悪の科学者を超える転生者 作:ヘルスパイダー
とある魔族の城の玉座にて1人の魔族が下界の様子を覗き見していた。
「ふっふっふ、まさかこのような事態になろうとはな。宇宙から来たサイヤ人か……」
ワインを片手に先のZ戦士達とサイヤ人達の戦いの結末を見ていたその魔族、ガーリックjrはくっくっくと笑いながら持っていたワイングラスを握り潰す。
「時は満ちた! 忌々しい神の半身たるピッコロが死に! 神も死んだ!! 我々の邪魔になるであろう戦士も今は傷だらけの死人同然! これからは我ら魔族の時代がやってくるのだぁ!!!」
は~っはっはっは! とマントを翻し、天に向かって高笑いをする。
これから訪れるであろう魔族の時代を夢想しているのだろう。
「まあ、絶対に君が阻止するのだがな」
「……一体どういうことか説明が欲しいのだが?」
全世界に散りばめられていたスパイカメラからの映像を急に見せられたラディッツは、いきなりのボゲからの押し付けに困惑を口にする。
そこでボゲから語られる話にラディッツは頭を抱えてため息を吐いた。
この映像に映っている魔族の名前はガーリックjrという、かつてこの星の神を目指していた男の生まれ変わりらしい。
そして、本来ならば時期としてこの俺が地球にやって来る前にドラゴンボールを集めて不老不死となり、カカロットとあのナメック星人のピッコロとかいう奴に倒されている存在なのだというのだが……。
「まさか、私が改良して売り込んだ酒に酔って夢中になり、ドラゴンボールを集める時期がこうまでズレてしまうとは……。とんだ誤算だった」
「神を目指していたとはとても思えんほど欲望を我慢できないアホだな……。あとついでに、お前のやらかしの尻拭いに俺を使うな!」
しれっと面倒事を押し付けてくるボゲにラディッツが怒りのツッコミを入れる。
黙って聞いていれば、意図してやったことではないとしても、今回の原因はボゲの資金集めの為の行為が発端となっている。
確かに、今の地球でまともに戦えるのはカカロットのガキと生き残った地球人2人だけだ。
こんな状況で不意打ちであの魔族からの襲撃を受けたら地球はたちまち魔族によって支配されてしまうのは目に見えている。
「だが、だからといって元侵略者に地球の危機を救ってくれと頼むか普通?」
「確かに君は元侵略者ではあるが、今はれっきとした私の協力者だ。つまるところ、私のミスは君のミスということで助けてくれんかね?」
「アホ抜かせ! そもそも、あんな程度の低い連中ならお前の作り上げた強化サイバイマン共を向かわせれば一瞬でカタがつくだろうが!!!」
「ぬ~、それが困ったことに、先の戦闘でデータが取れたことで新しい発明をしていてな。その為にサイバイマンの量産をストップしており、今の私の手元にはサイバイマンはおらんのだよ」
「やはり貴様のやらかしではないか!!」
悪びれることなく困ったなと顎をさするボゲにラディッツの渾身のツッコミが飛ぶ。
そもそも、何故この俺が地球の危機を救わなければならないのだ。ここでの特訓生活はフリーザ軍時代よりも過酷ではあるが、以前よりも充実した快適な生活をおくれている。
だが、それと地球を救うのは別問題だ。俺はこの星がどうなろうとも一切関係ない。
このボゲと共に暮らしているのも俺が強くなる為であって、決して馴れ合っているからではない。
「まあ、どうしても断るというのであれば仕方ない」
「……? 随分と聞き訳がいいが、お前がそうも素直だとこっちは嫌な予感がしてたまらんのだが……」
「ここ最近は全く出番のなかった制御装置の出番といったところか……」
「なにっ……!?」
「っふ、冗談だよ。今更こんなもので君に言うことを聞かそうだなんて思ってはいない。だが、これだけは言っておこう。ここ最近、君がトレーニング終わりに楽しみにしているビターチョコのアイスだが、あれを作っているのは私ではなく他の地球人だ。もしここでガーリックjrが暴れて地上に被害が出ればどうなるか? 聡明な君ならこの後の言葉の続きは必要ないだろう……」
「なっ! 貴様、卑怯だぞ! っというかやり方がせこい! それでも天才科学者か!?」
「勿論、これで君が動いてくれると私の計算では出ている。さあ、どうかね?」
「ぐぬぬぬ……、ああ、分かった! 行けばいいんだろ! 行けば!!」
「そうか、行ってくれるか。場所は君の脳に直接データを送る。夕飯前にはカタが付くだろうし、飯とアイスの準備をして待っている。くれぐれも油断して足元を掬われぬようにな……」
「はんっ! 誰にモノを言っている。あの程度の雑魚にやられる俺ではないわ!」
こうして、アイスを人質に取られたラディッツは渋々ながらも件の魔族を対処するために、その魔族がいる本拠地に単身で乗り込むこととなった。
ボゲの研究所から飛び立って数分、送られてきたデータから向かった先には、禍々しい雰囲気を醸し出す城が視界に入ってきた。
「あそこが例の魔族がいる城か……。感じる気もやはり大したことないな……」
ここから感じられる気は4つ。1つはあの映像に映っていた魔族ものだろう。残りの3つの気はその魔族よりも低いことから、恐らくは配下の部下か何かだろう。
戦闘力こそが全てとは今の俺は思ってはいないが、工夫や戦力程度で人間が飛来してくる巨大な隕石をどうにかできるだろうか? 答えは否である。
さしずめ、俺が隕石だとするならば、あの魔族は人間。ここまでの差があるならば、真正面から堂々と乗り込んで攻めていこうが万が一にも不覚を取ることはあるまい。
そう考えるてラディッツは何の警戒もせず、堂々と城の入り口からガーリックjrのいる玉座までの道を迷わずに歩いていく。
「フリーザのとは違う意味で悪趣味な内装だぜ。それにしても、戦闘力たかが2500程度の雑魚がこれほどの宮廷の王になれるとはな。つくづくこの地球という星は程度が低い。まあ、一部例外のイカレ野郎はいるが……」
やがてラディッツは他の部屋とは違う大きな扉の前に辿り着く。
その先に4つの気配がこちらに対して敵意を向けてくるのを感じる。
「ふん、俺が来たことにはあちらさんもお気づきってことか。まあ、隠れずに堂々とやって来たんだ。これで気づいてなきゃ相当なマヌケだがな……」
ラディッツはそのまま警戒をすることなく、扉に手をついてゆっくりと開けて入っていく。
「「「「今だぁ!!!」」」」
ラディッツが部屋に足を一歩踏み入れた瞬間、部屋の中にいた4人の魔族からの総攻撃を受けた。
「くっくっく、人間め。わざわざ自分から死にに来るとはな。貴様からは凄まじいハチャメチャで摩訶不思議なパワーを感じられたが、我々の総攻撃を受けてはタダでは済むまい……」
今の総攻撃でボロボロになってしまった城内だが、得体の知れない敵を何もさせずに倒すことが出来たと考えればお釣りがでるくらいだ。
そう考えていたのだが、攻撃の際に巻き起こった煙が晴れ出してくると、その中心には無傷で立っている侵入者の姿があった。
「まったく、この星の連中は砂埃をたてる技が好きなようだな」
「「「「っ!!?」」」」
パッパッと服についた埃を払うように叩くラディッツの姿に一同は絶句する。
そんな彼らを馬鹿にしたように鼻で笑い、さっさとかかって来いと手招きをする。
「ぐぬぬぬ……、舐めるなよ人間めぇ!!! いけ! お前たち!!!」
「「「はっ!!!」」」
ガーリックjrの命令により、3人の魔族が突撃を仕掛けてくる。
だが……、今のラディッツからしてみれば鈍亀のごときスピードで迫ってくる魔族なぞ脅威でも何でもなかった。
「ノロマめ……」
俺はまず先頭で迫ってくるジンジャーの腹に一撃を決めて気を大量に注ぎ込んで爆散させ、続いて迫るサンショーもそれにビビッて直前で動きを止めた瞬間に顔を掴まれて気弾の放出で顔面を消し飛ばす。
「はひぃっ!!?」
「貴様もこうなりたくなければとっとと失せろ」
「は……はい!!!」
最後に残ったニッキーは前の2人があっさりと消し飛ばされたことで完全に及び腰になり、ラディッツの見逃すという発言に素直に頷いてガーリックjrを置いてとっとと逃げ出していった。
「ぐぬぬ……、おのれニッキーめ! 敵を前に逃げ出すとは魔族の恥晒しめ!!」
「さて、これで残ったのは貴様1人だがどうする?」
「ほざけ! いずれこの星の神となるこの私がたった1人の人間を恐れるとでも思ったか!?」
たった1人残されたガーリックjrは怒り心頭といった様子でラディッツを睨みつける。
そして羽織っていたマントを脱ぎ捨て、小さかった体を巨大化させて筋骨隆々の大男へと変身する。
「ほぉ……、変身タイプか。やはり地球人と違い魔族は完全な別種族なのだな」
興味深そうに自身を観察するラディッツの目からは好奇心の色は見えても、恐怖や警戒心といった色は全くといっていいほど見えなかった。
「おのれぇ! このガーリックjrを本気にさせたことを後悔させてくれるわ!!!」
両手を広げて襲い掛かるガーリックjrだが、ラディッツからして見れば蠅が止まりそうなスピードにガラ空きの腹に突っ込んで蹴りを喰らわせてやった。
「がはっ!?」
あまりの威力に白目を向いて向こうの壁まで吹っ飛ばされる。
そのまま壁に激突して崩れた瓦礫の下敷きになる。ガーリックjrの戦闘力では今の一撃で死ぬことは無くとも、まともに戦闘を続行させることは不可能だろ。
「さて、これで掃除はほぼ完了だな」
「ほ……ほざくなよ! このガーリックjr様が今の攻撃で死ぬとでも!?」
下敷きになっていた瓦礫を押し除けて立ち上がったガーリックjrが更なる怒りの表情で吠える。
「吠えるなよ死に損ないめ。今のその死に掛けの状態で何が出来るというんだ?」
「ふん! ならば思い知るがいい、このガーリックjr様と貴様の格の違いというものを!!!」
その今にも倒れてしまいそうなボロボロの状態になりながらも、未だに自身の優位性を疑わぬその様子から何か奥の手でも隠し持っているか、はたまた未だに互いの実力差を理解出来ぬアホなのか?
「できることなら後者であって欲しいがな……」
なんにせよ、いかなる隠し玉を持っていようとも両者の圧倒的な戦闘力の差を埋められることは無いとラディッツは確信しており、余裕の笑みすら浮かべて見守っていた。
「見るがいい! このガーリックjr様の最大にして最強の技である『デッドゾーン』を!!!」
直後、ガーリックjrの背後に巨大な暗黒空間が出現する。
「この『デッドゾーン』は一条の光すら差さぬ完璧なる闇の空間だ! いくら貴様が強大な力を秘めていようとも、ここに飲み込まれれば一生脱出することは叶わんぞ!!」
「なるほど、これが貴様の奥の手というわけか。期待して待っていたが想像以上にチンケな技だな」
「なにっ!?」
デッドゾーンが発動し、周囲の物が暗黒空間に吸い込まれるなか、ラディッツは平然とした態度でその場から一歩たりとも動くことはなかった。
「馬鹿な! 私のデッドゾーンが通用しないだと!?」
「封印技はいい案だ。だかな、この俺を吸い込みたければ星を巻き込むレベルでなければ通用せんぞ」
「ぐぬぬぬ……!!?」
最後の奥の手すらまるで通用しないという事実に悔しげに顔を歪めるガーリックjr。
そんなガーリックjrに直接トドメを刺せる状況だというのに、ラディッツは遊んでいるのか、指鉄砲の形にしてガーリックjrの足元に狙いを定めて小さな気弾を発射して床を破壊していく。
「んなっ!? や、やめろ!」
「ほぉ、随分と上から目線な態度だな」
次々と破壊されていく足場から無事な足場へ移動するため、ガーリックjrはコメディ漫画のような愉快なタップダンスを踊ることになる。
もう無事な足場が残されておらず、このままでは自らデッドゾーンに吸い込まれそうになってようやくガーリックjrは自身の敗北を予感する。
「うぬぬ、そ、そうだ! 貴様と私で手を組まないか? それほどの強さを持つ貴様……いえ、貴方様と私が手を組めば世界征服も夢ではない!」
「ふっふっふ、ようやく自らの立場を弁えたか。なるほど、世界征服か。面白い提案だな……だが断る!!」
「っ!?」
追い詰められたガーリックjrは高圧的な態度から一転して、下手に出たガーリックjrにラディッツは凛とした態度で拒絶する。
「1つだけいいことを教えてやる。俺はこの程度の文化レベルの惑星は幾つも侵略している。貴様如き侵略ルーキーの手を借りずとも征服することなど容易いことだ。まあ、一部例外の化け物が存在してはいるがな……」
もはや語ることはないとばかしにラディッツは未だに喚き続けるガーリックjrの胸に気弾を打ち込んで、背後に構えるデッドゾーンへと吹っ飛ばした。
発動者であるガーリックjrが消えたことでデッドゾーンも消滅し、地球は魔族の支配の危機から人知れず免れたのだった。
現在、劇場版編をストック中です!それが終わり次第、ナメック星IF編を始めます。
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