俺はただうまぴょいしたかっただけなんだ   作:nyasu

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乗るのよヌッマ!乗りなさい、乗らないなら帰れヌッマ!

プール、プール、プール!念願のプールである!

圧倒的なスタミナ練習、これはもう克服できるかもしれない。

俺のステータスはスタミナをCの壁を超えてBになるぞ!

 

『お疲れ様でーす!』

『おう、お前もプールか』

『これからっすか?もう寒いっすよ』

『ぬるま湯じゃねぇか、平気だよ』

 

プールは2つあり、一つは直線上のプールだ。

ここは真っ直ぐしか進めないし、というか浮いてるだけだ。

もう一つは円形のプールで、真ん中に世話係がいて俺がグルグル回るような感じだ。

俺はこっちのほうが好きだ。

 

「おーい、そろそろ上がるぞ」

『まだ始まったばっかりじゃい!……ハッ、いつの間に夕方か。だが、もうちょっと』

「出てきませんね」

「相変わらず、我が儘だな。もう少しやるか」

 

プールトレーニングが終わったら温泉である。

なんで俺が医者のいるここにいるのかというと、若いのも連れて全員で休養だからだ。

若いのの話だと、なんでもデッカイ機械とか入って工事しとるらしい。

兄貴の部屋みたいに俺達の部屋も綺麗になるんですよとか言ってた。

たぶん、三冠馬って金入りそうだし建て替えてるんじゃないかな。

まぁ、どうせヒトカスが増えてテキがずっとブチ切れる事になるから、どのみちここに来たんだと思う。

 

「レクサス……」

『おっ、ヌッマやんけ』

 

温泉から帰ってくると、馬房の前にヌッマがいた。

なんや、もう調教は終わったんだがレースの帰りにでも寄ったのか?

なお、この温泉は施設内にレース場がある。

たぶん、地方競馬だな。ステータスはそんな高くない奴らが走ってるし、うん。

 

「お疲れ様です、あっ、結婚おめでとうございます」

「お疲れ様です、あっ、ありがとうございます」

『おっ、なんや、ベタベタ触んなや』

 

ヌッマが世話係と話しながら触ってくる。

まぁ、俺も有名馬だし触りたいのかもしれないが、そう簡単にファンサしねぇから。

俺に触って良いのは年寄りと餓鬼だけや。

 

世話係が俺を馬房に入れると何故か餌をスタンバってどっか行った。

まぁ、もう終わりなんだろヌッマも帰れば?

 

「ごめんなレクサス、俺また結婚したんだ」

『や、やめ!やめぇーや!噛むぞ、お前!』

「ジャパンカップ、ごめんな。本当に……」

 

なんか、あれ、泣いてる?

えっ、ごめん、話聞いてなかったけどなんかあったのか?

 

「俺、お前ともっと走りたかったよ。でも、ごめん」

『なんだ、おい、腹減ったのか?干し草食うか?』

「俺のせいでみんなに迷惑掛けてる、ごめんな」

『あ、おい!どこに行く!』

 

一頻り撫で回すと帰っていくヌッマ。

えー、訳わかんないよー。

後日、その理由が分かった。

 

「今日はよろしくな」

『誰だ、お前……あっ、前に会ったことがあるような』

 

なんか知らんオッサンが馬房の前に立っていた。

ヌッマが何か泣いた理由は乗り替わりしたって事なんだろ。

なんやアイツなんか問題でも起こして降ろされたんか?まぁ、そりゃ凹むやろう。

まぁ、ええんやで。もう馬肉にはならんやろうし、勝ちたいとか思ってないから。

なんていうか、燃え尽きた?みたいな、モチベーションとかなくなってきたし。

前はあんなに勝ちたかったのに、なんでやろうな。

最近は頭も冴えてきた気もするし、やっぱ歳かな。

 

オッサンが俺に乗ってどうやら芝の調教をやるらしい。

芝を走るのは頭数が多いし、追い切りじゃないんだろうな。

なら、軽くでいいか。

 

「お、おう、落ちそうになるくらい速い」

『なんかしっくりこんが、こんなもんか』

 

一流は道具とか選ばない、つまり相棒も選ばないんや。

まぁ、なんかしっくりこんが慣れだろこんなん。

それにしても、三冠馬に乗れてたのにヌッマの奴可哀想に……。

 

「大丈夫ですか?」

「えぇ、沼添に言われて受け身の練習ばっかしたんで」

「えぇ……落ちる前提じゃないですか」

「こないだ落ちそうになったの何とかなったんで、一応効果出てますよ」

「あぁ、エリザベス女王杯ですね」

 

それにしても、こいつ喋ってばっかで不真面目なやっちゃなぁ~。

そんな世話係とかとコミュニケーション取る暇あったら走らせんかい!

軽く流すのはいいけど、大敗は嫌だからな、俺。

せめて5着以内だ、オッサンとかが喜ぶから金が入るもん。

 

「おっとと、じゃあ再開します」

『行くぞ、オラァァァ!』

 

俺が不機嫌になったら、また調教が再開された。

コイツ、意外と見てるのか?たまたまか?

まぁいいや、走るぞ!

 

 

 

祝!俺氏、ステータスアップ!

 

【メジロレクサス】

 

【調子】絶好調

 

【体力】30/120

 

【ステータス】スピード:A スタミナ:B パワー:C 根性:C 賢さ:C

 

【バ場適性】芝:S ダート:G

 

【距離適性】短距離:D マイル:B 中距離:A 長距離:B

 

【脚質適性】逃げ:D 先行:B 差し:S 追込:D

 

【スキル】

・アナタヲ・オイカケテ 

 

 レース後半に中団から 速度をちょっとずつ上げ前方のウマ娘を ほんのちょっと委縮させる

 

・差しコーナー○ 

 

 コーナーで速度がわずかに上がる<作戦・差し> 

 

・スタミナグリード

 

 レース中盤で後ろの方にいると前方の持久力をわずかに奪う<長距離>

 

・位置取り押し上げ

 

 レース中盤で速度がわずかに上がる<作戦・差し>

 

 ・八方にらみ

 

 レース終盤に他のウマ娘が動揺する<作戦・差し>

 

・差し切り体勢 

 

 レース終盤で加速力がわずかに上がる<作戦・差し>

 

・臨機応変 

 

 レース終盤にコース取りが少しうまくなる

 

 

【スキルPt(15)】 

 

・彼方、その先へ…… 200pt

 

 落ち着いたまま、中盤の仕掛けどころまたは終盤の勝負どころのコーナーを中団で進むと奮い立ちわずかに加速力が上がる

 

・末脚 

 

 ラストスパートで速度がわずかに上がる 170pt

 

・尻尾の滝登り 180pt

 レース中盤にスキルを多く発動すると速度が上がる

 

・尻尾上がり 100pt

 

 レース中盤にスキルを多く発動すると速度がわずかに上がる

 

.乗り換え上手 180pt

 レース終盤で加速力が上がる<作戦・差し>

 

・直線加速 170pt

 

 直線で加速力がわずかに上がる

 

・アガってきた! 340pt

 

 レース中盤に追い抜くと速度が上がる

 

・ペースアップ 170pt

 

 レース中盤に追い抜くと速度がわずかに上がる

 

・差しコーナー◎ 140pt

 コーナーで速度がわずかに上がる<作戦・差し>

 

・差し直線○ 130pt

 直線で速度がわずかに上がる<作戦・差し>

 

 

 

ふむ、どうやら三冠馬で上位スキルが増えたみたいだった。

あと、位置変わってね?ステータスに自我が!んなわけないか。

あと多分、俺の練習補正スピードだと思うんですよ。

なんでや!スタミナ全然上がらんのにスピードはもうAかよ。

まぁ、シニアだし一個くらいAになるんかな、どうかな。

 

『まぁいいか』

 

よし、今日は追い切りだしそろそろレースやろ。

切り替えていくぞー!

 

 

 

 

 

 

佐藤牧場、そこは北海道にある零細牧場。

数頭の馬を育成する牧場で、生産牧場のように出産まではやらない。

育成に力を入れていると言えば聞こえは良いが、実際はそこまでお金がないから手が回らないだけである。

地方や中央で走る馬を育てている牧場であったが、今年から建て替えを行っていた。

 

「いやぁ、凄い大金が一気に消えてく。どうして使ったほうが良いのか不思議ですよ」

「まぁ、税金の世界ですからね。経費が一定額なら、そのまま取られるより使ったほうが得なんですよ」

「来年の税金、怖いなぁ……」

「私は小心者の佐藤さんのそういうとこ良いと思いますよ」

「褒めてます?」

「褒めてます」

 

馬の居ない牧場では重機が忙しなく動いている。

それを見ているのは馬主の佐藤であった。

佐藤は藤井から紹介してもらった税理士の先生と今後のことを話しながら、工事風景を見ていたのだ。

 

「それにしても、苦労してるようですね。少し痩せました」

「いやぁ、もう色んな人が来るもんで緊張で食が細くなりましたよ」

「あぁ、たまにテレビ映ってますもんね。こないだ、見ましたよ」

「ローカル番組ですけどねぇ」

「いえ、そっちではなく。馬の方です」

「あっ、私じゃなく、なんか、恥ずかしいなぁ」

 

この工事の費用を出したのは、勿論メジロレクサスであった。

降って湧いた幸運、これからどんどん牧場を大きくするぞ!なんて藤井は言っていたが佐藤は消極的だ。

どうせ、たまたま幸運だっただけ、これに味を占めて色々やっても失敗する気がする。

出来るだけお金は使わず、細々と経営を続けていくくらいしか自分は出来ないのだから、それを続けるのが一番だと思っているからだ。

 

「そう言えば、私も競馬やってましてね。なんでも乗り替わりするらしいじゃないですか」

「あぁ、マスコミが好き勝手書いてほんとね、困りますよ」

「って言うと、本当は違うとか?」

「ここだけの話、沼添さんは乗りたがってたんですけど他の馬との先約とかあってですね。騎乗依頼もすごい増えたみたいで、中には断れないような所もあったみたいで」

「……それ、聞いちゃいけない話じゃ」

「私だってね乗って欲しいですよ!でもね、生活があるから断れないって言われてるのに良いから乗ってくれとは頼めませんよ!最終的には騎手の判断ですし、私から降ろす訳ないんですから!」

「佐藤さん?ねぇ、佐藤さん聞いて!業者さんもいるから!」

「なんだよ!そんなに大手は偉いのかよ!ふざけんなよ!」

「お、落ち着いて。ほら、みんな見てるから、ねっ」

 

おっと、ちょっと熱くなってしまったようだ。

しかし、マスコミの奴らはオーナーの都合により降ろされたとか、非情な決断とか、嘘ばっか書いてやがる。

訴訟も考えたが、ハッキリとじゃなくて予防線を張ってるから厳しいなんて、無料相談で弁護士にも言われる始末。

本当は、沼添さんの方から断ってきたのにだ。

途中で、大一番で、急に乗れないなんて事にならないように今の時期から違う騎手にしときましょうと相談されたのだ。

どこの大手の牧場が圧力を掛けて、今後の騎乗依頼についてチラつかせているのかは知らないが、それに対抗できるコネも力もない。

ただ、勝ってくれと祈るしか出来ないのが実情だ。

だからせめて、馬達が勝てるように育てられる牧場を今は作らないと行けない。

 

 

 

後日、朝食の席で藤井さんが怒鳴り込んできた。

 

「おいぃぃぃ!浩一!S氏ってこれ、お前だろ」

「なんの……」

 

藤井さんの手には、芸能人の浮気などをよく載せているゴシップ誌が握ってあった。

そして握りしめられてたページには『競馬業界の闇 乗り替わりは業界の圧力か』

 

「……ッスゥー」

「おいぃぃ!ウチの先生から聞いたぞ!お前なんか先週、めっちゃコレっぽいこと言ったみたいじゃねぇか!どっかから漏れてんじゃねぇか!」

「思い当たる節がありすぎる!」

「じゃねぇーよ、どうすんだ!これ、問い合わせの連絡とか来るんじゃねぇか!」

「……どうしよう」

「お、おう。そうだな、よし!シラを切り通そう。うん、お前は何も言ってないってことで」

「いやぁ、キツイっしょ」

「ほんとにキツイよ!」

 

やっべー、やっちまった。

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