異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

1 / 54
サイアクダゼ、ブームで散々イジられた挙げ句に異世界転生させられるなんてよ…


異世界での出会い編
死亡、そして復活。あとブリッツボール。


「こ…ここは…?」

 

 雲の上に浮かぶ和室という、何とも奇妙な空間。そこで倒れていた男が目を覚ました。

 男の名前はワッカ。胸の上部をさらけ出したオーバーオールのような服を着た筋肉質の男で、ニワトリの鶏冠(とさか)のように上部に伸びた赤茶色の髪と青いバンダナが特徴的だ。

 

「たしか…オレは…」

 

「というわけで…、お前さんは死んでしまった」

 

 突然の声に驚き、ワッカは体を起こす。机を挟んだ彼の向かいに声の主はいた。和服を着た細目の老人。眼鏡をかけており、顔は白く長い(ひげ)(おお)われていた。

 

「だ、誰なんだアンタ!?ってか、どこなんだよココは!?」

 

ワッカは老人に問いかける。

 

「ワシか?ワシは神じゃ。神様じゃよ」

 

「神ぃ!?」

 

「驚くのも無理は無い。じゃが思い出してみぃ。今思い出せる自分の記憶を」

 

 神を名乗る老人の言葉を聞き、ワッカは(おのれ)の記憶を辿(たど)る。

 世界最大の脅威である()()を倒すため、召喚士ユウナのガードとして長い旅を続けてきたワッカは、ついにシンとの最後の戦いにまで辿り着いた。長い戦いの末、あと一撃でシンを倒せるところまできたその刹那、シンの強烈な攻撃が自分の体を吹き飛ばした…。

 

「オレは…死んじまったのか…?」

 

「そうじゃ、お前さんは死んでしまった。シンの最期の一撃でな」

 

「………」

 

 ワッカは言葉を失った。召喚士の旅は過酷だ。召喚士もそれを守るガードも生きて旅を終えられる保証など無い、死んで当たり前の旅だ。そんなことは彼も理解していた。(ゆえ)に自身の死を覚悟はしていたが、いざ死んだとなるとその実感が湧いてこない。そんなことよりも気になることを彼は神に問いかける。

 

「皆はどうなったんだ!?シンは倒せたのか!?」

 

「自分の事より仲間の心配か、お前さんらしいのお」

 

神は感心した様子で言葉を続ける。

 

「安心せい。お前さんが死んだ直後、シンは倒された。スピラに平和が訪れたのじゃよ」

 

「じゃ、じゃあ、死んだのはオレだけなんだな!?」

 

ワッカの問いかけに神は少し間を置いて答える。

 

「…そうじゃな、シンとの最後の戦いで命を落としたのはお前さんだけじゃ」

 

「そうか、なら良かったぜ…」

 

シンは倒され、スピラに平和が訪れた。その言葉に彼は安堵(あんど)した。それなら自分の死も報われるとも思った。最大の心配が払拭されると、次なる疑問が頭に浮かぶ。

 

「…てか、アンタが神って、マジ?」

 

「本当じゃ。神でなければ、死んだお前さんと会話なんぞ出来るわけ無かろう」

 

「じゃ、じゃあ教えてくれ。シンは機械に甘えた人間に神が与えた罰だってのは本当なのか?」

 

ワッカの神に対する問いかけ。その答えをワッカ自身は長きに渡る旅で(すで)に得ていた。しかし彼が物心つく頃から聞いてきた()()。その答えを知り得るであろう人物に対し、彼は一応の答え合わせをしようと思ったのだ。

 

「それは違うぞよ。シンは、お前さんの世界の人間が立ち向かうべき脅威なのじゃ。他の世界ではドラゴンが、また違う世界では大きな地震がそうであるようにな」

 

「そうなのか…」

 

ワッカはふぅと息を吐く。やはりあの教えは間違っていたのだ。

 

「さて、そろそろ良いかの?ワシはお前さんと話がしたくてココに来させたのじゃ」

 

「ココって…、オレは死んで異界送りされたわけだろ?」

 

「少し違うの。まず、お前さんの死について話さねばな」

 

 そう言って神はワッカに湯呑みに入った茶を勧める。茶はワッカが飲んだことの無い味がしたが、彼の嫌いな味では無かった。

 

「本当はの、お前さんはあそこで死ぬ予定では無かったのじゃ。本来ならばお前さんも皆と同様、生きてシンを倒しビサイド島に帰れるハズだったんじゃよ」

 

「なんだってぇ!?」

 

「じゃがシンが予期せぬ行動を起こしてのう…。まあ、一種のバグじゃな」

 

「バグ?」

 

「あぁ何でも無い、気にせんでくれ。とにかく運悪く起きたシンの予期せぬ行動に、また運悪くお前さんが被害を受け、これまた運悪く死んでしまったというわけで…。まあ簡単に言うならワシのミスのせいで本来死ぬ必要の無いお前さんが死んでしまったという事じゃ。本当に申し訳ない」

 

「あ、ああ…」

 

 深々と頭を下げる神に対し、ワッカはとりあえず言葉を返す。

 

「で、オレはどうなるんだ?」

 

「すぐに生き返らせる」

 

「本当か!?」

 

神が自分を生き返らせてくれるなら、これほど嬉しい事は無い。またユウナやティーダ達に会えるのだから。

 

「ただのう、元いた世界に生き返らせる訳にはいかんのじゃよ。そういうルールでな」

 

「ルールー?」

 

「それはお前さんの幼なじみじゃろ。ルール、(ことわり)というヤツじゃな。そういうわけでお前さんには別の世界に蘇って貰いたい」

 

「どうしてもダメなのか?」

 

「無理にとは言わん。そのまま自身の死を受け入れるのも自由じゃ。じゃが、元の世界に生き返ることは出来んな」

 

「そうなのか…」

 

 ワッカは考える。神が無理と言うならば無理なのだろう。もしかすると死人(しびと)としてなら可能かもしれないとも考えたが、一度死んだ自分が死人としてあの世界に影響を与えるのは良くないだろうとも思う。この考えは彼が旅を通じて得た経験からのモノである。

 そこまで考えて彼はふと思いつく。

 

「もしかしてオレが蘇る予定の()()()()ってのにも、シンみたいな脅威があるのか?」

 

「そうじゃのう、シンほど強大なものとは言わんが脅威はあるぞ」

 

「なら、オレは心を決めたぜ」

 

 ワッカは決心する。自分がやるべき事は、死を受け入れて消えることでも、死人(しびと)となって元の世界に影響を与えることでも無い。

 

「オレはその別の世界ってのに蘇って、その世界の脅威を打ち倒すことにするぜ!」

 

「そうかそうか、別にお前さんに世界の脅威をどうにかして欲しいわけでは無かったんじゃが、ソレがお前さんの決意ならワシは尊重しよう」

 

「そうと決まれば、早くオレを生き返らせてくれ!」

 

 立ち上がるワッカに対し、神は今一度座るよう(うなが)す。

 

「まあそう慌てるでない。ワシから罪滅ぼしに何かさせてくれんかの?君の望みを聞きたい」

 

「望みって言われてもなぁ…」

 

「何でも良いぞ。何か持っていきたいモノとか無いかの?」

 

 そう言われてワッカはある物を頭に思い浮かべる。()()()()()()()。彼の世界で流行っている球技であり、彼はその選手でもあった。それだけでは無い。彼はガードとしての旅でも自分の武器にブリッツボールを使っていたのだ。彼にとってブリッツボールとは、人生そのものであった。

 

「オレの持っていきたいモノなんて一つしかねえぜ!ブリッツボールだ!」

 

「なるほどな。まあ、お前さんならそう言うと思っとったよ」

 

 そう言って神はどこからかブリッツボールを取り出した。

 

「コレを持って行きなさい」

 

「そうだよ!コレだよコレ!」

 

「ただのブリッツボールでは無いぞ。お前さんの新しい世界での旅を応援するための特別製じゃ」

 

ワッカは神から渡されたブリッツボールを眺める。しかしどう見ても普通のブリッツボール(メタ的なことを言うとワッカの初期装備)にしか見えない。

 

「今の状態は通常モード。殺傷力の低い状態じゃ。敵を殺さぬ程度に鎮圧したい時に使うと良い。そしてソイツに魔力を流し込むと必殺モードになる」

 

ワッカがブリッツボールに魔力を流し込むと、ボールは倍ほどの大きさになり、刃物(エッジ)が生えてきた。

 

「必殺モードは殺傷力が高いだけでは無い。石化エンチャントが付与されていて、高い確率で敵を一撃で倒すことが出来る。まあ石化が効かない敵もいるがの」

 

「いいや十分だぜ、コイツさえあれば怖い物なしだ!」

 

「まあまあそう言わず、まだ餞別(せんべつ)をあげよう」

 

「まだ何かくれるってのか?」

 

神は笑顔で答える。

 

「よく考えてみい。今までお主は仲間と共に旅をしてきたわけじゃが、これから先は一人で進むことになるんじゃぞ」

 

「た、確かに…」

 

「じゃからの、一人でも旅に困らないように、お前さん一人で黒魔法、白魔法を使えるようにしてやろう」

 

「マジかよぉ?」

 

ワッカは今まで魔法をユウナやルールーに任せてきた。神の言うことが本当ならば一人旅も安心だ。

 

「ついでにお前さんが困らないように魔力も増大させておこう」

 

「なんだか色々とわりぃなぁ」

 

「なに、気にせんで良い。元々ワシのミスじゃしな」

 

 神は(てのひら)をワッカの頭にかざす。なんだか力が(あふ)れてくるのをワッカは感じた。

 

「これでよし。それじゃあ、お前さんを異世界に転送するぞい」

 

 瞬間、ワッカの体が光に包まれる。

 

「第二の人生、楽しんでくるんじゃぞ~」

 

 

 

 

 

 気付くとワッカは草原に立つ一本の木の下に横たわっていた。

 

「すっげええへえええ。ココが異世界か…」

 

体を起こして辺りを見回すと右手に大きな町が見える。左手の方向にはどこまでも草原が広がっていた。

 

「さあて、ワッカ選手第二の人生スタートってわけだな!」

 

彼は神から渡されたブリッツボールを片手に町へと向かって歩き出した。

 

 町に到着したワッカはしばらく辺りを歩き回り、あることに気付く。

 人々が話す言葉を、ワッカは理解することが出来たのだ。彼らの言葉がたまたまワッカの世界と同じなのか、それとも神が会話に困らないようにしてくれたのか。恐らく後者だろう。

 

「そういう問題じゃ無え!文字はどうなってんだ文字は!!」

 

そう、ワッカには町に書かれている文字を解読することが出来なかったのだ。神はワッカが異世界で困らないようにすると言っていたが、さっそく大きな問題に直面してしまっていた。

 さらに大きな問題がもう一つ。ワッカは今、()()()()()()()()。旅の金はティーダが管理していたため、ワッカは死んだとき金銭を身に付けていなかったのである。

 

「サイアクダゼ、読み書きが出来ない上に無一文だなんてよ…」




 いかがでしたでしょうか。次回以降、いせスマ原作のキャラクターが登場して参りますので、ワッカとどう絡むのかご期待ください。

 あと、神の意味深な発言は深く考えなくて大丈夫です。ワッカが死んだのは神のミスが原因だ、という認識でOKです。

 あらすじにもありますが、当作品のコメントを感想欄に書いて下さると、今後の執筆の励みになります。ログインせずとも感想を書ける設定にいたしますので、当作品に対する様々な意見をお願いいたします。

 最後になりますが、今後とも当作品をよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。