横合いの濃霧から飛び出してきた異形の怪物――戦艦レ級が、空母棲姫の盾となるように立ち塞がる。その周囲には深海の駆逐艦と軽巡洋艦の群れが蠢き、背後では空母棲姫が帰還した艦載機を次々と収容し、再発進の準備を進めていた。
ここで足を止めれば、空母棲姫の総攻撃を浴びて全滅する。
「神通! 二水戦はレ級の取り巻きを叩き潰せ!」
『了解! 二水戦、突撃します!』
神通たちが左右へ展開して敵の軽巡・駆逐群へ切り込むと同時に、長門は背後の大和と武蔵へ鋭い怒号を飛ばした。
「大和、武蔵! この化け物は私と陸奥が抑える! お前たちはこのまま空母棲姫へ突っ込み、航空隊を発進させるな! あれを飛ばされたら戦線が崩壊するぞ!」
「了解! 武蔵、行きますよ!」
「おう、任せな!」
大和と武蔵の巨体が、レ級の脇をすり抜けて濃霧の奥へと猛進していく。
それを追おうとレ級が砲身を巡らせた瞬間、長門と陸奥の四十一センチ砲が火を噴き、怪物の進路を強引に塞いだ。
「お前の相手は私たちよ!」
陸奥の砲撃とともに、戦艦同士の重苦しい砲撃戦が幕を開けた。
最初から無闇に懐へ飛び込むような真似はしない。長門と陸奥は互いに息を合わせ、レ級に対して反航戦から同航戦へと絶えず陣形と航路を切り替えながら、激しい砲火を交えていく。互いに決定打を許さず、敵の射線を巧みに殺しながら、二人はジリジリと確実にレ級との距離を詰めていった。
その頃、レ級を振り切って前進した大和と武蔵は、ついに空母棲姫を最大射程圏内に捉えていた。霧の向こうで、空母棲姫の飛行甲板から黒い艦載機がまさに飛び立とうとしている。
「射程内! 主砲、斉射ッ!!」
大和と武蔵の四十六センチ砲が火を噴いた。
放たれた巨弾は空母棲姫のすぐ脇の海面に突き刺さり、巨大な水柱を巻き上げる。強烈な至近弾だったが、直撃には至らない。
その水柱の向こうで、大和たちの接近に気づいた敵航空隊が、砲撃の合間を縫うようにして甲板から続々と発艦していく。
「くっ……発艦されました!」
大和が唇を噛む。飛び立った黒雲のような大編隊は、目の前の大和たちには目もくれず、高度を上げて戦場の別方向へと向かっていった。
当時、戦場全体は極限の均衡状態にあった。
艦娘側の左翼では、敵戦艦七隻を相手に金剛型四隻が奮戦していた。金剛の巧みな指揮と機動により、すでに敵戦艦四隻を撃沈。残る三隻を相手に四対三の優位を築き、完全に敵を圧倒しつつあったのだ。
それを見た空母棲姫は、冷酷な決断を下した。
金剛たちと戦う自軍の右翼は「時間稼ぎにしかならない」と即座に見切りをつけ、今発艦させたばかりの航空隊の大部分を、中央と艦娘側の右翼へと一点集中で差し向けたのである。
中央では未だ翔鶴と瑞鶴が敵前衛と渡り合い、艦娘側の右翼では、増援に駆けつけた妙高型四隻と五十鈴、矢矧たちが、敵の重巡・軽巡部隊と一進一退の殴り合いを繰り広げていた。そこへ、空母棲姫から放たれた大編隊が襲いかかった。
『上から敵機! 数が多すぎます!』
『ぐっ……防空が追いつかないわ!』
空からの猛烈な爆撃と雷撃に晒され、艦娘側右翼の戦線が音を立てて崩れ始める。
空母棲姫は、その一瞬の綻びを見逃さなかった。海面が不気味に揺れ、敵陣の背後から、最後まで温存していた「切り札」が姿を現す。戦艦二隻、重巡二隻、軽巡一隻、そして駆逐艦十隻からなる無傷の最終予備兵力だった。
空母棲姫は、崩れかけた艦娘側の右翼をこの大部隊で一気に突破させ、全軍を背後から包囲・殲滅するつもりだった。
『右翼正面に敵の新手! 戦艦を含む大部隊です!』
『くっ、抑えきれない、突破されます!!』
航空機の猛爆と新手の突撃により、妙高たちの陣形が分断され、敵の予備兵力が右翼の防衛線を突き破ってなだれ込んできた。
このままでは全軍が袋の鼠になる――誰もがそう凍りついた、その時だった。
南東の空から雲を突き破り、第二航空戦隊――蒼龍と飛龍の艦載機群が急降下してきた。
右翼と中央で猛威を振るっていた敵機を次々と叩き落とし、突破を図っていた敵予備兵力の頭上へ的確な爆撃を浴びせてその足を強引に止める。
『右翼の敵機と中央は、私と蒼龍の艦載機で抑え込むわ!』
飛龍の力強い声が通信機に響く。そしてその直後、戦場の右翼奥――まさに敵の最終予備兵力が押し寄せてきているど真ん中へ、二つの影が猛烈な速度で突っ込んできた。
赤城と加賀だった。
二人は敵の大部隊が目の前に迫っていることなど気にも留めず、敵陣へ真っ向から接近しながら、飛行甲板より次々と攻撃隊を発進させていく。放たれた一航戦の精鋭機群は、目の前の予備兵力を飛び越え、奥に控える空母棲姫へと真っ直ぐに襲いかかった。
頭上から降り注ぐ一航戦の猛爆に、空母棲姫の機動が大きく乱れる。
その隙を、正面から肉薄していた大和と武蔵は見逃さなかった。
「敵旗艦の足が鈍りました! 武蔵、撃ちます!」
「おう! 喰らいなッ!!」
大和と武蔵の四十六センチ砲が咆哮し、回避の遅れた空母棲姫の装甲を捉えた。激しい爆発と黒煙が上がり、さしもの空母棲姫もたまらずじりじりと後退を余儀なくされる。
一方、赤城と加賀の前方には、敵予備兵力の戦艦二隻と重巡群が立ち塞がっていた。だが、赤城たちが足を止めることはなかった。
「させません! 水雷戦隊、突撃――ッ! 魚雷、全門発射ーッ!!」
赤城たちの背後から、阿武隈率いる水雷戦隊が猛然と飛び出した。
海面を埋め尽くす酸素魚雷の群れが、赤城たちに砲口を向けていた敵戦艦二隻の横っ腹へ次々と突き刺さる。轟音とともに巨大な火柱が噴き上がり、敵戦艦二隻が一瞬にして轟沈へと追い込まれた。
「残りは私たちが引き受けます! 赤城さん、加賀さん、前へ!!」
阿武隈たちがそのまま敵の重巡・軽巡群へと切り込み、至近距離での激しい混戦へと持ち込む。
味方がこじ開けたその血路を、赤城と加賀は一切の躊躇なく駆け抜けた。その二人の目の前に、乱戦をすり抜けた敵の大型駆逐艦が二隻、大きく顎を開けて立ち塞がる。艦載機を発艦させる暇もないゼロ距離だった。
だが、赤城の唇が三日月のように吊り上がった。
「邪魔よ。どきなさい」
赤城は速度を落とすどころかさらに踏み込み、左腕に装着した鋼鉄の飛行甲板を刃物のように振りかぶると、目の前の敵駆逐艦の口腔へと力任せに突き刺した。
ガギィィィッ!! と装甲が砕ける鈍い音が響き、黒い体液が海面に散る。痙攣する敵艦を飛行甲板で串刺しにしたまま、赤城は狂気を孕んだ声でクスクスと笑いながら強引に押し通り、海面へと蹴り捨てた。
その隣では、もう一隻の駆逐艦が加賀へと飛びかかっていた。
加賀は表情ひとつ変えず、右手に握りしめた一本の矢を、深海棲艦の爛々と光る眼球へと直接突き立てた。
絶叫が上がる中、加賀は無造作にその矢を眼球から引き抜くと、苦悶に開かれた敵の口元へと矢尻を乱暴にねじ込んだ。
「……沈みなさい」
口の中に矢を押し込んだまま、加賀が冷ややかに呟く。
直後、敵の口腔内で矢が眩い光を放ち、爆装した艦上爆撃機へと姿を変えた。逃げ場のない体内・ゼロ距離での発艦と同時起爆。くぐもった爆発音とともに敵駆逐艦の頭部が内側から木っ端微塵に吹き飛び、海面へと沈んでいった。返り血のような黒煙を浴びながら、加賀もまた口元に冷酷な笑みを浮かべていた。
その光景を上空の偵察機越しに見ていた飛龍が笑みを浮かべ、すぐさま中央の翔鶴と瑞鶴へ通信を飛ばす。
『翔鶴、瑞鶴! 赤城さんと加賀さんが突破口から直接、空母棲姫へ突っ込んでいったわ! 今すぐ合流して、一航戦と一緒に空母棲姫を抑え込みなさい!!』
『了解! 瑞鶴、行くわよ!』
『ええ!』
黒煙を浴び、妖しく笑いながら突き進んでくる赤城と加賀の姿は、正面で空母棲姫と砲火を交えていた大和と武蔵の視界にも捉えられた。
その直後、通信機からノイズ混じりの赤城の声が響く。
『――大和、武蔵。そこをどきなさい。邪魔よ』
氷のように冷たく、底知れぬ狂気を孕んだ声だった。
『この空母棲姫は、私たち空母が倒す。……私の餌に手を出さないでちょうだい。戦艦は、戦艦の敵でも倒しておきなさいな』
背筋が総毛立つような威圧が通信機越しに突き刺さる。
同時に、赤城と加賀の異常な殺気、そして背後から迫る翔鶴と瑞鶴の気配を察知した空母棲姫が、大和たちへの関心を完全に切り捨て、全身の艤装から黒雲のような艦載機群を一斉に赤城たちへと差し向けた。
『ふふっ……行くわよ、加賀さん!』
『ええ』
空が黒と銀の翼で埋め尽くされ、空母同士の壮絶な総力戦が幕を開ける。もはや戦艦が外から砲撃を差し挟める領域ではなかった。
「……大和、ここはあの二人に任せようぜ」
武蔵が後方の濃霧を振り返りながら低く唸った。後方からは、長門と陸奥、そしてレ級が撃ち合う重苦しい砲声が響いてきている。
「……分かりました。武蔵、反転します!」
「おう!」
大和と武蔵の巨体が大きく舵を切り、黒煙の彼方へと反転していくのを見届けた直後、戦場の空気は一変した。
四隻の空母の殺気を前に、空母棲姫が甲高い咆哮を上げた。それを合図に、右翼や中央で艦娘たちと撃ち合っていた深海棲艦の群れが、一斉に砲火を止めて空母棲姫のいる海域へと退却を始めたのである。
「敵が一斉に退いていくわ! 逃がすな、追撃しろ!」
妙高が号令を飛ばし、阿武隈たち水雷戦隊とともに白波を蹴立てて追いすがる。
だが、退却する敵群の最後尾にいた数隻の重巡洋艦と大型駆逐艦が、突如として機関を逆噴射させ、艦娘たちの目の前で強引に横一文字の壁を作った。
「邪魔よ、撃ち抜きなさい!」
妙高たちの主砲が一斉に火を噴き、敵重巡の装甲を正面から砕く。しかし、敵艦は回避運動すら取らない。燃え上がりながら一歩も退かず、至近距離から主砲と魚雷を狂ったように乱射してきた。
海面を無数の雷跡が交錯し、至近弾の水柱が視界を真っ白に塞ぐ。
「っ、面舵! 魚雷を避けろ!」
「こいつら、回避を捨てて撃ってきてるわ!」
雷跡をかわすために舵を切った瞬間、半壊して主砲を失った敵の大型駆逐艦が、黒煙を吐きながら阿武隈たちの鼻先へと斜めに割り込んできた。自らの燃え盛る巨体を航路のど真ん中にねじ込み、体当たり覚悟で進路そのものを物理的に塞いできたのだ。
「くっ、前に出られない! 撃ち沈めろ!」
集中砲火を浴びて敵駆逐艦が爆発を起こす。だが、その爆炎と沈みゆく残骸が盾となり、すぐ後ろから別の敵重巡がさらなる魚雷の網をばら撒いて立ち塞がる。
一隻を沈めれば次の一隻が死兵となって前に出る。艦娘たちの陣形は回避と目の前の敵の処理に追われて分断され、前に進むことすらままならない。
爆煙の隙間から、はるか奥の海域が見えた。
しんがりの死兵たちが命と引き換えに稼いだその時間で、退却した十数隻の深海棲艦がすでに空母棲姫の周囲へと辿り着き、幾重もの密集陣形を組み上げていた。さらに、外周を飛んでいた敵の航空隊までもがすべて空母棲姫の直上へと集結し、空を黒く塗り潰していく。
「くそっ……! 前を開けなさいよ!」
焦れる阿武隈の叫びも虚しく、目の前の敵重巡が最後の力を振り絞るように突進してきて、艦娘たちの足をその海域へと完全に釘付けにしていた。
そして、その狂乱の戦場から離れた濃霧の海域では――もう一つの頂上決戦が、血と鉄の匂いに塗れた極限の領域へと突入していた。
海面を抉る水柱が、幾本も白い壁となって立ち昇る。
立ち塞がる戦艦レ級を相手に、長門と陸奥は息の詰まるような機動戦を繰り広げていた。
無闇に懐へ飛び込めば、あの異常な火力の餌食になる。長門はレ級に対して反航戦から同航戦、同航戦から反航戦へと絶えず航路を切り替えながら、四十一センチ砲の斉射を浴びせ続けていた。敵の射線を殺し、こちらの有効射界だけを押し付ける戦術。互いに決定打は出ないものの、二人は確実にレ級の懐へと距離を詰めていく。
「次の同航戦で捉えるぞ、陸奥!」
「ええ!」
長門が転舵を命じようとした、その刹那だった。
レ級の艤装が大きく裂け、異様な唸り声を上げて無数の艦載機が飛び立った。黒い機影は高度を取る間もなく長門たちの頭上へ殺到し、機銃掃射と爆撃の雨を降らせる。
さらに、爆煙で視界が塞がれた海面の下――死角を縫うようにして、数本の白い雷跡が猛スピードで二人の横っ腹へと迫った。
「艦載機と魚雷の同時攻撃か! 面舵いっぱい、振り切れッ!」
長門と陸奥が渾身の力で舵を切る。
艦体が激しく軋み、爆弾がすぐ脇の海面で炸裂した。迫り来る魚雷の群れも、装甲を擦るような紙一重の距離でどうにかやり過ごす。
だが――それこそが、深海の怪物が張った罠だった。
限界ギリギリの回避で大きく姿勢を崩し、推進力が鈍る「回避運動の終わり際」。その逃げ場のない座標へ、レ級の大口径主砲が最初からピタリと照準を合わせて待ち構えていたのだ。
「っ……誘われたか!」
閃光と轟音。レ級から放たれた徹甲弾が、体勢を崩した長門と陸奥の装甲を鋭く抉り、炸裂した。
ドォォォンッ!!
激しい衝撃とともに黒煙が噴き上がり、二人の身体が大きく弾き飛ばされる。装甲板がめくれ上がる「小破」の損害。
だが、煙の中から顔を上げた長門の瞳は、獰猛な光を宿していた。
「ぐぅっ……小破がなんだ、四十一センチ砲は生きているぞ! ビッグセブンを舐めるなよ!」
「上等よ! 長門、合わせるわ!」
敵の罠で足を止められた瞬間は、こちらにとってもレ級を正面に捉えきった絶好の射撃機会に他ならない。
長門と陸奥は揺れる身体を強引にねじ伏せ、艦体をピタリと並走させた。計十六門の四十一センチ連装砲が、レ級の土手っ腹へと向けられる。
「第一戦隊、一斉射――ッ!!」
至近距離から放たれた十六発の徹甲弾が、回避に移ろうとしたレ級の装甲へと一斉に突き刺さった。
一拍の後、レ級の内部から火柱を伴う大爆発が噴き上がる。強固な装甲が内側から砕け散り、レ級の巨体が黒煙を吐き出しながら大きく傾いだ。紛れもない「中破」の大損害であった。
「効いたぞ! 距離を詰めてトドメを刺す!」
「ええ!」
長門と陸奥が至近距離へと一気に踏み込む。だが、中破したレ級もまた凶暴な殺気を膨れ上がらせ、自ら距離を詰めてきた。
そこからの攻防は、戦術を超越した泥沼の殴り合いだった。
距離が詰まれば詰まるほど、互いに有効弾が当たる。しかしレ級の持つ異常な「手数」が長門たちを圧倒し始める。主砲、高角砲、海面を乱れ飛ぶ魚雷、さらには直上を旋回する残存艦載機からの爆撃。それらすべてが途切れることなく、暴風雨のように二人の全身へと叩きつけられた。
「ぐあああっ!? なんだこの手数は……!」
「くっ……装甲が、削られる……!」
一発を避ければ次の一発が当たり、魚雷を捌けば頭上から爆弾が降り注ぐ。激しい被弾の連続に装甲が剥がれ落ち、たまらず二隻とも「中破」の重傷へと追い込まれた。
それでも二人は止まらず、手が届くほどのゼロ距離へと肉薄する。
しかし、圧倒的な手数の差は如何ともし難かった。レ級の至近弾が陸奥の機関部を揺さぶり、長門の装甲を砕く。血を吐きながら、長門はただ一点、レ級の巨大な主砲塔だけを睨み据えていた。
「主砲だけは……潰すッ!!」
長門は残されたすべての力を振り絞り、折れかけた自らの主砲身をレ級の砲塔の根元へと突きつけ、引き金を引いた。
零距離の徹甲弾がレ級の主砲塔の基部を直撃し、根こそぎ吹き飛ばす。だが、そのほんの一瞬早く――レ級が放った最後の斉射と魚雷が、長門と陸奥の急所を完璧に貫いていた。
「がっ……あぁぁ……ッ!!」
「……っ!」
凄まじい爆発に呑み込まれ、長門の膝が折れる。隣では陸奥が海面へと崩れ落ち、二隻の機関が完全に沈黙した。一歩も動けない「大破」判定であった。
主砲塔を吹き飛ばされたレ級は、動けなくなった二人へ最後の魚雷を撃ち込むべく、射角を確保するために一度スーッと後方へ距離を取った。
だが、レ級は気づいていなかった。無防備な側面を晒して後退したその海域へ、何が迫っていたのかを。
濃霧と黒煙の帳を突き破り、反転して駆けつけた大和と武蔵の巨体が海面を割って躍り出た。
足を止め、完全に横っ腹を晒したレ級を、大和の測距儀が捉える。
「射程内。――主砲、一斉射ッ!!」
「おうッ!!」
大和と武蔵の四十六センチ砲、計十八門が同時に火を噴いた。
放たれた巨弾が空間を歪ませながら殺到し、レ級の中心核を正面から粉々に打ち砕く。巨大な火柱が天を衝き、最凶を誇った怪物は断末魔すら上げることなく黒い塵となって爆散、燃え盛る海面の下へと完全に消滅した。