最近、なんか俺のやりたいトレーニングをさせてもらえない気がする。
やろうとすると厩務員が来て、頼み込んでくるのだ。
土下座したって、無理だからな!
「頼むよー、ほら、今日は桃があるよ」
『三本だけだ!それ以上は走らんからな!』
何してる、さっさと行くぞ!
やってきた場所は、コースを模した場所だ。
柵でグルっと走れるようになっており、追い切りとかでよく使ってる。
『きょ、今日はお願いします!』
『よろしくのぉ……』
『おう、よろしくな。お前ら』
スミがやってくる。
スタート、先に他の奴らが走っていく。
何、一緒に走るのではないのか!?
「行こうか、レクサス」
後を追うように、遅れてから指示が入る。
分かったわ!後ろから抜かせばいいのね!
抜かねば不作法というもの……しゃオラァ!
「まだだ!」
『だぁぁぁ!なんだお!?』
ギュッと、手綱が引っ張られる。
引っ張られると前に首が振れないから走り辛い。
首を上げたまま走れるわけがないだろ!メジロパーマー?あれはアニメだからだぞ!
『うおぉぉぉぉ!』
『逃げるんじゃぁぁぁぁ!』
『待てやぁぁぁぁ!』
馬身が2馬身、1馬身と近付いてくる。
フッ、これくらいなら追い抜けるぜ。
ハッ……そうか、これは差しの練習だな!
ということは、抜けば良いんだな!
『行くぞ、オラァァァ!』
「まだ駄目だ、レクサス!鞭を待て」
『んだぁぁぁぁ、あーもう、何なんだよ!』
ちょっと緩んだから行っていいんじゃねぇのかよ!イライラすんなぁ!
おいぃぃぃ!クソが、降りろ!スミ、お前、降りろ!
意図が分かんねぇんだよ!
『ひぃぃぃぃ!』
『逃げるんじゃ!殺されるぞ、逃げるんじゃ!』
『ブッ殺してやらぁぁぁぁ!』
頭を下に、前傾姿勢に近付けて加速していこうとする。
あぁぁぁ、首!首が痛い!馬鹿、馬鹿おまえ、馬鹿!
メチャクチャ離れてくじゃねぇか、なんで外側に移動させんだよ!
「よし、良いぞ!」
『痛った!もう一周終わるぞ、ここでか?はぁ、最後の直線でってことか!?』
「いいぞ、抜くぞ!」
『違う、お前最後に抜かさせろっていうのか!』
手綱が緩む、今なら走ってもいいだろ。
だけどなぁ、一番最後の方ってお前それ追い込みやんけ!
ゴールであろう場所を通過して、失速する。
何したいのか分からんが、そういうことなら俺は走らんぞ。
「いい感じですね。もう一回、行きますかテキ」
「やはり追い込みは完璧だ、この馬にはやはり合ってる。スタミナがあるし、パワーもあるからな」
「そうですか?回数こなせば、もっと良くなってくれる伸びしろを感じましたけど」
「馬も覚えるんだろう。乗ってる騎手の意見のほうがあってるかもしれん」
なんや、またやるんか!次も同じことしたら怒るからな!
『また、またやるの?』
『ほら、さっさと準備せぇ』
『俺、もう嫌や!めっちゃ、睨んでくるもん』
また他の馬が先行して走っていく。
コイツらを抜かせってのは分かってる。
問題は後半だ、1コーナー、2コーナー、直線、最後のコーナー。
前に出ようとすると邪魔されるが外側に行く場合はスムーズだ。
直線、ここで走ろうとするとアシストするように手綱が緩む。
走っていいぞと言わんばかりに鞭も来る!
『やっぱり、追い込みかぁぁぁぁい!馬鹿、お前俺は差し馬なんじゃ!』
「よしよしよし、良いぞ!完璧な走りだ!」
「良い走りだった。三本目も行ってみますか」
クソが!俺が競馬を教えてやる、俺の走りを覚えろ!
三回目、今度はスミの指示を全部無視する。
まずは後ろに近付くんや、俺は馬にしては綺麗好きだから砂が苦手だと思ってるかもだが、勝負で勝つためならこうだ!本当はレースにしか汚れたくないし、トレーニングでやりたくないが教えたる。
『来た!来た!』
『逃げるんじゃ!逃げるんじゃ!』
『クソが、砂を飛ばすな!』
手綱が引かれる、速度を落として離れさせようとしてんのか。
違う、外側じゃねぇんだよ!このまま突っ込むんだよ!
「レクサス!?」
『こうだ、こうして行くだよ!どけ、俺が通るんだよ』
『うわぁ、こっち来た!』
『逃げるんじゃ!逃げるんじゃ!』
分かるかスミ、馬群は必要じゃないから突っ込まないだけだ。
普段から群れないだけで、レースならこうすんだ!
コーナーで加速すんだよ、コーナー加速が欲しい!クソが!
「レクサス、もしかして差しでやりたいのか?」
『分かったか、おい、どうなんだ!』
行くぞおらぁぁぁ!邪魔だどけどけ!俺が一着だ!
走りきって失速する。
どうだ、分かったか?どうなんだ?
「テキ、今のは……」
「うーん、遅れてスタートさせ続けたからストレスでも溜まったのか。抜かしたがってたように見える」
「ちょっと、様子見してみますか」
何、またやるのか!?ふざけんな、もう終わりじゃい!
おら、降りろ!しんどいんじゃ、ボケ!
牧場が寒くなった頃、今日は雨だ。
雨の日は汚れるから走りたくないのに、走れ走れと人間どもがうるさい。
うるせぇ!体力も40切ってるし、危険なんだわ!
【メジロレクサス】
【調子】不調
【体力】40/110
【ステータス】スピード:C スタミナ:D パワー:D 根性:D 賢さ:C
【バ場適性】芝:A ダート:G
【距離適性】短距離:D マイル:B 中距離:A 長距離:B
【脚質適性】逃げ:D 先行:B 差し:S 追込:D
【スキル】
・スタミナグリード
レース中盤で後ろの方にいると前方の持久力をわずかに奪う<長距離>
・八方にらみ
レース終盤に他のウマ娘が動揺する<作戦・差し>
なんか気分が乗らんと思ったら不調やんけ、はぁーもう解散!
今日はもう走らんぞ、アホ!
「どうしたレクサス、元気ねぇなぁ。ほら、お前の好きなバナナだぞ」
『バイト!お前、いいもん持ってるやんけ!』
「今日はやめとこうって言っとくからなぁ、元気だしてくれよ。お前が人気薄だと儲かるからな」
『何言ってるか分からんけど、食い物くれるから好き』
厩務員の癖して分かってんじゃねぇーか!
ほら、お礼に舐め回したる。
なんだよ、臭そうな顔するなよ。
嘘、私の口臭臭すぎっ!
ジメジメして、ホントやだわ。
おい、身体拭いてくれよ、頼むよー!
「井上くん、どうだいレクサスの様子は」
「なんか耳も絞ってるし、気持ち食事も少ないかもですね。簡易的なチェックしてみた感じ問題ないですけど」
「レクサスは雨降ると、体調崩しがちだからなぁ。病弱なままなのかもしれない」
「今日はどうします、やめときます?」
「他の馬は小雨だから普通に放牧地に行くんだけどなぁ」
おい、俺を出そうとするな。
誰だお前!うん?なんだ、オッチャンか。
「あぁぁ、蹴るな!柵を蹴るな!」
「やめましょうよ、社長」
「分かった、分かったから」
おい、こっち来て遊ぼうぜ。
あれ、なんで離れるんだよ!遊ぼうぜ、暇なんだよ!
「なんか寄るなって言ってる気がする」
「フルーツでもあげて機嫌取ります?」
「でも、太るからなぁ」
「少しくらいなら平気ですよ」
おっ、バナナくれるんか!
くれ、俺のバナナ!
「こわっ!噛みに来てない?ねぇ、来てない?」
「バナナ欲しいだけでしょ」
「いや、目、めっちゃ怖いけど」
「大丈夫ですよ、死にはしないです」
「死にはしないけど怪我するよね!頼むぞ、あと一週間後にレースなんだから」
美味い!バナナ!美味い!
なに?何頼んでんの、分からんが?
「やぁー、でもレクサス人気の時って負けるし、やばいんじゃないすかね?」
「やめてよ、縁起でもない!墨田騎手もなんか弱気だし、不安なんだから」
「出るだけいいじゃないすか、G3も勝ったし、次もG3に出れるんだ。負けても立派なもんですよ、殆ど負けるんだから」
「それでもレクサスなら勝ち続けてくれる気がするんだ。頼むぞほんと……」