オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
自らも剣でありながら周りに己のあり方を示し、研磨する。嘗てのヴァルドのあり方に魅せられ先を目指した冒険者は少なくない。
聖女が初めて思ったのは他者を顧みず己を顧みない救済装置。他人の命を助けるくせに、自分が死んだ際死ぬ命は気にするくせに、心は気にしない破綻者。
誰かのために身を削れるのは素晴らしい、だが身を抉るのは違うだろうと思っている。
命を救われたことあり、その事を恩に感じているが同時に自分達もせめて己の身を守れていたらと引け目を感じている。
逃げる逃げる逃げる。
主神を抱えて、モンスターから逃げる。迫りくるは純白のモンスター。両腕に引き千切られた鎖がついた枷を持つ巨大な猿。
名をシルバーバック。上層にて出現する怪物の一種。狙うは幼い容姿をした女神。
女神を抱え走る少年、ベルは内心で悲鳴を上げる。
シルを探していると、数日帰ってこなかったヘスティアと合流し、エイナとほんの少し会話をしてシル探しを続けていたら急に周りが騒がしくなり、そのモンスターが現れた。何故かベル達を………否、ヘスティアを執拗に狙っている。
「か、神様! なんであのモンスター神様を狙ってるんですか!?」
「し、知るもんか! 初対面だよ!」
通行人には目もくれずヘスティアだけを狙うというモンスターらしからぬ行動。まさか、操られている?
何となく感じる視線。これが、この騒動の首謀者? しかし、視線はヘスティアではなくベルに注がれている?
モンスターの視線と何者かの視線、2つの視線を感じながら逃げるベルは、宛もなく走り回り………
「っ……ベル君、だめだっ、こっちは……!」
「えっ!?」
ヘスティアの言葉にハッと意識を取り戻し、すぐにその言葉の意味に気付く。そこには雑多な空間が広がっていた。
捩れたような何本もの通路、壁から不自然に飛び出した正方形の部屋、入り交じる無数の階段。それは地上の迷宮、『ダイダロス通り』。迷い込めば二度と出られないなどと揶揄されるほどの複雑怪奇な広域住宅街。
「グゥオオオオオオ!!」
「「っ!!」」
姿は見えぬが、咆哮は聞こえる。迫りくる足跡も聞こえる。ヘスティアはくそう、と叫んだ。
「ええい! こんな形で渡すなんて!」
「え、か、神様!?」
「受け取れ、ベル君!」
そう言ってずっと背負っていた布に包まれた何かを渡してきた。
「こ、これは?」
「君の新しい武器さ!」
「ええ!?」
困惑しているベルだったが、シルバーバックが追いついてくる。慌てて布を解くベル。
「ゴアア!」
「つぅ!」
モンスターの拳が布から取り出された剣の鞘に叩きつけられ、ベルの体が僅かに浮き上がり飛ばされる。
「フー……グフゥ………」
「あわわ!」
吹き飛んだベルに興味を持たず、ヘスティアを睨むシルバーバック。どうせ逃げられないと思っているのかノソリと近づき手を伸ばし………
「その人に、触るな!」
「グゥ!!」
ベルが鞘に収められた剣で殴りかかる。それに反応し腕を振るい鎖を鞭のように扱うシルバーバックだったがベルは直前で身を低く屈め、体全体を伸ばしながら突きを喉元に放つ。
「ギャウ!?」
筋肉の鎧に覆われたシルバーバックだが、気道周りは薄い。そこを攻撃され反射的に飛び退き「げぇげへ!」と咳き込み、怒りに満ちた目でベルを睨む。
「よしベル君、一時撤退だ! 【ステイタス】を何処かで更新するぞ!」
「え? あ………は、はい!」
さあやるぞ! と意気込んだベルだったがヘスティアが背中にひっつき叫ぶので慌てて走り出す。
「ガ、ガァ! ガルアアア!」
その後を慌てて追おうとして咳き込み息を整えるシルバーバック。直ぐに怒りで顔を歪ませ走り出す。
『ベル・クラネル
Lv.1
力:G281→E459
耐久:H124→F334
器用:G255→E437
敏捷:F333→D563
魔力:I0 』
(全アビリティ熟練度、上昇値トータル800オーバー!? というか敏捷はともかくこの耐久、どんだけヴァルド君にボコボコにされてたんだ!?)
ここでモンスターの仕業と思えないあたりがヴァルドクオリティ。
「と、とにかく行くんだベル君! 今の君
「いーい、ヘスティア。良く聞きなさい」
その剣を渡す時、ヘファイストスはヘスティアにその剣の特徴を伝えた。
「モンスターの甲殻、ミスリル、精霊の力、あんたの髪………色々材料が特別だけど、それでもこれは欠陥品。『カエルム・ヌービルム』とは違った意味でね」
「欠陥品?」
「この剣にはあんたが【
それはつまり『
ヘスティアの眷属にしか使えない、武器としては欠陥品。造り手の手から離れ勝手に『最強』へと至る邪道。
「オオオオオ!」
「グオオオオオ!」
ベルの【ステイタス】更新の影響を受け、一歩最強へと近付いた剣を手に、シルバーバックに迫る。シルバーバックもまた、鎖を振り回し目の前の兎に向かい攻撃する。
しかし、当たらない。動きは単調。速さも足らない。
そんなもの、ベルに当たるはずがない。彼を鍛えたのは人類史の中でも最高位の剣士。
「ああ──!」
「っ!!」
ザン、とシルバーバックの胸が切り裂かれる。内部の魔石を斬られ、シルバーバックの肉体は灰へと変わり崩れ落ちた。
「【
「てめぇ、今なんか馬鹿にしただろ!」
Lv.6が3名、一歩劣るがその連携はLv.6も圧倒すると言われるLv.5の4人。【
「チッ、まあいい。てめぇはここで大人しくしていろ。モンスター共は被害を出せねえよ」
「繋がりを隠そうともしないのか」
「知られたところで何が出来る。せいぜいがペナルティを言い渡されるだけだ」
それが都市最大派閥の特権。三大クエストの悲願を達成させたいギルドは【フレイヤ・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】、例外的に【イシュタル・ファミリア】などに強く出られない。
ましてや今のヴァルドは団員数2名の弱小
「それだけの権威を許されるのなら、それに相応しい器を得てほしいものだがな」
「品行方正な英雄にならてめえがなってろイカれ野郎」
「フレイヤ様の寵愛を拒絶したくせにチビ女神に
「フレイヤ様以外の評価とかどうでも良いんだよ若白髪」
「ロン毛似合ってるぞ、女みたいでな。女装でもしてろ」
呆れたようなヴァルドの言葉に小人の4人が毒舌を飛ばす。
「品性など、あの女の眷属に求めるわけがないだろう」
「………おい、状況を解っていってるのか? この数相手に、よくもまあ啖呵を切れる」
「ク、ククク………蛮勇な……ぐ、愚者は躯を晒すが精々」
「だまれ根暗」
「ひぅ!」
ヴァルドに睨まれ「なんで俺だけぇ」と涙目になる
「あの猪、あれから7年経ってまだLv.7らしいな。あとは試練を超えるだけだろうに」
「今彼奴は関係ねえだろうが……」
目の前の自分達を無視されて、世間話でもするかのように気に入らない団長の名を出され
「そうだな、あの猪もお前達と同じだ。
「──!!」
瞬間、殺意が膨れ上がる。
事実銀槍の穂先はヴァルドの片目に当たる。当たる、だけだった。
「…………あぁ?」
剥き出しの人体の中でも特に柔い眼球に、神速の一刺しはまるで
「っ!?」
ギョロリと瞳が動き、
「てめぇ、何をしやがった………! どんなカラクリだ!」
「何も。強いて言うなら、耐久で防いだ」
「抜かしやがれ!」
そんな事、あるはずがない。それは耐久に秀でた上で
「オラリオの外で、生温い環境で5年過ごしたてめぇが、どうやってそこまでの耐久を得るってんだ。寝言は寝て言いやがれ!」
「俺以上の環境にいたというのなら、何でまだ5年前の俺と同じLv.6のままなんだお前等」
ヴァルドはそう言うと背負っていた長剣の柄を握る。巻き付いていた布が解け漆黒の剣身が顕になる。
「品性など求めないが、最強を名乗るなら、
「てめぇも
「軽いな………微風よりかはマシな程度だ」
「っ!!」
片手で槍を受け止めるヴァルド。指で挟むでも柄を握るでもなく、掌で、僅かな傷一つ作ることなく………
「『毒』は使わん。『
ドグン、と
山を吹き飛ばし、谷を崩し、森を枯らし、大地を穢し、暴威を振り撒いた『陸の王者』の権能の一端が開放された。
「ぐ、う………」
「あが………」
黒き竜巻が美神に仕える冒険者達を一蹴し、その中心に立つヴァルドは街中から聞こえる悲鳴に眉根を寄せる。
多すぎるし広すぎる。モンスターの気配が、二桁では足りない。
「オオオオオ!」
「何だ、此奴は?」
と、地面を破壊しながらやってきたハエトリグサのようなモンスターを
新種……。まさか、深層のモンスター? だとするなら、【ガネーシャ・ファミリア】が地上に持ってくるなど…………いや、今はどうでもいい。
「【
ヴァルドの足から雷光が走る。次の瞬間、都市の各所、上級冒険者が居らず蹂躙されかかっていた戦場で、モンスター達の頭部が吹き飛んだ。
「っ………流石にこの速度は脚に来るな」
地面を削りながら静止したヴァルドは己の状態に顔をしかめる。急ぎ向かう必要がある場所を優先的に排除したが、それでもまだ数十体残っている。
冒険者達が相手する音が聞こえるが、だからといって彼等に任せる道理はない。まだ足の神経が焼けており、『不死身』のアビリティで治り始めてはいるが完治には時間がかかる。まずは近場から…………
「ヴァルド?」
「アミッドか?」
と、角を抜けると銀髪の少女がヴァルドの登場に目を見開き驚愕していた。思わぬ再会にヴァルドもほんの一瞬固まり、しかしすぐに「アミッドちゃんを守れー!」と叫ぶ冒険者達に囲まれた3匹の食人花に目を向け………
「不要です」
しかしアミッドは助力を拒み、腰の後ろに挿していたショートソードを抜き食人花を斬り刻む。
「私は貴方に守られなければいけないほど、弱くはない。他の場所へ」
「ああ…!」
ここに助けは要らない。ここだけではないだろう。
食人花相手に戦える冒険者は居る。戦えぬ者が居る場所に向かい、ヴァルドは駆け出した。
「…………あの脚でよく走れますね」
そんなヴァルドを見て銀の聖女は呆れたように呟くのだった。
エニュオ「え、あのトンチキ帰ってきたの? まあ街中にモンスター放てば
アミッド
この作品で一番強化された戦う
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