BLEACH The 3rd Phantom?何それ知らない。 作:九頭竜 胆平
来る日も来る日もまつ梨のコスプレをしては飛ばされ俺は実はまつ梨だったのではないかという錯覚に陥ているがいまだに竜条丸の求めるまつ梨がわからないままさらに一年が経過しようとしていた。
「宮能三席、この書類の書き方がよくわからないのですが。」
「ああ、これについては俺がやったほうが早そうだ。書いておこう。」
「三席!夜一様*1が仕事を残したまま逃げ出し、大前田副隊長*2が捕まえに行きました。」
「仕方ない。副隊長の分も合わせて俺がやっておこう、この机に置いといて。」
「師匠!また修行を見てもらいたく「夜一様捕まえるの手伝ったら考えてやらんこともない。」了解しました!行ってまいります!」
「宮能三席。十一番隊の予算案なのですが、妙に多くて。」
「刀に使う資金と隊舎の修理費を半分に抑えとけ、どうせ豚の餌だ。文句を言って来たら俺か夜一様が対処する。」
「藤丸、少し働き過ぎじゃないか?俺にできる書類があれば受け取るが、」
「そうだぞ藤丸。もうしばらく休暇も取ってないじゃないか。私にも少しよこせ。」
「狭間八席*3、ありがとう。この書類ならできるから任せる。砕蜂*4ちゃんは書類仕事よりまず夜一様に逃げられないように心がけてくださ~い。」
「師匠!そっちに夜一様が行きます!」
「縛道の八十一『断空(だんくう)』、だあああああああ逃げられた!志童*5、追えーー!」
「宮能三席、今日もお疲れ様です。」
ブラックにもほどがあるよこの部署。
「灯花ちゃん*6。ありがと。灯花ちゃんも情報収集お疲れ様。やっぱり十一番隊あれだった?」
「はい、真っ黒でした。早く次の剣八が現れるといいんですけど。」
「どんな奴が成っても結局戦闘狂であることに変わりはないけどね。」
「宮能三席が成ればよくないですか?隊長格にも匹敵するって聞いたことありますけど。」
「俺が?ないない、よくて副隊長だよ。まだ疑似詠唱も4重までしか使えないし。しかも十一番隊って斬りあい前提だから俺の強みも生かせないしね。」
鬼道も撃たず瞬閧も使わず俺の剣でつばぜり合いとかマジ無理。まあ縛りプレイだからって豚にすら勝てないのは弱すぎだけど。あの豚さえ卍解を習得しているというのに俺は、
「宮能三席は何時も霊圧消してるし、仕事はできるし、強いしで、隙が全くありませんよね。どんな幼少期を送ってきたらそうなるんですか?」
「俺が住んでたところは治安が悪くてな、妹もいたから養いつつ安全確保のために動いてたら猿山のボスになってた。」
「へぇ…全然わかりませんでした。でもそんなに大変だったら大人に甘えたかったりしたんじゃないですか?」
甘え?
「妹さんの親代わりで、必死に頑張って、真央霊術院もすぐに卒業して、そしたら人に甘えたりとかしなかったんじゃないですか?」
「そんなことないよ。親代わりの人もいたし、その人たちにいっぱい甘えて…」
俺は甘えた。でも幼いころの俺は?必死に働いて大人すら掌の上で踊らしてた頃の俺は?竜条丸が、幼い俺が求めていたのは!
「おいで。」
五歳児程度の俺の見た目をした竜条丸に俺は優しく微笑みかける。幼少期、両親を残して死んだ申し訳なさ。何処かもわからない土地、著しく低い生活水準に怯え、たった一人の肉親が唯一の心のよりどころだった。妹を溺愛したのは心が壊れないための防衛本能の一種だったのかもしれない。
今泣きながら自分の腕の中にうずくまっているのは竜条丸なのか、幼い藤丸なのか、転生したばかりの十四歳のガキかも判断がつかないがそれを優しく抱き留める、愛していることが伝わるように。
小さい体からではなく空間全体から竜条丸の声が聞こえる。
久しく感じてなかった恐怖という感情を感じて、
「藤丸は行くんだな?たとえその先に辛く苦しい未来しかなくとも進むんだな?」
ああ、いくよ。俺が死ぬまで、歩みを止めることはない。
「まつ梨?」
「いや、私は斬魄刀だよ。お前が真に力を求めるのなら、倒す相手はこれ以上にいないだろう。」
俺の目の前に一本の浅打が現れ、それを握る。
「それで私を斬れたら、藤丸の勝ちだよ。私たちの力は死神ひとりが持てる力ではない。浅打状態でも難なく倒してみろ。」
重い、まともに打ち合えばそのまま戦闘不能に持ち込まれるだろう。
浅打で受け流した後まつ梨を蹴り飛ばす。
「破道の七十八『斬華輪(ざんげりん)』」
「『虎淘円舞』!」
放射状に飛んでいく斬撃がまつ梨に降りかかるが、虎淘丸を振り回した範囲から青い光の柱が出現し、それを受け止める。光の柱から飛び出してきた虎淘丸の突きを間一髪躱し、柱を避けるように肉薄する。藤丸は浅打で斬らなければならないため何度も接近を試みるが大刀である虎淘丸のリーチは長くやや距離がある状態から刀、槍、長刀の運用でなかなか近づくこともできず、虎淘丸の斬撃をかいくぐった時は『虎淘円舞』で地面から光の柱が襲い掛かってくるため、懐に潜るのは困難を極めた。
振るわれる刀を跳躍で避け、地面から襲い掛かる柱より速く疾走する。虎淘丸を地面に叩きつけ割れた大地が散弾として藤丸に降りかかる9割を躱し、7分を刀で払い、3分を体に受けながら大上段に斬りかかった藤丸にまつ梨は後手でも追いつくと言わんばかりの速度で大刀を振り上げハバキの斧部分で浅打をからめとる。直後藤丸はここで詰め切らねば勝利はないと、自身の苦手とするつばぜり合いに持ち込む。
「うおおおおおおおおおお!!!」
霊圧は人より多くつばぜり合いは苦手だが決して負け筋につながるわけではない。足りない膂力は根性でカバーし、少しでも自信を鼓舞するために、また相手を威圧するために雄たけびを上げる。『虎淘円舞』は刀を払わなければ使えないため正真正銘の斬術勝負に持ち込まれた。
全身の筋肉を脈動させ少しでも押し込むために体重と魂を刀にかける。浅打は徐々に強い光に包まれ刀身から霊圧が噴き出しその光自身が刀となる。
「みごと!」
その光は虎淘丸を斬り裂き、まつ梨を貫く寸前で元の浅打に戻った。
「これで、俺の勝ち?」
まつ梨の姿を取っていた斬魄刀も元の浅打の姿となる。
「浦原さーん!卍解修得したんですけど死神一人に使える力じゃないって言われたんでどっか安全なところありませんか?」
「そうっすねぇ、涅さーん!なんかこの前、被造死神のデータ測る実験場作ったじゃないですか!貸してください!」
「またかネ!まったく、くだらないデータだったら承知しないヨ。」
涅さんも俺の卍解見るんだ。じゃあ早速俺の卍解お披露目と行きますか!ワクワク!
……息が……できない…
涅さんは卍解のデータを持ってウキウキで帰って行った、俺が死にかけている間に。
「藤丸さん、あなたの卍解はもしかしたら過去に確認できた卍解のどれよりも強い可能性があります。発動直後に隊長格の7倍の霊圧に到達しそれは徐々に上がっていることが確認できました。あまりの霊圧に周りの霊子が徐々に消滅する、つまりどんな霊力を使った攻撃もあなたに近づけば近づくほど威力は減少します。圧倒的です。あなたが卍解をしているだけで尸魂界自体に何か問題が起きるかもしれないほどに、ですが、
貴方の魂魄がそれに耐えられない。今回は十秒ほどでしたがそれでもあなたの魂魄はつぶれかかっていた。動ける時間としては2秒がいいところでしょう。結論から言います。藤丸さん、あなたは卍解を使ってはいけません。」
せっかくの二年がすべて崩れていく音とともに俺は絶望に打ちひしがれた。
一人では無理という表現を俺は霊圧が上昇することにより魂魄が潰れると捉えました。