悪の科学者を超える転生者   作:ヘルスパイダー

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まだまだ終わらないサイヤ人編。これでナメック星編や人造人間編を書くと思うと今から肩が痛くなる。


サイヤ人強襲IFその4

 

「凄まじいパワーの爆発力だったな……」

 

「ああ……、まさか、あのガキがベジータを圧倒するパワーを見せるとはな。前に戦った時もそうだが、怒りで我を忘れた状態に陥った時のアイツはトンデモない強さを発揮してみせた。アレはサイヤ人と地球人のハーフだからそうなっているのか?」

 

「ふむ、私の考える結論から言えばNOだ。あれは一種の突然変異に近い存在だな。潜在能力に特化した個体と言い換えてもいいだろう」

 

 後に産まれてくる悟天や、ベジータの息子のトランクスは基礎戦闘力は高いが、潜在能力は悟飯ほどは高くない。

 これは作者的な考えでいえば、悟飯のような存在をポンポン出せばパワーバランスが崩れるからだろうが、現実的な考えで言えば私の提唱した突然変異論が強いのだろう。

 

 まだ悟飯のDNA細胞を入手していないから、そこまで詳しくは分からないが、今回の戦闘で悟飯の血をスパイカメラが入手したからな。数日中には事実が判明するだろう。

 

 さて、悟空も悟飯が死ぬ前に到着したことだし、今の時点で原作と剝離しているのはヤムチャの生存とベジータの負傷のみか……。

 大筋のナメック星へ行くフラグとなるピッコロの死亡とナメック星の情報の入手は変わらないようだな。

 

「む! もう空になってしまったか。これから面白くなりそうな場面でポップコーンが無くなっちまうとはな。おい! バターしょうゆ味とついでに飲み物にメロンソーダを持って来い!」

 

「ああ、私も同じのを貰おうか……」

 

「カシコマリマシタ」

 

 空になった容器をロボットに渡し、すぐさまおかわりのポップコーンとジュースを持ってこさせる。

 

「さて、今回の戦いは我々も学ぶべきことが多いものになるだろう。心して観戦するとしようではないか」

 

「ああ、エリート様と下級戦士の戦いなど滅多に見れるものではないからな」

 

 

 

 ♦

 

 

 

 戦場に現れた悟空はすぐさま戦おうとはせず、ベジータの挙動を見逃さないよう注意を払いながら、傷ついた悟飯とクリリンとヤムチャに向き直る。

 

「ずいぶんと手酷くやられたみてぇだな。……生きているのはオメェらだけか?」

 

「ああ……、あのサイヤ人、トンデモなく強くってよ。天津飯や餃子、それに最悪なことにピッコロも殺されっちまった……」

 

「……っ! なんてこった、ピッコロが死んじまったってことは神様も死んじまったってことか!」

 

 ピッコロの気が消えたことで悪い予感を感じていたが、まさか本当にピッコロが殺されていると知った悟空は歯嚙みしながら、もう二度とドラゴンボールによる復活は叶わない事実に悔しさを滲ませる。

 

「っく! オラがもう少し早く辿り着いていれば!!」

 

「き、気にすんなよ、悟空。お前が来てくれたおかげで悟飯の命が助かったんだからよ! それに、まだ希望は無くなった訳じゃない。理由は後で話すけど、あのサイヤ人を倒しさえすれば皆が生き返るチャンスがあるんだ」

 

「ほ……本当か!? ……分かった。なら、アイツはオラがやる。皆は巻き込まれねえように下がっておいてくれ!」

 

 クリリンの言葉に驚きながらも、親友の言葉を信じて悟空はたった1人でベジータと戦う意思を表明する。

 

「なっ! 悟空、お前まさか1人であのサイヤ人と戦う気か?」

 

「馬鹿野郎! お前はあのサイヤ人の強さを何も分かっちゃいない! 俺やクリリン、それに悟飯を加えた4人がかりで倒しに行かなきゃとても勝てん相手だぞ!」

 

「そ、そうだよお父さん! アイツはメチャクチャ強くて、ボクもピッコロさんの仇を討とうと頑張ったんだけど、結局倒せなくって……」

 

 クリリン達が必死になって止めようとするが、悟空は頑なに1人で戦おうとする。

 

「やっぱり、さっきのものスゲェ気は悟飯のものだったのか。オラおどれぇたぞ!」

 

 そう褒めてあげ、ボロボロになった悟飯に仙豆を渡す。

 これで残りはあと1粒となったが、悟空はそれを半分に割ってクリリンとヤムチャに渡した。

 

「ま……待てよ、悟空。この仙豆はお前が持ってろよ。情けない話だが、悟飯はともかく、俺らじゃ足手まといにしかならねし、これは返すよ……」

 

「ああ……、クリリンの言う通りだ。俺も流石にアイツとの戦いにはついていけそうにないし、この仙豆は悟空がいざって時に食ってくれ!」

 

「何言ってんだ? オメェ達もアイツにやられてボロボロじゃねぇか、そんな状態で無理すんな。オメェらが食わないならオラそれ捨てっちまうぞ!」

 

 こうなった悟空は頑固として仙豆を受け取らないのを長い付き合いのある2人は知っている為、渋々納得して仙豆を口にする。

 

「「「治った!!」」」

 

「なにっ!?」

 

 ボロボロで体力も空の状態だった3人が一斉に回復したことに驚くベジータ。

 

 なんだ今のは!? あの地球人とカカロットのガキが一瞬のうちに回復しやがった。

 あのカカロットが渡した妙な豆を口にした瞬間に傷や体力が回復したように見えた。

 なるほど、ドラゴンボールくらいしか価値のない星かと思ったが、どうやらまだまだ役に立ちそうなアイテムが眠っているみたのようだ。

 

「さて、おい! お前も今の間に悟飯から受けたダメージもちょっとは回復しただろう!」

 

「ほう、気づいていたのか? ならさっさとソイツらを回復させて襲い掛かってくるべきだったな。せっかくの絶好のチャンスを逃したぞ……」

 

「そんな必要ねえさ……。言っただろう、オメェはオラ1人でぶっ倒すってな……!」

 

「くっくっく……、いいだろう。相手の力量も見抜けん下級戦士の思い上がりを、このエリートであるベジータ様が直々に叩きのめして教えてやる」

 

「ここじゃ皆の死体を巻き込んじまう。場所を変えるぞ、ついてこい!」

 

「はっ、いいだろう。自分の墓場くらいは決めさせてやる」

 

 場所を変える為に飛んでいった2人を見送った悟飯達は死体になったピッコロと天津飯を連れてカメハウスに帰ることにした。

 

「天津飯はお前らじゃ体格的に厳しそうだし、俺が運ぶぜ。ピッコロは……」

 

「ボクが運びます!」

 

「悟飯、お前だけじゃ運びにくいだろ? 俺が左から抱えるから、右はお前が抱えてくれ」

 

 そうして俺達は仲間の死体を担いでカメハウスへ向かう。本当なら餃子の死体も持ち帰ってやりたいところなんだが、あのベジータに死体が残らないほど木っ端微塵に消し飛ばされてしまったからそれは不可能だ。

 

 俺はピッコロを抱えながら、遠ざかる悟空の気を感じて「絶対に勝てよ。親友!」と心の中で勝利を願ってこの場を去っていった。

 

 そんなクリリンの勝利を願う祈りを受けた悟空は、先ほどの場所から充分に離れた荒野で止まり、そこに降り立っていく。

 

「なるほど、ここがきさまの選んだ墓場というわけか……」

 

「ここなら誰もいねえみてぇだし、思う存分やり闘うことができんだろ」

 

 地上に降り立った2人は睨み合いながら、互いに仕掛けるタイミングを探り合っている。

 

「戦う前に教えておいてやろう。サイヤ人は産まれてすぐに戦闘力を測られる。その際に、きさまのような才能のない下級戦士はこうした程度の低い星へ送られるのだ!」

 

「ならそのことに感謝しねえとな。こうしてオラが地球に来れたのも下級だったからだろ。それに、産まれた時がどんなに弱くても、そっから強くなろうと必死に努力すりゃ、エリートだって超えられるかもしんねえぞ?」

 

「はっ! なにをバカなことを……。なら教えてやる。努力だけではどうやっても超えられないエリートの壁というやつをな!!!」

 

 カッ! とベジータの気が爆発したと思うと、その足場となった岩山が崩れ落ち、それと同時にベジータが悟空に向かって突っ込んできた。

 これに対して悟空も前に出て対応する。両者の拳が空中で激突すると、周囲の大気は激しく震え上がる。

 

 そして、その激突は1回では終わらず、ぶつかっては離れ、ぶつかっては離れを繰り返し、荒野の空に無数の衝突した際の衝撃波を生み出していく。

 

「はっはっは! どうした、カカロット。これがきさまの全力か? あのガキの方がまだ手ごたえを感じられたぞ!」

 

「っぐ! なんて奴だ! まだ全力じゃねえってのに、オラよりもパワーもスピードもずっと上をいってやがる!!」

 

 この数回のぶつかり合いで基礎能力の差はベジータが上だと格付けが決まった。

 このままいけばベジータの勝利は揺らぐことはないだろう。このままいけばの話ではあるが……。

 

「いいぜ! なら見せてやる。オラの界王拳を!!」

 

「っ!!」

 

 はぁ! と悟空が赤い闘気を纏うと、先ほど以上のパワーとスピードでベジータと渡り合う。

 これにはベジータも度肝を抜かれ、かなりの手痛いダメージを貰うことになった。

 

 だが、流石は自他共に認められているベジータか。即座に悟空への認識を切り替えて対処してみせた。

 

「っく……。なるほど、今のは最初にきさまが現れた時に見せた技だな? 最初からそれを使わなかったのは俺を舐めていたからか、もしくは肉体に相当な負担を強いるものだからか?」

 

「へへへ……、ご名答。この技は気をコントロールして何倍にも増幅させる技だから肉体に相当な無茶をさせっちまうんだよな……」

 

「いいのか? そうやってベラベラと敵に技の内容を教えてしまって?」

 

「へっ、問題ねえよ。オメェだって薄々は気づいてたろ? それに、速攻でオメェを倒せばいいだけの話だ!」

 

「バカめ! 確かにさっきの攻撃は油断して喰らってしまったが、あの程度ならば俺様の全力には遠く及ばんわ!!!」

 

 そう言うと、事実としてベジータは更に気を跳ね上げてゆく。その凄まじさといえば、さきの悟飯の怒り時に匹敵するほどのもので、地球全体が揺れていると錯覚してしまうほどのエネルギーが(ほとばし)る。

 

「はぁ──―っ!!!!」

 

 気を全力解放したベジータ。大気の震えるや大地の揺れが納まり、周囲に浮かんでいた雲が1つ残らず散った荒野でベジータと対峙する悟空は、見た目こそ変化はないものの、先ほどまでとは一線を画す雰囲気を纏ったベジータを見て背筋にゾクッとした悪寒が走った。

 

「……終わりだ。カカロット……」

 

「っ!!」

 

 この瞬間からベジータの独壇場となる。

 さきのぶつかり合いとは次元の違ったパワーとスピードを見せるベジータの猛攻に悟空はなすすべもなく圧倒され、咄嗟に界王拳2倍を使うもベジータの攻撃を避けるので手一杯の様子だ。

 

「はぁーはっは! どうした、カカロット? それが限界ならばガッカリだぞ!」

 

「ちくしょう! なんてパワーとスピードだ……。ここまで実力差があったなんて。こうなったら、まだ安定しちゃいねえが、使うしかねえ! 3倍の界王拳を!!!!」

 

「っ! 何をするつもりか知らんが、もうきさまを舐めてかかったりはせんぞ! このまま圧倒的パワーで一気に押しつぶしてやる!!!!」

 

 これまでの戦いでナッパがやられ、悟飯に戦闘力を一時的とはいえ追い抜かれたベジータから油断は無くなり、カカロットが脅威であると認めたベジータはこのまま相手に奥の手を使わせることなく一気に仕留めにかかる選択を取った。

 

 こうなってしまえば悟空に3倍界王拳を使用する余裕はなくなってくる。

 

 原作と違いラディッツが生きていたと知った悟空は原作よりも早く界王星へ到着した。これにより、界王拳の制御を高め3倍までならば一時的にほぼノーリスクで扱えることに成功したのだが、さりとてベジータの攻撃を避けながら片手間でなれるほど熟練しておらず、数秒の溜めと集中を経てようやくノーリスクで使用できるというわけだ。

 

「そらそらそら! どうした! 避けるだけで精一杯か!」

 

「っく! ならやってやる! なんとかカラダもってくれよぉ!! 3倍界王拳だぁぁ!!!」

 

 ベジータのグミ撃ちを避けながら、このままでは先にこちらの方が倒れてしまうと判断した悟空が、博打覚悟で無理矢理に3倍の界王拳を発動した。

 爆発的に上がった悟空の赤い闘気がベジータのグミ撃ちの気弾を全て吹き飛ばし、その勢いのままベジータへと特攻をかます。

 

「っなに!? ぐぉわぁ!!?」

 

「わりぃが、このまま一気に決めさせてもらうぞ!!!」

 

 悟空の一撃一撃が全力に限りなく近いもので、スタミナ配分のことなど一切考えていない攻撃にベジータは抵抗すら出来ずに吹っ飛ばされていく。

 先程までとは立場が逆転した2人だったが、その実、真に追い込まれているのは悟空の方だった。

 

 未だ完全に制御しきれていない3倍の界王拳を使っての高速戦闘は確実に悟空の体を蝕んでいき、ベジータからの攻撃をカウンターで反撃した際に肉体が激痛を訴えた。

 それでも悟空はそれを無視して戦い続ける。

 

「おのれぇ! 下級戦士ごときが調子に乗るな!!」

 

 ブチ切れたベジータは悟空の姿を捉え殴りかかりに入ったが、超スピードで躱した悟空から再びのカウンターを鳩尾に貰ってしまう。

 

「あ……ぐ……!! きさま~~!! よくもこの俺に……!!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、なんてタフな野郎だ!! 3倍の界王拳を使って殴ってるってのに、まだ動くことができるなんてよ……」

 

 ズキッ! と体に激痛が走る。もはやタイムリミットは極僅かだぞと肉体が訴えかけてくる。

 荒れた息を整えながら、怒りに震えるベジータの行動に注視する。

 

 悟空からの猛攻が止み、一旦冷静に考えられる時間が出来たベジータは口から流れる血に気づく。

 

「こ……この俺様が、こんなちんけな星で3度もこの気高き血を流すことになるとは……!!!」

 

 しかし、ベジータは冷静になるどころか、血を流されたという事実に気が付き、更に怒りのボルテージが上昇した。

 そして、怒りによって憤怒したベジータが取った行動は地球を人質にした全力の必殺技を放つことだった。

 

「避けれるものなら避けてみろ!! きさまは助かっても地球はコナゴナだぞ──ー!!!」

 

「ちくしょう!! 考えやがったな!!! ならやってやる! 3倍界王拳のかめはめ波を!!!!」

 

 ベジータのギャリック砲と悟空の3倍かめはめ波がぶつかり合う。互いの必殺技はほぼ互角の接戦を演じる。

 だが、ベジータは素のパワーであるのに対して、悟空は界王拳というドーピングを使用しての互角だ。

 

 このままでは悟空の方が先に限界を迎えて潰されるだろう。

 だからこそ、悟空は自滅覚悟で更なる博打に打って出る。

 

「4倍だぁ────っ!!!」

 

「!! おっ押されぇ──ー!?」

 

 4倍まで跳ね上げた界王拳かめはめ波は両者の均衡を崩し、一気にベジータを空高くまで打つ上げた。

 だがまだ勝負は決してはいなかった。確かに必殺技による鍔迫り合いは悟空が勝利した。

 しかし、上空まで吹き飛ばされたベジータはなんとか宇宙に達する前にかめはめ波から脱出することに成功する。

 

「くっそぉー! 何故このエリート戦士である俺様があんな下級戦士に戦闘力を上回られている!? こ……こうなっては醜くて嫌だが、大猿になるしかあるまい!!」

 

 地球に来てからやられっぱなしになっているベジータは問答無用でカカロットを倒すべく大猿になることを決意する。

 

 しかし、今はまだ昼を過ぎたばかり。原作であればナッパ戦の最中にベジータがカカロットを待つために時間をおいていたが、この世界線では原作以上にピッコロが善戦したことと、悟空がより早く到着したことで満月が出現する時刻にはなっていなかった。

 もっとも、この1年の修業期間の間にピッコロが月を破壊しているために、そもそも満月はないのだが……。

 

「ちくしょうめ!! 大幅にパワーは減ってしまうが、こうなったらアレをするしかあるまい……」

 

 ベジータが地上に降り立ってみると、そこには見知らぬ太っちょの地球人が傍に立っていた。

 まさかあの回復する豆でも持って来たのかと内心で焦りはしたが、どうやらカカロットが勝利したと勘違いして現れただけのただの雑魚だったようだ。

 

「まずは褒めてやろう。たかが下級戦士だったきさまがこのベジータ様をここまで追い詰めるとは夢にも思わなかったぞ。しかし、結局のところ、きさまのような下級戦士がエリートであるこの俺様を超えることは出来ぬということを身をもって教えてやろう!」

 

「なにっ!?」

 

 ベジータの妙な自信が噓やハッタリの類いではないことを見抜いた悟空は驚きの声を上げるが、今のベジータは満身創痍に近しい状態だ。

 勿論、悟空はベジータよりも酷い状態であるのは間違いないのだが、だからといってここまで余裕な態度をとれるものだろうか? 

 

 その疑問はすぐに晴れることになる。

 

 ベジータが残り少ない気を絞り出して作り上げたおかしな光の玉を上空に放つと、それが爆発し酸素と混ざり合うことで疑似的な月を生み出した。

 

 そこから先はご存知の通り、ベジータが大猿にへと変身するとその圧倒的なパワーに物言わせて悟空を追い詰める。

 それはまさに猫と鼠の戦いというべきものだろう。か弱い鼠の必死の抵抗を嘲笑うかのように叩き伏せる猫が如くベジータは悟空を追い込んでいく。

 

 勿論、悟空にもこの危機的状況を覆す技が1つある。しかし、それは大きな溜めの時間を必要とする。

 今のベジータを相手に10秒は途轍もなく大きな隙だ。力を溜めている間にやられてしまうのがオチだろう。

 

「だりゃりゃりゃりゃ!!!!」

 

「なんだそれは……? それで攻撃しているつもりか?」

 

 悟空の気弾による連撃も今の大猿となったベジータには蚊に刺されたぐらいにしか通用せず、鬱陶しいと手で払いのけられてしまう。

 

「こうなったら、もう1度4倍の界王拳でやってやる!!」

 

 絶望的な戦闘力の差に悟空は4倍界王拳の再発動に賭けたのだ。

 これによって疑似的に悟空は大猿ベジータの戦闘力の半分まで届いた。

 

 だが、所詮は半分程度の戦闘力でしかない。そんな付け焼き刃の戦闘力では真っ正面から大猿になったベジータと渡り合うことなど不可能だ。

 ならば、馬鹿正直に真っ正面から攻めなければいいだけの話。悟空にはある1つ考えがあった。

 

 それはベジータ達サイヤ人は相手の気を探ることはできないという点だ。1年前に来た自身の兄を名乗るラディッツはスカウターと呼ばれる機械で気を探っていた。

 あのベジータも戦ってみたところ相手の気を感じ取っているような様子は見られず、全て目に頼った動きだった。

 

「だったら、だりゃりゃりゃりゃ!」

 

「今度は何処を狙っている? ついに頭がイカれたか?」

 

 悟空はベジータではなく周囲の岩山に向けて気弾を放ち続ける。

 

「こんだけぶっ壊せば! それぇー!!」

 

 壊れて倒壊した岩山が巻き起こした土煙に紛れるように悟空は飛び込んだ。

 

「なっ! しまった!! 奴めこれが狙いであえて攻撃を外してやがったのか!?」

 

 スカウターをつけていないベジータでは悟空の現在位置を把握することが出来ず、辺りに立ち込める土煙目掛けて無暗矢鱈に殴る蹴るを繰り返すが、その全てが空振りに終わる。

 

「こっちだ!!」

 

「っく! 小癪な!!!」

 

 土煙に紛れて襲い掛かってくる悟空の攻撃は致命傷にはならないが、積み重なることで無視できないダメージになっていく。

 

「へへへ……、ミスターポポには感謝しねえとな。目に頼らない気配によって感じる修業が生きたぜ!!」

 

 いくらパワーがあろうともそれが生かせていなければ無駄なことだと幼い頃に教えてもらったことに感謝しながら徐々にベジータを追い詰めていく。

 

「ぐぬぅ~、コソコソと面倒だぁ! こうなったら、ここら一帯をまとめて吹き飛ばしてくれるぅぅぅ!!!!」

 

 空へ飛んだ大猿ベジータは先程と全く同じようにギャリック砲の構えをとる。確かに、これならばパワーで劣る悟空ではどうしようもなくなるだろう。

 事実その通り、土煙に紛れていた悟空はそれに焦って自ら飛び出してベジータに向かって突っ込んでくる。

 

「はっはっは! そう来ると思ったぞ、カカロット! これで終わりだ!!」

 

 悟空の行動を読んでいた大猿ベジータは即座に構えを解き、自ら敵の懐へと飛び込んできた悟空目掛けて拳を振り落とす。

 だが、その拳は悟空の体を蜃気楼のようにすり抜けて不発に終わる。

 

「なに!? なんだ今のは!! 奴は何処へ消えた!!?」

 

「今のは残像だ! オラはこっちにいるぞ!!」

 

「っ!!?」

 

 いつの間にか後ろへ回り込んでいた悟空は無防備となったベジータの尻尾を掴み上げると、不意をついた隙を狙って力任せにブン回して地面へ向けてジャイアントスイングで放り投げる。

 いかに大猿になろうとも、否、大猿になったことで質量も大きくなったベジータは地面に叩き付けられ、大きなダメージと大きな隙を作ることになった。

 

 そして、地面に投げ飛ばされたことでうつ伏せに転倒し、無防備になった背中を晒している大猿ベジータに向けて最後のチャンスだと悟った悟空は限界を超えた5倍の界王拳を発動することに決めた。

 

「これで最後だぁっ!!!! 5倍の界王拳によるかめはめ波だぁぁ!!!!」

 

 それは今まで悟空が放ってきたかめはめ波の中で一際デカく太いもので、巨体を誇る大猿であろうとも余すことなく包み込んでしまう。

 そして、かめはめ波が着弾すると同時に、星を震撼せてしまうほどの巨大な爆発が巻き起こり、悟飯が打ち込んだ魔閃光を超えるキノコ雲が発生する。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……、これで……終わった……よな?」

 

 全身の至る箇所が激痛を訴える。もはや空を飛んでいることさえ苦痛に感じるなか、嫌な予感が脳裏にこびりついて離れない。

 いくら大猿に変身して化け物染みた力をみせたベジータといえど、今のかめはめ波を喰らって生きているとは思えない。

 

 だが、そんな悟空の予感は最悪のカタチで的中することになる。

 

 いまだ轟轟と大量の土煙を上げる地面を見続けていると、その中から何かが動く影を見つける。

 まさかと思いながら、その影を注視して見続けると、そこには戦闘服が消し飛びボロボロになった大猿ベジータが姿を現した。

 

「い……今のは本当に死ぬかと思ったぜ! だが、ギリギリ大猿の耐久力の方が勝ったようだな。まさか、この戦闘服が吹っ飛ぶ程の威力とは恐れ入ったぜ!!」

 

「は……ははは、呆れるほどタフな野郎だな。こちとらもう限界まで(リキ)を使い果たしてるってのに……」

 

 どうやらまだベジータは立ち上がるだけの余力が残っていたらしい。そして、そんな姿を見てしまえばいくら悟空といえど……。

 

(くそ……ここまでなのか? あの世に行ったらまずはじいちゃんに謝らないとな。オラが月を見ちまったから大猿になってじいちゃんを踏んづけて殺しちまったんだし……)

 

 あの世へ行ったらまずは祖父に謝罪することを考えた悟空はふと気がつく。自身が満月を見たのは記憶している中で3回だ。

 1度目は自身の祖父が死んだ日の晩だった。2度目はピラフ一味に囚われた城で見て、3度目は天下一武道会でジャッキー・チュンに追い詰められた時だった。

 

 1度目に月を目にした際、気がつけば朝になっていた。

 だが2度目は気がついても朝ではなく、尻尾がなくなっていた。

 そして3度目は尻尾ではなく月が消えていた。

 

「そうか! 大猿を解くには月か尻尾をどうにかすれば解けるんだ!!」

 

 だが、その答えに辿り着くには遅すぎた。もはや悟空に気弾1発とて撃つ体力は残っておらず、風前の灯火といった現状では月、ましてやベジータの尻尾を引きちぎることは不可能だろう。

 

「くっそぉ~~!! 気づくのが遅すぎた!!」

 

 今のかめはめ波が大猿状態でなければ確実に悟空の勝ちだったのだ。

 そんな悟空の後悔をよそに、大猿ベジータは悔しがっている悟空の元へと飛んでいきフラフラのまま浮いているだけの悟空を掴み上げる。

 

「っ! やべぇ!!」

 

「逃がすか! よ~し、掴まえたぞ!! 惜しかったがここまでだな。ふははは、このエリート戦士であるベジータ様をここまで追い込んだことを冥途の土産としてあの世にいくんだな!!」

 

「うぎゃぁぁぁ~~~~っ!!!!」

 

 ゴリゴリと大猿の握力で握りしめられた悟空は体の骨を何本か折られてしまう。

 もはやこれで終わりかと思われたが、悟空の瞳からはまだ絶望は感じられない。そこにあるのは勝利を渇望する戦士の光だった。

 

「へへへ……、失敗したな、ベジータ。オラを握る際に両手を一緒に掴まなかったことが仇になったな!!」

 

「っ!? 今度はなにを……?」

 

 悟空の言葉に何をするつもりなのかと視線を集中してしまった。それこそが悟空の罠だとも知らずに。

 

「天津飯!!! 技を借りるぜぇっ!!! 太陽拳!!!!」

 

「うおっ!!!!」

 

 目の前で突然出現した太陽のような光量に目を焼かれたベジータは思わず悟空を掴んでいた手を離し、瞼に手を押し当てて苦しむ。

 そうして自由になった悟空はベジータから急いで距離を取り、未だ視力の戻っていないベジータに向けて大声で叫ぶ。

 

「今度こそコレで終いだ!!! 10倍の界王拳によるかめはめ波だぁぁ!!!」

 

「っ!? バカめ!! 2度も同じ技を喰らうか!! きさまの声で位置がバレバレだ!!!」

 

 警戒していたベジータは視力を失っても悟空の声から位置を特定し、そこへ向けて超魔口砲を撃ち込んだ。

 

「やっぱり! お前ならそう来ると思ってたぜ!!!」

 

 ベジータの行動を信じていた悟空は、それを逆手にとり、始めから避けるつもりでいたためギリギリのところで避けれた。

 そして悟空に当たらずにその後ろへ飛んでいった超魔口砲が何処へいったかというと、それは先程ベジータが作り上げた疑似満月へと向かっていった。

 

ドカーン!!! 

 

 僅かに回復した視力で薄っすら目を開いて見ると、そこには避けた悟空と破壊された月が視界に映る。

 

「!! し、しまった!! 奴め、俺を使って満月を破壊させやがった!!!!」

 

 満月が破壊されたことで大猿に変身するために必要だったブルーツ波の供給が途絶え、徐々にベジータの体がしぼんでゆき、やがて完全に元の肉体へと戻ってしまった。

 

「よっしゃー! 狙い通り大猿から元の姿に戻ったぞぉ!!」

 

「くっ、くっそぉ~~!! またしてもカカロットの奴にハメられた!!!」

 

 上半身が裸になったベジータが怒りに震えながら、未だフラフラのまま宙へ浮いている悟空を睨みつける。

 そして、怒りのままにベジータは悟空へと殴りかかる。

 

「っ!!!」

 

「体力が無くなったきさまなんぞ、たとえ大猿でなくとも始末できるだけの力は残っているぞぉ!」

 

 すでにヨロヨロになっているのはベジータも同じだが、それでも攻撃できるだけの力が残っている分、悟空はサンドバックのように殴られ続ける。

 

「うっ! ぐっ! がぁ……!!」

 

「ぜぇ、ぜぇ、我ながら情けないぜ! たかが、下級戦士1匹を殺すのにここまで手こずるとはな……。だが、それももうお終いだ! このまま心臓を貫いて完全に息の根を止めてやる!!」

 

 ベジータの猛攻を受けて立ち上がる力も無くなった悟空は地面に仰向けに倒れ、そのまま目の前に立つベジータにトドメの一撃を貰う寸前だった。

 指一本すら動かない現状で、さしもの悟空も死を覚悟した。

 

「「「はあっ!!!」」」

 

「「っ!!?」」

 

 突如として3つの気弾が最後のトドメを刺そうとしたベジータに向けて飛んできた。

 

「がぁっ!!?」

 

 完全な不意打ちにベジータはモロに喰らってしまい、ゴロゴロと地面を転がって悟空から遠ざけられる。

 

「お……おめぇら!!?」

 

「大丈夫か、悟空!?」

 

 遠く離れた岩山の上にいたのはカメハウスに帰った筈のクリリン達だった。

 

 




大猿化を月を破壊によって解除することでナメック星編に変化がおきます。これぞまさしくバタフライエフェクト!!

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