オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「ヴァルドの弟子で、ミノタウロスとLv.1で戦うような人です。念のため監き……特別室に」
ベルは完治するまで部屋から出ないように特別な部屋を充てがわれたらしい。
「明日には出れるだろうが、必要か?」
「たった一日の休養もできずにダンジョンに向かった貴方が何言ってんですか?」
「俺には『不眠』がある。あの時点でも、1時間寝れば半年は動けた」
「体力、
「? そんなこと理解しているが?」
「──────!!」
「ああ! アミッド様ご乱心! 落ち着いてください!」
「放してください! 殴る、この男は殴る!!」
完治してないと理解した上でダンジョンに潜ると
「心配かけてすまないと思っている。だが、直す気はない。俺に迫るのがオッタルしかいない現状では、止まれるものか」
「何時か……何時か必ず追い付いてみせます」
「………ああ、楽しみにしている」
そう言ってアミッドの頭に手をおいてから去るヴァルド。アミッドはヴァルドの手が離れたあと己の手を頭に乗せしばし固まった。
「なあ、このポーションもう少し安くなんねーのかよ。いつも買ってやってんだ、少しぐらいサービス──」
「…………貴方はこの店に来るのは初めてのようですが?」
「!? な、何を根拠に……! そーいういちゃんもんつけるってんなら、こっちにも考え──」
「すいません今は気分がいいので面倒を起こさず大人しく帰るか買うかしてください」
「ア、ハイ………スイマセンデシタ」
どうやらLv.1の一般的な冒険者は、Lv.4の威圧にビビって大人しく引き下がった。
そして翌日。
無事退院したベルがホームに戻ってきてヘスティアとリリに抱き着かれる。豊満な胸がベルの胸板で潰れた。
「ベルぐ〜ん! 心配したんだぞ〜!」
「ご無事で、本当にご無事で良かったです!」
「ご、こめんなさい神様、リリ……」
「ヴァルド君もヴァルド君だ! 勝てたからいいものを、助けてやろうと思わなかったのかい!?」
「そうですそうです! 修行にちょうど良いとか、この鬼畜!!」
ヘスティアとリリに責められる中、ヴァルドはベルに目を向ける。
「助けてほしかったか、ベル」
「…………いいえ。手を出さないでくれて、ありがとうございます」
「ベル君…………」
「ベル様」
嘘のない真摯な感謝の言葉に、流石にヘスティアもリリも黙り込む。
「ま、まあいいや。頑張ったからね、【ステイタス】の更新をしようぜ」
そう言ってヘスティアはベルをベッドに引っ張る。上を脱いで横になるベルの背に乗り、血を垂らし指を走らせる。
「あ、と………悪いけどサポーター君は外にいてくれるかい? ベル君のステイタス、あまり知ってる人を増やしたくないんだ」
「はあ………」
若干不服そうながらも外に出るリリ。ヘスティアは【ステイタス】の写しをベル達に見せる。
『ベル・クラネル
Lv.1
力:SSS1234
耐久:SSS1582
器用:SSS1399
俊敏:SSS1808
魔力:SS1056
《魔法》
【ファイアボルト】
・速攻魔法
《スキル》
【 】 』
オールSS超え。どうなってんだろうこれ、と現実逃避したくなるヘスティア。
「って、んん? あれ………ベル君ランクアップ出来るぜ!」
「本当ですか!?」
喜びのあまり体を起こすベル。上にいたヘスティアがコロンと転がった。
「ベル程とは言わずとも、これを機にランクアップを目指す者が増えてくれるといいのだが」
「いや〜、ミノタウロスをLv.1で撃破なんてベル様以外に出来ませんよ」
「
「え〜………」
「あ、そっか! 僕、ランクアップの方法が師匠と同じなんですね!?」
どういう理論だとドンびくリリ。ベルは目をキラキラさせて師を見つめる。
「そうだな、俺と同じだ」
尤も強化種一体と通常種の群れという違いはあるが、難易度は似たようなものだろう。普通、誰も真似したがらないし真似できない。いや、Lv.1でも冒険者歴が長くアビリティオールSいってたら通常のミノタウロス一匹になら万に一つ可能性があるが、普通ミノタウロスはLv.2でも避けれるなら避けるモンスターだ。うん、この白髪師弟がおかしいとリリは遠い目をする。
「発展アビリティは3つかぁ………『耐異常』、『狩人』、『幸運』だね」
「『不眠』はないのか?」
「ないね……」
「…………そうか」
昼夜問わず鍛えられると思ったのだが、と少し残念に思うヴァルド。ヘスティアは何故だか目覚めなくて良かったと安堵した。
「幸運………おと──っ、師匠以外目覚めた人が居ないんですよね!?」
「表向きにはな」
【ヘルメス・ファミリア】のように自身のLv.を偽ったり、発展アビリティを隠す冒険者が居ないわけではない。
「で、でも僕これ………コレが良いです!」
「そうか。まあ、担当アドバイザーにも相談はしておけ」
「あ、はい!」
「ではな」
「ダンジョンですか?」
「ギルドからの呼び出しだ」
「ソフィ、来たぞ」
「来ましたか。これを……」
「…………」
と、ソフィが渡したのは一枚の手紙。蝋印は月と弓矢。
「【アルテミス・ファミリア】からです。お知り合いなのですか?」
「一度組んだ」
「……………【アルテミス・ファミリア】には、女性しかいないそうですね」
「……………そうだな」
ジトッとした目で見つめる………というか若干睨んでいるソフィの言葉を肯定するヴァルド。主神のアルテミスは別に男嫌いというわけではない。むしろ普通に下界の子供達に優しいが、『貞潔』を司る女神のため男女のまぐわいを忌避している。そのため自身の眷属は全て同性で固めていた。
眷属に男を近づけぬために寝る場所も離していた。かわりに主神自ら場所を離したヴァルドの天幕の夜の見張りを買って出たがヴァルドは寝る必要がなかったので、逆に駆けつけられる範囲で見張りをしていた。まあ寝る時以外は普通に行動していたし、ランテとかいう人懐っこいのも多少咎める程度だったが。
「良い【ファミリア】だった」
「良い女が多かったのですね」
「………否定はしない」
皆力無き民のために命をかけられる立派な狩人達だった。
「アルテミスもアストレアに劣らぬ美しい女神だった」
「へー、それは良かったですね」
「…………街道で何かあったのか、手紙は遅れたらしいな。この到着予定なら長くても一週間はかからんだろう」
「では、ギルド長にも伝えておきます」
「彼奴は一度【アルテミス・ファミリア】を都市内に入れたらあれこれ理由をつけて縛ろうとするだろうな………」
「…………可能性はありますね」
そして【アルテミス・ファミリア】に助けを求める者達の声を依頼として受けるのだろう。【アルテミス・ファミリア】の外での人気なども踏まえれば、そこまでの額には出来ないだろうが…………。ウラノスを通して抑えておくか。
「……………あぅ…………ううぅ………」
オラリオの路地裏。人気のない、薄汚れた道で幼い少女が歩いていた。ボロボロで泥だらけ、見る人がいれば手を差し伸べただろうが、先程も言ったが人気がない。
「ガウ! ワウワウ! グルルル!」
「わあ!?」
人の居ないその場所で生ゴミを漁っていた野良犬が、少女に気付き吠え立てる。恐怖で尻餅をつく少女を縄張りから出ていかない敵と認識したのか唸りながら寄ってくる。
「コラ!」
そんな野良犬に叱責の声が響く。
少女も振り向くと、そこには草色の給餌服を着た銀髪の女性が立っていた。
「ワンちゃん、女の子をいじめちゃ駄目でしょ!」
「グルルルルゥゥ〜」
「ウゥゥ」「ガルル」「ガアア」
「って………あらら〜………こんなにいたの?」
自分を睨んでいると、それだけは理解した野良犬が唸り一歩前に進むと物陰にいた仲間達も顔を出す。簡単に噛み殺せそうな幼い娘と違い、大きいからだ。
「ワンワン! ワン! ワンワン!」
「う〜ん、困っちゃったなあ……………」
特に慌てることなく自らに吠えてくる犬達を眺めながら、女は目を細めた。
「──あまりおいたしちゃ駄目よ?」
「クゥ!! キャイン! キャイ~ン!!」
野良犬達は慌てて逃げ出した。残されたのは幼い少女と銀髪の少女………シル。
「はぁ〜、よかった。あっちに行ってくれて………えーと………」
と、シルは少女に視線を合わせる。
「…………………」
少女も自分を助けてくれたシルをじっと見つめていた。
「………あれ、あなた………」
「…………?」
「ううん、なんでもない。それより平気? 怪我はない?」
「………こわかった………」
「おみず、です………」
「………………」
ソフィを誘って豊穣の女主人で食事を取っていると、とても小さな店員がヴァルドに水を持ってくる。
「? お前、まさか………」
「んぅ………? あ、あの………えっと………の、ノエルです」
「そうか」
「………あの………あなたは、おとうさんですか?」
「………………」
瞬間、ソフィの目が絶対零度のものになる。
「あ、ノエル! 違うよ、その人はお父さんじゃなくて…………う〜ん、おじいちゃん? ベルさんのお父さんなの。そして私が貴方のお母さん!」
「俺はベルの父でもないしベルはお前と子を作ってないだろ」
やってきたシルに呆れたように言うヴァルド。ノエルと呼ばれた少女はシルとヴァルドを交互に見る。
「おとうさん、じゃ……ないの?」
「逆になぜ俺を父だと思う」
「実は本当にお父さんだからじゃないですか? 心当たりなんていくらでもあるでしょう」
「この年となるとこの髪の色になる心当たりはない」
「年だけならあるんですね。最低、汚物………自分からは手を出さないくせに誘われたらホイホイついていくチョロヒューマン」
普通のエルフ……というか女なら席を立って何処かに行きそうなものだが、座ったまま不貞腐れたように食事をするのはソフィがヴァルドをその実不誠実な人間だとは思ってないからだろう。シルも何とも言えない笑みをソフィに向けていた。
「あの………あの、ね……みてたら、あんしん? こわいこと、ぜんぶなくしてくれそうだな……って、だから……おとうさん?」
「……………」
「おとうさんもってるこたちが、わたし………ぅ? こたち……? こたちって、だぁれ?」
「…………記憶を?」
「うん。失ってるの………自分の名前も。私がつけてあげたんだよ! ね、ノエル」
「うん、シルがね…………くれたのぉ」
嬉しそうに微笑む少女を見て、金の少女の幼い時を思い出すヴァルド。
「……良い名だ。雪のように無垢なお前によく似合っている」
「………………そういうとこ本当に直したほうがいいよ」
「同意です」
雪のよく降る「聖夜祭」に出るケーキの名を持つ少女にヴァルドが褒めればシルとソフィが呆れたような視線を向けるのだった。
「それでシル……お前はこの子をどうするつもりだ?」
「うーん……帰る場所が解るまで、預かってるかな。この子もヴァルドといると安心できるみたいだし、暫くうちに来てくれると助かるんだけど………」
「それぐらいなら別にいいが………」
「後々、お父さんとして紹介するためにベルさんを………!」
「………おかあさん、は………このひと、おとうさんは……やなの?」
「え──っ」
「あっ(察し)」
ノエルの無垢な質問に固まるシルを見てソフィは察する。
「…………こいつは今好きな男がいる。俺の弟子だ……その弟子の前で、俺と夫婦みたいな扱いされるのはいやだろう」
「まじかこいつ」
ノエルに視線を合わせるようにしゃがんで語りかけるヴァルドを見てソフィは信じられないものを見る目でヴァルドを見るのだった。口調もちょっと乱れた。
なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート
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