オラリオに失望するのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

46 / 87
次を目指して

「ベルさん、ヴァルド、それにリリさん。いらっしゃい。ランクアップ、二つ名決定おめでとうございます」

「ありがとうございますシルさん。神様は用事があって来れないみたいで」

 

 豊穣の女主人でシルに出迎えられる一同。ザワリと周囲の視線が集まる。

 

「ベル………【リトル・ルーキー】か?」

「間違いねえよ。【剣聖】………じゃねえや、【不死之英雄(ジークフリート)】も居るし」

「あんなガキが最速記録保持者(レコードホルダー)?」

「まあ【不死之英雄(ジークフリート)】の弟子だし」

「ああ、なるほ……いや一ヶ月半はおかしいだろ!?」

「ミノタウロスを倒したらしいぜ」

「おいおい、そんな馬鹿なことするやつ………いたな、彼奴の師匠だ」

「親子なんじゃねーの、髪白いし」

「ああ、白いな。じゃあ実はハーフエルフ?」

「ハーフエルフ? お前それ相手は………あ〜」

 

 周りから聞こえる声や視線に居心地が悪そうなベル。周囲が自分を気にしているという状況に心が落ち着かない。ここに来るまでにも「僕と契約して眷属になってよ!」とか「マジで私の眷属になりなさい」とか男神や女神達に絡まれまくったし。

 

「名の売れた冒険者の宿命だ。暫くすれば落ち着く」

「ど、どれぐらい?」

「一ヶ月半でランクアップだからな………次のランクアップに、2年ぐらいかければ……」

 

 そうすれば十把一絡の上級冒険者の仲間入りするだろう。まあ容姿が良かったり、Lv.4まで行けばその限りではないが。

 

「まあまあ、未来の話はおいておきましょう。今はベルさんのランクアップとヴァルドの新しい二つ名襲名を祝って、乾杯!」

「「「乾杯!!!」」」

「かんぱ〜い」

 

 ジョッキとコップをぶつけ合う。

 

「って、誰!?」

 

 と、ベルは混ざっていた幼女に驚く。

 

「? わたしは、ノエル。シルおかあさんの、むすめ」

「シルさんの!?」

「そうです。血が繋がらなくても、私の可愛い娘です。昨日から!」

 

 ふふん、と胸を張るシル。実の娘ではないんだ、と納得する。

 

「ほ〜ら。この人がベルさんだよ」

「ベルさん………ベル、おとうさん?」

「ふぉあ!?」

「なななな!? ベル様がお父さん!? は、まさかシル様外堀を埋めるどころか一度自分で作って!?」

 

 戦慄するリリにシルは「えー、なんのことかわかりませ〜ん」と笑顔で返す。

 

「それよりほら、ご飯冷めちゃいますよ」

「ぬぬ。色々言ってやりたいことはありますが………」

「あ、あはは……食事にしよっか」

「うん! ミアおかあさんの、ごはん。とっても、おいしー!」

 

 各々頼んだ食事を手を伸ばしていると、アーニャが新たなジョッキを持ってやってきた。

 

「おっまちどう!」

「頼んでないが?」

「ミア母ちゃんからニャ。シルとミャーを貸してやるから今日は存分に笑って飲め! 後は金を使え! というわけでサボ、もとい休憩するニャ」

 

 そう言うとアーニャはヴァルドの膝の上にちょこんと座り料理に手を伸ばす。

 

「あの二人、仲いいんですか?」

「アーニャはヴァルドと付き合いが長いんですよ。この店に連れてきて世話しろって、私に頼んできまして」

「へー………」

 

『いらっしゃいヴァルド……あれ、その子は?』

『拾った。育てろ』

『え〜……まあ良いけど。こんばんは、子猫さん。私はシル……お名前の前に、お風呂入ろっか。風邪、引いちゃうもん』

 

 雨の中ヴァルドが文字通り拾ってきた猫。シルに育てろと押し付けて去って行った。シルは仕方ないなぁ、とミアに話を通しアーニャを豊穣の女主人に迎えたのだ。

 

「その後もちょくちょく様子を見に来てくれてたニャ。ま、ミャーは可愛いから構いたくなるのも当然ニャン!」

「ルノアやクロエも似たような境遇なんですよ」

「一緒にすんな!」

「こっちは無理やり入れられたニャー!」

 

 シルの言葉に食事を運んでいたルノアとクロエが叫ぶ。ミアに怒鳴られすぐに仕事に戻ったが。

 

「む、無理矢理?」

「ん〜………そうですねえ。ものすごくやんちゃしてた二人が喧嘩売ってきたから返り討ちにして、更生の為にここに放り込んだというか、ここに泊まっていたヴァルドを襲撃する際、二人が色々壊したというか」

 

 師匠に喧嘩売るなんて、この店の人達強い強いとは思っていたけど思っていた以上にやばくない? と周囲の店員を見るベル。でも、このノエルという子といい、此処はそういう境遇持ちが多いのだろうか?

 

「? どーかしたの?」

 

 ベルの視線に気づいたのか首を傾げるノエル。なんでもないよ、と笑って誤魔化す。事情は、踏み込まないほうがいいのだろう。

 

「まあ、そいうわけでアーニャは私やヴァルドに懐いてるんです」

「感覚的には妹のようなものだ」

「ふにゃ〜ん♪」

「アーニャ、ずるい。わたしも………」

 

 何時の間にかヴァルドの膝に上体を預け頭を撫でられているアーニャ。ヴァルドに食べさせてもらってる。義母もよく調子が悪い時ヴァルドに食べさせてもらっていたっけ………となんだか懐かしい記憶が蘇り、その後祖父の「ぬふふ、少し冷めてしまったが儂のお粥も、おおっと手が滑って顔にかけぶぉぎゃらぱ!!?」と吹き飛ばされる光景が蘇る前に過去を振り返るのをやめた。

 ノエルもヴァルドに駆け寄り………アーニャの耳を掴んだ。

 

「ふぎゃ!」

「もふもふ………」

「あまり強く握ってやるな」

 

 紅葉のように小さな手をヴァルドがそっと放してやり、アーニャの耳の裏あたりを撫でる。

 

「フニャ〜ン…………ヴァルドは撫でるの上手いのニャ〜」

「因みに、ヴァルドのライバルとされていたほぼ同期の猫人(キャットピープル)がいたらしいんです。戦ったらどっちが強いか、なんて言われてたんですけどヴァルドが『興味ない』といったせいで殺し合いになったらしいですよ。その時は猫人(キャットピープル)側が辛くも勝利を収めてランクアップしたとか」

「興味ないって、仮にもライバルと思われてる方にそれは」

「事実だ。彼奴が俺より才能があるのは知っていたし、どちらもオラリオ有数の冒険者だった。ならばあの時勢、互いに精進した方が良い。ライバルなどと持て囃されたからといって競い合うことに興味はない」

「…………それ本人にもちゃんと言いました?」

「当然だろう」

「ヴァルドって昔からそうだよね〜」

 

 と、シルが呆れたように言う。

 

「俺の過去はどうでもいいだろう。今気にするべきはベルの今後だ」

「それは、Lv.2になったからには更に先に………中層に潜るか、ということですか?」

「ああ。冒険者は段階を経て強くなる。最早上層では大した成長は望めない。時間さえあれば大樹の迷宮に放り込んでやってもいいが」

「段階の意味知ってます!?」

「…………かいだん?」

「う〜ん。ノエル、おしい!」

 

 いきなり中層の中でも最深部にLv.2になりたてを突っ込もうとするヴァルドにツッコむリリ。そういえばこの人駆け出しにキラーアントを群で狩らせるような人だった。

 

「問題ない。ソロでも案外行ける……ふむ」

「何『やらせるのもありか』みたいな顔してやがるんですか! 中層でソロってLv.3からやるべき事ですから!!」

「ああ、おかげで死にかけた。そうだな、Lv.2なら『不眠』を持っていないと流石に死ぬだろう」

 

 因みに流石のヴァルドも大樹の迷宮までモンスターを倒してきたわけではない。ランクアップ祝いに武器を打ってやると言った椿のためにレア素材を探しに行ったのであって、余計な体力を使わぬよう可能な限り戦いを避けた。可能な限りは……。

 

「ベルも中層に挑むなら仲間を集めろ。お前一人では処理しきれなくなる」

 

 中層はモンスターの質も数も違う。初っ端からソロで飛び込んで生きて帰還したヴァルドがおかしいのだ。まあ帰還というか、リヴィラの街になんとか戻りリヴェリアにおぶられ地上に戻れただけだが。

 

「仲間………師匠は」

「俺ではお前の成長の妨げになる。何より俺は俺でダンジョン深層でステイタス上げがある」

「ですよね。仲間かぁ………」

 

 【アストレア・ファミリア】の人達とかにお願いできないだろうか、と考え込むベル。

 

「仲間が必要か、【リトル・ルーキー】」

 

 と、不意に聞こえた声に振り返ると見覚えのある冒険者がいた。

 

「ゲドさん!?」

「っ! ゲド、様………」

「あ〜、怖がんじゃねえよガキ。もうてめぇを狙わねえさ。それよりだ、【リトル・ルーキー】。この俺【野良犬(ストレイドッグ)】様がパーティーに入ってやってもいいぜ?」

 

 二つ名、ということは彼もまたLv.2になったのだろう。何処か得意げに語る彼に、確かにモンスターに囲まれた際助言してくれたし、と考え込むベル。でも、問題はリリだ………。

 

「その………えっと…………」

「…………ああ、まあ良いさ。俺の自業自得だわな」

 

 ベルの視線を追いリリを見たゲドは大人しく引き下がる。

 

「よ、良かったんですかベル様…………リリは、ベル様のためになるなら…」

「余計な気苦労が増えるならやめておけ。Lv.2になりたてが余計なことに気を割ける程気楽な場所じゃない」

「Lv.1で中層に潜ろうとしたりランクアップしたてで潜ったヴァルドがそれ言うなんて説得力な〜い」

「…………………」

 

 ごもっとも。

 シルの言葉に反論することなく、黙らせるためにチキンステーキの切り身をシルの口に突っ込むヴァルド。

 

「むぐぐ、流石ミア母さんの料理。美味しい」

「…………あの、お二人は付き合ってるんですか?」

「「いいや全然」」

「息ぴったりじゃないですか………」

「それより、パーティメンバーだよね。やっぱり、アリーゼさ………」

「俺のパーティに入れてやろうか、【リトル・ルーキー】」

 

 と、また誰かが絡んんでくる。ゲドにも負けず劣らず、というかゲドよりも粗雑そうな大男だ。ノエルが怯えてシルの後ろに隠れた。

 

「俺達はLv.2だからなぁ、中層なんて何度も潜った。そこに入れてやってもいいぜえ」

「え、あの…………」

「仲間になるんだ。色々分け合おうじゃねえか、金も魔石も………この別嬪な姉ちゃんなんかも」

 

 と、酒で赤くなった顔をさらに興奮で赤く染めシルに手を伸ばす大男。ベルが立ち上がり叫ぼうとした瞬間……

 

「汚い手でシルに触れるな」

 

 何時立ち上がったのか、ヴァルド以外には視認できない速度で動いたアーニャが「ニャ」もつけず大男の手首を掴み捻り上げる。

 

「うぎ、ぎゃああ!? は、放せ!! な、なんだ此奴力強………!?」

「アーニャ………かっこいい!」

 

 Lv.2の冒険者である自分が全く振りほどけないことに驚く大男。それを見て目をキラキラさせるノエル。

 

「!? て、てめぇ何しやがる!?」

「ちょーし乗らないでよね!」

 

 と、仲間の二人がアーニャに掴みかかろうと駆け出しアーニャも迎え撃とうして………。

 

「騒ぐな、ここは食事を楽しむ場だ」

 

 カコンと二人の顎が弾かれたように揺れ倒れる。

 

(は、速────!!)

 

 手加減していたのだろう。ベルにもギリギリ軌跡が見えた一撃………いや、二撃なのだが同時に決まったようにしか見えなかったヴァルドの拳に目を見開く。

 気絶はしていないが酒も手伝い立てない冒険者二人。アーニャが大男から手を放しヴァルドの背に隠れべーっと舌を出す。

 

「【け、剣せ──】……【不死之英雄(ジークフリート)】!!」

 

 Lv.8のオラリオ最強の男を前に大男は漸く自分が喧嘩売った相手が誰の知人か悟り顔を青くする。

 

「おおお、おぼ、覚えてやがれ【リトル・ルーキー】!!」

「バカタレぇ! ツケは利かないよ!!」

「ひっ、は、はいぃ!!」

 

 仲間を担ぎ逃げようとした大男はミアの怒号に慌てて財布を放り投げ、今度こそ逃げ去った。

 

「アーニャが動くより先に動けたでしょー? なーんで直ぐに助けてくれなかったの」

「アーニャが膝の上にいたからな」

「にゃ~。悪い奴ら追い払ったからまた撫でるニャ!」

 

 などと店員達とヴァルドが話す。シルはもう、と拗ねたように頬を膨らませ、しかしすぐに笑みになりパンと手を叩く。

 

「それじゃあ、仕切り直ししましょうか」

「しきりなおし?」

「さっきの人達のせいで止まってたお祝いを再開するの」

「お〜…………」




ヴァルドととある猫人の会話一部抜粋

「お前か……」
「…………愚図が世話になってるようだな」
「? ああ、俺はあの子を愚図などと思わないが。健気でひたむきで、かわいいじゃないか」
「…………はっ。てめぇがあの愚図に発情しようが知ったこっちゃねえが、それで強くなれんのかよ? 巷じゃ俺とてめぇなんかがライバルだの、戦ったらどっちが強いかだの好き勝手言われてるみてぇだが、腑抜けたてめぇが俺のライバル? ふざけた噂だ」
(此奴にとって、超えるべきは俺ではなくオッタルだろうしな。何より今の時勢、冒険者同士で争うのはただの愚行だ)
「最近じゃこっちに顔も出しやがらねえ。俺と決着をつけるのが怖いかよ」
「いや、俺は(今は)お前(と勝敗を決める事)に興味はない」
「っ!! ぶっ殺す!!」
「!? 何をしやがる、気でも狂ったか──!!」

 因みにヴァルドがLv.6になった際Lv.6の猫人と決闘して、その時はヴァルドが勝った。

なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート

  • 家族仲良く リヴェリア、アイズ
  • 一度実家へ アルフィア、ベル
  • 聖夜祭だろ シル、ノエル
  • 夫婦水入らず リヴェリア
  • 義母義父のみで アルフィア
  • 街娘と日常を シル
  • 最も美しい女神(ヴァルド評) アストレア
  • 聖夜と言ったら聖女 アミッド
  • ツンデレ大和撫子 輝夜
  • 一人で過ごす男達の為に オッタル
  • 一人で過ごす男達の為に アレン
  • あるいはこんな世界 ディース姉妹
  • 聖夜祭は店も大忙し 豊穣の女主人
  • 何やらおかしな実験に フェルズ
  • ダンジョンデートだ 椿
  • ドロドロ依存 フィルヴィス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。