俺はただうまぴょいしたかっただけなんだ   作:nyasu

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油断するなよ、中山の直線は短いぞ!

第45回報知杯弥生賞(G2)

芝右2000m / 天候 : 晴 / 芝 : 良

 

(人気)(枠順)(馬番)(馬名)
 1 7 13 ブラックシェル
 2 2 3マイネルチャールズ
 3 6 12メジロレクサス
 4 4 7フサイチアソート
 5 8 15キャプテントゥーレ
 6 3 6スズジュピター
 7 1 2タケミカヅチ
 8 5 10ダイシンプラン
 9 6 11ホッカイカンティ
 10 5 9ベンチャーナイン
 11 4 8テラノファントム
 12 8 16オリエンタルロック
 13 3 5シングンリターンズ
 14 7 14ピエナエイム
 15 2 4ライムライトシチー
 16 1 1ミッキージェット

 

 

 

 

夢を、夢を見ていたんです。

とても激しく、荒々しく、雄々しい夢を……寝ても覚めても車の中なんですけど!

はぁ、もう食って寝るしか出来ねぇわ。

マジつらみざわぁぁぁ!

 

『止まっ……た?』

「お待たせ~」

『井上ェ!遅せぇぞ!』

「おぉ、元気一杯だな。今日も、頑張れよー!」

 

イメージトレーニングはめっちゃした、今日もターフで差しを見せてやる。

他の馬、序盤、中盤、終盤、隙がないよね。

でも、オイラ負けないよ。

 

井上に連れられてパドックに入る。

周りを見るが、今日はオッチャンとかはいないみたいだ。

皐月賞だよね?あれ、いないってことはないよな。

どっかにいるんだと思う、見知った馬もいるしな。

 

『よぉ、またお前か』

『お前は』

 

話しかけてきたのは、前回のレースで俺を最後に抜いた奴だった。

確か、名前は……

 

『シングンリターンズ……』

『フンッ!気安く呼ぶんじゃねぇよ、俺はもう追う立場じゃない。お前が俺を追うんだぜ』

『テメェ、一回勝ったからって調子のんなよ!』

 

馬ごときが、同じ馬である俺を馬鹿にしやがって!

俺はお前より、なんかあるから偉いんだよ!

今に見てろよぉ……。

 

『まぁまぁ、同じ共同通信杯組じゃないか仲良くしようや』

『誰だお前!』

『おいおい、一緒に走ってたじゃないかホッカイカンティだよ』

『ホッカイカンキ?』

『ホッカイカンティが言い難い名前で何が悪い!?』

 

うわ、急にキレだした。

なんだコイツ、落ち着けよ。

 

『うるせぇ奴らだな……』

『『『あぁ!?』』』

『どうせ俺より遅いんだから黙ってろよ』

『んだとテメェ!?タケミカヅチ!』

『やんのかテメェ!えっ、誰!』

『テメェ、2着だからって調子のんなよ!』

 

俺以外の奴が名前と順位を教えてくれる。

コイツ、前走の2位か。

勝ってるからって眼中にねぇってか!

なんて傲慢な奴だ、許せねぇよ!

 

「おう、おうおう、落ち着けれレクサス!」

『井上ェ!邪魔すんじゃねぇよ!』

「どうした、落ち着け。よーしよし!」

 

『よぉ……奪いに来たぜ、先頭を』

『貴公か』

『フンッ!そのスカした態度も今だけだぜ』

『良きレースをしようではないか、ベンチャーナイン』

『……チッ!おい、何見てんだよ雑魚ども!見せもんじゃねぇぞ!』

 

ハァ!?喧嘩売ってらっしゃる!?

 

『何だお前、誰だよ!』

「落ち着け!ほんとにどうしたレクサス!」

『この俺を知らないとは、田舎者が!』

『北海道は田舎じゃねぇ!東北地方だ!』

『フンッ、知らんなぁ』

『さてはお前、馬鹿だろ!バーカバーカ!』

「落ち着けレクサス!今日は調子悪いのか?」

 

おっと、コイツら皐月賞だからって俺を挑発する作戦だな。

やだやだ、これだから雑魚は盤外戦術使ってきやがる。

落ち着け、相手にしたら負けだぜ。

 

「レクサス、おいで」

『あっ、ヌッマ来たやんけ』

 

なんか手招きされたから移動する。

おし、今日はよろしく頼むで、アイツらに負けるのはなんか癪だ。

リベンジ戦と行こうぜ。

 

「勝つぞ、レクサス」

『勝つぞ、皐月賞は勝つぞ!ここでまずは冠だ!』

 

なんか井上が嬉しそうにしてる。

お前、もしかして勝ちを確信したか?その通り、勝つのはこの俺メジロレクサスだ!

 

「やぁ~、沼添さん来たら落ち着いたみたいで良かったですよ」

「皐月賞に向けての大事なレースだって、コイツも分かってるのかもしれませんね」

「次の皐月賞も取って欲しいですからね、まずはここから勝って欲しい」

『何喋ってんだよ、早く行こうぜ!』

「おっとと、じゃあ行ってきます」

 

コースへと移動する。

見ると、既に他の馬達がレース場に移動していた。

軽く走って入場、なんか1頭の馬がレース場を立ち止まってみている。

あれか、どんなコースか見てるのか。

今回のコースは、何回か見たことある。

なんか坂が2回もある、場所で……どこも坂とかあるやろ。

でも、コーナーからゴールまでの直線が前回の走った場所より短い。

スタート位置はすっごい前に走った時と違う、ハハーン、スタート位置は変わるけどゴールは変わらんのやな。

皐月賞は中距離やったから、一周くらいやろうなぁ。

 

【おっと、12番メジロレクサスが立ち止まっています。沼添騎手が動かそうと奮闘していますが、あっ走り始めました】

【パドックでも興奮していたので、心配だね】

【皐月賞トライアル、3着までに皐月賞本場への出走優先権、第45回弥生賞、飯崎脩五郎さんです。まぁでも、結局16頭いいメンバーが揃いましたね】

【いいねぇ、ペースだな後は】

【ペース?その、逃げ馬がホッカイカンティ!しか見当たらないというのが大方の見方ですが】

【あのねぇ、2000mなってからね、1000mで一分切ったの3回しかないんだよ。それも59秒台で58秒は一回もないの、もし58秒台で展開するとどういう結末になるかね、アレだな後ろの馬は上げってくるでしょ?ペース次第なんだなぁ……】

【何が何でも3着には食い込みたい、そんなレース。さぁ、ペースも注目していきましょう】

 

うん?なんか知らんファンファーレやんけ!

おい、俺の知ってるファンファーレと違うぞ、皐月賞ってパーンパパーン!やろ、パッパパパで始まらないが!あれ、皐月賞ではない!?

 

『分かんねぇけど、勝てばええんやろ!』 

「度肝を抜かしてやろうぜ」

 

 

「今日、頼むぞー!」

 

 

うっさ!なんかヒトカスが騒いでやがる、なんだこのレース!

やっぱ皐月賞ではないのか?

 

【竹豊、今年は騎乗1番人気ブラックシェル、何しろ竹豊はこの弥生賞、3年連続制覇。今日も勝てば4年連続制覇となります】

 

おっ、行く感じか?

よっしゃ、ゲートは任せろ!もう俺にゲート難はない!

 

「はい、最後はいるよー」

 

【オリエンタルロック、これで最後の16頭、さぁグレード2皐月賞トライアル第45回弥生賞です!】

 

 

 

ゲートが開くのに集中する。

よし、俺の末脚を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ痛っー!』

 

【スタートしました!綺麗なスタートです、大勢のお客さんが見つめる正面。おっと、6枠12番メジロレクサスと6枠11番ホッカイカンティが前に出る形、激しい先頭の取り合いです】

 

ど、どういうこと!?

分からんけど、走るんだ!

 

「行け!」

『走れば良いんだな、分かったから叩くな!』

『な、なんでテメェが!?』

『俺だって知りてぇよ!』

 

横にいた、ホッカイカンティが驚いている。

そりゃそうだ、逃げようと思ってたら差し馬が横にいるんだもん、そうなるだろ。

 

【予想と違って激しくなった先行争い、さぁそれに付けるのがマイネルチャールズ、ピッタリ並んでシングンリターンズ。好意集団で付けています、まだ睨み合いか、14頭が最後方のライムライトまでご覧の通りです】

 

『うりゃぁぁぁぁ!』

『うりゃぁぁぁ!あっ?』

 

コーナー手前、軽く手綱が引っ張られて、走り辛くなるので失速する。

ゆっくりとペースが落ち、自然と差が開く。

 

『ハァハァ……お先!』

 

【2コーナーから向こう正面へホッカイカンティが隊列を引っ張りました。2馬身から3馬身、リードを開きます。2番手に6番メジロレクサス、シングンリターンズ。白い帽子、ミッキージェットが先、真ん中の白い帽子がタケミカヅチ、その外を回ってキャプテントゥーレ、その外ブラックシェル竹豊ここにいます。その内テラノファントム1戦1勝、その最内をスズジュピターが攻めてきますこれが中団です。その後ろピンクの帽子がオリエンタルロックでダイシンプランです。それを見る形でピエナエイムが続いています、1000mは57秒6!】

 

全力では走れないもどかしさを覚えながら駆ける。

だが、お陰で息苦しさもない。

余力が残った状態だ。

ここに来て、ヌッマの考えがわかる。

コイツ、先行で俺を走らせたいようだ。

ふざけんな!俺は差し馬なんだよ!もうやってしまったから、終わってから説教や!

 

『フゥ、追いついたぜ!』

『シングンリターンズ、またお前か!』

『先ばかり見てんじゃねぇ、後ろから俺が来たぜ!』

 

【さぁ、各馬このペースをどう判断するか!3コーナーのカーブ!まだ蕾が堅い桜並木のした、クラシックに向かって先頭はホッカイカンティ変わらず!】

 

『ま、がっ、れぇぇぇぇ!』

 

先頭を行くホッカイカンティの声がする。

他の馬達も上がって、俺の後ろから息遣いが聞こえる。

真横にはシングンリターンズ、だが速度が落ちだす。

前は1頭しか見えない、コーナーも綺麗に曲がっていく。

 

【マイネルチャールズ、身体半分差に詰め寄った、ちまちまとタケミカヅチ、メジロレクサス仕掛け始めた!内にミッキージェット、外のオレンジの帽子、竹豊!雄大な馬格がジリジリと迫ってくる】

 

見えた!直線、ここが勝負所!

 

【さぁ、クラシック!弥生賞の直線、ホッカイカンティがまだ粘る!】

 

『ンハァァ……ッ、ダラァァァ!』

『邪魔だぁぁぁ!』

 

【マイネルチャールズがピッタリでもって、これを交わしに来る!残り200!最後の試練の坂、叩いてタケミカヅチ!その後ろキャプテントゥーレ!】

 

『勝つぞ!』

「勝つぞ!」

『「うおぉぉぉ!」』

 

俺の横をタケミカヅチとその騎手が抜こうとする。

俺達も行くぞ!

 

『今だァァァァ!』

 

鞭が入る、追い切りのように思い切り、目一杯。

ここが正念場、心臓や肺が痛くても走り切る。

 

【一番外を追ってくるブラックシェル!さぁ、先頭を抜けたマイネルチャールズ!いや、メジロレクサスか!どっちだ!】

 

よし、抜いた!これで――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まだだ!まだ終わりじゃねぇ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――最後の一瞬、ほんの一瞬。

 

【2番手、外からマイネルチャールズ!上がってきた3番手ブラックシェルだぁ!】

 

ゴールも鼻先程度、たったそれだけだ。

 

【しかし、マイネルチャールズ1着!3連勝でクラシックへ大きく前進!2着メジロレクサス、3着はブラックシェルです!】

 

たったそれだけの距離が、大きくて遠い。

スタミナに余裕はあった、勝ったと思った。

 

なんで……俺は油断した……。

 

 

 

【ホープフルステークス、京成杯、そしてこの弥生賞、得意とする中山で3連勝。外から雄大な馬格ブラックシェルが迫る中、メジロレクサスを鼻差で抜かしてゴールイン。このホームグラウンド中山でクラシックへの名乗り、堂々と……解説は飯崎脩五郎さんです。勝った馬の評価についてお聞きしたいんですけど】

 

【我慢強い馬だよねぇ、馬群も耐えるし前走までね3回連続体重もプラスはなかったけど、それでもこういう勝ち方するからね、もうガッツだよねぇ……】

 

 

 

クソが!負けた!

畜生、本当だったら俺の勝ちだった。

なんでや、油断しなけりゃ勝ってた!

先行なんかさせたヌッマのせいだ、俺は悪くねぇ!

 

ヌッマを振り落とそうとする俺の前に、マイネルチャールズがやってくる。

な、なんだよ。

 

『ハァハァ……』

『俺は、最後まで諦めなかった』

『……う、うるせぇよ!』

『勝ったつもりになるのは……終わってからにしてもらおうか……』

 

そう言って立ち去るマイネルチャールズに、俺は返す言葉もなかった。

 

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