俺はただうまぴょいしたかっただけなんだ   作:nyasu

53 / 60
さぁ……行こうぜ!これは、俺とお前の輝きだぁぁぁ!

第139回天皇賞(春)(G1)

芝右 外3200m / 天候 : 曇 / 芝 : 良

 

(人気)(枠順)(馬番)(馬名)

 1 8 17 アサクサキングス

 2 8 16 スクリーンヒーロー

 3 7 15メジロレクサス

 4 2 4アルナスライン

 5 6 12ドリームジャーニー

 6 2 3ジャガーメイル

 7 8 18 ヒカルカザブエ

 8 5 9ホクトスルタン

 9 5 10ゼンノグッドウッド

 10 1 1サンライズマックス

 11 6 11ネヴァブショ

 12 1 2マイネルキッツ

 13 7 13デルタブルース

 14 3 6テイエムプリキュア

 15 4 8トウカイトリック

 16 4 7ポップロック

 17 7 14コスモバルク

 18 3 5シルクフェイマス

 

 

 

いつもと違う狭い馬房でゆらゆらと揺らされて、気付いたらどこかに連れ出されていた。

小さいグルグル、あぁパドックかとふと理解する。

パドック?と急に降って湧いた知識に疑問を覚えるが、なんてことはない人間が状態を見て金を賭ける場所だ。

 

助手くん、たしかイノウエに連れられて小さいグルグルを回る。

回って回って、いつまで回されるんだ座ってもいいか?

ふと、他の馬が気になってみてみた。

すると、謎の絵が頭いっぱいに表示される。

文字と数字だと、急に理解できる。

 

『ステータス、か?』

『よォ、今日はいるのか舐めプ野郎』

『お、オマエは!?』

 

ソイツは余りにも小さかった。

ちっちゃい馬、しかし態度はでかい、その名もドリームジャーニー。

 

『やーい、チビ!オマエ、俺よりチビ!』

『んだとぉ、テメェ!ブッ殺すぞ!』

『ごめんねごめんね、図星だったから傷付いちゃったね、センチメンタルジャニーって改名したほうが良いのでは?』

 

センチメンタルジャニーって何とか思ったけど、するりと言葉に出てきた。

意味は分からないが顔真っ赤にさせれたので悪口に間違いない。

なんかコイツに負けた記憶がある、うっぜぇ!コイツには負けねぇ!

 

『黙れよ!最初から本気出せない、舐めプ野郎が!』

『おい、ちょ待てよ。あれれ、もう終わりですか』

『……なんか、前よりガキみたいになったなオマエ』

『取り消せよ!今の言葉!俺はもう大人だぞ!』

『ガキが』

『んもぉぉぉぉ!ブッ殺してやるぅぅぅ!』

 

は、離せ!離せ、イノウエ!アイツを分からせるんだ!離せって、力強いなお前!ち、畜生!覚えてろ、クソが!

 

【ドリームジャーニー】

 

【調子】好調

 

【体力】90/100

 

【ステータス】スピード:A スタミナ:B パワー:A 根性:C 賢さ:B

 

【バ場適性】芝:A ダート:G

 

【距離適性】短距離:D マイル:B 中距離:A 長距離:B

 

【脚質適性】逃げ:E 先行:C 差し:A 追込:B

 

【スキル】

 

・????????

 最終直線を好位置だと道を開いてすごく速度が上がりさらに加速力がちょっと上がる

 

・一匹狼

 自分だけが一匹狼の心を持つレースで少し能力が上がる

 

・おひとり様◎

 自分と同じ作戦のウマ娘がいないと能力を発揮しやすい

 

・対抗意識◎

 自分と同じ作戦のウマ娘が多いと能力を発揮しやすい

 

・徹底マーク◎

 1番人気のウマ娘と作戦が同じだと能力を少し発揮しやすい

 

・右回りの鬼

 右回りコースが得意になりスピードとパワーが上昇する

 

・地固め

 レース序盤にスキルを多く発動すると加速力がわずかに上がる

 

・フルスロットル

 レース中盤に持久力をすごく使って速度を少し上げる<作戦・差し>

 

・ペースアップ

 レース中盤に追い抜くと速度がわずかに上がる

 

・読解力

 レース中盤に観察力が高まり視野をわずかに広く持てる<作戦・差し>

 

・尻尾の滝登り

 レース中盤にスキルを多く発動すると速度が上がる

 

・外差し準備

 最終コーナーで外から追い抜くと速度がわずかに上がる<作戦・差し>

 

・差しコーナー○

 コーナーで速度がわずかに上がる<作戦・差し>

 

・コーナー巧者

 コーナーが得意になり速度がわずかに上がる

 

 

『邪魔ぁ!なにこれ、鬱陶しい!おっ、消えた』

「今日は、なんだか落ち着かないな」

『イノウエ、なんか見えんだよ!おい、聞いてるのか!もしかして、言葉通じてない?』

 

なんてこった、言葉が通じないだと。

むむむ……まぁ、いいか話すこともないしな。

なんか話したいことあったけど忘れたし、あっヤネじゃないか!

そろそろレースってことだな、よし!

一番最初から先頭なら俺の勝ちに……いや、最後までスタミナ温存しなきゃいけないんだった。

そうだった、最初から飛ばそうとすると邪魔されるんだった。

 

ヤネに誘導されて、スタートの場所へと移動させられる。

たくさんの人間がゲート前でウロウロして引っ張ったりするのだ。

うーん、入りたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファンファーレが聞こえてくる、ファンファーレ?レースがそろそろ始まるってのはわかった。

よし、集中して……今だ!

 

 

 

【スタートしました!ちょっとトウカイトリック遅れましたが、先行争い最初の坂の上り、テイエムプリキュア、テイエムプリキュアが抜けました。1馬身リード、その後ろをホクトスルタンが2番手から追っていきました、そのあとシルクフェイマスが3番手】

 

 

好調なスタート、遅れたやつが居るが抑え気味に走る。

分かってるって、飛ばし過ぎちゃいけないんだろ!

他の馬達がたくさん前に行く、半分以上が前を走っているが焦らない。

俺の右斜横にはあのちっこいドリームジャーニーの野郎がいる。

アイツも足を溜めてる状態で走ってるのか。

 

前後から馬が寄ってくる。

後ろから出遅れた奴、前からは中団に位置していた奴らだ。

 

 

【そして、スクリーンヒーローが外4番手につけて坂の頂上、インコースはサンライズマックス。そして中団になったコスモバルクで、アルナスライン、その後ろになったデルタブルース。そして身体半分差アサクサキングス、先頭までは10馬身ぐらいマイネルキッツ、ポップロック、そしてドリームジャーニー、ヒカルカザブエも後方待機。後は2馬身相手トウカイトリック、メジロレクサスです。3馬身、4馬身空いてジャガーメイル、ゼンノグッドウッド並んで最後方で4コーナーを回って最初のスタンド前】

 

コーナーが終わって、直線に入った。

よし、直線は身体を伸ばせば速くなる。

行くぞオラァ!

 

「ッ!」

『んんっ!おい、走りにくい走りにくい!』

 

首が前に出ないから呼吸がしにくい、走ってないと空気をいっぱい吸えないからだ。

そのせいで、速度を出すことができないので進み辛い。

むむ、むむむ、もしや2周するのか?

 

 

【さぁ今度は……シルクフェイマスが先手を取りました。シルクフェイマス先頭1000m60秒ジャストくらい、リード2馬身でホクトスルタンが2番手でテイエムプリキュアが3番手になりました。その後ろ4馬身空いてコスモバルク前から4番手、うちにいれてスクリーンヒーローが5番手、ネヴァブションがやや外に出ました。その直後までアサクサキングス、デルタブルース、マイネルキッツ、後はポップロック、トウカイトリック、ドリームジャーニー後方から4番手で1コーナーを回ります。ヒカルカザブエ、メジロレクサス、ジャガーメイル、お終いから二番手、ゼンノグッドウッドが最後方です】

 

 

直線が終わって、コーナーに入る。

だいぶ後ろの方だが、前に行かせてもらえない。

こう、首が引張られて前に倒せないのだ。

口の中から、この手綱捨て去りたい。

そうこうしているうちにコーナーが終わる。

ムチが入ってないし、たぶんまだ走らされると思うから秘策はここでは使わない。

だって、他の馬が速くなってないもん。

たぶん、まだまだ先でスパートがあるんだろ。

俺は賢いから詳しいんだ。

 

 

【マイルの通過1分37秒ぐらい。シルクフェイマスが行く展開になりました2コーナー回って、向正面に入ります。3馬身差の2番手がホクトスルタンで、3番手になったテイエムプリキュアが向正面へ、うちに入れてコスモバルクが4番手の追走。あとは2馬身空いてネヴァブション、そのうちスクリーンヒーローで先頭までは5馬身ぐらいです。その後は外めアサクサキングス、インコースサンライズマックス。アサクサキングス!ジワっとスパートを開始】

 

 

前の方で加速した馬がいた!

今だろ!なぁ、ムチ入ったし!オラァ、走るんだよ!

走れ走れ、身体を伸ばして出来るだけ前に行くんだ!

 

『うおぉぉぉぉ!』

 

力が漲ってきたぜ、身体もなんか軽い気がする!

 

 

【あと中団アルナスライン、マイネルキッツ、そしてデルタブルース。メジロレクサスが一気に上がってきた】

 

 

前を走る馬達の動きが鈍くなってくる。

そんな姿を見たからか、自然と息が整ってくる。

溜まった足は十分、徐々に身体は速くなっていく。

 

『――邪魔だァ!俺様が最強だァ!』

 

来た!

来た、来た!

小さいアイツが、迫ってきた。

見なくても肌で分かる、アイツの姿を感覚的に理解できる。

勝負だ、小さいの!

 

 

【ドリームジャーニーもジワっと動いて2度目の坂の上りに入りました。あと後方はヒカルカザブエ、依然後方待機トウカイトリック、ジャガーメイルはお終いから2番手で2馬身差ゼンノグッドウッドは最後方です。さぁ、坂の頂上にかかって2度目の坂越え下りに入ります】

 

 

直線に伸びた馬群。

先頭争いしている奴らの速度が増す。

後ろからくるアイツの気配を感じているのだろうか。

俺の横に奴が並んだ。

 

『勝負だ、舐めプ野郎!』

『うるせぇ、小さいの!』

 

俺達の前には横に膨らんだ馬群が見える。

最後のカーブ、そのままの速度で進入した結果とも言えるし、これから曲がるために減速したとも言える。事情はそれぞれあるだろうが、狙っても居ないのに横並びになっていた。

 

オォォォォン!

 

だが、俺にはその馬群を突き抜ける最適なイメージが見えている。

まるで黒い影のようなそれが、その馬群を掻き分けて進んでいくのだ。

そこに合わせるように加速する。

 

足はこまめに動かす、そして小回りの利くようにしてコーナーを曲がる。

小幅は小さく、とにかく動かして重心を傾けろ!

 

『遅せぇ!』

『ッ!?』

 

ピッタリと、真横についた小さいのが恐ろしい速度で駆けていく。

こんな体勢の傾くコーナーで、どうして転ばずにそんな速さになれるんだ。

あっ、コイツも小幅に走ってやがる!

だが、何が違うのか俺よりも……そうか、足だ!

アイツは俺よりも速く足を動かしているのだ。

 

『クソ!邪魔だぁぁあ!』

『ひっ!?』

『ひうっ!』

『はわっ!?』

 

【今度はホクトスルタンが先頭に変わって800に入りました。スクリーンヒーローが2番手で、その直後3番手にアサクサキングス、4番手マイネルキッツ。その後ろインコースを縫ってメジロレクサスが急接近します600を切りました。4コーナー、ドリームジャーニーも追い上げている!さぁ、最後の直線だ!】

 

 

レーンがなくなった。

後はもう、最後の直線。

左側にはたくさんのお客さんが居る。

たぶん、ゴールは間近だ。

他の馬の動きが鈍い、身体はさっきより加速して、小さいアイツの姿がすこし前に見える。

 

『5秒だァ!』

 

目の前にあった芝が吹き飛び、ゴールまで荒野が広がる。

ここに来て、少し先を言っていた奴の身体が更に前へ前へと向かっていく。

外から、まず1頭が抜かされる。

 

『5!』

 

更に一頭、まずいこのままじゃ……。

 

『4!』

 

世界が変わる。

 

 

『3!』

 

 

何とも言えない力強い何かが身体を包み、時間が止まる。

 

 

 

『2!』

 

 

 

一枚の写真の中には数多の馬が居て、躍動する身体を維持したまま奇妙なことに静止している。

 

 

 

 

『1!』

 

 

 

 

静寂に包まれたモノクロの空間で俺とドリームジャーニーだけが滲むように元の色を取り戻す。

 

『見えた!』

 

先行する馬達が、徐々に溶けるように輪郭を失う。

残るのは炎のように揺らめく不定形の光るそれ、それはモノクロの世界で照明のようにあった。

真っ黒な大地、真っ白な空、その狭間で俺とドリームジャーニーだけが動いている。

それを囲むように揺らめく炎のように光ったそれ達。

 

そんな、光の横を駆けていく。

 

『コイツァ……』

『テメェだけのレースじゃねぇ、勝負だ!』 

 

俺とドリームジャーニーだけがいるレース場、先頭に躍り出たからって油断はさせない。

 

 

【ドリームジャーニーが上がってくる、どんどん抜いてアルナスライン!内からはマイネルキッツ!マイネルキッツが抜いて、叩いて叩いてメジロレクサスが上がってくる!ドリームジャーニーか!メジロレクサスか!この2頭が先頭争いか、さぁ200を切りました】

 

身体を伸ばす。

歩幅は広く、前へ前へと広げて走る。

右にはドリームジャーニー、コイツさえ抜けば俺の勝ちだ。

今度こそ勝つ、勝つ、勝つ!

 

『チッ!クソがぁぁぁ!』

『うおぉぉぉ!』

 

ドリームジャーニーの足が、少し鈍る。

恐らくフルスロットルでコーナーを加速した疲労が今に来てやってきたのだ。

よし、よしよし、俺の身体が半歩先に出る!

 

……やった!

 

 

【さぁ最後の一騎打ち、いや!?アレは、上がって来た!最後の最後で急加速してきた、マイネルキッツ!】

 

 

ま、けるかぁぁぁ!

『えっ?』

『あぁん?』

 

光が、強烈な光が俺とドリームジャーニーの真横で輝く。

それは、揺らめいていた炎だ。

おいおい、いつの間にこんなに大きくなってたんだ。

 

『テメェ!?終わったはずじゃ……』

意地が、あるだろ!

『くっ!』

 

 

【メジロレクサス、そしてドリームジャーニー追い込んで!マイネルキッツ?前を伺うマイネルキッツ!】

 

 

今まで見えていなかった馬体が、光の中からくっきりと現れる。

鼻先程度の差、まだ間に合う。

あぁ、俺は知っていたじゃないか。

執念で走る奴を、スクリーンヒーローのような奴らを。

 

『約束し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【マイネルキッツ!マイネルキッツゴールイン!メジロレクサス、2着!ドリームジャーニー3番手接戦、ドリームジャーニー外、内アルナスライン、2頭の間はサンライズマックス!なんと勝ちましたのはマイネルキッツ!】

 

『クソがァァァァ!』

『ハァハァ……くそ、またか』

 

鼻差だった、勝てない勝負じゃなかった。

油断した、ドリームジャーニーを抜かして油断した。

力が抜けた瞬間を差された。

だが、何よりも……最後の走りに圧倒されてしまった。

 

『まだ、あんな風に走れるのか』

 

まだ先がある。

何かを揺らして、燃やして、走ればあるいは。

そこに、辿り着けるのだろうか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。