俺はただうまぴょいしたかっただけなんだ   作:nyasu

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嘘、私の体重……重すぎぃ!

長い休養を終え、メジロレクサスが牧場に戻ってきた。

前より食事量が増えたと聞いていた浩一は、その姿に驚く。

 

「なんか、太った……」

 

肥えている、間違いなく。

確かに休養をしていたから調教はあんましだったが、だが大きくなった気がする。

馬体が他の馬に比べて大きくなった気がした。

 

「体重、測ってみるか」

『オッサン、ただいま』

 

調教師の藤井に頼んで体重計まで運んでもらう。

とうの本人、というか馬はよく分かってなさそうだ。

そして、体重が表示された。

 

「528kg……プラス30kgぐらい」

『えぇぇぇぇ!?この模様、走らされる!』

「いや、ブモォォォじゃないが」

 

馬に体重なんか分かるはずもないが、口を開けて固まっている姿にコイツ分かってるのかと思ってしまう。

たぶん、体重計の模様とかがこれだとマズイぐらいは分かってるのかもしれない。

次のレースは産経大阪杯と聞いている。

あと3ヶ月くらい、冬は太ると言うが行けるのか。

これだけ重いと膝の負担とかを気にしてしまうが、健康状態はいつも万全らしいし、どうだろう。

なんかローテ厳しくないかなんて意見も聞いたりするし、実際走らせすぎじゃないかとか、もういいのではと思ったりもする。

 

「藤井さん、どうですかね」

「やっぱりフルーツのせいかもな。糖質減らすか」

「あぁ、やっぱりそれが原因か」

「まぁ、4歳までは成長期もあるし、冬は特に太りやすいから仕方ねぇ」

「ですね。他の馬もそうですもんね」

「1ヶ月で10kgずつ減らせば、まぁだいぶ絞れるだろ」

 

適正体重は500くらいだというのが競馬では言われている。

まぁ、多くは400後半な気もするけど。

坂道をやたら走りたがるから、すぐに減る気もするが油断したら太り過ぎで足とか怪我しそうだ。

サンデーサイレンス産駒なだけあって、丈夫なのは取り柄か。

子供の時は病弱だったと聞いてたけど、絶対嘘だ。

 

藤井さんと話して、メジロレクサスは春古馬路線でいく。

メジロマックイーンやマーベラスサンデーと同じ、産経大阪杯、天皇賞春、宝塚記念だ。

ウイスポでしか見たことないようなレースのラインナップ。

他の馬の試合を見ていると、感覚がリセットされるがG1を走ってるんだよなとか思うたんびに胃が痛くなる。

馬主席の人達とか、もう圧がやばいからな。

 

もう今の時点で、種牡馬としての話を高い飯屋に連れてかれてるのだから胃が持たない。

相手持ちの接待でいいもんたべても味とか分からないもん。

だが、夢でも見てるかのように三冠馬になったメジロレクサスというすごい馬は、ここで終わらせるには惜しいということで春古馬三冠というのを目指す、ということになった。

ちなみに、達成した馬はいない。

あのテイエムオペラオーでも2冠までだ。

 

でも、別にそこまで頑張らなくていい。

ただ元気で居てくれたらと普通の馬主と違ってそう思ってしまう。

挑戦することすらすごいことだから、贅沢な悩みだとは分かっているけれどもだ。

掲示板入り、それで満足していない竹騎手からはすみませんと言われたが、別に1着じゃなくてもいいと思う。

ここらへんは、藤井さんに言ったら怒られると思うので言わないけど。

 

 

 

 

 

 

俺、帰省。

久しぶりに牧場に戻ってきた。

早速、なんか連れられて鉄板の上に立たされる。

俺知ってるよー、これ体重測るやつだろ。

数字はもう分かんないけど、形は覚えてるよ。

 

「528kg……プラス30kgぐらい」

『えぇぇぇぇ!?この模様、走らされる!』

 

一番左の形が違うということは、増えたってことだ。

嘘、俺の体重ってば重すぎ!これは走らされる。

まぁ、坂路しまくればまた違う形になるでしょ。

 

「よし、取り敢えず明日から頑張れよ」

「おー、レクサス!元気にしてたかぁ、ちゃんと掃除しておいたぞ」

『おぉ、井上やんけ!久しぶりだな』

「おいやめろよ~やめろって~」

「お前には懐いてんだよなぁ」

 

あっちじゃ音楽なんてないからな、温泉があるけどロックがないのが悲しいところだ。

温泉とロック、どちらか選ばなきゃいけないのが馬の辛いところだぜ。

井上に連れられて、馬房にやってくると先客がいた。

 

「レクサス!お帰り!」

『遥やんけ』

 

遥は何やら黒い馬のぬいぐるみを持ってる。

なんだ、自慢か?

 

「ほら、リトルレクサスだよ!可愛いでしょ」

『ブッサイクな馬だな、誰だこれ?』

「だよね、可愛いねぇ~」

『買ってもらったのか?良かったなぁ~』

「レクサスも自分のぬいぐるみだって分かるんだな。よし、オグリの横に飾っといてやろう」

「井上、これは遥のだから。レクサスのは別にあるから、触らないで」

「あっ、はい。すいません」

 

なんか知らんが、井上が頭下げてた。

やーい、怒られてやんの!知らんけど。

それにしても、久しぶりに帰ってきたな。

よし、明日から頑張るぞ~!

 

 

 

とまぁ、昨日帰ってきていい気分だったのだが翌日の俺は不機嫌だった。

だって、なんか、タッケいるんだもん。

 

「おー、久しぶりだなレクサス。今日はオフだから会いに来たぞ」

『なんでいんだよ、来んなよ』

「あー、竹さんこれ」

 

確かにコイツがすごい奴だとは思うよ。

なんか前にウオッカ乗ってたみたいだからね。

だから、最初の騎乗はまぁ、初めてだったし許してやるけどさ。

俺を差しで走らせといて負けるってどういうことよ、俺が本気出してるのに実力を発揮できなかったのってコイツのせいじゃねって俺はね、休養してる時に思ったからね。

そう簡単に乗せませんよ、えぇ、許されると思ってんのかって。

 

「レクサス、お前の好きなフルーツだぞ。夕張メロンだぞぉ」

『うっま!むふぅぅぅ!こういうのでいいんだよ、こういうので!』

「メチャがっつきますね」

「チョロいから、コレで機嫌がなおります」

「私が持ってきたって勘違いするんですかね」

「たぶん」

 

なんだよ、分かってんじゃん。

もうしょうがねぇなぁ、また乗ってもいいぞ。

おい、井上!まだ持ってんじゃねぇか、そっちも寄越せ!

ふぉぉぉぉ、メロンに顔を突っ込む、この瞬間のために生きてんだよなぁ!

メロン、決めるしかねぇだろこんなん!

 

「こら!井上、減量期だからフルーツは控えろって言ったろ!」

「やべっ、藤井さんだ」

「お前、一切れって話だったろ!なに、やってんだ!俺だって、食べたかったんだぞ!」

「大丈夫です、冷蔵庫にまだあります」

「ならいいか、ってなるかボケェ!しばらく食べさせんなって言ったろ!甘やかすな!」

「大丈夫ですって、これで走ってくれますから!もう鬼が宿るレベルで」

「ライスシャワーみたいに減量したら、死んじまうわ!あんなん出来るか!」

 

おいぃぃぃ!人がまだ食べてるでしょうが!

いや、もう殆どなかったけど、皮とか舐めたらまだ味するし!

あれ、井上また怒られてやんの!お前、いっつも怒られてんなぁ……。

おっ、調教か?いいぜ、その代わり終わったらメロンな。

 

「おっとと、もうないって。そんなに探してもないぞ」

『おいタッケ、お前隠し持ってんだろ?メロンあんだろ』

「よしよし、じゃあ調教しような。軽く走ろうなぁ」

『おい、聞いてる?終わった後にくれんのか?』

 

この後、メチャクチャ坂路を走った。

メロンはくれなかったのでやっぱり許せねぇわ。

もっとたくさん持ってこいよ、一玉じゃ足りないだろ常識的に考えて。

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