こ、ここは……ありのまま起こったことを話すぜ、トラックで食っちゃ寝してたら知らん牧場に放り出されていた。
何を言ってるのか分からねぇと思う、俺も人間の言葉が分からねぇ!
俺はいつになったらレースに出れるんだ?馬って何歳からレースなの、というか今って冬なの夏なの?俺ってば何歳になったんだ?そもそも馬の脳で人間並みの思考ってどうやってるんだ?死んだ俺は魂で物を考えてるのか?
「お、おい!大変だ、アオが動かねぇ」
「顔が、ププッ……口開けたままガン開き……」
「おい、やめろよ、なんか俺も笑えてきたじゃんか」
……ハッ!?宇宙猫ならぬ、宇宙馬になってしまう。
なんだよ厩務員くん、なんで笑ってんの?
「はぁ、畜生最後に笑わせやがって……元気でな」
「また会おうな」
おん?急に何か静かになってどうした?
あれ、泣いてんの?えっ、マジ?いい年して泣いてんの?
「先輩、アオが俺達のこと心配してくれてる気がします」
「賢いからな、コイツも別れだって分かるのかもしれない」
うは、だっせぇぇぇ!いい年して泣くなよ、ワロタ!
おうおう、今までご苦労な!がんばれよ、お前ら!
なんか手を振ってるんですけど、えっ捨てられた?
えっ?えっ?いやいやいや、だってこないだオークション的なの出たばっかりですよ!
「じゃあ、俺達はこれで」
「わざわざありがとうございます」
誰よ、その爺!コルセット付けてるじゃない、ぎっくり腰?
あっ、おっちゃん知ってるわ。こないだのガキやんけ、生きてたんかワレェ!
「遥!こら、危ないだろ!」
「あぶなくないよー」
「馬に不用意に近付いちゃ駄目だ!」
ははーん、なるほどな。
引っ越しだな、ここがこの女のハウスね!つまり、お前の家が馬主って奴だな。
よっしゃ、媚び売っとこう。
「わぁぁぁ、くすぐったい」
「め、めっちゃ懐いてますね」
「なんか、大丈夫そうですね……」
ベッタベタに舐めると嫌がりそうだから、ハグで我慢したる。
おら、俺のタテガミを喰らえ!ここだ、ここがええんやろ!
「ふむ、随分と人懐っこい馬だな。人に育てられただけある」
「鏡が好きなのと綺麗好きなとこなど、色々とあるんですが、一応我々が知ってることをまとめときました。ある程度参考になればいいですが」
「何から何まで、普通はそこまでしないのにありがとうございます」
「我々もオーナーの意向には思うところがありますから」
あん、なんだオッサン?寄るな!男が俺にさわんじゃねぇ!来んな、ぺっ、ぺっ!
「なんで!?なんで、遥はよくて俺が!」
「パパ、くさい」
「えっ?た、タバコのせい?俺もモフモフしたい」
「……ウチの家族がうるさくてすいません」
もう来んなって、ええい俺はこんなところにいられるか!じゃあな!
「あっ、待て!逃げたー!」
フハハハは、この俺を止めれるわけがないだろ!馬だぞ、こっちは!
俺、起床!ここに来てから3日くらい経った。
朝日が三回くらい登って、たぶんそれより前は覚えてない。
なんか馬になってから時間感覚が狂ってる。
そして、暫く経って状況を理解した。
俺はなんか育てられる感じで引っ越したらしい。
ガキの名前は遥、おっさんはパパか佐藤、おばちゃんはママか佐藤、爺はジッジか佐藤。
人間って同じ鳴き声で呼ばれすぎ、苗字だって理解するのに時間かかったぜ。
たぶん佐藤さんの経営する牧場に来た、知らん人間も佐藤って呼ばれてる。
ここは佐藤さんが多い地域なんだろ、完璧な推理だ。
100まで俺は数えられるから賢いのだ、なお100より先は混乱してくる模様。
俺の朝は遅い、だいたい8時くらいまで寝てる。
遥がランドセルを背負って起こしに来るまで寝てるから、たぶん8時。
遥はその後、ママの軽トラでたぶん学校に行く。
田舎って車ないと不便でやーねー、いつか良い車を買えるくらい稼いでやるからな。
しばらくすると、おっちゃんか若いのが来る。
若いのは多分バイトだ、いるときと居ないときがあるから良う分からん。
飯を食ってるとブツクサ言ってくる。
そんでたまに体を触って、うんうん言ってる。
それが終わったら運動の時間だ。
馬小屋から追い出されるので好きに走る。
その前に、鏡でチェックだ。
【メジロドーベル2005】
【調子】好調
【体力】80/100
【ステータス】スピード:D スタミナ:E パワー:E 根性:E 賢さ:E
【バ場適性】芝:A ダート:G
【距離適性】短距離:D マイル:B 中距離:A 長距離:B
【脚質適性】逃げ:D 先行:B 差し:S 追込:D
【スキル】
・スタミナグリード レース中盤で後ろの方にいると前方の持久力をわずかに奪う<長距離>
・八方にらみ レース終盤に他のウマ娘が動揺する<作戦・差し>
うむうむ、スピードが良くなってきたな。
しかし、俺は上を知ってるからな。
クソ雑魚ステータスだって分かってる。
他の馬を見てみよう、ちなみにウチは10頭くらいしかいない。
【グレイトハウス】
【調子】普通
【体力】65/100
【ステータス】スピード:F スタミナ:F パワー:F 根性:G 賢さ:G
【バ場適性】芝:D ダート:D
【距離適性】短距離:B マイル:A 中距離:G 長距離:G
【脚質適性】逃げ:D 先行:D 差し:B 追込:D
【スキル】
・別腹タンク 力尽きそうになったとき走る気力がわずかに復活する<長距離>
うむ、多分モブだな。
俺が一番なる、プラスウルトラ!
これ見たら分かるけど、賢さGである。
だからスキル選択間違えちゃうんですね、はえーやっぱステータス見れるってチートですわ。
なんかレース勝ったことあるとか初日に突っかかってきたけど、鼻で笑ってやりましたわ。
グレイトハウスのスキル、正しくないよ。
『人任せにするからこうなるんですねぇ、セルフプロデュースって大事なんだわ!』
さて、俺は差し馬である。
だって適正高いからね、バ場適正はパワー補正、距離適性はスピード補正、脚質適性は賢さに関係する。
スキル構成からして、差しじゃないと役立たない。
生まれつきのスキルだから、別に気にしなくてもいいかもだけどな。
差し馬になるだけで、スキルがバンバン発動するイメージだな。
差し馬のステータスはスピードとパワーだ。
中距離、長距離もあるかもだからスタミナも必要だが、優先順位はスピードとパワーだ。
『今日はどうするか』
本格的な訓練が始まってないのか結構、俺は自由である。
俺的に他の馬を見て学んだ効果的には今日は、芝か坂道が良いかもしれない。
まず芝!放牧地を走ってる奴らのステータスは、共通してスピードが高い。たぶんスピード練習なんだ。
次にダートと木片が敷いてある周回コースが芝の外側にあるんだが、そこらへんの奴らはスタミナが高い。
そんで下ったり登ったり坂道的な場所、コイツは足腰が鍛えられるんだろ。パワーが高い。
ウマ娘なら芝がスピード、プールがスタミナ、ダンベルがパワー、坂道ダッシュが根性、勉強が賢さだけど馬とか施設の兼ね合いってあるよね。
今はプール無いから、芝とか坂道を走りまくんだよ。
なんでや、なんで坂道が根性じゃないんや!せやかて工藤、馬がダンベルとか引けないし。
『ほーん、誰か使ってんな。じゃあ、芝走りますか!オラァ!俺が走るんだよ、芝食ってんじゃねぇ!』
『これ、芝じゃないし干し草より美味い』
『ブッ殺すぞ!たまには間違えんだ!』
『こわ、近寄らんとこ』
『こっち来た、逃げろ!逃げろ!』
『何だお前ら、追いかけっこか!馬鹿野郎おまえ、俺は勝つぞお前!』
『なんで追ってくんだよ!おま、ふざけんなよ!』
このあとメチャクチャ走った。