異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 「まるで将棋だな」編、後編です。

 ワッカと望月冬夜の違いは色々とありますが、戦闘に関しては

望月冬夜→元々は一般人なので、スマホや無属性魔法といった力技で難所を突破する。
ワッカ→元々戦闘になれているので、過去の経験を活かして難所を突破する。

という違いがあります。


水晶の魔物、そして名言。あとブリッツボール。

 地面からキィィィィと小さな音が聞こえる。音は段々大きくなり、地面にひびが入る。

 

「来るぞ!」

 

ワッカが叫ぶのとほぼ同時に

キィィィィィィィィィィィィィィィィ

というあの耳をつんざくような音とともに地面を突き破って()()は現われた。

 虫のような形をしたソレは、水色の水晶のような物質で全身が構成されており、透き通った体から見える内部の赤い球は怪しい光を発していた。

 

「ライブラ!」

 

 ワッカが魔法を唱えると同時に、水晶の魔物が宙に浮かび、足を高速で伸ばして攻撃をしてきた。標的にされた八重が攻撃を避ける。ドガアッという音と共に、八重のいたところにあった瓦礫に敵の足が深々と突き刺さった。

 

「避けねば体に穴が空いてたでござるよ…!」

 

「足って言うより槍ね…」

 

ワッカが「ライブラ」で表示された情報を読み取る。

 

「魔法を吸収し、肉体を再生する。火、水、土、風、光、闇属性吸収。全状態異常完全耐性」

 

ワッカの顔から冷や汗が流れる。

 

「マジかよ…。こんなんどうやって相手すりゃいいんだ!」

 

 ワッカが困惑している間に、リンゼが攻撃を仕掛ける。

 

「炎よ来たれ、赤き連弾、ファイアアロー」

 

リンゼがあつぞこブーツ、じゃなくて火属性魔法の矢を放つ。しかし炎の矢は水晶の魔物に近づくにつれ小さくなっていき、届かぬ内に消えてしまう。水晶内部の赤い球体が怪しく光る。

 

「リンゼ!魔法攻撃はダメだ!アイツに吸収されちまう!!」

 

「そんな…」

 

「魔法が駄目なら…」

 

八重が飛び出す。

 

「直接斬りつけるでござるっ!!」

 

 ガッと刀が水晶に当たる音が響く。しかし、水晶の魔物には(ほとん)ど傷が付かなかった。

 

「何という堅さ!」

 

「オォラァ!」

 

「やあぁ!」

 

ワッカがブリッツボールを全力投球し、エルゼが敵の足の付け根を狙って全力の蹴りをぶつける。攻撃力2トップの攻撃には流石に無傷ではいられなかったようで、ボールに生えた刃物(エッジ)が本体に傷を付け、エルゼの蹴りが一本の足を蹴り砕いた。

 しかし敵は相手に喜ぶ隙すら与えない。赤い球体が光ったかと思うと、ブリッツボールによる傷はすぐに消えて無くなり、折れた足も再生し始めた。

 

「何が起こったの?」

 

「吸収した魔力を使って体を再生したんだ!」

 

 体の修復が終わった敵はすぐに攻撃を再開する。6本の足を伸ばし、近くの標的を仕留めにかかる。

 

「どうすりゃいいのよ、こんな敵!」

 

足の攻撃を避けながらエルゼが叫ぶ。ワッカはガード時代の戦闘経験から攻略の糸口を探そうとする。

 

「リンゼ!魔法で直接攻撃するんじゃなくて、間接的に攻撃してみろ!」

 

「と言いますと!?」

 

「氷の塊を降らすとかだ!」

 

「分かりました!氷よ来たれ、大いなる氷塊、アイスブロック」

 

 上空に氷の塊が出現し、水晶の魔物を押しつぶした。

 

「効きました!」

 

喜んだのもつかの間、敵は氷の塊を砕いて再び宙へと浮いた。

 

「ああ…」

 

「ヘイスガ!」

 

 ワッカが呪文を唱える。「ヘイスガ」は味方の攻撃速度を上げる魔法だ。つまり、敵が一回攻撃してくる間に行える味方の攻撃回数が増加するのだ。

 

「お前達!少しの間時間稼ぎしてくれ!()()でけりを付ける!」

 

ワッカの言うアレが何かを察した三人は各々の攻撃で敵を足止めする。

 

「もう勘弁しねえぞぉ!?」

 

力を溜めるワッカの側でリールが回り始める。

 

2HIT

 

2HIT

 

2HIT

 

「行くぜ!」

 

高速回転するワッカの姿を見て、エルゼと八重が敵から離れる。

 

「アタックリール!!」

 

ブリッツボールの激しい連弾が水晶の魔物を襲う。あまりの勢いに敵は地面に叩きつけられ、激しく土煙が舞う。

 

「やったか……?」

 

 土煙が薄れていき、敵が姿を現した。あちこちに大きなヒビが入った水晶の魔物は地面に半分埋もれたまま動かない。

 

「倒したのね?」

 

エルゼがふぅと息を吐く。が、その油断が間違いだった。水晶にヒビは入っていても()()()()()()()()()()からだ。赤い球体が激しく光り出し、無事だった足をエルゼに向けて伸ばし始める。

 

「きゃあ゛!」

 

急襲を避け損ねたエルゼの右肩に敵の足が突き刺さった。彼女の本能的な回避で急所こそ(まぬが)れたものの、傷口から激しく血が噴き出した。

 

「エルゼ!」

 

「お姉ちゃん!」

 

 ワッカとリンゼの叫びを聞き、八重が決心する。

 

「ワッカ殿!エルゼ殿に回復魔法を!敵は拙者が引きつけるでござる!」

 

ワッカに迷っている暇など無い。彼女の覚悟を無駄には出来ない。

 

「八重…、無理はするな!!」

 

「承知!」

 

 ワッカがエルゼに駆け寄る。その間に八重は敵の近くにわざと近づく。その場では攻撃せずに急いで後退、その後はエルゼのいる場所と反対方向で往復ダッシュをする。水晶の魔物は八重に狙いを定め、足を次々に伸ばす。八重は走って、時には跳んで攻撃を(かわ)した。リンゼも氷塊を振らせつつ、敵を足止めする。

 

「ケアルガ!」

 

急いでエルゼに回復魔法をかけるワッカ。彼女の右肩の傷は深く、下手に動かせば腕が取れかねないほどだった。それ(ゆえ)、最上位の回復魔法一回では完治させることは出来なかった。

 

「もう一度だ、ケアルガ!」

 

回復魔法の重ねがけにより、エルゼの傷も大分塞がってきた。

 

「すまねえエルゼ、オレが仕留め損ねたばっかりに…」

 

「ううん、悪いのは油断していた私の方。ありがとう、ワッカ」

 

顔に脂汗をかきながらエルゼが答える。傷こそ塞がったものの、受けたダメージは大きかったようだ。

 

「しっかし、まさかオレのアタックリールを耐えるとはな…。大分マズいぜ…」

 

 高速回転しながらボールを投げる「アタックリール」の特性上、特定の敵に狙いを定めることは出来ても、全く同じ場所にボールを当て続けることは難しい。同じ箇所にボールを高速で当て続ければ、魔法吸収及び傷の修復を行う赤い球体に攻撃を届けることも出来たかもしれないが、もう一度「アタックリール」を使ってもソレが出来る保証は無い。

 連撃の「アタックリール」がダメなら、一撃で赤い球体まで攻撃が届くような高威力の技を使うしかない。そんな条件を満たす技をワッカは持っている。オーバードライブ技「オーラカリール」のブリッツボール絵柄揃いだ。これが決まれば確実に赤い球体を破壊できる。

 しかし、この技にも欠点がある。「オーラカリール」は絵柄の種類が多く、特定の絵柄を揃えるのが難しいのだ。加えて、揃える絵柄を一つでも間違えると高威力技にはならない。(ゆえ)にユウナのガード時代にも(ほとん)ど使わなかった技だ。この土壇場でブリッツボールの絵柄を揃える自信がワッカには無かった。何度も挑戦すれば成功するだろうが、それまで仲間の体力が()つだろうか…。

 考えを巡らせるワッカを見て、エルゼが話しかける。

 

「何か作戦とかあるの?」

 

「……いや…」

 

「じゃあ、いっそのこと逃げる?」

 

「逃げるなんてかっこわりいマネ出来るかよ!それに元々アイツを起こしたのはオレ達だ」

 

 確かに、「ゲート」を使って遠くに逃げれば、水晶の魔物の脅威を回避することは出来るだろう。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ここで逃げちゃあ……オレは、オレを許せねえよ!たとえ死んだってな!!!」

 

ワッカの力強い言葉を聞き、エルゼも言葉を返した。

 

「そうね、私も同じこと考えてた」

 

 ワッカは弱点を探るべく、水晶の魔物の動きを観察する。敵はしつこく八重を狙い続けている。

 しかし、あの敵を水晶の魔物と呼んではいるが、本当にその名称は正しいのだろうか。敵は耳障りかつ画一的な音を発しつつ、一切の躊躇(ちゅうちょ)を見せずに標的を殺すべく動いている。こちらの攻撃を避けようともせず、攻撃と移動と修復以外の無駄な動きを一切しない。そんな敵の様子を見たワッカは思わず(ひと)()ちる。

 

「まるで機械だな」

 

 ここでワッカに電流走る。彼はスピラでの機械を相手にした戦いを思い出す。オートハンターやオートコマンダーといった機械の敵は、アイテムを盗めば一撃で倒せる。それと同じで、あの水晶の敵も()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。しかし肝心の球体は頑丈な水晶の体に覆われている。そこから球体だけを盗むなどという都合の良い技を、()()()()()()()()()

 

「エルゼ、動けるならオレの作戦を聞いてくれ」

 

ワッカはエルゼに作戦を伝える。

 

「分かったわ。任せてちょうだい!」

 

 エルゼの返答を聞き、ワッカは再び敵を凝視する。標的はあの赤い球体だ。

 

「アポーツ!!」

 

瞬間、敵の体内にあった赤い球体がワッカの手元にワープした。彼は手にした球体を地面に置いた。

 

「はあああっ!!」

 

エルゼが赤い球体にガントレットのキツい一撃をぶち当てる。水晶ほど硬い物質ではなかったらしく、ガントレットと地面に挟まれた赤い球体は粉々に砕け散った。

 同時に敵の体も水色の砂になって地面へと落ちていく。ワッカ達の勝利だ。

 

「お、終わったでござるなぁ~」

 

 今まで走り回って敵を引きつけてくれていた八重がその場にへたり込む。

 

「良かったですぅ~」

 

リンゼもその場に座り込んだ。

 

「はあ~ようやく倒せたぜぇ~」

 

ワッカも長い息を吐く。流石の彼と言えど、心身共に限界だった。

 

「お疲れ様、ワッカ」

 

エルゼが(ねぎら)いの言葉をかける。

 

「おう。エルゼもトドメ、ありがとよ」

 

 しばらくしてワッカ、エルゼ、リンゼの三人が八重の元にやって来る。今体力を最も消耗しているのは間違いなく彼女だ。

 

「八重、時間稼ぎありがとよ。お前があそこで動いてくれなきゃ、エルゼも回復できなかったし、作戦も思いつかなかったぜ」

 

「そんな…、拙者は当然のことをしたまで…で…ござる」

 

「当然って言う割にゃあ、ヘロヘロじゃねえか」

 

「これも修行の一環なれば…」

 

微笑みかける八重にサムズアップを返しつつ、ワッカはリンゼに問いかける。

 

「なあ、コレってギルドに報告した方がいいよな?」

 

「旧王都は王国の管轄ですので、ギルドよりも公爵に報告した方が良いと思います」

 

「そっか、じゃあそうすっか…」

 

そう言いながらワッカは空を見上げる。

 

「まあでも、それは明日だな!今日はもう何もしたくねえや」

 

「そうね…」

 

「そうですね…」

 

「同感でござる…」

 

仲間の同意を得た所で、ワッカは「ゲート」を唱える。

 

「よっこらせい!」

 

「うわあ!」

 

 突然、ワッカに背負われた八重が驚きの声をあげる。

 

「ワッカ殿、悪いでござるよ!」

 

「インだよ。八重が一番疲れてんのは知ってっからな」

 

「し、しかし…その…恥ずかしいでござるよぉ」

 

「じゃあ、宿に着いたらすぐ下ろしてやる。さ、帰るぜ!」

 

 こうして四人はゲートを通りつつ、「銀月」へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 その晩、寝間着に着替えたワッカはベットに潜り込みながら今日の出来事を振り返る。

 

「しっかし、アイツァ面倒な敵だったぜぇ」

 

間違いなく、今まで異世界で戦ってきた中で最も強い敵だった。そんな相手と激闘を繰り広げたこともあり、ワッカはすぐに眠りへ落ちていくのだった。




 「まるで将棋だな」編終了です。水晶の魔物は「アタックリール」で倒しても良かったのですが、いせスマアニメ屈指の迷…名言とFFXの戦闘要素を組み合わせることが出来る原作準拠の倒し方を選びました。「アタックリール」一辺倒になるのも避けたいですからね。
 なお、当作品に登場する魔法は全て「異世界はスマートフォンとともに。」もしくは「ファイナルファンタジーX」に登場する魔法となっています。オリジナルの魔法を出す予定は今の所ありません。

 アニメの、敵の足がエルゼに突き刺さるシーンは作画が本当に酷いです。あの出血量は普通死ぬだろ…。

 次回からは名探偵ワッカ編に入ります。お楽しみに。
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