俺はただうまぴょいしたかっただけなんだ   作:nyasu

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これが私の全力全開……

第42回共同通信杯(G3)

芝左1800m / 天候 : 晴 / 芝 : 良

 

【さぁ、16頭が入ってスタートしました!メジロレクサス、まずは出遅れました。外からマイネルプレーザ。マイネルプレーザ、あるいは外、外にショウナンアルバが続いて、真ん中ショウナンアクロスさらにはイイデケンシンが2番手】

 

左右から馬達が駆け出していた。

俺の前には馬と馬と馬による壁が形成されている。

何も見えない、馬のケツしか見えない、俺の後ろには1頭しかいない。

 

『痛ッ!?』

 

鞭が入って、ハッとする。

そうだ、まだ焦る時間じゃない。

まだだ!俺は差しだから、追い込みみたいになってるけど問題ない!

よし、走るぞ!

 

長い直線、馬の壁が減ってくる。

正確には左側、内側に向かって馬群が整理されるように細くなっていく。

2列で並ぶかのような、入り乱れての馬群。

少なくとも最初の横一面に広がった壁ではない状態だ。

 

 

【一気に上がっていて向正面に入りました三番手にマイネルプレーザ、4番手にショウナンアルバ今日は控えます。その内から1番のタケミカヅチ、ぃぎぃ、2番のストーミーペガサスが追走して今4番手に上がってきました】

 

少し垂れてきた馬を抜かして、今の俺の順位は16引く2で14位か。

もう一つ抜かして、これで13!よし、内側に向けて走ってく!

邪魔は入らない、スタート以外は理想的な走りだ!

 

【レオマイスター、あるいは外からホッカイカンティが追走して真ん中サブジェクトが追走、その内にタケミカヅチ中団に控えました。タケミカヅチその後ろにシングンリターンズノットアローンさらに真ん中から徐々に接近を始める】

 

抜かしたいが今はまだ外から追い越すには難しい。

まだカーブも曲がってない、まだここは待ったほうが良いか。

 

『ッ!?』

 

鞭が入る。

加速しろってことか、うるせぇ!

邪魔すんな、お前は乗ってろ!

何回か入るが無視して走る。

俺のスタミナ的に無理に追い越したり速度上げたら後半がキツイんだよ!

 

 

【各馬ですが、ニシノシュテルンは後方から2番手その後ろに、その間にメジロレクサスがおります。メジロレクサスは後方から4番手の位置】

 

コーナーに、ファ!?

なんやあの馬、もうコーナー入ってる。

っていうか、何馬身開けてんだ、後続いないじゃないか!

 

『3、4コーナー中間のこり1000m切りました。ニシノシュテルン最後方にスマートファルコン待機して、ぐんぐん飛ばしている、ぐんぐん飛ばして、ぃっ、6番のショウナンアクロスが後続を10馬身ぐらい引き離して4コーナーのカーブに入ります』

 

少し遅れて後続の団体が、4頭くらいがコーナーに入って団子のような状態で入っていく。

外側の馬から外に向けて離れていき横に広がりつつ、内側の馬は減速しながらも曲がり切って入っていく。

見えた、内側の馬がやや外に慣性かなんかで移動したから最内コースが空いてる、あそこに突っ切れば短い距離で直線だ。

 

『おい!邪魔すんな!』

 

いざ行かんとしたら、外へ行くように手綱が軽く引かれる。

あぶねぇとか、馬群を気にしてるかもしれないが俺なら行ける。

内側の道が閉じる前に駆け抜けれる!

速度が上がる、馬達がスパートを駆けた。

俺も行かないといけない。

 

【2番手には外には徐々に接近マイネルプレーザが上がってこようとしている。内に粘っているイイデケンシン3番手4番手、4番手の外にショウナンアルバが接近。残り600切りました、後方の集団は一塊になってレオマイスターが最内を回っている、4コーナーカーブから直線コースに向かいました】

 

『ッ!?作戦変更じゃ!』

 

思ったよりペースが早い。

そうか、今までと違ってラストだからスタミナ全部を消費してパワーで加速してスピード上限が取り払われてるんだ。

間に合わないかもしれない、リカバリーするしかない。

前を走る馬が疎らに垂れてくる。

邪魔な奴ら、それを避けるように真ん中に移動する。

馬群は、横に広がって一直線だ。

何頭か置いてかれるように失速するが、おかげで道が広くなった。

 

【あとはシングンリターンズ、外を回ってホッカイカンキが追い込みに入って残り400を切りました。ホッカイカンキ!そして間を突っ込んで各馬接近ですが、さぁ先頭は真ん中からショウナンアルバ、ショウナンアルバが先頭で坂を登ってくる】

 

坂道に入る、キツさが増してくる。

肺が痛い、スタミナ切れか?

追い越すために少し無茶したか、だが今日は頭の冴えも良い。

たぶん、差しが上手く出来て賢さ補正が働いてるんだ。

行ける、行くしかない、もう駆け上がれ!

坂道は、パワーに関しては、この日のために特訓し続けて慣れてるだろ!

 

『パワァァァァ!ヤァァァァ!』

『むーりー』

『だめだー』

『うおぉぉぉぉ!』

『抜かさせるかぁぁぁ!』

 

何頭抜いたか分からない。

たくさん抜いた、コイツらも抜く。

そう思ってたら横に居たやつが加速する。

それも1頭じゃない、何頭もだ。

クソッタレ!もう全速力だぞ!キツイって!エグいって!

もう少しで3着には入れるし、なんなら掲示板内でも良くないか。

それくらいなら、馬肉にならないんじゃないか。

 

『ッ!シャ、オラァァァ!』

 

鞭がガンガン入ってくる。

そうだよな、1位じゃなきゃダメだよな!

まだ諦めるには1分、いや数秒は走れる。

まだゴールされてない、まだ終わりじゃない、まだ間に合うかもしれない!

 

【ホッカイカンキ、メジロレクサスが3番手まであがって、一気に交わして勢いよく上がってくるが、更に最内からぐんぐんとタケミカヅチが追い込んでくる】

 

見えてる、後は3頭だけだ。

……3頭だけなんだ。

なのに、なんでこんなに遠い。

俺の足は、お前らより速いはずなんだ。

全力なんだぞ、なのに何で届かない!

嫌だ、負けたくない!今までで一番マシなんだ!

 

『ショウナンアルバ先頭、タケミカヅチ2番手に、3番手マイネルスターリー2番手に接近!』

 

なんでそこで着順争いしてるのがお前らなんだ。

どうして俺はそこにいない!

なんで俺の足は、アイツらを抜かせられない!

クソ、クソ!

 

【ショウナンアルバ!ゴールイン!2着にはタケミカヅチィィィ!】

 

 

3頭がそのまま合わせるかのように速度を落としていく。

それだけで終わったと理解できる。

 

『上ばかり見てんじゃねぇ!邪魔だ!』

『くっ!』

 

無意識だろう、一瞬だけ力が抜けた。

その瞬間を刺すかのように、隙を突いて、隣の馬が横に並ぶ。

ほぼ真横だが、その一瞬だけ、鼻先が先を行く。

分かる、僅差だが、コイツにも負けた。

そうだった、レースは終わってなかった。

 

『ハァハァ……ハァハァ……』

 

息が戻らない。

前よりも、今までよりも全力だったからだろう。

 

「よくやったレクサス、よくやった」

 

ヌッマが俺を撫でてくる。

何を言ってるか分からんが労ってるのは分かる。

コイツは邪魔しなかった、今回のは純粋な俺の実力なのか。

いや、そう言えば外に引っ張ろうとしてた。

やっぱ、コイツのせいか?

 

「うん?どうした?あっ……」

『取り敢えず落とすか』

「うわぁ!?やっぱり!」

 

いや、やっぱ俺が悪かったかもしれない。

考えてみれば無理に位置を調整しようとして加速したのがスタミナ切れの原因だ。

回復系入ってないから無駄なことしなきゃ良かったんだ、あの指示に従ってたら違ったかもしれない。

 

「えっと……」

『帰るぞ、次は負けない。俺は大器晩成型なんだ、スマートファルコンも後ろの方だった。勝てなくても仕方ないレースだったんだ、うん』

「レクサス?」

『……何してる、早く乗れよ』

 

 

 

第42回共同通信杯(G3)

1着ショウナンアルバ

2着タケミカヅチ

3着マイネルスターリ

4着シングンリターンズ

5着メジロレクサス

 

※なお実況の人は、ホッカイカンティをホッカイカンキと途中で呼び間違えたことをネットで弄られるのであった。

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