このラスボスもどき達に祝福を!   作:山吹乙女

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 お疲れ様です

 承認欲求モンスターなので続きました。


我々の目的は達成した

 

「諸君、ご苦労だったね。我々はついにここまで漕ぎ着けた」

 

 朝日が藍染の背後から差し込み、後光がまるで真っ白な空間に藍染という影を映し出した不穏な世界を創り出す

 

「ようやくここまで来たね」

「ここまで長かったのう」

「スキルを使えばそれこそ一瞬で終わったけど、こういうのは試行錯誤の時間に意味があったからね」

 

 藍染と対面する前世からの仲間たちは感慨深く頷く

 今までの経過した時間を噛み締めるように、ラスボスもどき達は一同に微笑む

 白蘭が腕を組みまるで悪巧みをしている子供のように微笑み、羽衣狐は妖しく妖艶に微笑み、安心院さんはその口元を弧を描くように笑い、全員を視線の先に収めている藍染は余裕のある笑みを浮かべる

 もし仮にこの場面に一般人が出会したなら、その自然と溢れ出るプレッシャーと圧により青い顔をして倒れる者も現れるだろう。圧迫面接も裸足で逃げ出すところだ

 

「惣右介くんがクリスちゃんに冒険者をやらないって言った時からだから…半年は経っちゃったね」

「あの時はまさか惣右介があんなことを考えていたとは思_いや、惣右介なら思うていても不思議じゃなかったのう」

「でもここまでの時間も、冒険者をするよりも有意義な時間だったと思うぜ」

 

 安心院さんの言葉に全員がまた感慨深く頷く

 

「何はともあれ、喫茶店『ラストエリア』…開店だ」

 

 喫茶店ラストエリアと書かれた看板が立てられた入り口付近に下げられた赤と白のテープを、仲間たち人数分ある金色のハサミで切り、周りには誰もいない形だけの開店セレモニーを開始した

 

「でも一番苦労したのが店名ってのが僕たちらしいよね」

「白蘭が『ミルフィオーレ』、私が『ラスノーチェス』、安心院さんが『フラスコの箱庭』、羽衣狐が『二条城』。誰も一歩も譲らなかったからね」

「店名決めだけで、数ヶ月はかかっておるからのう」

「でも最終的に全員がボス系統という事でボスラッシュがあることが多いラストエリアに名前が決まったんだよね」

「ロックマンのワイリー城とかそのタイプだし意外としっくりきたよね」

 

 喫茶店ラストエリア、その外見は驚くほどにシンプルという言葉が似合うだろう。派手な外装はなく、それでいて周りの建物に溶け込むようにして建てられた喫茶店は建築から全ての作業を彼らだけでこなしていた。

 店内もモダンであるがレトロではない、目新しくはないが馴染み深い、そんな喫茶店になるように藍染が考え仲間達の意見を参考に試行錯誤の連続で完成させたのが喫茶店ラストエリアであった。

 

「それじゃ最初は僕、あの言葉が聞きたいな。藍染店長」

「ホウ…やはり始まりはアレじゃな?」

「僕はあの言葉を聞きたいがためにここまで頑張ってきたと言っても過言じゃないぜ」

 

 藍染は一瞬面食らった顔をした後、ふっと笑い息を整える。きっと彼は、よくできた友人達だと思っているだろう

 

「お(はよ)う諸君、開店だ_()ずは紅茶でも淹れようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

「ねぇねぇカズマさん、カズマさん、生活もちょっと安定してきたし私、甘いもの食べたいなぁ〜」

 

 女神アクアは佐藤和真の転生特典として一緒に転生させられていた。最初は極貧生活を余儀なくされたがそれでも地道な労働によりほんの少しずつ稼げるようになっていた。

 

「まだ馬小屋生活から脱出してないからダメだ」

「えぇ〜ちょっとくらいいいじゃん!私頑張ってるわよ!女神なのにいっぱい頑張ってるわよ!!ねぇお願い、甘いもの食べさせて〜!!!」

 

 まるで子供のように地面に転がり手足をバタバタさせる女性を果たして女神と言ってもいいのだろうか悩むカズマだったが、確かにちょっとした息抜きとして甘いものを食べるのは悪い事ではないと思ってきた。仕事の疲労は毎日の風呂としゅわしゅわにより多少は緩和できるが、それでも脳にしっかりとした糖分を入れることは今後のモチベーションのためにも有効であることをカズマは思考した。

 

「たくっ、しょーがねーな。そこまで言うなら甘いもの、食べに行こうぜ」

「やった!!!さっすがカズマさん!」

「おっ、おう…」

 

 スイーツの一つでここまで喜ばれるなら打算抜きにしてもたまにはいいかとカズマも思った。

 

「それで甘いものってどこで食べるんだよ、俺知らないぜ?」

「フッフッフッ、実はこの日のためにお手頃で美味しいと評判のお店に目星をつけていたんだから!」

「おー…いや、抜け目ねぇなぁ」

「それじゃ甘いもの食べに行くわよ!」

 

 カズマはアクアの案内のもと歩き出し数分後、異世界であまり見たことがない行列に出会した

 

「はーすごい行列、ラーメン屋かよ」

「意外と少ないわね」

「これで少ないのかよ…」

 

 カズマの前に広がるのは20人ほどの人の列であり、現代の都会ならよく見る光景だが、これが中世を基準とした異世界なら異様な光景だった

 

「それで並んだはいいが、ここどんな店なんだよ」

 

「よくぞ聞いてくれました!ここはアクセルの街で一番の喫茶店と名高い、その名も喫茶店ラストエリア!料理は美味しいし、値段もリーズナブルでこのお店が影響して、特に女性を中心に高レベル冒険者でもアクセルの街を離れないし、ここを目的にアクセルにわざわざ移住する冒険者だっているほどよ。ちなみにここが原因がどうかわからないけど魔王軍の前線である王都は最近人手不足が悩みの種だそうよ」

「それ普通にここが原因じゃねーか」

 

 ロクでもない世界だと思っていたらまさか喫茶店一つで魔王軍との戦いが不利になっていようとはカズマも思っても見なかった。が、そんなにすごい店なら確かにこの行列は納得だし、少ないと言うアクアの話も納得だった。

 

 待つこと1時間、意外にも店の回転率はいいのか最前列まで進み、その頃になると自分達が並び始めた辺りから更に長く長蛇の列ができていた。店内から出てきた客や列に並ぶ客は女性客が多いかと思われだが、意外にも比率として男性客も多く占め、三割ほどは男性客であった。

 

 そして店内から二人組の女性客が出ていくと自分達の番だろうと思い、カズマたちはドアを開け、ドアベルがカランカランと小気味良い音を立てながら店内に足を運び、そこでカズマは自身の目を疑った。

 

「いらっしゃい、お客さま、席へご案内しまーす。」

 

 前世でアニメや漫画の知識があったカズマには少々馴染み深いが、絶対に目の前に現れることはないと思っていた存在がウエイターをしていたからだ

 ちなみに白色の髪の美青年、漫画の中ではマフィアのボスとして現れた白蘭その人である。そしてその格好は転生してきた格好と同じ白のワイシャツに黒のスラックスを履き、淡い緑色の腰に巻くタイプのエプロンをつけたラフな格好だった

 

「なっ!びゃくっ…」

 

 声を発そうとしたカズマだったが瞬時に口を紡いだ、もし仮に目の前の存在が漫画の中のキャラの残虐非道な性格の彼であれば、ちょっとしたことで癪に触り自分なんて跡形もなく消え去ると予感したからだ

 

「ここであったが百年目ぇ!!!!」

 

 カズマが信じられない現象を目の当たりにしていると、カズマの隣にいたアクアは右手の拳を握りしめ、白蘭に殴りかかろうとしていた。

 

「ゴットブロー!!!」

 

 アクアは渾身の右ストレートを白蘭に向け振りかぶり、あわや白蘭が殴られると覚悟したカズマだったが、白蘭は何の気なしに両手を広げた。

 

「白拍手」

 

 パシッ!と甲高い音と共にアクアの右拳は白刃取りの要領で綺麗に白蘭の両手に収まっていた

 

「店内ではお静かにお願いしますよ、女神サマ♪」

「何やってんだこんの駄女神!!!」

 

 少なからずあるオタク知識で白蘭が使用する技を知っていたカズマは同じ技を使用した目の前の白蘭が本物である可能性を確信し、それ故にアクアの行動を叱らずにはいられなかった

 

「だって!こいつ私の一年分の給料を使ったのよ!!!」

「これこれ、白蘭、なんの騒ぎじゃ」

 

 広々とした店内の死角から黒髪黒目の美女が黒のセーラー服に淡い緑のエプロンをつけ、木製のお盆を片手に現れた。何を隠そう羽衣狐である。

 

「あ、羽衣狐ちゃん、ちょっと見てよ。懐かしい人に会ったんだ」

「ホウ…これまたあの時の女神とは、なんの因果かえ?」

「ちょっと待って?ここってあの四人組のお店なの!?」

 

 カズマは一人置いてけぼりを食らった。ボスキャラが序盤で現れたと思ったら、その直後にまたしてもボスキャラに会ったからだ

 RPGとして考えるなら最序盤で章ボスがボスラッシュしてくるとかゲームバランスの崩れたクソゲー以外の何者でもないとカズマは内心悪態をついた

 

「ほらほら二人とも、まずはお客サマを席にお連れしなきゃダメだぜ?なんてったってお客サマは神サマっていうからね」

 

 白蘭と羽衣狐の背後から音もなくいきなり現れたのは白と赤の袴に淡い緑色のエプロンをつけたアンバランスな格好をした魅力的すぎる美女だった。何を隠そう安心院さんだ

 

「フン!あの時の恩があるんだから料金まけてよね!」

「ハイハイ、二名サマごあんなーい」

 

「カエリタイ…」

 

 アクアの事情は知らないが彼、彼女らを知っているカズマはもう既に帰りたくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

「いらっしゃい、女神アクアとお連れの少年」

 

 メニューと書かれた用紙を片手にカウンターから現れたのは、白のワイシャツに黒のネクタイと黒のベスト、黒のスラックスに淡い緑色のエプロンを腰に巻いた姿をした藍染であった

 

「あの…アクアさん?この方達について説明してもらってもいいですか?」

 

 ジャンプ作品ボス属性のキャラが勢揃いしているこの状況について、カズマは何かを知っているらしいアクアに片手を軽く上げ説明を促す。

 

「あーこの人達ね、地球で死んだただの学生達なの。カズマと同じで日本で死んで私のところに来て転生特典として二次元のキャラの性能と見た目を与えたんだけど…この人達の容量が明らかにオーバーしてて、オーバーした分の割り増し金は天界から降りないからそのオーバーした分を私が払うことになって…あの後貴方達が転生してから私一年間ずーっと、給料止まってて苦しい生活だったのよ!!_」

 

 天界でも貧しい生活を経験していたアクアは唐突に思い出し、怒りが込み上げてきていた。

 

「その件に関しては感謝しているよ、女神アクア」

「うんうん、この体のスペックに何度助けられたことか」

「いくら感謝してもしきれないぜ」

「まさか本当に要望が通るとは思うておらんかったがのう」

 

「なんだ心配したぜ、俺はてっきり本物の藍染惣右介に白蘭に安心院さんに羽衣狐かと思ったよ」

 

 アクアの言い分に応えるボス達は、本当に自分と同じ同郷出身のいわゆる転生者であることがわかったことに安堵した。もし本当に目の前の二次元のキャラがそのまま現実世界に現れたとなれば、この世界はすぐに世界征服されてしまうからだ。実際にはそんなことはあまり考えておらず、この世界での目的も喫茶店を開いてみんなで働きたいというものだった

 

「そういえば自己紹介がまだでした、俺はサトウ・カズマっていいます。貴方がたはなんて呼べばいいですか?」

「私たちのことはそのまま見た目通り呼んでくれればいいさ、君の転生と違い、私たちのソレは生まれ変わりに近いからね」

 

「そんなことより今回の料金はまけてくれるんでしょうね?」

 

 若干不機嫌にカズマと藍染の会話を遮るアクアであったが、元を正せば自業自得に当たるのではないかと理解したカズマはジト目でアクアを見つめる

 

「その点においては保証するよ、今日だけと言わず永久的に値引きすることを約束しよう」

「あら、そう?なんだか悪いわね〜」

「嘘つけ、全然悪いって顔してないだろ」

 

 カズマの言う通りアクアの顔はニヤけていた。お手頃価格の料金が更に格安となれば、ある意味悪い顔の一つもするだろう

 

「こちらがメニューとなっている。それと本日のオススメの紅茶は『ファイネストティッピーゴールデンフラワリーオレンジペコ』だよ」

「なんて?」

 

 カズマは藍染からメニューを受け取りながら、まるで呪文の詠唱のような長さの紅茶の名前を聞き返す

 

「ファイネストティッピーゴールデンフラワリーオレンジペコ…略してティッピーさ」

「ティッピー…」

 

 カズマは困惑していた。目の前のイケメン長身バリトンボイスのイケボ男性から『ティッピー』と言う可愛らしい単語が出てきたギャップにより、普段ならツッコミの一つは出たところだがどう対応していいか困った。

 

「あら、ティッピーって可愛らしい名前ね。私それもらうわ、後このチョコレートパフェのマシマロ増しで!」

 

「承った。そして君はどうする?サトウ・カズマ」

「カズマでいいですよ。とりあえず俺もそのティッピーって紅茶を一つと、あーこのアイスパンケーキの文字入れってなんですか?」

「ああ、それか…その料理は君なら馴染み深いものかもしれないね。()やしたパンケーキでバニラアイスを挟んだものだが、その文字入れというのはホイップクリームとチョコペンで客の好きな文字を指名した店員がパンケーキに書くというサービスだ」

 

 その言葉を聞いたカズマは「メイド喫茶のサービスじゃねーか!」と瞬時に頭の中でツッコミを入れたが、これをまるでラスボスような雰囲気が出ているように感じる藍染に対して、果たして言っていいものかと悩んだ

 ちなみに本人に何故ツッコミを入れないのかと聞けば「全然、ビビってねーし?同郷出身だからって馴れ馴れしくするのも?どうかと思うしー?」と強がった返答をすることだろう

 

「へー?ふーん?」

 

 しかしカズマはこの時、藍染の隣にいる羽衣狐をチラチラと見ながらまるで興味がなさそうに返事をしたが、他の人にはバレバレである

 

「なんじゃカズマ、妾に文字を書いて欲しいのかえ?」

「えぇーつれないな、僕じゃなくてもいいのかい?」

 

 安心院さんがカズマの座っているサイドに周り、腰を折る形で顔を近づける。ふんわりと纏まった髪がカズマの腕に当たるかどうかと言った距離まで近づき、カズマの鼻をこれでもかと女性特有の甘い香りが刺激する。こんなことになれば、健全な男の子のカズマの鼻の下が伸び鼻息が荒くなることは至極当然のことだった

 

「ちょっとカズマ、この人たち元々は男だったのよ?」

「はぁー!?男?…ほんとなんすか?」

「おいおいアクアちゃん、バラすのが早いぜ?もう少し反応を楽しみたかったよ。まぁ確かにアクアちゃんが言ったように僕たちは全員前世では男だったよ、でも惣右介くんが言ったように僕たちは生まれ変わった。なら前世は前世、今世は今世って考える方が気楽ってもんだぜ?」

 

 意外にもあっけらかんと安心院さんは答えた。

 

「そうっすね!」

 

 そしてカズマも大して気にしなかった。




 お疲れ様でした

 カズマさんとの絡みはやってて面白いですね、しかしうちの藍染店長はなかなかボケますね?こんなにボケる藍染惣右介はなかなか見られないですね
 しかし二次創作における二次元キャラ転生で元の作品の主人公が二次元キャラを知ってる設定はありそうでなかなか見ないですよね
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