レースに負けた、よく考えたら俺のせいだった。
でも、ちっちゃいことは気にしない、だって皐月賞じゃないし、それに俺は強くなった。
なんか寝て起きたら継承されてたからだ、固有スキル……俺の親ってマンハッタンカフェと……これ誰?
やべぇ、ウマ娘の知識忘れてる。シンボリルドルフが強かったのは覚えてるぞ、皇帝の神威を見よやろ、ゴールデンカムイみたいなもんやろ。
固有だし強いかもしれない、アナタヲ・オイカケテか。
『あっ』
【メジロレクサス】
【調子】好調
【体力】70/118
【ステータス】スピード:B スタミナ:C パワー:C 根性:C 賢さ:C
【バ場適性】芝:S ダート:G
【距離適性】短距離:D マイル:B 中距離:A 長距離:B
【脚質適性】逃げ:D 先行:B 差し:S 追込:D
【スキル】
・スタミナグリード
レース中盤で後ろの方にいると前方の持久力をわずかに奪う<長距離>
・八方にらみ
レース終盤に他のウマ娘が動揺する<作戦・差し>
・位置取り押上げ
レース中盤で速度がわずかに上がる<作戦・差し>
・差し切り体勢
レース終盤で加速力がわずかに上がる<作戦・差し>
・アナタヲ・オイカケテ NEW!
レース後半に中団から 速度をちょっとずつ上げ前方のウマ娘を ほんのちょっと委縮させる
【スキルPt(36)】
・彼方、その先へ…… 200pt
落ち着いたまま、中盤の仕掛けどころまたは終盤の勝負どころのコーナーを中団で進むと奮い立ちわずかに加速力が上がる
・末脚
ラストスパートで速度がわずかに上がる 170pt
・尻尾上がり 100pt
レース中盤にスキルを多く発動すると速度がわずかに上がる
・直線加速 170pt
直線で加速力がわずかに上がる
・臨機応変 120pt
レース終盤にコース取りが少しうまくなる
・ペースアップ 170pt
レース中盤に追い抜くと速度がわずかに上がる
『ッスゥー、……まぁ、取るつもりだったし』
プレミじゃねぇから、まだクラシック期が始まったばっかりだからよぉ。
だからよぉ、焦るんじゃねぇぞ。
「レクサス、調子はどうだ?」
『おう、井上ェ!腹減った!』
「今日は行けそうか?ほら、沼添さんも来てるぞ」
『ヌッマ!何しに来とんじゃワレェ!』
お前、俺に先行させといてどの面下げてんねん!
すげぇやつだと思ったが、さては新人だろ!
「あぁー、これは」
「思いっきし、顔背けてますね……」
「滅茶苦茶、分かりやすいですね」
「中に人でも入ってるんじゃないんですか」
「いやぁ、ないっしょ。うちのレクサスがすいません」
ぷいーん。
チラ、まだいるやんけ。
まぁ、でも、うーん、2着やし勝ってたかもしれんしな。
うーん、うーん、どうするかぁ。
「こういうことはよくあるんですか?」
「何回かは、先輩の調教師とか嫌われたりするとあからさまでしたね」
「やっぱ差しが良かったのかと、レースのことが分かるだけ賢いですね」
「普段の様子見てるとアホっぽいんですけどね」
うーん、これは俺のこと井上が褒めてそう。
そうだそうだ、もっと言ってやれ。
俺の偉大さを伝えるのだ、だって俺は元……何だっけ?
なんか特別な馬だもん、うん。
普通の馬より賢いんだもーん。
「なんで差しで行かなかったんですか?」
「先行も向いてるかなって、後は中山でしたからね。まだ地力が足りないかなと」
「2着でしたけど」
「1着、狙ったんですけどね。まぁ、メインは皐月ですから」
なんや沼添、お前いいもん持ってるやんけ!
その赤いの、りんごだな。
そうかそうか、謝罪に来たんやな。
「おっ、やっぱ沼添さんから渡させるので正解だな」
「めっちゃヨダレが……」
「食い意地だけは凄いんですよ」
「こんなんで機嫌直るんですかね」
寄越せ!うっま!シャキシャキする、ジューシーやで!
お前、今回のことは許したるから、もっと寄越せ!
うっま!うっま!
「あっ、大丈夫そうっすね」
「えぇ……」
「これに気付けてたら墨田さんも……」
「不憫な……」
うっま!うっま!
ヌッマがおるからか、今日の調教は井上ェじゃない。
レースには速すぎる気もするし、やっぱ謝罪なんやろな。
取り敢えず乗ってきただけでわかった、俺強くなってる。
だって、ヌッマが軽いもんな。
グルっとコースを走る、走りながらどうしたらよかったか考える。
例えば差しでやってたらどうだったかとか。
うーん、最後の直線が意外と早かったし間に合わなかったんだろうか。
それはそれで、なんかヌッマの判断を認めるみたいで何か癪やな。
おっ、なんや、止まれってか?
「どうも」
「どうも、沼添さん……お会いできて光栄です」
『おっ、ジッジ!なんや、散歩か?』
どうやらコースの外側で爺ちゃんが立ってたらしい。
なんか、最近、よく会うんだよなぁ。
「やめて下さい、そんな大層な言い方」
「そうですか……どうですか、レクサスは?」
「そうですね……エンジンが違うみたいな」
「ハハハ、上手いこと言いますね。エンジン、それはピッタリだ」
また、すーぐ撫でたがる。
まぁ、ガキと爺は大事にせんとな。
「皐月賞、勝てますか?」
「勝ちますよ、そのための先行ですから」
「そうですか……」
「俺達の差し切る姿、見てて下さい」
俺の胴体を、ヌッマの足が軽く挟むように叩いてくる。
走れの合図だ。
話は終わったんか、そうか。
じゃあな、ジッジ!ほな行くでぇ~!
今日はいつもの井上ェ!との調教。
最近、ずっとコースを走らされてる。
何を考えてるのか分からん。
前はジッジだったが、今日はテキと知らんやつがおる。
うお!?なんだ!?
「あぁ!フラッシュはダメだって言ったでしょ!」
「すいません、忘れてました!」
「まぁ、図太い馬だから大丈夫かもしれませんけど、次やったら出禁にしますからね!」
「あー、そうですね。気を付けまーす」
ははーん、取材ってことか。
うーん、ここは手を抜いとくか。
「おい、井上。軽くコース走ってろ。追い切りのイメージで」
「了解ッス!」
井上が俺を走らせようとしてくる。
よしよし、軽く流す感じで走ってイマイチの評価にしてやる。
油断させる作戦を思いつくとは、俺ってば天才だな。
「あれ?」
「どうした井上!」
「いや、重いっていうか……いや、何でもないっす」
「そうか。それで取材でしたな」
テキ、最近いねぇと思ったら取材受けてたんやな。
なんかジッジと良く出掛けてるから、遊んでるのかと思ってた。
それにしても、俺のステータスどうしよう。
スタミナはこれくらいでいいだろうか、スタミナないと菊花賞がキツイんだよな。
でも、差しでやるならパワーも大事だ。
なんなら全部Sにしたいけど、時間が足らんだろうからな。
少なくとも、もう根性と賢さは十分だろ。
優先度的には、そろそろスピード特化で次にパワーって感じにしなきゃな。
やはり坂道、坂道は全てを解決する。
もう周回コースでスタミナ付けようとするのはいいよぉ……。
今日も今日とてコース。
いい加減にしろ、ええいこんなコースにいられるか、俺は坂路に行かせてもらう!
「あっ、こら、そっちじゃないよ」
『せやかて工藤!俺はこっちや』
「こら!ダメだって!くっ、またケツが割れる」
『こら!抵抗するんじゃない、坂道行くぞ!』
坂道はキツイ、キツイから効く気がする。
身体中が熱くなる、息が苦しくなる、だけど前より走るのは嫌いじゃない。
今度こそ勝つ、今度こそ油断しないで勝つ、俺が最強なんだ。
馬肉になりたくないだけじゃない、俺が勝ちたいんだ。
「レクサス、もう帰ろうぜ」
『うおぉぉぉぉぉ!』
「あぁ、またこのパターンかよぉ!」
『行くぞ、オラァァァァ!』
俺たちの戦いはこれからだ。
走って走って、どのくらい走っただろうか。
仕上がっていくのが自分でも分かる。
もうこれ以上ない仕上がり、ステータスに変化はないが確実に数値は上がっている実感がある。
目の前にはゴールがある、背後には数々の馬達が追随する。
そして、俺がゴールを通過した。
『……あぁ、夢か』
「夢を、見ていたのか」
馬房の外から声が掛けられる。
なんや、徘徊老人か爺ちゃん。
そこには月明かりに照らされる甚平姿の爺ちゃんがいた。
深夜に出歩くのは感心しないな。
『はやく帰れよ、具合悪いんだろ』
「眠れないんじゃよ、眠っていたんじゃ夢は見れない」
いつものように馬房の外に顔を出してやる。
ほら、俺を撫でたら帰って寝ろよ。
「どんな夢を見ていたんじゃ」
『決まってんだろ、皐月賞を勝つ夢だ』
「もう勝った気でいるのか」
『勝つ気がない奴が勝てるかよ』
何をアホなこと言ってるのか。
ついにボケたんじゃねぇだろうか。
「それもそうか」
『皐月賞だけじゃねぇ、日本ダービーだって、菊花賞だって、全部取ってやるよ。余裕さ』
「そうか」
『あぁ、俺は特別な……俺はすげぇ人間だからな』
「期待しておるよ」
そうだ、俺は馬じゃねぇ。
俺は人間だ、人間だったんだ。
だから、もっと上手く出来たはずだ。
人と馬の良いとこ取りだって出来たんだ。
『見てろよ、爺ちゃん』
「あぁ……」
【皐月賞】亡き馬主の悲願、佐藤光太郎さん忘れ形見のメジロレクサス中央G1初挑戦で一発狙う
サラ系3歳 オープン の皐月賞(20日、中山・芝2000メートル)は、メジロドーベル産駒メジロレクサス(牡3歳、北海道・佐藤厩舎)に注目だ。10日は追い切りを坂路で行い、芝でも通用しそうなシャープな身体付きを披露。今年3月に亡くなった元馬主の佐藤光太郎氏の期待が詰まった“忘れ形見”が中央G1初挑戦を勝利で飾るか。
管理する藤井調教師が手綱を執って佐藤育成牧場の坂路(ウッドチップ)を軽快に駆け上がった。2→5→2着とやや苦戦を強いられているメジロレクサス。単走での坂路自己ベストは4ハロン53・9―39・4―12・5秒であり、今週の同52・3―37・6―11・7秒を見れば、良化は顕著だ。ロケットスタートからのスピード満点のフットワークでコース取り、ラストは火を噴くような一気な加速が持ち味。今回で一変してもおかしくない。「しまい重点でやりました。最後にムチを入れただけでしたが、いい反応でした」。今年3月23日に70歳で亡くなった佐藤光太郎氏の息子・浩一氏が所有するメジロレクサスの動きに、トレーナーは手応えを口にした。
メジロレクサスの名付け親は生前の光太郎氏だ。初のセリに出されたメジロ牧場生産の馬を、卓越した相馬眼で競馬界を揺るがすかもしれないと確信し、メジロレクサスを見出した。生まれのメジロとラグジュアリーと最先端テクノロジーという意味であるレクサスを合わせて名付けたことからも、三冠馬を獲得することを期待し、種牡馬への道を目指していたことは明らか、一歩目を踏み出した矢先の訃報に陣営の悲しみは計り知れないことだろう。新馬戦はその期待通り3馬身差以上の圧勝。前走は2着だったが、「実力馬揃いの競馬でしたからね。外めを先行して、余力はありました。次は勝てます」と藤井調教師は力負けではないと分析した。
今回は中央G1初戦。藤井調教師自身は目立った中央での実績はないものの、地方では長年牽引する実力者である。札幌競馬で育てた馬が白星を挙げた実績もある。地方競馬を熟知する調教師が、自らの培った知識で丹念に仕上げてきたのだから侮れない。「まだまだ余力を残していた、全力を尽くせば勝てない勝負はない」沼添とのコンビで一発を狙う。