オラリオに失望するのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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収束

 雷光を纏った巨大な鞭が何もかも纏めて吹き飛ばす。食人花達は雷に焼かれ、巨大花に砕かれ、巨大花自身も内部の魔石を焼かれたのか灰へと還る。

 

「あはは。すごいすごい!」

「本当に、無茶苦茶ね! Lv.が上がって理不尽さが増してるわ!」

「笑っている場合か、妖精共」

 

 とはいえその大雑把な攻撃はディース姉妹やレヴィスには躱されていた。

 ただ一人、オリヴァスだけはまともに喰らい壁にめり込んでいて。

 

「ぐ……あ、ば、馬鹿な………!」

 

 全身が雷光で焼かれ、骨も砕けているのに尚も生きている。それは最早拷問にも近いだろう。だが死なない。

 

「レヴィス…時間を、時間を稼げ! 我々が揃えば、如何な英雄であろうと…………!」

「…………その言葉は聞き飽きた」

 

 オリヴァスの言葉にレヴィスは蔑みの目を浮かべその胸に手を沈める。

 

「が、あ……な?」

「数をいくら集めたところで、質が伴わければ意味がない」

「よ、よせ! 私はお前達と同じ、『彼女』に選ばれた人間!!」

「選ばれた? お前はあれが女神にでも見えているのか? あれがそんな崇高なもののはずがないだろう。お前達も、そして私も()()の触手にすぎん」

 

 引き抜かれた腕に握られる極彩色の魔石。それを見た瞬間ヴァルドが走り出し、ディナが立ち塞がる。

 

「駄目よヴァルド。もっと私達だけを見て?」

「レミリア!」

「はい!」

 

 と、ヴァルドの言葉に今の今まで隠れていたレミリアが飛び出し雷をまとった剣をディナに向かって振り下ろす。

 ベート達とこの階層に来て、殿として後方から迫るモンスターを相手し、先程追いついたのだ。それに気付いたヴァルドが手信号で待機を命じていた。

 

「!?」

 

 突然の襲撃に対応が遅れるディナ。スティレットで受け止めるも、ヴァルドがその横を通り抜ける。

 

「起きろ!」

『『『────!!』』』

 

 レヴィスの言葉に壁一面の未熟児達が産声を上げ宝玉から飛び出ると散らばるモンスターに寄生し女体型へと変異する。その内一体がヴァルドの前に立ち塞がり、蹴り殺すも一瞬の猶予にレヴィスが背後に飛びながら魔石を噛み砕き飲み込んだ。

 そして、先程ととは比べ物にならない速度でヴァルドに肉薄し拳を放つ。

 

「っ!」

「軽い」

 

 ヴァルドの頬に触れた瞬間拳の骨が砕け、ヴァルドの拳がレヴィスにめり込む。一度も地面に触れることなく壁まで吹き飛んだ。

 

「レミリア」

「っ! はい!」

 

 ヴァルドの声にディナに防戦一方になっていたレミリアがヴァルドの下まで移動する。

 

「お前はアイズと赤髪をやれ。俺は邪妖精(リャナンシー)を相手する」

「っ! 師匠、私は………」

「お前一人で勝てる相手ではないだろう。ベート! 【ヘルメス・ファミリア】を撤退させつつ守れ」

「命令してんじゃねえよ!」

「頼んだぞ」

 

 ベートの返答を聞かずディース姉妹へと駆け出すヴァルド。ベートは舌打ちして【ヘルメス・ファミリア】を睨む。

 

「聞こえたろうが! 足手纏いの雑魚どもはさっさと失せろ!」

 

 聞くんだ、とメリルは思った。口には出さない。言い合いになったら時間の無駄だからだ。

 

「既製品だというあの胎児の回収をします! あれが今回の異変の中心!」

 

 証言だけでなく証拠も持ち帰る。それをしなくてはここまで来た意味が半分はなくなる。ベートに断りを入れ返答を待たずに駆け出すアスフィ。

 

「後ろだ!」

「え、がっ!?」

 

 と、アスフィの背後から迫った黒ローブの仮面の人物がアスフィを蹴り飛ばした。疲労しているため正確ではないが、Lv.4を蹴り飛ばせるとなると、Lv.4か下手しても3の第二級と同等。

 

「っ! 追いなさい、ルルネ!」

「ま、待てぇ!!」

「馬鹿が! 離れるんじゃねえ!!」

 

 ルルネが追おうとしベートが叫ぶ。このままベートがルルネの代わりに仮面を追えば、追いつけるだろう。アイズとレミリアを相手しながらそれを確認したレヴィスは巨大花に向かって叫ぶ。

 

巨大花(ヴィスクム)! 枯れ果てるまで産み続けろ!」

「!?」

 

 ドシャリと、その言葉に反応するようにルルネの前に未成熟の食人花が落ちてくる。その一匹ではない。ドシャドシャと一度に降る音は増えていき、天井や壁にぶら下がっていた蕾から現れた食人花が地面を覆い尽くしていく。

 数は300、それとも400? いいや、おそらくもっとだ。

 『怪物の宴(モンスターパレード)』という、ダンジョンで起こる脅威を思い出す。だけど、これはそれ以上の!!

 

「来るぞおお!」

 

 生まれたばかりの食人花は誰に命令されるでもなく近くの獲物へと襲いかかる。ベートがルルネ達に襲いかかる食人花を炎の魔法を纏った長靴で蹴り飛ばしながら【ヘルメス・ファミリア】を合流させる。

 

「こんな、こんなの…………どうすれば!」

「絶望してる暇があるなら戦え!」

 

 食人花と女体型の群。一匹一匹がLv.2からLv.4はあるモンスターが数百匹。第一級冒険者でも命を落としかねない絶望の光景。

 その場の主な闘争は3つ。

 一つは【ヘルメス・ファミリア】とベートの撤退戦。レフィーヤ達は食人花の襲撃を避けながら【ヘルメス・ファミリア】と合流を目指す。

 一つはヴァルドとディース姉妹の殺し合い。

 そして最後はレヴィスの猛攻に晒されるアイズとアイズを援護するレミリアだ。

 

「っ!!」

 

 第一軍と第二軍という違いはあれど、最近まで同じLv.5でヴァルドの弟子という共通点のある二人はよく組んだ。連携だってかなりのものだ。

 その二人をしてなおも圧倒される。

 

「忌々しい剣技だ」

 

 だが押しきられない。

 ギリギリ抗う。

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)!!】」

「【エアリアル!!】」

 

 アイズの扱う風が剣の威力を引き上げレヴィスの持つ大剣をギシギシと唸らせる。

 

「【この燃える山越えたなら、あなたの思いに応えましょう。勇猛示した愛しき英雄(ひと)よ、私は貴方の愛を欲するのです。己を偽る王ではなく、本当の貴方を想わせて!】」

「【ロヤリテート・ブリュンヒルド!!】」

 

 レミリアの並行詠唱が唱えられ、剣が雷を纏う。ただの付与魔法(エンチャント)と侮るなかれ、詠唱の長さに相応しい威力に加え、精神力(マインド)を後から焚べ威力を底上げできる火力変動効果の魔法。

 この場にいるヴァルドへの忠誠心(おもい)を糧に激しく輝く雷火は魔力に反応した食人花を悉く焼き尽くしながらレヴィスへと叩きつけられる。

 

「………………」

 

 取りあえず全員すぐに死ぬことはないだろう。

 

「【──間もなく、()は放たれる】」

「!」

 

 聞こえてきた詠唱は、何度も聞いたエルフの女王(彼女)のもの。Lv.3が放とうとも、その威力は絶大だろう。

 

「見て見てお姉様! ヴァルドったら、あの方の詠唱(うた)を思い出して余所見だなんて!」

忌々しい(尊い)あの御方を思い出したら、私達の事なんてどうでもいいのね!」

 

 拗ねるように責める妖精達。彼女達の意志に従い、女体型が群れとなって襲ってくる。

 『既製品』に劣る『量産品』なれど、元の状態でLv.5の前衛、それも身体能力に特化した女戦士(アマゾネス)の拳を平然と耐える食人花をベースにした女体型。その硬度はかなりのもので、ヴァルドといえど素手では………

 

「邪魔だ」

 

 蹴りがめり込む。女体型の腹部が千切れた。

 拳がめり込む。女体型の頭部が爆ぜる。

 裏拳が叩き込まれ、女体型の首が明後日の方向に吹き飛んだ。

 打撃に高い耐性を持つ? 無効化ではないのなら力で押し通せばいい。

 無効化でも突破しそう? それは気合が足りてるだろう。

 

「ふふ! あはは! 凄い凄い、なんて理不尽!」

「それならこれはどうするの? 【開け、第五の(その)。響け、第九の歌!】」

 

 今この瞬間まで()()()()()()()()()()()()起動させる詠唱を完成させる(ヴェナ)。現れる4つの魔法陣(ほうもん)がヴァルドを囲う。

 

「【呑め(サータ)──っ!】」

 

 あらゆる魔法を飲みこむ反則級の魔法を使おうとしたヴァルドはしかし固まる。これは違う………()()()()

 

「「さあ、どっちを選ぶの!? ()()は全部なんて選ばせないわ!」」

 

 キャハハアハハと、妖精達は残酷に残虐に笑う。両手を握り合い、指を絡め合う(ディナ)の『魔力』が流し込まれ、(ヴェナ)は魔法名を告げる。

 

「【ディアルヴ・ディース】」

 

 魔法が狙うは【ヘルメス・ファミリア】とベート達、アイズとレミリア。効果のかわりに範囲の少ない【サㇳゥールナーリア】では、位置的に助けられるのはどちらか片方。

 ヴァルドは、地面が爆ぜるほどの踏み込みでアイズ達へと向かう。

 

「数じゃないのね、意外だわ!」

「躊躇なく選ぶのね。残酷(素敵)ね!」

「【呑め(サータン)!】」

 

 ヴァルドの魔法が魔法陣から放たれた炎を飲み込む。ならばと彼に選ばれなかった者達が炎に飲まれた様を嘲笑おうとして………

 

「「………え?」」

 

 居なかった。燃え尽きたのではない。精霊の力を取り込み強化されたとはいえ、ベート・ローガの死体ぐらいなら残るはずだ。

 というか地面がなかった。先程までヴァルドが居た場所。というか、ヴァルドが踏み抜いた場所から亀裂が広がり、縦穴が生まれていた。

 

「………ああ、成る程ね! ……………え?」

「それって、あり?」

 

 元々ヴァルドが暴れてボロボロだった食料庫(パントリー)の床を、文字通り砕いたのだ。下の階層まで。【ヘルメス・ファミリア】とベート達はそのまま炎に焼かれる前に25階層に落ちたのだ。

 

 

 

「いいか馬鹿エルフ! 返事はしなくていい、魔力を暴発させないことだけ考えろ!」

「〜〜〜!!」

 

 頷くことも出来ず瓦礫を跳ねるベートに抱えられたレフィーヤ。並行詠唱よりは難易度は下がるだろうが、だからといってその練習もしてない魔導師が体験していい経験ではない。

 

「あの野郎何考えてやがる!!」

「私達の事を考えてくれたのだろう」

「黙ってろ!!」

 

 フィルヴィスの言葉に叫ぶベート。と、レフィーヤの魔力に引かれた食人花が、共に落ちてきた奴等に加え上の穴から新たにやってくる。

 

「【や、焼き尽くせ、スルトの剣!】」

「気張れお前等! この雑魚でも踏ん張ってんだ、情けねえ姿晒すんじゃねえぞ!!」

 

 ベートの言葉に【ヘルメス・ファミリア】達も食人花の猛攻を凌いでいく。

 

「【我が名はアールヴ!】」

 

 

 

【レア・ラーヴァテイン!!】

 

 

 

 ひび割れ脆くなった床を砕き現れる炎の柱。その魔法を知らないレヴィスは、知っているアイズとレミリアに遅れを取る。

 

「リル・ラファーガ!!」

「トルエノ・エスパーダ!」

 

 風の矢となったアイズがレヴィスの剣を砕き、ヴァルドを思わせる雷光の剣が体を切り裂く。

 吹き飛ばされたレヴィスは血を吐きながら胸に手を当てる。魔石は免れた。

 

「今のままではお前等には勝てないか。引くとしよう」

「逃さない!」

巨大花(ヴィスクム)!!」

 

 レヴィスの命令で、蕾がなくなるまで食人花を産み続けていた枯れかけの巨大花が最後の力を振り絞り動く。その巨体を一瞬でどうにかするには魔力を消費しすぎた。

 

「アリア、59階層にいけ。丁度今面白いことになっている。お前の知りたいこともわかる」

「どういう意味ですか?」

「薄々感づいているのだろう? お前の話が本当だったとしても、お前に流れる『血』が教えているはずだ。お前が自ら行けば余計な手間も省ける。地上の連中は私達を利用しようとしているようだが、精々こちらも利用してやるさ」

 

 その言葉の意味を問いかけようとして、巨大花が地面に体を叩きつける。

 レヴィスはその隙に逃げた。

 更に今の魔法の衝撃で食料庫(パントリー)全体の床が崩れ始め大主柱が崩落に巻き込まれると同時に食料庫(パントリー)そのものの崩壊が始まる。

 

「私達はどうする、お姉様?」

「そうね。まだ無事なヴァルドの仲間を、一人でも殺しましょう?」

 

 と、ディナとヴェナはあくまでも己をヴァルドの心に残そうとして………

 

「ディナ! ヴェナ!」

「「?」」

「来い」

 

 初めてディース姉妹の名を呼び、片手を突き出し初めて名前で誘うヴァルド。初めて名前で呼ば

 罠? 何かを企んで初めて名前で呼ばれ

 行く必要はな名前で呼ばれた

 それよりも下の冒名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた名前で呼ばれた

 

「「行くっ♡」」

 

 刹那の動揺はたった1つの喜び(感情)に塗りつぶされ、二人はヴァルドへと向かう。その二人の間を通り抜ける影。

 

「「!?」」

 

 『黒風(かぜ)』を纏った一本の大剣。

 ………()()

 

「あ………」

「おね、さ………ま」

 

 一瞬。刹那の間に、何時かの悪夢のように斬り刻まれるディース姉妹。そのまま瓦礫とともに25階層へと落ちていった。

 

 

 

 

「死ぬかと思った〜!」

「最後なんだよ! 24階層の天井も降ってきたぞ!」

 

 ぎゃいぎゃい騒ぐ【ヘルメス・ファミリア】。幸いにも、死者はいない。最良の結果だがそのために強制階層移動させられたり降ってきた瓦礫を必死に避ける羽目になったり轟音に引き寄せられてきた下層のモンスターから逃げたりと大変な目にあった。

 なんとか18階層まで戻ってきた。ヴァルドは報告があるとさっさと地上に戻ってしまった。

 

「ですが………全員でまた戻ってきました」

「お、じゃああの酒飲みにいきましょうよ!」

 

 アスフィの言葉にキークスが叫ぶ。ここに来る前、験担ぎとしてボトルの半分を15人で分け呑んだのだ。そして全員居るから、あのボトルを空にできる。

 

「そうですね。疲れました、一度宿を取ってから帰還しましょう」

 

 

 

 

 

闇派閥(イヴィルス)の残党、怪人(クリーチャー)、下位精霊を使った精霊武器、か…」

「何よりも腹立たしいのは異端児(ゼノス)の件だ……俺への嫌がらせのためだけに」

「それはお前が気にすることではない」

 

 ウラノスの祈祷の間。ウラノスを含め、3人の人影は各々の意見を言い合う。

 

「元よりかの『妖魔』共が相手ならば、異端児(ゼノス)でなくとも誰かを殺したろう。そこに君の責は存在しない」

「…………俺がそれに納得できん」

 

 美味くもない煙草を吸いながら顔を歪めるヴァルド。ウラノスはその言葉に静かに目を伏せる。

 

「だが、それは目下の危険を見過ごす理由にもならん。異端児(ゼノス)達を後で闘技場(コロシアム)に閉じ込めるとして………闇派閥(イヴィルス)の件、どうする?」

「何やら不穏な言葉が聞こえた気がするが、どうするとは?」

「公表するか否か、だ」

 

 余計な混乱を避けるなら公表は控えるべきだろう。だが………

 

「弱体化したとはいえ【正義の派閥(アストレア)】も、5年前より強くなってる【都市の憲兵(ガネーシャ)】もいる。俺も含め、最強の派閥(【ゼウス、ヘラ】)以来のLv.8もだ………公表すべきだと思う」

「ふむ………ネームドが生存、あるいは復活してる可能性を考えれば、都市の連携は不可欠か」

「あの頃とは情勢が違う。【フレイヤ】と【ロキ】が足並みを揃えてくれるか」

 

 暗黒期でさえ、お世辞にも纏まっていたとは言い難い。暗黒期が終わり距離が空き、時折戦ったりした2つの派閥が足並みを揃えられるか………

 

潤滑油(アストレア)が居るから大丈夫だろう」

 

 3人の脳裏に浮かぶ、うふふ、と優しげな笑みを浮かべる女神。あの女神が二柱(ふたり)の間に入ってくれれば、確かに足並みを揃えるとまでは行かなくとも余計な敵対はしないだろう。

 

「公表するか、するとしてタイミングはどうするかはそちらに任せる。俺は一度ホームに戻って、明日ダンジョンに発つ」

「うむ」

「ああ、それと」

「どうした?」

「冒険者の死体から剥ぎ取った武器では、そろそろ限界が来ている。椿と異端児(ゼノス)を会わせたい」

「彼女か………ふむ、少しともに作業をしただけだが、私も問題ないと思うぞウラノス」

「…………お前達がそういうのなら、信用しよう。リド達の負担を減らせるならそれに越したことはない」

「ああ、そうさせてもらおう」

 

 

 

 

 

 ダンジョン25階層。その一角が、瓦礫だらけになっていた。天井にして24階層の床は修復したが、瓦礫の撤去はまだ時間がかかる。

 モンスターは生まれることなく、しかし迷い込んだモンスターが瓦礫をつつく。

 

「!?」

 

 飛び出してきた腕が蟹のようなモンスターを捉え甲殻を握り砕き魔石を抜き取る。

 ガリッと噛み砕く音が聞こえ、やがて腕の持ち主が現れる。片腕が無くなり、片足が潰れ、顔の半分は砕けた骨が除く。辛うじて繋がっている肉体は今にもバラバラになりそうだ。

 灰へと還ったモンスターのドロップアイテムには目も向けず、人影は歩き出す。これでは足りない。これではいずれ………

 

「「……………」」

 

 そして見つける、極上の魔石を持った今の自分と似たような姿となった人影。

 言葉はいらない。敵意はない。

 お互い考えていることは同じで、どっちに転ぼうと本人達にとってはどうでもいいのだ。

 やがて2つの影はぶつかる。

 

 

 

 

 グチグチと湿った音が響き、少女は2()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「危なかったわ! 本当に、死ぬかと思った!」

「ふふ。でも生きてるわ。これでヴァルドを殺しに行ける(愛してあげられる)

「そうねお姉様。でも、暫くは休む必要があるかしら?」

「ヴェナの言う通りね。得難い経験もしたのだし、主神様にステイタスを更新して貰いましょう?」

 

 楽しそうに笑いながら、()()()()()()闇の中へと消えていった。




ヴァルドと煙草
 それなりの過去

「…………妙な明かりが見えたかと思えば」

 夜の中庭でリヴェリアの言葉に振り返るのは、まだ年端も行かない少年。されど世界記録保持者(レコードホルダー)という異例の才覚を見せた若き冒険者、ヴァルドだった。その口には煙が揺れる煙草が先端を赤く輝かせていた。

「体に悪い……格好いいと思っているなら、今すぐやめろ」
「上級冒険者に多少の毒なんざ嗜好品の域を出ないさ」
「お前は耐異常を持っていないだろ」

 初めて下界に発現したレアアビリティ………いや、恐らくは彼の真似をすれば手に入れられる可能性はあるが誰にも真似できていない発展アビリティを選んだヴァルドは耐異常を持っていない。その代わり睡眠時間が大幅に減り、何時もぎりぎりまで潜り寝るを繰り返す。

「肺に汚れが溜まり呼吸がし辛くなる。何故そんなものを吸う?」

 お前らしくもない、そういったリヴェリアから目を逸らしたヴァルドは星を見上げる。

「……カレンが、耐異常を手に入れたら酒や煙草の味を教えてやると言っていた」
「……………彼奴」

 カレン。
 つい先日死んだ、ドワーフを父に持つアマゾネスの女だ。やたらヴァルドを気に入っていた酒飲みで喫煙家。耐異常がレベルの割に高かったのは、間違いなくそんな私生活の影響だろう。

「まあ酒はともかく煙草は吸わないと断ったがな」
「断らなければよかった、とでも思ったか?」
「いいや? だが、まあ………彼奴の顔が思い出せる。俺を庇って、笑って死んだ顔…………思い出したくもないがな」

 自嘲するように笑い、煙を吸う。顔を歪めるのは何も煙を吸ったが故ではないだろう。

「格好いいと思ってるならと言ったな? こんなものは嗜好品。楽しむものであって、格好をつけるものではないさ。煙草が吸えようと酒が飲めようと、それは体が成長しただけであって大人になったわけでもあるまい」
「そうだな…………」
「だから、まあ………弔いだ。これから俺は、死人が出る度にこれを吸う。俺の弱さを忘れないために………カレン達を忘れないために」
「………………」
「そうでもしなきゃ、俺はきっと誰かが死ぬことに慣れてしまうからな」

 ふぅ、と吐き出した煙が空へと登っていく。
 神々の住まう世界は天界と呼ばれているが、天へと向かうこの香りは、果たして届くのだろうか………。

「……………一本、寄越せ」
「………これ、安物だぞ?」
「構わん」
「……………」

 リヴェリアの言葉にヴァルドは紙巻煙草を一本リヴェリアに渡す。

「お前の言うとおりだ。私達は、慣れてしまった。仲間の死を悲しみながらも、()()()()()()()()()と思っている。軽蔑したか?」
「いいや」
「即答か……フフ。嬉しいものだな………」

 リヴェリアはそう言うと星を見つめる。

「受け入れることを強さとは言わないし、引きずることを弱さとは言わない。だが、ならば何が正しいのかなんて解らない………それでも、その死を悼み、弔いたいと思うのは間違いじゃないはずだ」

 そう言って、火種がないのに気付くリヴェリア。ヴァルドはリヴェリアから煙草を奪い取ると咥えさせ、手招きする。

「…………?」

 そのまま煙草の先端同士を繋げ火を移す。

「悪いな、歩き煙草をしていたもんで」

 火種はヴァルドも持っていないということだろう。行儀の良くないその行動に眉間にしわを刻みながらも煙を吸うリヴェリア………

「っ! げほ、ごほ! こ、こんなに苦いのものなのか? 喉も、痺れて………!」
「安物だと言った筈だ。ちゃんと美味い煙草なんて、平時でも欲しくなる。弔いの味なんて、二度と吸いたくないぐらいがちょうどいい」

 蒸せて涙目で睨むリヴェリアにヴァルドはそう言い返す。

「……………ああ、苦いな」

 改めて吸ったリヴェリアはその苦味に顔を歪め、煙を空へと吐き出した。


量産品
ヴァルドの影響で全体的にちょっと底上げされた挙げ句ヴァルド本人が居るので急遽作られた少し強めの雑魚を作る『宝玉の未熟児』。女体型にはなれるが『精霊の分身』にはなれない。1000匹ぐらい揃えたら足止めぐらいは出来るという希望的楽観測の下、量産中。


【ロヤリテート・ブリュンヒルド】
ヴァルドへの忠誠心から芽生えた魔法。
レミリアちゃんの設定、原作には何もないので取りあえず実力ないくせにあるふりしてる冒険者が団長やってたファミリアで、モンスターの群で囮にされかけた時ヴァルドに助けられたってことで

なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート

  • 家族仲良く リヴェリア、アイズ
  • 一度実家へ アルフィア、ベル
  • 聖夜祭だろ シル、ノエル
  • 夫婦水入らず リヴェリア
  • 義母義父のみで アルフィア
  • 街娘と日常を シル
  • 最も美しい女神(ヴァルド評) アストレア
  • 聖夜と言ったら聖女 アミッド
  • ツンデレ大和撫子 輝夜
  • 一人で過ごす男達の為に オッタル
  • 一人で過ごす男達の為に アレン
  • あるいはこんな世界 ディース姉妹
  • 聖夜祭は店も大忙し 豊穣の女主人
  • 何やらおかしな実験に フェルズ
  • ダンジョンデートだ 椿
  • ドロドロ依存 フィルヴィス
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