オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
シルの案内の下迷宮を駆ける一同。
シルを抱えるヴァルドの代わりにアリーゼ、リュー、アーディ、輝夜が道中襲いかかってくるモンスターを切り飛ばしていく。
「さすが第一級………あたし等いらなくね?」
「ニャ!? そ、そんなことないニャ! ミャー達が行けばノエルも安心するのニャ!」
「ま、それはそうかもニャー」
「…………普通についてくんだな。中々高ぇステイタスみたいだが、何もんだ?」
その後衛で手持ち無沙汰にLv.5の戦闘を見ている豊穣の女主人の店員達に、後ろからの襲撃に備えるライラが疑問を口にし全員の顔色が変わる。
「まあなんとなく心当たりはあるんだけどよ」
「「………………」」
アーニャはともかく、クロエとルノアは
というか
「あたしだって褒められた人生歩んできたわけじゃあねえよ。ヴァルドが何もしてねえなら、根は良い奴か性根が腐ってても悪ってわけじゃねえんだろ」
因みにアタシは後者な、と笑うライラ。
自分達はそのどちらでもないのだが、と言いたげなクロエとルノア。
「自分が悪党と自覚してんならマシだろうよ。
世界への不平不満、自分だけが失ったと嘆き他者から奪いながらも『正当性』を疑わない己の『悪』。それに比べれば彼女達は遥かにマシだ。
「っ……行き止まり?」
「どういうことニャ、シル。やっぱり山勘?」
ノエルの居場所が解るというシルの案内で辿り着いた壁にルノアとクロエが困惑する中、ヴァルドが目を細め壁を見る。
「…………いや、あっている」
「ルノア、その岩を砕け」
「え? まあ良いけど………おおりゃあ!!」
困惑しながらもヴァルドが指した岩を殴りつけるルノア。
「うっし!」
ガラガラと崩れる人より巨大な岩。クロエがうわ〜、とドン引きしていた。が、吹き抜けてくる風に気付く。
現れたのは薄白い洞窟。
「『未開拓領域』………? それも、かなり広い」
「間違いない。ノエルはこの先………」
マッピングされていない未知の領域に目を開くリュー。シルはヴァルドの服を掴む手に力を込め呟く。
「これは、雪か?」
「雪っぽいけど、雪じゃないニャ」
「水晶の欠片ですねぇ、かなり細かく、触った感触は雪そのものですが」
溶けない雪。差し詰め幻想の雪原と言ったところだろう。
ルノアが砕いた岩はダンジョンの修復機能で修復されていくが、かなり速い。今まで見つからずに済んだのはこれが理由だろう。謀をするにはこれ以上ない環境。
「来るぞ」
敵の拠点である証明のように現れる食人花達。
「
一部の第一級のいる派閥のみ公開されている
ヴァルドがほぼ壊滅状態にしたとはいえ根強く残っていた都市の闇。本来なら都市に残った自分達が祓わねばならなかった存在。
「気を病むな。俺の失態でもある………今度こそ殺し尽くす。その時は頼む」
「………お前が、私達に頼むだと?」
ヴァルドの言葉に食人花を切り刻みながら反応する輝夜。
「ああ、事実俺一人では殺し尽くせなかった」
「……ヴァルド、顔怖いよ。ノエルを迎えに行くんだから」
「そうか? すまない」
「お前、5年経ってもそういうところ変わらねえなあ………」
ライラが呆れたように言い、クロエがウンウン、と頷く。と、不意にクロエ達の耳がピクリと動く。
「追加で来るニャ!小型種複数と………新しい足音!」
「おっけー! リオン、魔法詠唱!」
「はい!」
アリーゼの言葉に詠唱を始めるリュー。Lv.5のランクアップで覚えた『魔導』による
「『魔法剣士』になっていたか」
「そうよ!ただでさえ高威力のリオンの魔法が更に跳ね上がって、大抵のモンスターなら魔石ごと轢き潰して稼げなくなるわ!」
「なら、放て。
何故か得意げなアリーゼはヴァルドの言葉に奥からやってくるモンスターを見る。
「芋虫!?気持ち悪ぅい!リオン、やっちゃって!」
「はい! 【ルミノス・ウィンド】!!」
リューの魔力に反応し速度を増しながらボタボタと口から液を吐きながら迫る芋虫の群れにアリーゼが叫ぶ。リューが放った風を纏う光弾は芋虫たちを擦り潰し、引千切る。
「「「────!?」」」
飛び散った体液が壁や床を溶かし、無事だった芋虫も溶かされ、体が異様に膨らみ爆発する。交じっていた複合体も悲鳴を上げながら溶けていく。
「ちょ、あれ通れない!」
「問題ない」
ヴァルドはそう言って懐から取り出した小瓶を投げつける。瓶が溶け中身の白い液体が広がると同時に白い煙が広がり腐食液を凍らせた。
「知人の
「ふーん、【
「別人だ」
ライラは薬品に興味を持つがヴァルドが答える気はないと気付いたので今は追求しないことにする。
「まだまだ来るニャ! て、後ろからも!?」
「挟撃するつもりか………シル、コレ着てろ」
ヴァルドはシルを降ろしてから『獅子王の外套』を着せる。普通のモンスターならば深層種であろうと傷を付けることは出来ない。
「げぇ! また芋虫!?」
「奥になんかでかいのいやがるぞ!」
現れたモンスターは先程と同じ芋虫と、芋虫に酷似した下半身を持つ女体型。そして──
「炎を纏ったヘルハウンド?」
「この気配、まさか………!」
全身から炎を吹き出しながら駆けてくるヘルハウンドに、
「グォワ!」
吐き出された炎は深層の竜の息吹にも匹敵にする赤い津波となって迫った。
「ッ!! 【
直ぐ様飛び出したアリーゼが炎を纏い迎撃する。2つの炎が互いを焼き尽くさんと空気を飲み込み唸り声を上げ弾ける。
「
「………『精霊』を取り込んでいる!」
ライラの言葉にリューが忌々しげに燃えるヘルハウンドを睨む。その延髄に突き刺さった短刀、血走った目、ダラダラと垂れ流される唾液。その症状には見覚えがあった。
「
薬と呪詛で体を壊すほどの力を与える代わりに精神を侵し、強制的に『武器化』した『下位精霊』を取り込ませたモンスター。モンスターであるなら魔石食いによる強化もなされているだろう。
「ん?」
と、女体型が周囲に輝く粉を撒き散らす。ヴァルドが剣圧で吹き飛ばすと同時に粉が爆発した。
「まじかよ、こんなのあと何体もいやがるぞ!!」
精霊狂化モンスターに芋虫の女体型。前からも後ろからも迫る群の脅威度は深層深部にも匹敵するだろう。
「先に行け。殿は俺が引き受ける」
「え、でも………!」
「俺以外に奴等の腐食液に耐えられる者が居るか?」
ヴァルドが残るという言葉に難色を示すアリーゼだったが、何もかも溶かす芋虫型の腐食液に耐えられるかと言われれば言葉に詰まる。アリーゼなら腐食液が身体にかかる前に魔法で蒸発させられるだろうが、爆発する粉塵は別だ。
「理解したなら行動に移れ。【
発動された魔法に反応する女体型。吐き出した腐食液を『
「…………私達に出来ることはなし! 突っ切るわよ!」
「っ! ああ……!」
「わかり、ました」
輝夜とリューが悔しげに顔を歪めアリーゼの判断に従う。
「アーニャちゃん、シルちゃんをお願い!」
「解ったニャー」
と、シルを抱えるアーニャ。ヴァルドの魔力に反応している女体型の間を擦り抜け、魔力に反応しないヘルハウンドが襲いかかろうとしたがヴァルドが尾を掴み女体型へ投げ付ける。
「──────!?」
途中迄腐食液を蒸発させていたが源泉とも言える女体型の中に押し込められやがて溶ける。ヴァルドは残った精霊の武器を取り出すと背後から迫ってきたヘルハウンドが吐き出した炎を生身で突っ切り頭を握り潰す。
「──────!!」
分厚い鰭のような腕を持つ女体型がその腕をヴァルドに叩きつける。ボフッ!と粉塵が吐き出され、爆炎がヴァルドを飲み込む。
大概の冒険者ならこれでかなりのダメージを与えるだろう。後は腐食液でも吹きかければ終わる、女体型の必勝法。
相手が並の冒険者であれば、だが。
「!?」
ザンッと腕が斬り飛ばされる。
爆煙から飛び出してきた影に慌てて腐食液を吐き出そうとするが首が切り落とされ、死体が爆発し周囲に腐食液をばら撒く。
「「「────!?」」」
降り注ぐ腐食液に体の表面を溶かされる女体型。ヘルハウンド達は炎で腐食液を焼くが、ヴァルドが一匹の頭を踏み潰し新たな精霊の剣を回収。
「っ!!」
粉塵が腐食液と反応したのか特大の爆発が起こる。吹き飛ばされたヘルハウンド達は下位とは言え精霊の奇跡を以って傷を癒やすが、復帰する前にヴァルドが精霊武器を回収し、切り刻む。
「これを量産されてるとなると、厄介が過ぎるな」
自分なら兎も角、下位の冒険者達にとっては脅威そのものだ。特に芋虫型が厄介極まりない。
「………残りでインナーも作らせるか」
ズボンは『獅子王の外套』と同じ素材だったが、インナーは少し丈夫程度の物だった。腐食液と炎でボロ布になったインナーの残りを破り捨てヴァルドはシル達を追おうとして、再び響く爆音。ドドドと雪崩のような音が響いた。
「うぅ………ああぁ………」
粉水晶の雪原に連れてこられたノエルは
「やだ、なに、これ………いや、やだっ! こわい!」
「随分なご挨拶ですね。それでは『彼女』が悲しんでしまいますよ? せっかく貴方の新しい『家族』になるというのに」
「かぞくじゃない!」
怯えるノエルを嘲笑うヴィトー。自分よりも『家族』という繋がりを嘲笑されたノエルは怯えながらも叫んだ。
「かぞくは、もっと、ぽかぽかするの! あったかいの! おかあさんとおとうさんとみたいに! でもっ………これはちがうもん! ちがうんだから!」
「違うと言われましても………理屈として正しいのは私の方なのですよ? いいですか? 『彼女』は、貴方と同じ──」
「ヴィトー様、少しよろしいですか?」
「……何がありました?」
言葉を続けようとしたヴィトーに闇派閥の団員が声をかける。
少し不機嫌そうに睨むヴィトーに尻込みしながらも男は言葉を続ける。
「………件の連中が、この秘境まで………」
「…………ほう」
その言葉に糸のような目を歪めるヴィトーは再びノエルに視線を向けた。
「朗報ですよ、ノエルさん……貴方が『家族』と呼ぶ方々が、ここまで来たそうです」
「えっ……? おかあさんと、おとうさんが? アーニャたちも?」
家族という言葉に、ノエルの瞳に希望の光が灯る。
「ええ、ええ、とても勇敢な方々です。我々が困ってしまうほどに、『面倒』な輩ですとも。おっと、しかもかの英雄までいるとなると………これは急がねばなりませんねえ。ですが、ええ………ちょうどいい」
「……っ!」
不気味な笑みにノエルが怯える。ドロドロとした悪意がヴィトーの言葉に、瞳に、顔に宿っていた。
「どんな方法を試そうか思案していましたが、彼等を利用することにしましょう。ここに居る全ての構成員に連絡を、侵入者を始末し、その首を持ってくること。ああ、英雄はどうせ無理なので何とか引き剥がしてください。彼にしか倒せないモンスターでも放てば、あるいは………」
それでも数秒しか止められないだろうと当たりを付けるヴィトー。
「切り離し次第通路を火炎石で爆破。ここに来るまでの時間を稼ぎなさい」
「はっ」
言外に死んでこいと言ったヴィトーの言葉に誰一人反論せず従う。
「手始めに、こちらはしっかり抵抗しましょう。ええ、しますとも。愉快に、滑稽に、全力で。敗れるもよし、抜けてくるもよし、喜劇も悲劇も惨劇も、全て取り揃えておりますとも! できるなら飛び切りの『英雄譚』を! 私が愛する悲壮の物語を!」
「……おかあさん、おとうさん………みんなっ……」
ここにいない家族に悪意を向ける男に、ノエルが泣きそうな声を絞り出す。その声に反応してくれるものはここには居ない。
「同胞達よ! ヴィトー様からの厳命だ! この領域に侵入した連中を抹殺せよ! 我々の大願は、直ぐそこにある! 不条理なる世界に鉄槌を下す日は近い!!」
彼等は世界に『悪意』を振りまき悪を成しながらも、自らの『正義』を疑わない。自分達だけが『可哀想』で、世界そのものが自分達を苦しめてくるとし『正当』な『復讐』を成し、邪魔する『悪』を滅ぼさんとする。
「その前に、奴等の血で大願を彩るのだ! 殺せ! 殺せ! 一人残らず蹂躙せよ!」
「「「はっ!!」」」
自らの使命感に酔った闇派閥の男も女も、己の行動になんの疑問も持たず動き出す。ヴィトーは唯一人、そんな光景を蔑むように見つめていた。
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