悪の科学者を超える転生者 作:ヘルスパイダー
世界が一変するような感覚に襲われながら、重たい瞼を開けて俺は目を覚ました。
「……? ここは一体」
目を覚ました場所は見覚えのない部屋の1室で、自分が寝ているベッド以外は机と椅子が1つだけという簡素な部屋だった。
起き上がろうとした直後、この部屋唯一の扉が開いて1人の男が入って来た。
「ふむ、意識が戻ったようだな。体にどこか不調はないか? なければ早速で悪いが私の願いを聞いてもらえんだろうか?」
「いきなり現れて何を言っている? 見たところ地球人のようだが、俺様を助けたのは貴様か?」
「さよう」
「はっ! 言っとくが俺様はこの星を侵略しに来たんだ。命を助けられたからと言って義理を返すつもりはないぞ!」
「だろうな。だから手は打たせてもらった……」
男がこちらに対して手をかざすと、急に今まで感じたことの無いレベルの頭痛が襲い掛かってきた。
「ッ、グオオオオォォォ!!!」
「すまんが、君が眠っている隙に肉体を改造させてもらい、君の脳に制御装置であるマイクロチップを埋め込ませてもらった。ああ、言っておくが、私を殺そうとしても無駄だ。これは私の脳波を感知して動きを止めている。先程のように、私が脳波を遮断すれば装置が作動し強烈な痛みが君を襲うだろう。つまり、私が死ねば永久に君はその痛みを背負って生きていくことになる」
「わ、分かったから……。は、早くこの痛みをどうにかしろ!?」
「そうだな。これで私と君の力関係も理解出来ただろう」
すっと手を下ろすと痛みに悶えていたラディッツの顔が良くなっていき、はぁ……はぁ……と息を荒げてこちらを睨みつける。
そこから読み取れる感情はまさしく敵意以外ないだろう。
「さて、目覚めたばかりで状況もロクに吞み込めず、腹も減っているだろう。ついてくるがいい、食事も用意したからそれでも食べながらゆっくりと説明しよう」
そう言って部屋を出て行くボゲの背中を仕方なしに追いかけるラディッツ。
案内された部屋には大量の食事が用意されており、ラディッツは許可を取ることなく席について食事を始める。
「……毒が入っていると警戒はせんのか?」
「ふん、既に俺の脳に制御装置とやらを埋め込んでいるのだろう。今更キサマが毒なんぞを用意しているとは思わん」
「まあ、そうだな。さて、そのまま食事を続けながらでかまわん。これを見てほしい……」
ウィーンと天井からスクリーンが降りてきて、そこからラディッツが蘇生した過程やボゲの目的、今現在のラディッツの肉体情報などが流れるように映し出されていく。
自身の肉体が半ばロボット化していることに驚きつつも、ラディッツの地頭は悪くないらしく、ボゲの説明にも返事を返しながら質問も交えて自分が置かれている現状を大まかにだが理解した。
「正直言って信じられん技術力だ。ここまでの技術は宇宙でも例は見ないだろう。キサマ本当に地球人か? かつてこの星に逃げ延びてきた最先端技術を持った宇宙人と言われた方がまだ納得できる」
「だろうな。君の宇宙船をハッキングさせてもらったが、宇宙の未知の技術力には目を光らせるものがあったが、既にそれら全て改良して私の研究所に生かさせてもらったよ」
「なに!? キサマいつの間に俺のアタックボールを調べ上げた!!」
「君が地球に着いて孫 悟空……いや、カカロットと言った方が分かりやすいか? ともかく、君が弟を探しに出て行った隙にちょっとね……」
「あの時か……。それで、キサマさっき全て改良したと言ったが、本当か……?」
「疑うのも仕方ないだろう。ほれ、君が着ている戦闘服の頑丈さを超大幅アップさせた設計図に、性能を3倍以上に上げたアタックボールの開発映像もあるぞ」
スクリーンの映像が切り替わり、そこには確かに戦闘服とアタックボールの改良案が書かれた図面が映し出された。
研究者でないためにその情報が本物かどうかは判断できないが、その真偽の信憑性はかなり高いと考えられる。
「はぁ……、もうキサマの技術力に驚くのには面倒だ。それで、お前が俺を助けたのは、その未来で産まれるというセルという名の人造人間を倒す為らしいが……」
「ああ、既に君の肉体は改造を施し、今の君の戦闘力は1万を超えている。力だけならばエリートと呼ばれる領域に既に足を踏み入れているぞ」
「…………あまり実感は出来ないな。本当に眠っている間に俺の戦闘力がそこまで上がっているのか?」
「信じられないのも無理は無いだろう。ふむ、食事も済んだようだし、私の研究所には特製のトレーニングルームも兼備してある。ついてきなさい」
再びボゲに案内されるままに部屋を出てついて行くと、辿り着いた先は殺風景ながらも頑丈そうな造りの部屋だった。
確かにここなら思う存分に暴れ回ることが出来そうだ。
「さて、これから君の宇宙船のデータから作り上げたサイバイマンと戦ってもらう。言っておくが、ただのサイバイマンと思って戦えば手痛い目にあうぞ。なにせ、私が短時間ながら最大限に改造と改良を加えた強化種だからな……」
そう言い残してボゲがトレーニングルームから出て行くと、部屋の奥の壁が迫り上がってゆき、その奥から緑色の怪物がゆっくりと歩いて迫ってくる。
現れたサイバイマンは通常種と違って体格も大きく、その風貌も強者の貫禄すら漂わせていた。
「なるほど、たしかに並みのサイバイマンではなさそうだ」
現れたサイバイマンを油断なく睨みつけながら、ラディッツはいつでも戦えるよう構えをとった。
それを合図に部屋の内部のどこかに設置されているであろうスピーカーからボゲの声が響き渡る。
「戦闘の準備は出来ているようだな。それでは両者共に存分に戦ってくれたまえ!」
ビィー!! っとホイッスル変わりに鳴り響く機械音をきっかけに、ラディッツと強化種のサイバイマンがスタートダッシュを決めて部屋の中央で拳を重ねる。
超スピードで縦横無尽に部屋の中で戦う両者の姿は一科学者であるボゲには見えないでいたが、備え付けのハイパースローモーションカメラからの映像で確認は取れる。
それでも、動きの速すぎる両者の姿は一瞬でも目を離せばいなくなり、気がつけば戦況がガラリと変わる。
「これは私も人造人間に改造しなければ観戦すら出来そうもないな……」
サイヤ人編の戦闘ですらまともに観戦出来ないのだ、人造人間編ともなれば気づかぬうちに全てが終わってしまうだろう。
そうして、私が密かに自身の人造人間化を決意したのと同時に、トレーニングルームからドカン!! と強烈な衝撃音が聞こえた。
見ればサイバイマンが見るも無残な姿で壁にメリ込んでいる姿が確認できた。
それに対して、ラディッツの様子は多少の怪我はあれど、その全てがかすり傷程度の取るに足らないレベルであった。
あのサイバイマンは戦闘力でいえば5000以上の、かつてのラディッツならば決して勝てない強さを誇る個体だったのだが……。
「人造人間化の実験はひとまず第一段階クリアといったところか……」
まずまずの結果に薄っすらと微笑みを浮かべながら、トレーニングルームで自身の肉体の変化に驚いているラディッツの元へと足を運ぶ。
ラディッツの人造人間化終了しました。
次回は修業編に突入です。
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