければ戦えず、それでも限界を超えて戦い最終的にはヴァルドに斬られていたのに、治療より運ぶことを優先した。まるで運ぶ先を知っているように………。
ついでにオッタルの証言によるとザルドも連れて行こうとしたが、既に死んでるのを見てやめたらしい。
「くだらねえ、どうでもいい。帰ってきててめぇ等は嬉しいのかもしれねえが、俺には関係ねえ」
「何やねん、自分だって『勝ち逃げは許さねえ!』とか言うとったくせに」
「ああそうだ、俺にはそこだけしか関係ねえ」
彼奴が何をしてようと知ったことか、と吐き捨てるベート。ようは何をしてたのかは知らないが、それが何であれ彼への接し方は変えないということだろう。
「相変わらずツンデレやなぁ」
「ぶっ殺すぞ」
その後地下下水道を調べ祭りの際各所にて暴れまわった食人花の同種を旧貯水槽で発見。殲滅したのち地上に戻る。
「祭の時の範囲と数を考えるなら、あそこ以外にもありそうやな」
「蟻みてぇに地下に巣食ってやがるわけだ。面倒くせえ」
「地下、な………」
ロキはヴァルドの『知識』に存在し、しかし結局見つけること叶わなかった存在を思い出す。
「んん? ディオニュソスか?」
「………ロキ?」
と、考え事をしながら歩いているととある神と横道に折れる街の一角にて遭遇する。
貴公子然とした金髪の男神、ディオニュソスだ。眷属であろう美しい黒髪のエルフも連れている。
よぉ、と奇遇だとばかりにロキは声をかけようとして──
「待て」
ベートの一声が止める。
振り返るとベートがディオニュソス達を睨みつけていた。
「そいつ等だ」
「………どゆこと?」
「あの地下水路で嗅いだ残り香は、
意味を尋ねる主神に眷属は顎で一柱と一人を顎でしゃくる。
ロキがディオニュソスを見つめ、ベートは睨み付ける。己の主神を守ろうと身を翻したエルフに、ディオニュソスが制止をかける。
「止せ、フィルヴィス。お前では勝てない」
「ですがっ……ディオニュソス様」
フィルヴィスと呼ばれたエルフはそれでもひこうとしない。己の主神を守るという強い気配を感じさせる。
「逃げも隠れもしない。だからロキ、訳を聞いてくれないか? できれば
「……………」
ロキはその話に乗ることにした。
とあるホテルの
彼等もまた、食人花を追っていたらしい。その理由は一ヶ月前、彼の眷属が殺された事件。正面から近づき首をへし折られた。Lv.2もいた事から下手人は最低でもLv.4の上級冒険者。ディオニュソスは独自に調査を始め、何かを見てしまったがために殺されたのではないかと言う推理材料を見つけた。
そう言いながら、机に置かれたのは極彩色の魔石。
一ヶ月前に見つけたのはこれより小さな欠片だったそうだが。
「子供達の遺体とこの魔石があったのは都市東の寂れた街路。今丁度私達がいるこの周辺だ」
そしてこのあたりでは
「私達はその食人花を追ってあの下水道を見つけた。まあ、モンスターの数を見て断念したが、匂いはその時のものだろう」
ロキの場合は実は祭の日にレフィーヤが怪我させられたのがあの付近だったからなのだが、偶然重なったらしい。
「しかしLv.3以上の冒険者がおる【ファミリア】なら一気に候補は絞れるなあ。まあ
「いや、ヘルメスのように
ヘルメスそんなこともしてたのか。本当、色々信用ならない神だ。
「
神は曲者が多い。例外的なのはよほどのバカか、お
「私にとって都市にいる神は全て容疑者、
その決意に嘘はないように見える。少々思うところはあるが、本気に見えた。
「で、うちのことは?」
「………限りなく白になった、かな。少なくとも都市の神々の中では一番信用してるよ」
どうだかなー、と胸の中で呟くロキ。
「………時にロキ、ヴァルド・クリストフの動向を知ってるかい?」
「あん?」
「彼が帰還したタイミングで起こった事件。人目を気にしない弱小派閥への
「殺すぞ」
ピリ、と空気が張り詰める。天界にて神々に殺し合いをさせたトリックスターの気配を滲ませディオニュソスを睨むロキ。ディオニュソスは失言だった、と肩をすくめる。
「だが彼はギルド………いいや、ウラノスと繫がっている」
「……………」
「そうでなければ、5年前の【ロキ・ファミリア】に対するギルドの対応がなかった説明がつかない。ロイマンが戦力流出を許すとは思えない、より上からの指示があったと見るべきだ」
「まあそれは薄々思っとったけど、今回の件とは──」
「いいやロキ、忘れたのか」
と、ディオニュソスが首を振る。
「
そして神々が『面白そう!』という理由で深く考えず認めた。怪物を地上に運ぶ、それは間違いなくギルドが始めた事だ。
「……………」
ディオニュソスは確証も証拠もない『もう一つの迷宮』については知らないのだろう。ロキとて存在を知ってるだけのそれを使えば、そもそも関係なくなるが敢えて今は言わない。ギルドが、ウラノスが何かを隠してるのは確かだろうし。
「というわけでロキ、探りを入れてきてくれ」
「はあ?」
「ヴァルド・クリストフがギルドの私兵であった場合、元主神の君の言葉なら止まるだろう。そうでなくともLv.4だ、私の眷属では危険に晒すだけ。その点ロキのところは第一級もいるじゃないか」
と、悪びれる様子もないディオニュソスにロキは顔を歪める。
「ロキとてここで引き下がるつもりはないだろう? そして、ヴァルド・クリストフとギルドの関係も気になるはずだ」
そこはまあ、否定しない。
しかたないとロキが折れる。そのままお互いの眷属と合流し解散しようとした時だ………
「「っ!?」」
地震。否、ダンジョンが揺れた。
「ロキ、今のは………」
「ああ………チッ、ベート。ちょいとダンジョンに向かってくれ」
「ああ? 何階層だよ………」
「んなもん、
その曖昧な返答にベートが眉根を寄せる。
「フィルヴィス、君も行ってくれ。時期が時期だ、関わりがあるかもしれない」
「し、しかしそれでは貴方の護衛が………」
「フィルヴィス、頼む」
「ベート、自分もや」
困ったように微笑むディオニュソスと有無を言わせぬロキ。二人の眷属は仕方なくダンジョンに向けて走り出した。
「おや、ベートさん?」
「ああ? 何でお前も走ってやがる」
と、ベート達と並走するように現れた小柄な女にベートが顔を顰める。
「今ダンジョンで異変が起きましたよね?」
「ああ………」
「そして今、オラリオにはヴァルドがいる。ならばこの異変に彼が関わっている」
何だその理屈、とベートとフィルヴィスが走っている女、アミッドを見る。
「………私はそう確信しています。よしんば関わっていなくても関わりに行きます。ダンジョンでなにかあるたびに、彼は飛び込む。いい加減に首輪でもつけましょうか」
「デ、【
と、こんな時にフィルヴィスが尋ねてくる。
「恩人です……何時も無茶をするから、気が気でない。影すら踏ませてもらえないあの人に追い付こうと、努力していますがあの人は振り返らないでしょう。その程度の関係です」
「………………」
「くだらねえ事話してんな女ども。てめぇ等足を引っ張るんじゃねえぞ」
「抜かせ
「これでも
はい、ということでアミッドさんはLv.4でした!
そりゃ食人花程度なら瞬殺ですよ。因みに並行詠唱も使えるし発展アビリティに『魔導』があるからチート級の魔法に磨きがかかるしマジックアイテムもさらに強力な物が造れる
なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート
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