とある企画枠での企画枠用。今月は夏の節分で四季映姫の日。

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あなたと会ってからどれだけ時間がたっただろうか。

時間が経てば経つほどわかったことがある。

あなたの性格、あなたの癖、あなたの行動。

ちょっとずつだけどわかってきた。

もしかしたら勘違いかもしれないけれど、

わかった気がするのは少しうれしい。

けれど、時間が経てば経つほどわからなくなることがある。

あなたの気持ち、あなたの想い。

あなたの『心を読ませる』程度の能力で、考えていることはわかるけど、

あなたが『それ』を明確に考えたことはなかったと思う。

時間が経つほど怖くなる。

聞いてみようとも思ったが、それを口にするには時間が経ちすぎていた。

一緒にいればいるほど、それを聞くのが怖くなる。

まったくもって、素直になれない自分の性格が憎くなる。


コクハク

拝啓、私の愛すべき愚妹たち。

 

お前たちの『能力』と俺の『能力』で、

 

お前たちにこのメッセージが届くと信じて送ります。

 

お前たちと離れてから、考えればいろんなとこを旅したなぁと感慨深いよ。

 

地上の幻想郷。

 

幻想郷の外。

 

海を渡った向こうに。

 

砂漠の続く大地。

 

どこもお前たちと遠い場所という意味では変わらないけれど。

 

今ほど遠くまで来たなぁと感じたことはなかったな。

 

けれど、ある意味では、懐かしいような気もするよ、『ここ』は。

 

 

「物思いにふけるのもいいですが……そろそろ始めても?」

 

「ああ、すまんね。待たせちまったようだな」

 

延々と一人、妹たちに伝わることを願って思念を送っていた自分に、

 

一段高い壇上に座る少女が声をかける。

 

 

どうやら、俺に許された時間はここまでのようだ。

 

妹達よ……二度と会えないようになったら、ごめんな。

 

 

届くかもわからない。

 

届いているのかもわからない思念の送信をやめ、

 

目の前の『相手』を見据える。

 

身長だけ見れば、その小ささから『幼さ』を連想するが、

 

彼女の出す雰囲気は微塵の隙もないもの。

 

その漂う空気から自分以上に『激闘』を潜り抜けてきたことを感じ取る。

 

それもそのはず……彼女は冥府の最高責任者に座し、

 

多くの亡者を相手取ってきた『対話』のプロだ。

 

『交渉代理人』として、いくつもの争いにかかわってきた俺にとって、

 

尊敬すべき先輩というところか。

 

だが、相手が自分以上の強者といえど、この交渉ではいつも以上に負けられない。

 

なぜまだ死んでもない自分が、わざわざかけられるのかもわからないが、

 

今から行われるのは『閻魔の裁判』。

 

過去であれば、十王裁判で最後に構え、先の裁判で裁ききれなかった重罪人の行きつく先。

 

最高権力にして、最大の機関。

 

「いつでもいいぜ……さぁ、始めようか閻魔様……ゲームの時間だ」

 

相手にとって、不足なしだ。

 

「いい覚悟ですね。では……『有罪か無罪か』審議のお時間です」

 

**********

 

『なんで、私はここにいるんだろうなぁ』

 

だだっ広い裁判の場で当事者二人は片方は裁判長席に座り、

 

もう一人は簡易的な檻のような証言台に立っている。

 

その二人の光景を傍聴席で、まったくの『無関係』な私だけが一人ポツンと見ている。

 

私はここで見ていていいのかと、少しだけ現状に居心地の悪さを感じる。

 

そもそも冥府の裁判なんて、当事者と審判する者たちだけの閉鎖的な空間だ。

 

本来傍聴者なんていないだろうし、

 

今私が座っている場所もとってつけたような簡易的な椅子が一脚置かれただけだ。

 

明らかに『異物』という感じが満ちている。

 

『早く終わってくれないかな……』と、心から願うが、一向に始まりもしない。

 

名無しも思念なんて妹たちに送ってないで、

 

さっさと終わるようにしてくれないかなぁと、思うことしかできない。

 

『来なきゃよかったかなぁ』と少しだけ後悔だ。

 

そもそも私が自分でついてきたのが悪いんだが……そこは名無しに責任転嫁したい。

 

あいつが冥府の裁判の召喚になんて応じなければよかったんだ。

 

それをあいつは『裁判は出ないと無条件で負け判定』なんて決まりのために、

 

簡単に彼岸まで足を延ばしやがって……。

 

しかもムカつくのは呼び出しに応じたときに、

 

思いっきり伝令に来た死神の胸に目がいってたことだ。

 

『お前さっきの完全建前だろ、何に惹かれたのか言ってみ?』と問いただしたくなったが……

 

 

裁判場に通された直後に案内の死神は外に出ていき、

 

待ち構えていた閻魔の容姿に少し肩を落としたのは見逃さなかった。

 

その反応で『ざまぁみろ』と少しだけ溜飲が下がったので、まぁ良しとしとこう。

 

と、暇を持て余しているうちに、それまでじっと黙っていた二人が、

 

審判開始の合図をそれぞれ高らかに宣誓した。

 

それは裁判という、罪を問う厳粛な場でありながら、

 

ゲーム開始を告げるようでとても楽しそうに見えた。

 

その様子になおさら『自分はなんでここにいるんだろう』と思いを募らせる。

 

それと同時に……若干イラッとしたのは、なんでだろうな。

 

**********

 

壇上から見下ろすと、装飾も何もない広いだけでさみしい空間に

 

二人の男女の姿が見える。

 

一人は目を覆うほどまである前髪の長身の男。

 

特徴らしい特徴といってわかりやすいのは胸のあたりにあるサードアイ。

 

彼の種族の主張とともに能力の表れ……のはずだが、見覚えのあるはずのそれは、

 

記憶にあるはずのそれとは少しずれが生じている。

 

『報告の通り……ということですね』

 

懐かしい……と思うと同時に、彼の歩んできた道を想像して少しだけ心が痛む。

 

『判決を下したのは、私だ。それは……後悔していない』

 

過去の自分の行いにぐらりと心が揺れそうになるが、必死に耐える。

 

憐れみも、涙もここでは許されない。

 

あれは彼が望み、私が認めた彼の決意だ。

 

その決定を否定することは、彼自身の決意の否定だ。

 

それは認められない。

 

そして視線を移す。

 

彼の後ろにいる女性に。

 

『彼女が……例の天邪鬼ですか』

 

彼の後ろにポツンと座っている彼女。

 

一人退屈そうにいる彼女の様子に、不本意だがクスリッと笑ってしまった。

 

『さて、彼女が退屈しない楽しい裁判になるといいのですが……』

 

私の白黒もしっかりとつけたいですね。

 

『数年越しの決着……つけさせてもらいますよ……古明……名無しさん!』

 

「いつでもいいぜ……さぁ、始めようか閻魔様……ゲームの時間だ」

 

「いい覚悟ですね。では……『有罪か無罪か(ギルティ・オア・ノットギルティ)』審議のお時間です」

 

**********

 

さて、彼女に裁かれるのはこれで二度目だが……

 

今回はどんな結末になるのやら。

 

一度目は自分の望んだ結果を彼女に頼み込んだという形だった。

 

妹の罪の肩代わり。

 

その結果は地底世界からの追放と、名前の剥奪だったが、

 

まぁ、後悔はない。

 

世界を回りたいという自分の望みとも合致した判決だったと思っている。

 

家の縛りがあったままでは、俺はあの地底という狭い世界しか知らないままだったろうからな。

 

俺としては感謝しているのだが……

 

あの時の彼女の悲しそうな表情は忘れたくとも忘れられるものではない。

 

「じゃぁ、まず条件の確認だ……俺にかかっている『疑い』。それが一体何なのか……宣言を頼むぜ。できるんなら『赤』で宣言してもいいぜ?」

 

まだ俺は『なぜ』自分が裁判にかけられるのか。その罪状さえ把握していない。

 

だが、おおよその予想はついている。

 

閻魔に呼ばれるほどの裁判……それは幻想郷においても『重大案件』ということだ。

 

であれば、彼女自身が過去にかかわった俺の地底追放のことか……もしくは。

 

ちらっと自分の背後の様子をうかがう。

 

そこには退屈そうにしている正邪ちゃんがいるが……彼女が『無関係』だと、映姫は言っていない。

 

先にあった異変の『扇動者』として、敗者側の彼女が何らかの要求を受けるかもとは考えていた。

 

『敗者は勝者に従う』というのが、今の幻想郷の弾幕ルール。

 

だが、負けたうえで逃げ出した彼女は『ルール違反者』ともとらえかねない。

 

もしもそれで呼ばれたのだとしたら……『俺が守らないとな!!』

 

当事者の代理で交渉を行うのはもともと俺の仕事だ。

 

『さぁ、来てみやがれ映姫……俺がその案件、調停して(終わらせて)やるよ』

 

身を乗り出して彼女の言葉を待つ……さぁ、お前はどう攻めてくる。

 

俺たちに……何を吹っ掛ける!

 

「そうですね……『罪状』ですか。

 

 ……明確に罪に問うのなら、詐欺罪ですかね」

 

詐欺? つまり嘘……か?

 

はて……自慢ではないが、この俺……嘘は大の不得意だ。

 

自身の能力的にもすぐにばれてしまうものを、なぜしなければいけないのか。

 

正直でいることを強いられているとも思っている俺が『詐欺』だと?

 

「ふはははは。初手からのミスだなぁ、さぁ、言ってもらおうか四季映姫……

 

 この名無しが、どんな嘘をついたというのか……!!」

 

これは勝った! よりによって俺に『嘘』の疑いをかけるとは。

 

あるとしても勘違い……思い違いの線だ。

 

閻魔に呼ばれたことで少々焦ったが……こんなぬるい戦いとは……

 

『いや、待て、俺。そんな『ぬるい戦い』……そんなことがありえるというのか……?』

 

そして一つの事実に思い至る。

 

自分の特性……種族の能力とは逸脱した天性というべきもの……それは。

 

『フラグ建設能力!!』

 

壇上の映姫がニヤリッ、と笑った気がした。

 

「ええ、あなたにかかった疑惑……それは『性癖』ですよ」

 

「なん……だと……」

 

性癖? なんだと、おれはそんな特殊な趣味は持ち合わせていない。

 

そう認識している、なのにどこでそんな疑いを持たれたのか。

 

「あなたが疑われた性癖、それは……『ロリコン』ですよ。名無しさん」

 

**********

 

にっこりと悪魔のような笑みとともに告げた彼女の宣言。

 

それは予期もしなかった疑い。

 

「な……なんでロリコンなんて疑いが!」

 

「古明地さとり……魂魄妖夢……秦こころ……」

 

静かに四季映姫が列挙した名前。

 

「彼女たちの名前……覚えがありますよね?」

 

「覚え……だと?」

 

一見して一貫性のない名前。

 

だが、妙に覚えのあるその羅列……順番にはっとする。

 

「だが……まさかそんな……」

 

彼女たちの名前、それはほんの最近……三カ月の間に俺が会った女性たちだ。

 

そして、その共通点は……幼い容姿ということ。

 

「だが、なぜだ! ただ彼女たちに会ったということ。

 

 その事実だけで、なんでロリコンなんて疑いが!」

 

語るには少々気恥ずかしいが、俺の好みはある意味で正反対。

 

それは明言しているし、共通認識だと思っていたというのに……。

 

「会っていただけ……その認識がそもそもずれているんですよねぇ」

 

「あーそれ、わかる……」

 

四季映姫の呆れた声。そしてそれに追従する声がなぜか背後から聞こえた。

 

「正邪ちゃん……なぜ、そんなことを言うんだ!」

 

俺と一緒にこの三カ月旅をして、俺のことを少しはわかってくれていると思っていたのに!

 

「いや、あんだけ堂々と口説こうとしてたら……なぁ」

 

「口説いた……だと」

 

そんな覚えはないのに……どうして、そんなことに。

 

どうすれば、何をすれば、その疑いは払しょくできるのか、必死に考える。

 

そして、その方法は、追いつめられて俺には一つしか思い浮かばなかった。

 

今すぐ、この場で、自分の行動で示すには、この方法しかない。

 

くるりと振り向き、けらけらと笑っている正邪ちゃんを向く。

 

その行動に、映姫もなにをしようとしているのかわかったのだろう。

 

壇上でにやにやと笑っている気配が見ないでも感じ取れた。

 

そしてその反応で、気が付く。

 

これが、彼女の意図していた結果だ。

 

「鬼人正邪さん……」

 

おそらくは、旅を楽しんでいる俺に対する意地悪といったところ。

 

自由になってから、会いに来なかったことへの意趣返し。

 

『これは裁判じゃない……これは、ただの……』

 

「好きです!大好きだぁあああああ!!」

 

『公開処刑だ!!』

 

「はぇ?」

 

「これでいいよな! 四季映姫・ヤマザナドゥ!」

 

「ええ、まぁ、いいでしょう。あなたの好みは……彼女のような人……ということで」

 

畜生、ニヤニヤ楽しそうにしやがって……悔しいじゃねぇか。

 

突然のことで思考が止まった彼女の手をひいて、逃げるように足早に裁判場を後にする。 

 

「見てろよ……いつか仕返ししてやるからな!」

 

「ふふふ、楽しみにしてますよ。あ、名無しさん……」

 

「なんだよ!!」

 

「大好きですよ?」

 

「ああ、俺もな!」

 

**********

 

「仕返ししてやる……ですか。今回、こっちが仕返しした側なんですけどねぇ」

 

誰もいなくなった裁判場で一人寂しくつぶやく。

 

「あ~あ、本当にロリコンじゃないんですねぇ……残念」

 

彼と初めて会ってから何年たったんだろう。

 

あの頃から自分の容姿は成長してなくて、幼い姿のまま。

 

閻魔としての私が、成長するということもないだろうから仕方ないけれど、

 

好きな人がこういう女性が好みじゃないと知った時はとても悲しかった。

 

それ以来、自分の気持ちは伝えられないと……秘めておこうと決心したのだが……。

 

「あんなに見せつけられての二人旅を見せられるなんて拷問じゃないですか……」

 

傍から見ていて、どっちもわかりやすい二人なのにどっちも素直になってないとか……こっちがバカみたいじゃないか。

 

ついでについぞ言えなかった自分の気持ちをさらっと言えればいいなと思っての今回の場だ。

 

公私混同だが……わざわざ裁判所まで呼び出したことで、彼が自身と彼女のあやうさ、どちらも察してくれてればよかった。

 

「大好き……俺も……ですか」

 

最後のやり取りに少しだけ満たされた気がした。

 

「あーけどなんででしょうねぇ……泣けてきました……」

 

今日の裁判所はもう店じまいだ……こんな顔ではもう誰にも会えやしない。




ずっとずっと聞きたかった。

『なぁ、なんで私を助けてくれたんだ?』

私を助けても、お前に得なんてなかったのに。

それはお前がお人よしだからか? それとも……


『なぁ、なんで私と旅をしようと思ったんだ?』

よく知らないやつと一緒なんて気疲れするだけだろうに。

それは一人でいることにさみしくなったからか? それとも……


『なぁ、なんで私と一緒にいてくれるんだ?』

それは、もしかしたら勘違いかもしれないけれど、

私が思っている理由なら……とてもうれしい。

怖くて自分では聞けなかった。

願った答え以外が返ってきたらどうしようかと……。


「なぁ、お前。本当のところ、私のことどう思ってるんだ?」

あれは裁判を逃げるためだけの方便だったのかどうか。

聞いてみないと怖くなるから。

確かめないとずっと怖いままだから。

「ん? ……好きだけど?」

なんでもないことのように答えてくれたことに、少しだけ感謝。

「そうか……ま、悪い気はしないな……」

そして、なんでもないことではないように顔を赤らめてくれたことに、少しだけ幸福。

「そ、そういう正邪ちゃんこそ、お、おおぉ俺のことどう思ってるし!」

意趣返しのつもりだろうか、私に質問をリバースしてくるとは……だが、まだまだ甘い。

その質問に私の返す答えは『どっち』にしろ一つだ。

「『大っ嫌い』だよ。バ~カ!」


**********

作者より。

なんだろう、四季映姫の日だったのに完全に鬼人正邪小説……まぁ気にしない。


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