転生したらリアルホラゲーみたいな世界だった   作:ラスト・ダンサー

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設定と単語ずらっと並べるの気持ち良すぎだろ!(某MAD)

この辺の設定を供養するためにこの作品は生まれたといっても過言ではなかったりする。


入社試験裏 後始末

21世紀の半ばも過ぎた頃、人類はここ数十年で物理学の目覚ましい進歩を遂げていた。特に空間に関連する分野の発展は急速に進められ、もしかするとワームホールを人為的に発生させられるかもしれないと期待が高まっていた。その際、位相技術関連の研究中に偶発的にだが科学的に霊を観測することに成功した。してしまった。

 

研究チーム曰く、一般的に霊とされるものは我々の存在するこの空間から少し位相のズレた箇所、幽界に強い思念が発せられた際に残響のように空間に焼き付いた実体のない情報体、あるいは思念体とも言うべき存在であるという。

 

オカルトとされていた分野が科学的に立証され、ついに長年の謎が解かれるのかと世間が期待したのも束の間、後に『位相震』と呼ばれた出来事により世界的に位相が幽界側に近づいてしまった。これにより各地で霊障が多発。各国は残された研究データを元に霊を認識出来る者達を独自に探し出し、理論に基づいて特異技能の資格者として再分類し、事態に対処するための組織化を急激に推し進めていた。

 

未だ黎明期を抜け出せず、世間からも胡散臭いオカルト組織との認識を覆すこともままならず、現状を維持することに苦心し好転の兆しの見えない有り様は、まさに暗黒時代であった。

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

「そういえば」

 

「ん?」

 

時刻は日が地平線の向こうへと沈み始め、空が夕闇に染まり出した頃。

 

このご時世に未だペーパーレス化の進んでない雑然とした小汚ないオフィスで、野郎二人が机を挟んで淡々と仕事を処理していた。まだまだ処理すべきタスクは残っているが、急ぎの分は今しがた片付いたところだった。背骨をポキポキと鳴らしながら伸びをした細身の男に、小太りの男がコーヒー片手に話しかけた。

 

「採用部門のアレ、聞いた?」

 

「あーアレ。確か新人採用に見繕ってた脅威度壱の物件が実は脅威度参だったってやつか」

 

「そうそれ」

 

脅威度は文字通りその場所の危険性の指標だ。脅威度壱だと実害はほぼ無いが『居る』証拠はちらほら出て来るぐらいだが、脅威度参ともなると位相干渉能力も無視できないレベルの個体が確認され、最悪殉職案件に発展する可能性もある。そんな物件が試験会場にリストアップされていたというのはもしかしなくとも不祥事だ。

 

「ヤバいやつじゃん」

 

「実際ヤバい。どうにも採用部門が以前に確認したのが2週間前とかで直前の調査してなかったっぽい」

 

「そこにほぼ一般人の採用候補連れてって、小一時間呑気に報告メール待ちで放置してたってか?いくらなんでもマズイっしょ」

 

「しかも採用候補が戻ってきてから書かせた報告書を、数日経ってから確認してようやくだってんだからもう上がぶちキレたらしい」

 

「にしてもよく戻ってきたな。その採用候補」

 

「ホントにな。適性検査で霊感技能の他にも霊視技能の才能あったっぽいからな。間違いなく丙級だ。ヘタすりゃ試験会場で冷たくなってたろうなぁ。二次被害も考えると、この案件査察入るかもしれねぇな」

 

霊技能者は主に甲、乙、丙、丁の4つの階級に分けられる。

霊の存在を感覚的に感じ取れる丁級。

霊視により視覚で霊を捉えられる丙級。

逆位相干渉が可能になり俗に言う除霊が可能な乙級。

何かしら特異な技能をもつ最上位霊技能者である甲級。

基本的に上の階級の者は下の階級の技能を扱える為、階級が高くなるほど多芸になる。しかし乙級に至るものは滅多におらず、甲級など希少過ぎて代替不可能な事も多い。

 

調査員として採用されるのが丙、丁の霊技能者であり、今回の採用候補の解離度が潜在的丙級だったことを考えると、よく死人が出なかったものだ。解離度は高ければ感知能力や逆位相干渉能力が比例して強くなるが、同時に向こうからの感知や干渉を受けやすくなる諸刃の剣だ。

 

故に高い解離度の人材は、簡単に言うと霊体に対して高い攻撃力を持つが、同時に防御力は攻撃力に反比例して低くなるという、高威力紙防御の偏った性能のユニットということだ。

 

解離度というのはそもそも現世から奴らの居る幽界にどれだけズレている存在かという数値のため本来はゼロ、すなわち現世にがっちり固定されている状態である方が望ましいが、そんな人材は稀である。

 

ちなみに解離度は最低0、最高0.5である。何故0.5が最高かというとそれ以上高くなると幽界に存在が寄りすぎて現世から消失するため、人でいられる限界値がそのまま最高値となる。逆に解離度0は霊体が付け入る隙がない、というかお互い感知、認識できない為、ある意味無敵状態である。

 

話を戻すと、解離度が高く逆位相干渉技能をもつ貴重な人材はこの特性上、非常に損耗しやすい。特殊な機器により通常時の位相値を機械的にある程度下げることは可能だが、結局攻撃時にはそれらの機器を切らねば本領を発揮できないため安全性に欠ける。逆に解離度を上げる装置も理論上できなくはないが、周囲の霊体に有利になるものををわざわざ展開するのは無謀が過ぎる。

 

そんな理由があって高位霊技能者はそう易々と現場に投入できないため、最善策として逆位相干渉は出来ないが霊感、霊視はできる低~中位霊技能者が万全の調査と偵察を行ってから満を持して高位霊技能者を投入するというスタイルが現在のこの業界の主流だ。

 

低~中位霊技能者の需要は高く、いつでも人手不足だ。なにせ、霊技能というのは才能が全てにおいて物を言うため、そもそもの母数がそれほど多くない。にもかかわらず、現状としては低~中位の霊技能者への負担は大きく、実際最も被害が多いのも丙級の技能者なのだ。

 

視る、という行為は物事を認識し観測するということである。霊というものは認識、観測されることでそれを足掛かりにこちらへと侵食しようとするため、霊を視覚で捉えられ、最も現場に駆り出されやすく、対抗手段がほとんどない、と条件が重なった結果、三重苦の丙級と呼ばれるほどに丙級は世知辛いポジションなのだ。

 

というわけで、件の採用候補は暫定丙級なのもあり、このまま逃す理由もないため、既に採用が確定していたりする。

 

「うげっ……」

 

「どしたよ」

 

「噂をすればなんとやらだ。査察対応のためになるはやで資料作成してあげてくれだと」

 

「おいおい……また泊まり込み朝休憩昼出勤(未帰宅)のデスマーチコンボかよ……」

 

「あと件の内定くんの配属先に説明資料やら手引きやら、こっちもなるはやでって来てたわ」

 

「……エナドリで前借り出来る体力の限界っていくらなんだろうな?」

 

「おいやめろ」

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

「というわけで、デスマーチの慢性化により8名の内3名が退職、内2名が休職中、内1名の行方不明により、人手不足になりつつも期日までに仕事をやり遂げてくれた事務担当残党が作成してくれた新人くんの資料がこちらだ」

 

ウチの事務方、今査察くらってボロクソ言われてる採用部門より死屍累々なんだけどそこんとこどうよ、と言外にこの組織の縁の下が腐り落ち始めている事実を突きつけてくる班長の社会派コメントを受け流しつつ、事の発端とも言える新人君の資料を眺めた。

 

生まれ、平々凡々。

学歴、同じく特筆すべき点なし。

唐突にこの業界にやって来た特徴がないのが特徴のような男。

採用部門のミスにより想定難度を遥かに越えた物件に放り込まれたが、淡々とやることをこなして霊体の証拠動画まで持ち帰った異常な新人だ。

 

「これ本当に素人っすか?実は別組織で正規雇用じゃなくてバイトで実務経験ありとか言われた方が信じられるんですけど」

 

「確かに怪しいとは上も思ったようで、軽く身辺調査までしたらしいけど結果は空振り。この業界に接触したのはウチのところが初。もしかすると趣味でやってたかもしれないけどね」

 

本来の新人採用試験はぶっちゃけるとビビって会場から逃げ出しただとか、その場にうずくまって何もしなかった、とかではない限り、調査の意思を見せさえすれば大概合格になる。ただの汚れを異変の証拠として撮ってこようが、ただの影を霊だと言い出してもだ。

 

しかし新人は、普通に調査員が仕事した物と大差ない証拠を引っ提げて、優々と戻ってきた。加えて霊からの逃走もこなし、位相干渉の確認を行い、出口封鎖タイプであることも突き止めた逸材である。

 

ビギナーズラックで片付けられるほど甘い業界ではないため、偶然などではない。怪しいがこんなご時世だ。腹にどんなものを抱えていても不思議ではないし、採用しないという選択肢も存在しない。人材は有限だ。

 

「ちなみに試験でこっちに落ち度があった件って新人に伝えてるんですか?」

 

「採用通知と出勤場所と研修予定しか伝えてないよ?」

 

「言わないんですか?」

 

「聞かれれば答えるよ」

 

それは詐欺師か悪魔の手口だろ、とはあえて誰も言わなかった。

 

 




よく分からない?安心して下さい、分かるように書いてません(SS書きのクズ)

次回からイッチがぼやく体でまた説明が続きます(コイツいっつも説明してんな……)
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