オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「…………脆い」
オッタルはつい口に出てしまった言葉に申し訳無さを覚える。後悔はない。
今の言葉に倒れ伏す団員達の目に闘志が更に強く宿ったからだ。
Lv.8…………【
やはりダンジョンの深層にでも潜るべきか。しかしそうなると女神の護衛が…………
「………いや、何よりも力を得なければ守れぬか」
もし7年前に『彼等』がより悪辣に、徹底的にオラリオを滅ぼしに来ていたら【ロキ】と【フレイヤ】は終わっていただろう。全力でオラリオを潰しに来ていても、本気ではなかった。
今のオラリオはあの時の名も記されぬ英雄達の尽力と堕ちた英雄達の手心がなければ滅びていた。
そして、都市の外に存在するLv.8までランクアップを可能とするほどの存在が全て討滅された保証もない。
「あら終わったの? 少しいいかしら、オッタル」
「何でしょう」
そんな風に、力を得るために奮起するオッタルに声を掛けるのは彼の主神であるフレイヤ。
「あの子は強くなってるのだけど、その輝きに陰りがあるのよ。オッタルにはそれがなにか解る?」
「因縁かと」
あの子、とは誰のことは今更聞くことはない。今彼女が欲しているのが誰か解っているからだ。もう一人欲している者もいるが、女神としてはともかく、『彼女』としては十分満たされている。余計な手出しはしないだろう。
なのであの少年を思い浮かべ、その魂に影を落とすとしたら何かと考え答えを出す。おそらくは、嘗て自分が幾度と味わった『敗北』の記憶。今の少年も、恐怖と劣等感に苛まれているのだろう。
「フレイヤ様がお話しくださったあの少年とミノタウロスとの因縁。そしてヴァルドのLv.2へと至った逸話。間違いなく少年の魂に大きな影を落とすかと」
なまじ
期待に応えなくてはという使命感、応えられないという己に対する恥。それらが魂を澱ませているのだ。
「それなら、あの子についている茨を取り除くならどうすればいいかしら?」
「
何度も敗北の屈辱を味わわせた男に勝利した時のように、決着をつけられなかった独眼の王との決着をつけた時のように、たった一度の勝利でも、心の淀みを晴らし先に進むには十分な活力になる。
「冒険をしなければ殻を破ることも出来ません」
彼の担当アドバイザーとは真逆の真理を以って告げるオッタル。その言葉にフレイヤは考える。
あの子なら何時かその壁を超えるだろう。それを待てばいい………だがそれはあの子の『未知』の可能性を潰すかもしれない。
「オッタル。今度のあの子への働きかけ、貴方に任せるわ」
「私に? どのような風の吹き回しですか?」
「だって、貴方のほうが今のあの子を解っているのだもの。嫉妬しちゃうぐらい」
「………ヴァルドはどうします?」
「邪魔されたならそれまで。貴方もランクアップした感覚の調整に付き合ってもらえた、と思えば良いんじゃないかしら? それに彼もあの子を育てたいのだし、案外協力してくれるかもしれないわよ?」
【ソーマ・ファミリア】の牢屋。なぜホームに牢屋があるかはこの際おいておいて、その前にわざわざ机が置かれ、酒や飯が置かれている。
「………それでは、リリルカ・アーデの旅立ちを祝って………団員が抜けることを祝っていいのか?」
「良いんじゃないですか? 酒が飲めるんなら何でもいい!」
「ちげえねえ!!」
ソーマの言葉に酒が飲んで騒げるならそれでいいと笑う団員達。ソーマもまあ酒を飲んで笑えるならいいかと酒を飲む。
「くそ! 俺等にも呑ませてくれよ!」
「本当に実行するなんて、てめぇにゃ人の心がねぇのかよ!?」
「……まあ、神だし」
何でこんなことになってるのだろう。主神の方のソーマにファミリアを脱退したいと告げたら、ならば宴だと呟き耳聡く反応した団員たちが酒盛りを始めた。何故かリリを襲った団員達を閉じ込めた牢の前で。
「ファミリア内であろうと強奪、恐喝は認めない。奴等はそれを破った………だから、閉じ込めて目の前で酒を飲む」
「なんで?」
「オラリオメリー。
「………………」
クイ、と飲む。相変わらずこの
「おいこらアーデ! ふざけんじゃねえ! サポーターの分際で、こんな目に遭うなんて割に合わねえ!」
「俺達のほうが【ファミリア】に貢献できてたんだ! だいたいお前、昔は俺達のお陰で生きてこれたんだろうがよ!」
「この恩知らずが、ここから出すようてめぇからもなんか言え!」
「……………なら、心を入れ換えこれまでのことを反省すればいいのでは?」
元よりその行動を咎められ閉じ込められているのだ。ならもうしないと、嘘の通じぬ神の前で誓えばそれで済む話だ。
「ノルマがなくなった今、そこまでお金に固執する理由もないでしょう。真っ当に働けば相応の生活だってできる筈。わざわざ犯罪まがいのことなどしなくてもいい」
「っ、それは………し、知るかよ!」
「弱ぇ奴から奪って何が悪いってんだ! 恩恵貰っといて戦えねえ、才能のねえサポーター共が悪いんだろうがよぉ!」
「ギャーギャー囀ってんじゃねえぞ糞どもが。股ぐらにぶら下がったきたねぇもん千切らねえと発情期も収まらねえのか、ああ?」
「「「……………………………………えっ?」」」
聞こえてきた滅茶苦茶どすの利いたガラの悪い言葉にその場の誰もが固まる。
リリはオラリオメリーの入った酒瓶をソーマから奪い取るとグビグビと飲み干し瓶を投げ捨て口元を拭きながら牢まで歩く。
「弱いから奪っていいなら、私も恩恵を封印されたお前達から何を奪おうとしてもいいってことでしょうか?」
「え、あ……いや、あの………」
「はっきりしろよ」
カヌゥの服の襟を掴み引き寄せ牢の鉄格子を食い込ませるリリ。カヌゥの取り巻き二人がガクガク震える。
サポーターとはいえ、恩恵を封じられ一般人と同等になったカヌゥは抗えない。というか恩恵があっても逆らえる気がしない。
「ごごご、ごめんなさぁい!?」
顔を青くして震えるカヌゥから手を放したリリは今度はソーマを睨む。
「だいたいソーマ。てめぇもてめぇだ、今日の今日まで対応がお座なりだからこんな馬鹿が出てきたんだろうが」
「あ、す、すいません」
「謝罪してる暇あったらもっと明確な指針を決めるとかして管理しろ。言葉だけなら誰でも出来んだよ」
「マムイエスマム」
「黙れ玉無し野郎」
「サーイエッサー!」
そして【ソーマ・ファミリア】は改めて採取系ファミリアとしてギルドに報告し、団員達は定期的に神の前でどのようにして金を稼いだか報告する義務をつけた。
「うにゃあああああ! 殺せ、誰かリリを殺してくださいぃぃぃぃ!!」
メリーウコンなる酔い醒ましを飲み正気に戻ったリリは羞恥からのた打ち回る。記憶がそのままとかどんな拷問だ。
しかもあれは間違いなく自分の本心だという自覚がある。
「落ち着いてくださいリリの姐御!」
「かっこ良かったすよリリの姉さん!」
「やめろやめろやめろやめろおおお!!」
何故か下手に出る冒険者達。リリは更にのたうつ。
「………面白いなこれ」
酒とは楽しむものだ。これは、(周りが)楽しめる酒。とはいえ解酔薬が無ければ酔が覚めないのは良くない。改良できてから売ろう。
なお、販売後数日で店頭に置かせてもらえなくなる。
「えっと………ボクのファミリアに入りたいんだよね? なんか、暗いんだけど大丈夫?」
「気にしないでください。リリは、もうあそこに戻れないだけです」
ドヨーンとした少女を見て、ヴァルドが剣を取り部屋を出ようとする。
「あ、違うんです! 悪い意味、ですけど………酷い目に……もあいましたけど、暴力事とかじゃなくて…………」
「………………」
その言葉に剣を置き座り直すヴァルド。危うく【ソーマ・ファミリア】が壊滅するところだった。いやまあ、ちゃんと調べるだろうけど。
「えっと、リリは【ヘスティア・ファミリア】に入ってくれるの?」
「はい、ベル様」
その後ヘスティアとリリのマウントの取り合いが始まり、ヴァルドはダンジョンに向かった。
ベルも大変だな、と思いながら。きっと彼を知るものが聞けば、お前の弟子だからなとでも言うだろう。
「来るぞ畜生!」
「リド! 毒持ちでス、不用意に接近しナイで!」
「ぬううう!」
上級冒険者の耐異常すら突破する猛毒を持ったハリネズミやヤマアラシを思わせるモンスター、ペルーダ。リドを狙い襲いかかってきたペルーダの針を石の体を持つグロスが庇う。
一匹一匹がヴァルドが数分間殺しまくってから放置した魔石を食らった『強化種』。深層ではあるが最も浅い37階層のモンスターは、50階層以降のモンスターにも匹敵する強さとなって
「おお、強化種の素材が取り放題だ!」
と、呑気に素材採取に勤しむハーフドワーフ。迫るモンスターを斬り伏せ、新たな
「貴様も少しは戦え!」
「何をいうか。手前は鍛冶師で冒険者ではない。何よりこれはお前達の修行なのだろう」
ラーニェの言葉に椿はそれだけ返し毒針を拾う。この地獄を作り出した鬼畜はどこで何をしているのか、とラーニャは苛立ちをモンスター達にぶつける。そして、その鬼畜は戻ってきた。
「追加だ」
深層から生け捕りにしてきた
階層主にすら匹敵する
彼等は思った、彼奴後で絶対殴る!
「ほう、中々良い炉だ。お主やるではないか」
バシバシと椿に肩を叩かれ困惑する
「さて、では誰から作る? 要望があれば聞いてやる」
「…………本当にいいのか? 俺っち達、モンスターだぜ?」
「手前は頭が悪いのだ!」
「………え?」
「難しいことは解らん。お前達の存在が下界を揺るがすとか、冒険者に躊躇いを、とか。聞いても想像も出来ん。元より人を導く賢者でも、人類に希望を示す英雄でもないのだ」
リドの言葉にカラカラと笑う椿。
自分はただの鍛冶師であり、出来ることなど鉄を打つこと。ならば目指すは神域の絶技。
「どのような経験も手前の力になる。それが貴重なら尚良し。ひとならざる異形の者達に合わせた武器を作るなど、手前しか体験したこともあるまい」
「我々が、恐ろしくないのですカ?」
「あのなあ、手前は心臓がなくなっても戦い続ける頭のおかしい人間と専属契約を結んでおるのだぞ? ただの怪物が恐ろしいわけないだろう」
「心臓…………え?」
「ほれ、あそこに
と、椿が指差した方向では武装した複数のモンスターを掴んでは転ばし、投げ、時に蹴り飛ばし、殴り付けるヴァルドの姿。動きの余計な部分を指摘し、指摘した箇所が改善されなければ壁まで殴り飛ばしていた。
「あれに比べれば大概の怪物など可愛いものよ!」
「…………………あの人は、怪物デは」
「なんだ、ヴァルドを好いておるのか? あやつを狙う女は多いぞ?」
「あ、いえ。私ハ、どちらかというト………恐らク、父のようナものかと」
10と数年前。生まれたばかりの彼女を見つけ無言で手を引き同胞の下へ送ってくれたヴァルド。その後地上への僅かな記憶しかない自分達の為に様々な本を持ってきてくれた。
「そうか、父か! 家族に憧れているなら手前を母と呼んでもよいぞ!」
「え、あ。いえ、その…………お父様やお母様ト誰かヲ呼ぶのは、少し恥ずかしくテ………」
人とモンスター。歩み寄るはずのない存在は、その場で確かに互いに歩み寄っていた。
「…………ヴァルっち心臓なくても動けんの? え〜………やっぱ彼奴やべぇ」
リドはそう呟きながら
深層の
ヴァルドは古参組とも付き合いが長いので、割と若い
なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート
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