オラリオに失望するのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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家族

「ふふふ。ノエルのおかげで安く仕入れた!」

「わたし、えらい?」

「偉い偉い!」

 

 シルに頭を撫でられむふ〜、と嬉しそうなノエル。アーニャの初めてのお使いを思い出す。シルに連れられ無理矢理後からそっと監視していたが、値段より少ない量を買わされるわ蝶を追いかけるわで散々だったが二人で気づかれぬよう軌道修正して戻ってきたアーニャが得意げにこんな顔をしていた。まあムカついたので額を指で弾いたが。

 

「あまりノエルに変なこと教えるな」

「変なことじゃないよ、処世術。ノエルの将来に役に立って、私達の今にも役に立つ。家族は助け合わないと」

「たすけあう? かぞくは、たすけあうの?」

「そうだよー。皆が家族の役に立ちたいって思うし、家族の誰かが困ってたら助けたいって思うの。家族が泣いてたら行って慰めてあげる。家族が苦しんでいたら、何も言わず守ってあげる。そうしたい、そうしてあげたいってなれるのが、本当の『家族』だって………私は思うな」

「………うーんと」

「小難しいことは考えなくて良い。共に笑えれば、幸せな家庭と言えるだろう」

「うん。そうだね………」

「わら、う………」

 

 その言葉にノエルはふと周囲を見つめる。街行く人々、その笑顔を見る。

 

「………みんな、わらってる……」

「え?」

「わたしも、わらってるよ…………えへへ」

「うん。そうだね、とってもかわいい笑顔だよ」

「えへへへっ」

 

 ノエルは笑う。シルの言葉に、本当に嬉しそうに。

 

(たのしいなぁ──ずっとずっと、たのしいよ──ねぇ、ありがとね──)

 

 わたしをみつけてくれて──ありがとう──  

 

 

「うにゃにゃ………うにゃにゃにゃ〜」

「どうしたアーニャ?」

 

 豊穣の女主人につくとアーニャが何やら唸っていた。

 

「今日ミャーが指切っちまったけど、傷がなくなっちまったにゃ」

「まだ言ってんの? どうせアーニャの勘違いだって」

「アーニャはアホだから赤いゴミでもついてて勘違いしたニャ」

「そんなことねーニャ!」

「………ここか?」

 

 と、ヴァルドがアーニャの手を取る。

 

「………それは誰かに見られたか?」

「う、うにゃ………客はいっぱいいたし誰かは見たかも………」

「そうか………」

 

 顎に手を当て考え込むヴァルド。と……

 

「おとうさん、ごちゅうもんは?」

「ノエルちゃ〜ん、こっちにも! こっちにもおいで〜!」

「は〜い、すてーき、おひとりさま、5つ!」

「なんで!?」

 

 

 

「ねえヴァルド、最近街の様子が変なのよ」

「変?」

「『なりたて』が暴れてやがんだよ。しかも所属が未登録」

 

 冒険者になりたて、あるいはランクアップ仕立ての者は、万能感に酔いやすい。その万能感に酔い、Lv.の概念も忘れ格上に挑む者もいる。特に恩恵のない破落戸なんかは破落戸の冒険者に強く出られなかった鬱憤を晴らすように暴れる事もよくある。そうならないために事前に先達が冒険者として如何に未熟か教える。そうでもしないと他派閥に喧嘩をうる可能性も高いからだ。

 ベル? あれはそういうの必要ないタイプの人間だから。

 

「背中の【ステイタス】はギルドに登録されてないみたい」

「なんつーかなぁ………刻まれた奴等の行動に一貫性はねえ。力に溺れて無秩序に暴れてるだけ」

「神からも力を与えてやる、そう言われただけのようですが………行動に移すのにためらいがない」

「単純にそういう者達を集めた可能性はありますが………ええ、そうではない」

「『悪』に染めるのが………ううん、『悪意』を感染させるのが上手い、とでも言うのかしら」

 

 アリーゼの言葉は的を射ている。ダンジョンに潜らず怪物に会わず、元が恩恵なし故に真っ先に力をひけらかす相手は自分のような恩恵なしの破落戸。その力に魅せられ、自分も自分もとその神の元へ訪れ背に恩恵を刻まれる。

 

「刻まれた神の名は【ラシャプ】………多分ね、そもそも目的はないと思うの」

「アーディに同意よ。ようは目を引きたいのよ…………ヴァルド?」

「ラシャプだと? そうか、来ていたか………」

 

 明らかに不機嫌になるヴァルド。嫌悪………と、不甲斐なさ?

 

「知ってる神なの?」

「ワルサに巣食っていた【ファミリア】だ………獣そのものの眷属達が、悪意を感染させ元より略奪で生計を立てていたワルサ軍をより悪辣な畜生に染め上げた」

「ワルサ………って、砂漠の国の一つよね?」

「ああ、シャルザードとの戦争の際、俺も参加していた」

「ああ、八万の軍勢を二万で倒したとか、王子が実は王女だったとか話題に事欠かねえあの戦争か。そりゃお前がいりゃ6万の差なんて無いようなもんか」

「いや、俺一人で相手した」

「「「…………………」」」

 

 全員何やってんだこいつ、と言いたげな顔でヴァルドを見る。

 

「だが本陣に主神の姿はなく、団長他精鋭と既に逃げていた」

 

 後バジリスクが居たが瞬殺した。

 恐らくその時点で既に逃げていた。そして少しでも目立たぬよう一切の騒ぎを起こさず潜み闇派閥(イヴィルス)と接触した。或いは、元より繋がりがあったのだろうか?

 

「『悪』の数だけ揃えるなら死神(タナトス)の方が上だろうが、(しつ)は兎も角(タチ)の悪さなら嘗ての邪神とも引けを取らん」

 

 死後の再会を盟約としやらなくてはならないからやる死神の眷属と異なり、やりたいからやる集団。主神に大層な神意はなく、眷属(こども)達が欲望のまま暴れ下界を乱すのを楽しむ愉快神(ゆかいはん)

 

「オラリオに来るとか馬鹿なやつだな。せっかく逃げた英雄様がいるってのに」

「あるいはそれでも勝つ算段でも聞いたのかもしれん。どのみち警戒は必要だ」

 

 

 

 キィ、と小さな音がなり扉が開く。そおっと中に入ったシルはノエルに声をかけた。

 

「…………ノエル〜?」

「………すぅ………すぅ………」

「そっか、寝ちゃったか。いっぱいお仕事して、疲れたもんね?」

「んんぅ………シルぅ………」

 

 と、眠りながらシルの手を掴むノエル。

 

「ふふ、夢にも私がいるの?」

「すぅ………すぅ…………」

「………………………」

 

 静かに寝息を立てるノエルの頭をそっと撫でる。

 

「────できれば──ずっとこのまま────」

 

 

 

 

 ダンジョンの何処か。

 雪原のような真っ白なその場所に、人影があった。

 

「………それは本当ですか?」

「ええ、ええ、もちろん。私がこの目で見ました。間違いありませんとも」

「ですがまさか………そんなことが…………」

「『奇跡』とでも言ったところでしょうか? ははは、彼女に相応しい。おや?」

 

 と、人影の一つが不意にこの場に侵入者が訪れたことに気付く。

 

「おいおい、何だよこりゃ!? 何処に出たんだ、おい!?」

「侵入者のようですね。数も多い、行ってまいります」

「いえ、ここは私が行きましょう。なにせ、今はすこぶる気分がいい」

 

 人影………ヴィトーはそう言って迷い込んできた冒険者に向かって歩き出した。冒険者達もヴィトーに気付く。

 

「お、おい! アンタ! ここは一体なんなんだ!?何でいきなり雪原が……!」

「死にゆくものには必要のない情報です。だって、冥府への餞別にもならない」

 

 一閃。

 

「……え………ぁ、がぁ!」

 

 斬られたことに気付いた男が血を出し倒れる。

 

「て、てめぇ!? 一体何を……!」

「『蹂躙』ですが、なにか?」

「ぐぎゃあああ!」

 

 またひとり、殺された。

 

「いやぁ、ツイていない! 実にツイていませんでしたね! 奇跡とやらに私達が祝福される一方で貴方達のような存在がいる! これが下界! これが神々が作りもうた箱庭と欠陥品! 不確かな『未知』とやらに振り回される不完全な境界!」

 

 嘲笑する。

 目の前の冒険者を、神を、世界そのものも男は嘲笑う。

 

「ふふふふっ。笑えますねぇ! 笑えるでしょう? いいから笑いなさい!」

「な、なんだ………こいつ…」

「はははは。だからこそ、こんな世界無くなったほうがいいと思いませんか?」

「こ、このイカれ野郎がぁ──!!」

「話は変わりますが、私弱い者いじめは嫌いなのです」

 

 ヴィトーに切りかかった男は一瞬で逆に切り刻まれる。

 

「ぐ、ああ…………」

「が、人が泣き叫ぶ声は、それ以上の好物でして………」

「!?」

 

 そのまま冒険者を痛めつけるヴィトー。何度も蹴りつけ雪原に冒険者を転がす。

 

「嗚呼、なんて矛盾。酷いと思うでしょう、皆様も? 思慮も分別も作法(マナー)すらない。我ながら呆れ返っていまして」

 

 言葉も暴力も止めず、冒険者を痛めつける。

 

「私という存在がいること自体、世界の欠落の証明にして立証。やはり瑕疵(かし)は滅ぼしてでも正さなくてはならない!」

「………………」

 

 既に事切れていた。ここまで脆いと気づかなかったと嘯き、逃げ出す冒険者の背を見る。

 

「おっと、逃げるのですか? 亡骸(なかま)を置いて? 本当に? それでよろしいので? くっ……………フハハハハハハハッ! 逃がすとお思いですか? いいえ、逃げられない! 逃がす道理がない! こんな光景、神々が見ていたなら笑うことでしょう! こう言うに違いない! 『あぁ、可哀想に──死んでしまった』と! そこは戦わなくては、誇り高く、最後まで足掻く! そう『英雄』のように……」

 

 そして新たな骸が転がった。




街娘と英雄の会話
「ああ、アーニャ違うよ! お肉屋さんはそっちじゃないよ!」
「地図逆さまで逆に良くここまでこれたな」
「感心してる場合じゃないよ! あ、よし、ちゃんと道がわからなくなったから人に聞いてる」
「路地裏に連れ込まれそうになった挙げ句、仲間らしき奴等が後からついてってるがな」
「ヴァルド何落ち着いてるの!?」
「冒険者ですらねえ。ほらぶっ飛ばされた」
「もう……アーニャもだけど、あの人達も後で反省させなきゃ」



「蝶々追い掛けたり、お昼寝したり、ぼったくられてたり色々あったけど後は帰るだけだね。食材も間違えてるけど………ヴァルド、先に帰ろう。運んで?」


「ふっふーん。ミャーの手にかかれば初めてのお使いもお茶の子さいさいなのニャ! プギャ!? 何でデコピンするニャ!?」

なんか思ったより筆が進んでヒロインも増えたので聖夜祭デート再アンケート

  • 家族仲良く リヴェリア、アイズ
  • 一度実家へ アルフィア、ベル
  • 聖夜祭だろ シル、ノエル
  • 夫婦水入らず リヴェリア
  • 義母義父のみで アルフィア
  • 街娘と日常を シル
  • 最も美しい女神(ヴァルド評) アストレア
  • 聖夜と言ったら聖女 アミッド
  • ツンデレ大和撫子 輝夜
  • 一人で過ごす男達の為に オッタル
  • 一人で過ごす男達の為に アレン
  • あるいはこんな世界 ディース姉妹
  • 聖夜祭は店も大忙し 豊穣の女主人
  • 何やらおかしな実験に フェルズ
  • ダンジョンデートだ 椿
  • ドロドロ依存 フィルヴィス
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