悪の科学者を超える転生者 作:ヘルスパイダー
天下一武道会が終了し、ピッコロ大魔王がドラゴンボールによって若返りを果たした。
ここまでは原作通りであるが、悟空の方はヤジロベーによってカリン塔に登っている最中だ。
漫画版ならばカリン様から直接超神水を手渡されるが、アニメ版ならば氷のダンジョンのような場所でヤジロベーと共に攻略して番人のような者から超神水を飲むこととなる。
まあ、漫画版だろうがアニメ版だろうが私にとってはどちらでもいいことだ。私の目的は潜在能力を解放させる超神水を一滴でもいいから手に入れることのみだ。
今後のZ編ではナメック星の最長老や老界王神など潜在能力を解放出来るキャラはいるが、その潜在能力の解放率がどのくらいなのかは把握していない。
最長老はきっかけを作る程度と言っていた。恐らくは引き出せていても精々が20~30%程だろう。
老界王神の場合なら、推測ではあるが100%の潜在能力解放が可能なのだろう。
ならば、この超神水はどれだけの潜在能力を解放出来るのだろうか?
そもそも、仮にもサイヤ人である悟空ならばその潜在能力はいかほどなのだろうか?
将来的に伝説のスーパーサイヤ人になれる実力の持ち主なのだから、その潜在能力は凄まじいのは間違いない筈なのだ。
それがピッコロ大魔王を少し圧倒する程度なのは少々不自然なのだが、これは作品を面白くする為に必要なことと考えれば納得はできる。
おっと、私が思考している間に悟空たちがカリン塔の頂上に辿り着いたみたいだ。
はてさて、これでこの世界が漫画かアニメどちらの世界線なのかこれでハッキリする。
まあ、私がこうして存在している時点でどちらともいえない世界線なのだが。
むっ、カリンが奥から神と書かれた水差しを持ってきた。どうやらこの世界は漫画版に近い世界線のようだな。
さて、いくら悟空といえど毒をがぶ飲みすれば悲鳴を上げてのたうち回るようだ。
その間に落とした超神水の水差しの中に残っているほんの少しの超神水を回収することに成功した。
今回の計画で最も警戒していたカリンも、流石にこの気を持たないスパイカメラの存在に気が付いてはいなかったようだ。
ひやひやしながら見守っていたが、スパイカメラは無事に超神水を研究所まで届けることが出来た。
早速検査機でこれの成分を分析してみせよう。
前回手に入れたピッコロ大魔王の細胞の分析は既に済んでいるし、細胞のクローン化にも成功している。
これで再生能力の研究に取り組むことが出来る。
とはいえ、再生能力も超神水による潜在能力の解放も素体である人造人間の完成が出来なければ意味をなさない産物だ。
言うなれば設定やキャラクターは出来ているのに、ストーリーが出来上がっていない小説を作っているというのが今の私の現状だ。
早く人造人間開発の基本設計図を完成させなければならないと焦る私の気持ちに反して私の頭脳は肝心の人造人間開発計画に有用なプランを何一つ生み出せずにいた。
テレビを点けてみれば、世間ではピッコロ大魔王を謎の少年が倒したというニュースで持ち切りとなっていた。
Z編に突入するまで天界での修業編とマジュニアとの対決する天下一武道会編の2つしか残っていない。
こうなってくると漠然とした不安が私の胸に湧き上がってくる。分かっていたことだが、私に何か新しい物を作り出す発想力と呼べるものはない。
だからこそ、別の誰かの研究成果を盗んででも最強の人造人間を造ってみせると意気込んでいたというのに、現状では父であるゲロをおいて他に人造人間開発に有用な研究をしている者はいなかった。
当初から目をつけていたドクターウィローは氷漬けで、その助手であるドクターコーチンもウィローの救出のために動いてるだけで役には立たない。
先行きの見えない絶望は絶えず私を襲ってくるが、それでも私は研究の手を止めることはなかった。
今のところ私の研究で成功しているのはスパイカメラとナメック星人の細胞のクローン化の2つのみだ。
一応人造人間8号の改造資料も手に入れたので人間を人造人間化させるのは出来ると言えばできるのだが、こんな程度のものでは私の理想は遥か遠くフリーザにさえ敵わないデクが一体完成する程度でしかない。
「はぁ、夏休みの宿題がラスト1週間前でまっさらな状態の学生の気分だ」
愚痴をこぼしながら目の前のコンピューターをいじくりまわして超神水の解析を続ける。
分かっていたことだが、この超神水はかなりの劇薬だな。構成成分の9割がほとんどの生物に効く猛毒だ。
そして、残りの1割が全身の細胞に超回復を施す謎の成分であった。
つまり、まとめると超神水は潜在能力を解放させる代物ではなく、全身を毒で破壊し、それを耐え抜いた者に超回復の効果で癒してパワーアップさせるもの。
いうなれば、サイヤ人専用と言っても過言ではないお手軽パワーアップアイテムなのだ。
「ふぅ~、期待していたぶん落胆もデカイな……」
目の前のモニターに表示された超神水の分析結果に落ち込む様子をみせるボゲは椅子の背もたれに寄りかかりながら、酷使した目を癒すようにこめかみを軽く揉みほぐす。
一応は超神水の培養に成功した。もっといえば超神水の成分の1割である超回復は仙豆と同様の効果があるのでは? と考えた私は即座に超回復成分の研究に取り掛かり、なんちゃって仙豆を量産させることに成功した。
これでかなり実験に無茶できるようになっただろう。とはいえ、無茶するような実験をする予定が今のところ未定なのだが……。
それからダラダラと研究資金の蓄えを増やしたり、他の研究者の実験結果を盗み撮りして人造人間の役に立てるかと思案しながら時を過ごしていると、スパイカメラが面白い映像を持ってきた。
「ほぉ、サイヤ人の宇宙船であるアタックボールがやって来たか。乗っているのは原作通りにラディッツ1人だけか……」
周囲に他のアタックボールの姿はなく、スパイカメラを宇宙視点に切り替えても他のアタックボールは影の1つも見当たらなかった。
「このままいけば原作通りに悟空とラディッツがピッコロに殺されることになるな」
数秒ほど思案すると、すぐさま周囲のスパイカメラを総動員させてラディッツが悟空を探しに行っている間にアタックボール内のコンピューターにハッキングを仕掛ける。
すると出るは出るはと言わんばかりに宇宙の最先端技術の数々に感動すら覚えるが、急いで全てコピーしてこの場から離れなければ悟飯を人質にとったラディッツが戻ってきてしまう。
それでもまだ時間的な猶予はあるが、バトルが始まってしまえば怒りで覚醒した悟飯がアタックボールを破壊してまうからな。
なんとかラディッツが帰ってくる前にデータを全てコピーすることが出来たのだが、スパイカメラをその場から避難させることなく全機待機させている。
さて、何故私がスパイカメラを避難させずに全機待機させているのか疑問に思った者もいるだろう。
目的は2つある。1つはZ編の戦闘をあらゆる角度、あらゆる視点で見たいというのが1つだな。
もう1つはラディッツの回収が目当てだ。むっ、私が目的の解説をしている間にいつの間にかピッコロが悟空とラディッツに魔貫光殺砲を撃とうとしている。
「魔貫光殺砲!!!」
ふぅ~む、中々の威力ではあるが、この間私が作った疑似カッチン鋼を貫くほどではないな。
だがまあ、現状では魔封波を除いて唯一といっていい格上殺しの技なのだ。あまり酷評しては可哀想であるな。
「ずあっ!!!!」
おっと、私が魔貫光殺砲の評価をしている間にまたもやいつの間にかピッコロがラディッツにトドメを刺そうとしている。
あれは確実に即死だな。とはいえ、舐めてもらっては困る。
この数年間なにも無駄に時間を喰らい潰してきたわけではない。
私は再生能力の研究に伴って、医療技術を個人で人類が数百年単位で到達する域にまで発展させたのだ。
たかが即死の一撃如きで死ぬと神が言うのならば!! 神など謀ってしまえばいい!!
「輪廻を切り裂き、摂理を歪め!! 熱力学第二法則に真っ向からぶん殴る!! それが今の私の医術だぁ!!!!」
超絶無茶苦茶なことを宣言しながら、現場にいるピッコロや合流してきたクリリンや亀仙人達にバレないように、光学迷彩機能を更にパワーアップして透明化に成功させたスパイカメラを死んだラディッツの傷口に密集させ、内部に保管させてあるナメック星人の細胞を移植させ、超神水の超回復成分で無くなった臓器の再生を施しながら止まった心臓の蘇生作業に入る。
総勢200機以上のスパイカメラに搭載された機能をフルで使用すればサイヤ人の一匹や二匹なぞ蘇生させるのになんら問題はない。
蘇生手術におよそ30分もの時間を掛けてラディッツの傷口は完全に塞がった。心臓の方も今は問題無く動いている、その他バイタル測定も問題は見つかっていない。
「結論、死者蘇生にドラゴンボールは必要なかった件について」
今までしてきた研究が役に立ったというのは存外気持ちいいものだ。30分という短い時間ながらも現場にいるZ戦士たちにバレることなく治療を施すのは神経を削るような作業だった。
恐らく今頃はあの世で混乱が起こっていることだろう。神もすぐにこのことを知るだろうから、今のうちに意識を取り戻していないラディッツを研究所に移送しなくてはなるまい。
スパイカメラを改造させた移送型ドローンをすぐ近くに配置しているので、神やピッコロたちが来るまでに回収は完了し研究所への移送も終わらせた。
「さて、あとはこのラディッツが目を覚まして暴走せぬように制御装置を取り付けねばな……。それに、少し試してみたい実験もちょうど出来たことだ。命を助けた報酬としては安いものだろう」
寝ているラディッツに更に深く眠るよう麻酔をプスッと打ち込むと、人造人間8号の設計図を改良させ、より強化させた人造人間αの誕生に貢献してもらおう。
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