悪の科学者を超える転生者 作:ヘルスパイダー
ラディッツとの死闘の結果、死んでしまった悟空は神によって肉体を持ったままあの世へと連れてこられていた。
「うっひゃー、でっけぇおっちゃんだな」
「こ、こら……! 閻魔大王様と言わんか!」
相変わらずの無礼ともとれる悟空の発言に神様が叱りの声をあげるが、言われた当人である閻魔大王は構わんと寛容な態度で許してくれた。
「なあ、オラのちょっと前にラディッツってやつが来た?」
「うん? ああ、奴のことか。ううむ、来たのは来たんだがな……」
「…………ん?」
なにやら歯切れの悪そうに答える閻魔大王は意を決したように正直に告白する。
「実はお前の兄弟であるラディッツのやつは来たのは来たんじゃが、裁判が終わる前に消えよったんじゃ。恐らくだが現世で何らかの方法で生き返ったのだろうな」
「いぃ!!? そりゃマズイって神様! オラ急いで地球に帰らねぇと!!」
「お、落ち着け悟空! 今お前が地球に帰ってラディッツを再び倒したとしても、今のままでは一年後に地球にやって来るサイヤ人に殺されてしまうぞ!」
「じゃあどうすんだよ。このままじゃどっちみち地球が侵略されっちまうよ!?」
ラディッツがまだ生きていると聞いて、慌てて地球に帰ろうとする悟空を止める神様は必死の説得を試みる。
「地球の事は私とピッコロに任せよ。いくら生き返ったといってもそうあっさりとあの傷が治ることは無いはずだ。ラディッツのことは地球にいる者たちでなんとかしてみせる。だから悟空よ、お前は界王様に修業をつけてもらい今よりも更に強くなるんじゃ!」
「っく、……分かった。なら、オラ急いで界王様って人の所で修業をつけてもらってウンと強くなって戻ってくる。だからそれまでの間、地球のことは任せたぞ!」
苦渋の決断ながらも悟空は地球にいる仲間たちを信頼することに決め、界王様の元で今よりもずっと強くなることを決意し走り出す。
「ああ、私とて地球の神だ。お前が留守の間は地球を守ってみせる。だからお前は安心して強くなってみせ、再び地球を救ってみせてくれ!」
遠ざかっていく悟空の背中を見つめながら、地球の神としての決意を新たに地球に帰ろうとしたすると、界王様の元に向かって走り出した悟空が再び戻ってきた。
「ん? どうした悟空?」
「そういやオラ、界王様ってのがどこにいるか聞いてなかった!」
ズコッ!! ×2
アッハッハッハ! と自分のミスを笑って誤魔化す悟空に、神と閻魔は本当に大丈夫か? と若干不安になりながらも、地球の命運を悟空に託して蛇の道までの案内役の鬼をガイドとしてつかせることにした。
「そんじゃ、今度こそ界王様って人のとこで修業してくる」
「ああ、地球の命運は任せたぞ」
「…………お前さんら、そろそろ邪魔だから帰ってくれんかの」
「「あっ、はい……」」
感動的な雰囲気を醸し出す2人だが、後続の列がそろそろ長蛇になりそうでいい加減帰って欲しそうに言う閻魔大王だった。
♦
あの世に悟空を送り届けた神様は地球に戻り次第、急いで天界からラディッツの死体があった場所を覗き込んで見るが、そこには既にラディッツの姿は影も形も無くなっていた。
「うう~ぬ、まさか本当に生き返ったというのか。だが、あの時ピッコロは確かにトドメを刺したはず?」
「どうした神様?」
「ぬっ、ポポか。私があの世に行っている間にドラゴンボールを使用した者はいるか?」
「いいや、空はずっと明るいままだった。だからドラゴンボール使われていない」
なんと、ならば奴は自力で死の淵から蘇ったということか!? だとしても、あの状態であそこからたった一人で私の観測できぬほど遠くへ逃げたというのか?
「サイヤ人か……、これはまた手強い相手だぞ悟空」
あの世にいる悟空が将来立ち向かう敵の凶悪さが自身の想像以上であると危惧するが、今の自分には祈り願うことしか出来なかった。
「神様……」
「ふっ、神ともあろうものがたった一人の人間に全てを託さねばならぬとはな」
悲観した雰囲気を醸し出す神様だが、その顔は全てを諦めた者のそれではなかった。
彼とてただ長く生きてきただけの人生を送ってきたわけではない。
そもそも、神様の持つ一番古い記憶は諦めの記憶であった。
自身の記憶がないまま親からの手紙であろう『あとでいくから待っててくれ』という文を信じて何十年も待った結果、結局誰も迎えに来ることはなかった。
そんな彼は長い旅の果てに神の存在を知り、更に長い年月を修行に費やして神の座を手に入れたのだ。
だからこそ、神様は悲観的になりながらも、神としての立場で地球を守る為に己の半身であるピッコロにラディッツ生存の報告の為に下界へ降り立つことに決めた。
「すまんがMr.ポポ。また再びこの神殿の留守を任せる。私はあやつの元に行かねばならぬ」
「分かった。気を付けて神様」
千里眼でピッコロの居場所を探り当てた神様は、下界へと降り立っていった。
「…………一体この俺様に何の用だ神よ?」
「気づいておったか、流石だなピッコロよ」
瞑想中に後ろに立った神の気配に感づいたピッコロは後ろを確認することなく、そのままの態勢で後ろに立つ神に話しかける。
「世間話をしに来たのならさっさと帰るんだな。こっちはいずれ来るサイヤ人とやらを始末する為に強くならんといかんからな」
「勿論、貴様の邪魔をしに来た訳ではない。っが、……悟空の息子はどうした? 確かお前が育てると言って連れ去った筈だが……?」
辺りを見回しても孫悟飯の姿はどこにもなく、ピッコロ一人しかこの場には存在しなかった。
「そうか、あの小僧の心配か。だが残念だったな。あいつなら戦士としての心構えからなってないから、過酷な環境に放り込んで今はサバイバル中だ!」
「な、なに!? ならあの小僧は今は一人で行動しておるのか。い、いかん! 今すぐにあの小僧を迎えに行くんじゃ!!」
目が飛びでるかと思うほどに驚愕する神の態度に、悪の大魔王であるピッコロはくだらなさそうに笑みを浮かべる。
「くっくっく、相変わらずお優しいこった。今すぐあの小僧を助けた所で1年後にやって来るサイヤ人との戦いを乗り切らんことにはあの小僧どころか、この地球そのものが危ういんだぞ?」
「ち、違う!? いいかよく聞けピッコロよ、貴様と悟空が協力して倒したあのラディッツという男、そやつがまだ生きておるのだ!」
「なに? 寝言は寝て言うんだな。奴は確かにこの俺様がトドメを刺した。あの状態から生き返る筈がなかろう」
ラディッツ生存の知らせを受けたピッコロだが、自身の非情さから手加減などするはずもなく、確実にトドメを刺した相手が生きているという言葉を信じることなく、大方あの小僧を助ける為の噓だと認識していた。
「確かに信じられん気持ちは分かる。私とてあの世で閻魔大王から魂があの世からこの世へ戻ったと聞いても半信半疑だったが、現にあやつの死体があった場所から既に死体は消えておったのだ」
「…………到底信じられん話だ。とはいえ、いつまでも貴様がくだらんジョークを口にする奴ではないとも承知している」
くだらんと一笑にふすのは簡単だが、万が一の可能性も捨てきれないピッコロは瞑想を止めて立ち上がる。
「いいだろう。予定変更だ。あのくたばりぞこないがあのガキを狙わんとも限らん。あのままサバイバルをしていた方がマシだったという地獄を小僧にプレゼントしてやるとするか」
そう言い捨てて即座に孫悟飯がいる場所目掛けて飛んでいった。
ただこれは悟飯を助ける為の甘さからではなく、将来やって来るであろうサイヤ人との戦いの貴重な戦力を失わない為の行動には間違いないのだが……。
「やはり、あやつはどこか変わった。悪には違いないが、昔のずる賢い粗暴さが消えてるように感じる。この一年であやつが悟空の息子をどう育てるのか? 今の地球を守る役目はあの2人に任せるしかあるまい」
とはいえ、ただ黙って地球の命運を任せっぱなしにするわけにもいかない。自分もピッコロと同じく育てるのだ、未来の希望足りえる戦士たちを……。
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