BLEACH The 3rd Phantom?何それ知らない。 作:九頭竜 胆平
今日もまた、ギン君と乱菊ちゃんのところに来ていた。わかっている。何が起こるかわからない現在、きっと俺は逃げているんだ。だからちょっとでも死神のことを忘れるために。こうして何も関係ない流魂街の子たちのところに足しげく通っている。
「こんにちは。」
「あらいらっしゃい。おみやげは?」
この子はいつもしたたかだな。そんな子に救いを求める俺は、きっとどこまでも救えない。
「あれ、ギン君は?」
「さあ、いつもふらっとどこかへ出かけるの。どこで何してんのかもわかんない。」
「心配じゃないの?」
「心配したっていなくなっちゃうし。そんでどこからか知らないけど食べ物を持ってくるのよ。」
乱菊ちゃんは強いな。…俺はまつ梨がいなくなるんじゃないかって気が気じゃない。
「乱菊、食い物や。」
「こんなふうにね?」
「「へぇ。」」
それからしばらく二人はご飯を食っていた。
「「ご馳走様。」」
「あたし片付け手伝うね。」
「ありがと。」
「なあ兄さん。ちょっとええか?」
なぜか、いやな予感がする。いや、これはきっと予感ではなく史実を知っている俺だからこそ、
「ここ、ええ眺めやろ?」
「そうだね。瀞霊廷がよく見える。」
「…あそこの暮らしって、どんなんやろうな?」
「興味ある?」
「乱菊は興味あるみたいや。わからんなあ…あの中に入ったら、どうなるんやろ?」
それの、答えを俺は知っている。
「あそこには、君の運命を変える出会いが必ずあるよ。」
「ふーん、兄さん、見かけによらず夢見がちなんやなあ。」
ちがう、違うんだよ。
「決していい事だけじゃない。乱菊ちゃんの記憶を奪った人も、そこにいるからね。」
「知ってはったんですか?」
「見たわけではないし、聞いたわけでもないんだけど、うーん…俺は、…俺は、ちょっとおかしいんだ。でもね、俺はおかしくても、知ってることがあるよ。ギン君はそれを取り戻したいかもしれないけど。乱菊ちゃんは君がいるだけでいいと思ってる、って知ってる。だから、無茶をする必要はないけど、でも、あそこに行けば飢えることはない。もしも、本当に死神になる覚悟があるなら、稽古をつけてあげることはできるから。」
「そう…ですか…」
「でさー、ギンってば全然人の言うこと聞かなくってさー!」
「そんなのウチも同じだよ。男ってどうしてああなのかねー?」
「ほんと、こっちは心配してるのにさ!はあ、」
「…だけど、心配する相手がいるって、いいことだよ。あたしそう思うな。」
「そうね。一人っていやだしね。」
………
……
…
虚が襲い掛かってくる、躱して一閃。そんな姿を見ても奴らは恐れもせず、ただこちらに突っ込んでくるばかり。
「破道の四『白雷(びゃくらい)』」
瀞霊廷内であまり大きい破道を使うわけにもいかず、『白雷』で
現在、瀞霊廷に多数の虚が攻めてきており、それに対し、護廷十三隊総出で迎え撃っている。
まつ梨は大丈夫だろうか。征源様もいる。海燕先輩もいる。だから、きっと…きっと大丈夫だと思いたい。
「逃げろ!藤丸!」
一斉に虚が襲い掛かってくる、でもそんなことしている暇はないんだよ砕蜂ちゃん。もうすでに時間かけ過ぎだ。まつ梨たちの応援に行かなければ、もっと速く、速く、速く。
未完成、だが現時点で使える最強の手札を切ろう。
瞬閧とは、鬼道を全身に纏う高等技術であり、白打の奥義でもある。しかし、残念ながら俺はまだ瞬閧用のオリジナル鬼道が組めていないため、『蒼火墜(そうかつい)』と『白雷』を少し弄り、組み合わせたものに『啓活』を併用して纏っている。未完成というのは『白雷』と『蒼火墜』をまとっているので、俺は常時、全身を焼かれることとなっているために痛みがひどいという所だが、やけど自体は『啓活』で治し続けることで活動できるようにしている。御託はここまで、殲滅だぁ!
藤丸は私の後輩だ。生意気で可愛くはないし、夜一様にも無礼を働くような不埒ものである。しかし、それでも戦場では守ってやろう。そう思っていた。
藤丸は一人飛び出し、敵を斬鬼走拳すべてを使って蹴散らしていく。その技はどれもが新入り死神とは思えないほど洗練されていたが、あまりに突出していたために複数の虚が迫ってきていた。
「逃げろ!藤丸!」
しかし、私の叫びは届かなかったのか、藤丸は二体の虚にとどめを刺すことに夢中で囲まれてしまった。助けられなかった。そう思い私は、消えていく仲間から目をそらそうとし、
振り返った。轟音が聞こえたかと思うと、囲んでいた複数の虚が一斉に蒼白い閃光に消し飛ばされていて、その中から現れたのは、同じく蒼白く発光し、癖っけな髪を逆立て、浅打を鞘にしまう藤丸の姿だった。
大前田副隊長や夜一様がいないとはいえ、今この戦場で一番戦果を挙げるのが、入ってきて一年もたっていない死神だというのは、あまりにも常軌を逸していた。それは目に追うのがやっとの速度で常に移動し続け、掌底が当たったものは消し飛び、蹴りが当たったものは貫かれる。先ほどとは違い、斬術を抜いたほか三つで戦っているはずなのに、その強さは副隊長に迫るほどである。私が虚を1体殺す間にそれは4体ほどを消し炭にしており、やけどを負いながらも戦うその姿は、まるで修羅のようだった。