BLEACH The 3rd Phantom?何それ知らない。 作:九頭竜 胆平
「黒崎さんも酷いけがでしたが、藤丸さんは重傷です。今から井上さんの能力で治したとして戦いに復帰できるかどうかはわかりません。」
熱量はなく、ただ爆風の威力のみの爆発であったが、それは下半身を消し飛ばし、周囲に臓物をまき散らし、藤丸の命は風前の灯火だった。藤丸の圧倒的霊力がかろうじてギリギリ藤丸の命をつなぎとめているが、生物的には死んでもおかしくない状況だ。面の皮も消し飛んだその姿に織姫たちは吐き気を催し、ルキアでさえ発狂しかけた。
「ただ、私たちに止まっている時間はありません。茜雫さんが来た入り口を探してすぐさまにでも動かなければ、世界は滅亡します。」
どれだけ心配しようとも、一護たちにできることはその入り口を探すことだけだった。ルキアとともに境内も、墓地も、ショッピングモールも探したが見当たらない。そんな時ふと、茜雫が観覧車に乗りたいと言っていたことを思い出した。観覧車の上に載ってみる景色は壮大で、夕日に照らされた川がキラキラと光を反射している。そんな中、川にかかている橋の近くに明らかに太陽の反射とは違う白い部分があった。
「あそこ、川の中!」
一護とルキアが近づいてみればそこには見たこともない景色が広がっていた。
「行ける!ルキア、浦原さんに連絡してくれ。」
「待て一護!一人では「行くんだ!俺は絶対あいつを助け出す。」」
自身を鼓舞するための雄たけびを上げながらその穴に向かって落下する。その世界の中心は空がまるで吸い込まれるように落ちてきていた。茜雫に集まろうとしていたブランクを断ち一護は呼び掛ける。
「茜雫ああああ!!!!今行く!」
一護は卍解し、最高速度で茜雫へと向かうがそこへ巌龍が立ちふさがる。
「またやられに来たのか?」
「茜雫を返せ!」
ブランクと甲冑の者たちが一護を囲み逃げられないよう場を整えていく。
「せっかく思念珠として覚醒させようとして置いたものをお前のせいで人間的な恐怖と苦しみを味わうことになるのだ。」
「一護ぉーー!っなに!?やだ!やだよぉー!」
茜雫にブランクたちが群がりまるで捕食するかのように取り込んでいく。
「てめえら!邪魔だああああああああああ!!!」
近くの橋から大穴を浦原達は集まって見下ろしていた。
「どうでした?」
「ダメだ。尸魂界は鬼道砲を使用して、叫谷を空間ごと消滅させるきだ。」
「そんなことしたら、黒崎君は!」
「そんなこたぁさせねえさ。鬼道砲が発射されるまでに、俺たちが行ってかたをつける。」
「だけど。」
「あんずるな、何とかする。」
しかし、副隊長一人と平隊士が行ったところでできることは限られる。言葉でどう言おうと心が折れかかっている中、ふと声がかかった。
「無理だな、てめえらだけじゃ。すでに人数はそろえた。決着をつけるぜ。」
「あたしも行くわよ!」
そうして日番谷冬獅郎、松本乱菊、朽木ルキア、阿散井恋次は大穴に飛び込んだ。
一護の卍解をもってしても簡単に倒すことはできず、じりじりと時間だけが過ぎてゆく。
「くそ!このままじゃ…」
茜雫を救うことなどできない。そんな八方塞と言ってもいい状況に希望が見えた。
「ハーーッハッハッハ!」
それは空から降ってきて地面を割り敵を蹴散らした。
「そこ、あぶねえぜ。」
更木剣八である。さらには砕蜂、弓親、一角、イヅル、修平、鉄左衛門などそうそうたる顔触れが一護の援軍として来ていた。
「早く行け!黒崎!」
………
……
…
敵をすべて無視して駆ける。そうすれば一護に追いつけるものなどいず、一護はそのままブランクの集合体が樹木のように折り重なった場所まで来ていた。
「茜雫ああああああああ!!!」
「まだ思念珠を救うことができると思っているのか?」
茜雫に聞こえるよう声を張り上げるが、帰ってきたのは巌龍の声だけであった。
「当たり前だ!茜雫は俺が助け出す!!」
「もう遅い。思念珠はすでに叫谷との融合を始めている。もう誰も止めることなどできない。」
「うるせえ!待ってろ茜雫!もうすぐここから連れ出してやる!」
「まだわかっていないようだな。無駄だということが。」
大量のブランクが一護の正面に現れ一斉に襲い掛かってくる。
が一護にそんなものがきくわけもなく、月牙天衝は全てのブランクを消し飛ばし、厳龍へと傷をつけた。
「ようやく出やがったなぁ!お前を倒して茜雫を助け出す!」
一護は白哉と戦った時よりも速く動き、月牙天衝もその数を増している。だが、それに負けず劣らず厳龍も月牙天衝を躱しては剣先からブランクを放ち一護を拘束しようと試みる。ブランクの攻撃ごと吹き飛ばすために月牙を撃とうとしたその時、地面から生えたブランクが足をにまとわりつき背後を厳龍に取られてしまう。正面に撃とうとした月牙をとっさに地面に放ち足場を崩すことで逃げるが追尾式のブランクを複数本時間差で放たれ、全てを迎撃できずに一本のブランクが一護を大樹に拘束した。
「千年余り、われら一族は断界の隙間に巣くい、卑しきものに身をやつし耐えてきた。われらがその辛酸をなめても今日まで生きてきたのは憎き尸魂界の崩壊を果たすがため。その悲願が、今叶おうとしているのだ。その邪魔をさせはしない!」
複数本のナイフがなすすべもなく一護に突き刺さる。
「どうしてそんなに必死になる?思念珠などただの記憶の集合体。生き終えた残骸にすぎぬものを。」
「そんなことはねえ!」
拘束から一本の手をだし腹に刺さった刃を引き抜きながら一護は言葉を続ける。
「茜雫は今、ここにいる!不安で、怖くて助けを求めてる!俺はそれを助けるって!俺の魂に誓ったんだ!」
「今しかないよ!今出て行かなかったら一護君のピンチなんてしばらく訪れないしもしそうなったとしても使い方わからなくて詰んじゃうよ!」
「早く行け。弟がピンチなのだろう。」
「い、今か!?今行くしかないのか!!?…ンン゛!『そうだ一護、力を求めろ!顔に手を当てて俺を呼び出すんだ!』」
『一護、力を求めろ!顔に手を当てて俺を呼び出すんだ!』
声が聞こえる。あの修行で幾度となく聞いてきた、白い俺の声。もしかしたらこの声に従えば後悔するかもしれない。何か悪いものかもしれない。でも、それでも今やらなければ絶対後悔する!
そうして一護は額に手を当てた。虚の仮面が顔を覆い自身の霊圧が跳ね上がるのを感じる。
「うおおおおおおお!!!!!!」
黒い霊圧は一護を拘束していたブランクを破壊し茜雫と共鳴を起こす。
「一護ぉおおおおお!!!」
断界は崩れ始め無数のブランクが一護を襲う。しかしそれらは掠ることすらせず厳龍と再度対面した一護は刀を振るった。
「行くぞぉ!」
「来ぉい!」
黒い月牙はブランクごと厳龍を呑み込んだ。
「ずいぶんおとなしくしてるじゃねえか。いつもの元気はどうした。」
「ふふっ、うっせえな。」
………
……
…
「黒崎やったな!」「おつかれさまです。やりましたね」「ム。」「見事。」「よかったぁ。みんな無事で!」
「ありがとな。ルキア、恋次。」
一人の女の子を救ったヒーローの物語は幸せな結末で終わる。はずだった。
「茜雫、そういや、お前のリボン…」
「一護…」
いまだ尸魂界と現世の接近が止まらないことに皆も気付き始めた。
「どういうことだ?」
「とまらねえだと!?」
茜雫と一護は上空へと上がりその様子を見る。
「一護…怖いよ。」
「茜雫…?」
「でも…でもね?させないよ。こんなに楽しい世界なのに。こんなに…たくさんの人が住んでいるのに。こんなに…一護が!生きているのに!大丈夫、ブランクたちは、まだ私の近くにいるの。そのエネルギーを一度に放出させれば、二つの世界を、きっと元に戻せる。世界がなくなったら、きっと一護も消えちゃうから、そんなの…嫌だよ。」
そういって茜雫は笑った。まるでこれで最後かのように。
「止めろ!…これからお前は私より…一護が死ぬのがやなんだよ!」
「えーと、感動のシーンのところ悪いんですけど君たちは死なないです。はい。」
二人が接近に気づかなかったのは、藤丸が霊圧を消していたからではない。その霊圧が
白きよいしょっ!と二人を浦原のもとへ投げる。テッサイデスキャッチで受け止められる。一護はその時、藤丸の額に脂汗がにじみ手が震えていることに気づいた。
「藤丸さん!」
「限定解除×七、
霊圧が隊長格の二倍ほどになった状態で帰刃を行いさらに限定解除するとひび割れていた鋼皮が更に音を立てて割れ初め、ぽろぽろと零れていく、そうして中から出てきたのは黒い炎が藤丸の形をしたものだった。一護が絶句してると藤丸から何かが飛んで来る。とってみればそれは藤丸の頬についていた仮面の名残だった。
「それ死んでも持っててよ!マジでなくすなよ!?」
いったいこれに何の意味があるのか、本当に大丈夫なのか聞きたかったがその前に結界が閉じ界が隔たれてしまう。藤丸はそれを見届けると、大穴に飛び込んだ。
「ふぅ~~~~ 全限定霊印解除」
世界が爆ぜた。