異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 先に忠告しておきます。()()()()()()()()()()()()()()()()()X()()()()()()()()()()()()。なるべくネタバレは避けているのですが、今回は話の都合上入れざるを得ませんでした。

 ストーリーの根幹に関わる部分では無いとは思いますが、ストーリー進行上のワッカに関わる部分のネタバレです。どうかご容赦ください。


人種差別、そしてオッドアイ。あとブリッツボール。

 人種差別。公爵からその言葉を聞いた瞬間、ワッカの思考が停止した。その間も公爵の話は続く。

 

「だが、私達の父の代になるとその考えを改めようという話になった。差別の認識を改める法が施行され、段々とそう言った風習は廃れていったんだ」

 

「……」

 

「だが、古い考えの貴族達にはそれが気に食わない。『卑しい獣人共の国なんかとなぜ手を組まねばならない。逆に攻め滅ぼして自分たちの属国にすべきだ』と主張する貴族達にとって、兄上は邪魔以外の何者でも無いんだよ」

 

 ワッカの耳にはここから先の公爵の話が聞こえなくなってしまう。

 代わりに聞こえてくるのは、()()()()の主張だった。

 

「もうアルベドとは口きくなよ。面倒に巻き込まれっからな」

「でもこれ、アルベド人の店っすよ?」

「ちっ、アルベドめぇ…。何だってんだ?」

「最悪だぜ……。反エボンのアルベド族といっしょだなんてよ!」

「まさか、アーロンさんもアルベドじゃないだろうな?」

 

次々と聞こえてくる「アルベド」を批判する声。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 スピラの人間の大半はアルベド族という人種を差別しており、ワッカもその内の一人だった。彼はとある理由からアルベド族を毛嫌いしていた。その考えは徹底しており、アルベド族と分かれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ユウナのガードとして旅を続けていく内に彼は考えを改めていくのだが、公爵の説明がかつての自分が発した言葉を思い出させていた。

 

「…ワッカ君、ワッカ君!?」

 

「は、はい!」

 

 オルトリンデ公爵の声でワッカは現実に引き戻される。

 

「どうしたのだね?具合でも悪いのか?」

 

「い、いや…何でも無いっす…」

 

「何でも無いようには見えないのだが…」

 

「まあ、ちょっと思うところがありまして…」

 

「……?」

 

「大丈夫っすよ。国王の毒は必ずオレがなんとかするんで。すんません、ちょっと静かな時間が欲しっす」

 

「…そうか、分かった」

 

 ワッカの要望を受け、公爵はそれ以上何も言わなかった。静かな二人を乗せた馬車は(せわ)しく車輪を回しながら王城へと急いでいた。

 

 公爵家の馬車が王城に到着した。先に馬車を降りた公爵が兄である国王の部屋へと急ぐ。ワッカも気持ちを切り替え、公爵の後に続いた。

 絨毯(じゅうたん)が敷き詰められた長い階段を二人が駆け上がり終わると、一人の男が声をかけてきた。

 

「これはこれは、公爵殿下。お久しゅうございます」

 

「っ!バルサ伯爵…!」

 

公爵に名を呼ばれたその男は、ニタニタ笑いながら二人を眺めていた。身長が低く頭のてっぺんは禿げ上がっており、ヒキガエルを思わせる顔をしている。そんな伯爵が公爵に報告をする。

 

「ご安心ください。国王の暗殺を企てた輩は取り押さえましたぞ」

 

「何だと!?」

 

「犯人はミスミド王国の大使です。陛下はワインを飲んだ直後にお倒れになったのですが、そのワインがミスミド王国の大使が殿下に贈ったものだと判明したのです」

 

「馬鹿な……!」

 

公爵が返す言葉を失う。

 

「大使は別室にて拘束しております。獣人風情が大それたことをしたものですな。即刻首を刎ねて見せしめに…」

 

「ならぬ!それは兄上が決めることだ。大使にこれ以上手を加えてはならぬ!」

 

「そうですか…。獣人ごときにはもったいない言葉ですな。まあ公爵殿下のお言葉とあっては仕方ありませんな、そのようにいたしましょう。ですが陛下の身にもしもの事があれば、私では他の貴族の方々を止めることは出来ませんので。それでは…」

 

そう言い残し、バルサ伯爵は階段を降りていった。

 この男が公爵の言っていた「獣人を嫌っている考えの古い貴族」なのだということは、ワッカにも分かった。同時に伯爵の言っていたことが彼にとって都合の良すぎる事だとも分かっていた。だが心の中でワッカはこう思っていた。

 

「あのバルサ伯爵という男は、過去のオレだ」

 

ワッカは伯爵に過去の自分を重ねていた。差別の相手が獣人かアルベド族か。二人の違いはそこしか無かった。

 (ゆえ)に普通の人ならば伯爵を疑うであろうこの場面で、ワッカは伯爵に疑いの目を向けることが出来なかった。

 

 バルサ伯爵と別れた二人は国王のいる部屋へと急ぐ。長い廊下を抜け、近衛兵が厳重な警備を行っている大きな扉の前に辿り着く。近衛兵は公爵の顔を確認すると直ちに扉を開いた。

 

「兄上!」

 

公爵が部屋に駆け込み、ワッカも後に続く。部屋の中にある豪勢なベッドの上で国王陛下と見られる男が苦しそうな顔で横たわっていた。そのベッドの横では一人の少女が心配そうな面持ちで国王の手を握りしめていた。部屋には他に、少女の(かたわ)らで涙を浮かべているドレスを着た女性、沈痛な面持ちで国王を見ている灰色のローブを着た老人、黄金の錫杖(しゃくじょう)を右手に持った翡翠色(ひすいいろ)の髪の女性、軍服を(まと)ったがっしりとした体躯の男の四人がいた。

 

「兄上の様子は!?」

 

 公爵が老人に問いかける。おそらくこの老人は城の医者なのだろう。

 

「手は尽くしましたが、このような症状の毒は見たことが無く、このままでは…」

 

「未知の毒気にやられたか」

 

「お(いたわ)しや兄上」

 

ベッドに横たわっている国王は別に生き恥をさらしているわけでは無かったが、苦しげな声で公爵の名を呼んだ。

 

「アル……、来たのだな……」

 

「兄上!」

 

「妻と娘を頼む……。お前が……ミスミド…王国との同盟を……、グッ…」

 

「ワッカ殿!頼む!」

 

 公爵の声に応じ、ワッカは国王の近くに駆け寄り片手を(かざ)す。

 

「エスナ!」

 

魔法を唱えたワッカが呟いた。

 

「何が『後は頼む』だよ。兄ちゃんなんだろ?しっかりしやがれ…!」

 

その声に応えるかのように、荒かった国王の呼吸が段々と穏やかなものに変わっていく。青ざめた顔色も健康的な色に変わっていった。

 やがて国王はパチパチと(またた)きを繰り返すと、身を起こして口を開いた。

 

「さっきまでの苦しみが…、嘘のようだ…。毒が消えたのか?」

 

「あなた!」

 

「お父様!」

 

ドレスの女性と少女が国王に抱きつく。どうやら国王の妻と娘のようだ。医者である老人もすぐさま国王の手を取り、体調を確かめる。

 

「健康そのものだ…。信じられない」

 

ワッカの状態異常回復魔法が効いたのだ。

 国王は横にいるワッカに目を向け、公爵に問いかける。

 

「アル、この者は?」

 

「私の妻の目を治してくれたワッカ殿です。兄上の毒を治すべく連れて参りました」

 

「ど、ども、ワッカっす」

 

「そうか、君がワッカ君か。話はアルから聞いている。助かったぞ、礼を言う」

 

礼を言われて照れくさそうに頭を掻くワッカの背中を、軍服の男がいきなり叩き始めた。

 

「よくぞ陛下を救ってくれたな、ワッカ殿!!気に入ったぞ!」

 

「な!?いてえっす!お前何なんだよ!?まさか、アンタが犯人じゃないだろうな?」

 

「将軍、その辺で。ワッカさんが困っています」

 

翡翠色の髪の女性が将軍を止めた。

 

「すみません、ワッカさん。あれはレオン将軍なりのコミュニケーションで…」

 

「ああ、そういうことなら。俺も似たようなことするんで…」

 

「しかし、今のが『リカバリー』と似た効果を持つ無属性魔法『エスナ』ですか。公爵から話は聞いておりましたが、興味深いですわね…」

 

女性が熱心にワッカを見つめる。対応に困るワッカの後ろで国王が声を荒げた。

 

「馬鹿な!ミスミドの大使が私を殺して何の得がある!?私を邪魔に思っている者の犯行だ!」

 

「しかし陛下、大使が贈ったワインを飲んで倒れた瞬間を多くの者が見ております。この事実がある限りは大使を無実と断定するわけにはいきません」

 

「ううむ……」

 

 レオン将軍の言葉を聞き、国王は言葉を詰まらせる。

 

「どのような毒なのかも分かっておりません。獣人が使う特殊な毒である可能性もございます」

 

医者の言葉を聞き、国王が判断を下す。

 

「とりあえず大使の言葉を聞かん限りは始まらん。呼んできてくれ、レオン将軍」

 

「はっ!!」

 

国王の命を受け、将軍が部屋を出て行った。

 その後ろ姿を見ていたワッカに何者かが声をかける。

 

「あの………」

 

ワッカが声の主へと顔を向ける。国王の娘と思われる、長い金髪の少女だった。歳はスゥより若干上に見える。そんな少女の顔を見たワッカは息を呑んだ。

 

「なっ…!」

 

ワッカが驚いた原因は彼女の両目にあった。彼女の目は()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。ただ、ユウナとは左右の色が逆になっていて右目が青、左目が緑のオッドアイであった。

 

「お父様を助けて下さり、ありがとうございました」

 

「あ、ああ、ああ」

 

少女の声でワッカは我に返る。

 

「気にしねぇでくれ。オレは当然のことをしたまでだからな!」

 

いつものように返事をした彼の顔を少女はじっと見つめる。

 

「じーーーー…」

 

「?」

 

「じーーーーーーーー……」

 

「あの…?」

 

「じーーーーーーーーーーーーーー………」

 

「な、なんすか?」

 

「……年下はお嫌いですか?」

 

「は?」

 

 その時、扉が勢いよく開かれた。レオン将軍が大使を引き連れて戻ってきたのだ。

 

「陛下!ミスミドの大使を連れて参りました!」

 

陛下の後ろにいた大使が王の前に膝をつく。茶色いキツネの耳と尻尾を生やした獣人の女性だった。

 

「あれ?どっかで見たことあったような……」

 

 自身の記憶を探るワッカをよそに、大使が王に名を名乗る。

 

「ミスミド王国大使、オリガ・ストランド。参りましてございます」

 

「単刀直入に尋ねる。そなたは余を殺すためにこの国へ来たのか?」

 

「誓ってそのようなことはございません!陛下に毒を盛るようなことは断じて!」

 

 まあそう言うだろうなぁ、とワッカは思う。ここで「そうです」と認めるくらいならば、毒など使わず最初から堂々と殺そうとするはずだ。

 

「だろうな。そなたはそのような愚かなことをする者では無い。信じよう」

 

国王は大使に対する疑念は一切持っていないらしく、相手の主張をアッサリ信じ込む。もう少し疑うくらいしたらどうなんだ、とワッカは思ったがここでは口にしない。

 

「しかし、大使から贈られたワインに毒が仕込まれていたのは事実。これをどうなされます?」

 

「そ、それは………」

 

 翡翠色の髪の女性の質問に対し、言葉を詰まらせる女性大使。そんな彼女を見たワッカは()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あー!アンタ、アルマの姉ちゃんじゃねえか!!」

 

「え?貴方は、ワッカ殿!?」

 

大使が驚きの声を上げる。オリガ・ストランドは以前王都でワッカが助けた迷子の少女アルマの姉だったのだ。

 

「ワッカ殿は大使と知り合いなのかね!?」

 

国王が困惑しながらワッカに問いかける。

 

「ま、まあ、以前王都で迷子を助けたんすけど、その姉ちゃんがこの人だったんすよ」

 

ワッカは正直に答える。

 

「そうか、ワッカ殿の知り合いだったのか。ならば…」

 

「ならば、何だって!?」

 

 ワッカが国王の言葉を遮る。そろそろ限界だった。

 

「まさか、ワッカ殿の知り合いなら無実で間違いないな、なんて言うんじゃないだろうな?」

 

ワッカは国王への親切心で言葉を口にした。国王の猜疑心の無さはどうも危なっかしい。無論、オリガのことを犯人だと決めつけているわけでは無い。だが彼の知っているオリガの姿はあくまで「妹に優しい姉」としての姿でしか無い。家族には優しいが標的(ターゲット)は容赦なく殺す女暗殺者、という可能性を捨てられるわけでは無い。

 

 

「そ、それは、そうだな…。ワッカ君の言うとおりだ」

 

国王はワッカの言葉を聞き入れる。その言葉を耳にしたオリガがうなだれた。

 ここまで様子を見てきたワッカだったが、結局誰が犯人なのかは今の所分からないでいた。だが一度口を出してしまった以上このまま何もせず帰るわけにも行かないとも考えた。

 

「あの、レオン将軍?国王が倒れたのってドコっすか?」

 

「要人達と会食をするための大広間だが…」

 

「現場ってその時のままっすか?」

 

「そ、それはモチロンだ」

 

「そこに連れてって欲しいんすけど良いすか?ちょっと考えがあるんで……」




 「名探偵ワッカ」(ニコニコ動画 sm40503995)にて「FF10のキャラの中で一番探偵に向いてない」とコメントされ、そのコメントが9以上ニコられてしまう男、ワッカ。果たして彼はこの難事件を解くことが出来るのか!?次回をお楽しみに。

 さて、今回の話に当たる原作の話なんですが、問題点がてんこ盛りなんですよね。それに関して今から語っていきたいのですが、「異世界はスマートフォンとともに。」を批判する内容ですので、原作ファンの方はここでブラウザバックを推奨します。





 さて、私がどうしても指摘したい問題点は二点です。

 一点目は作中でも若干指摘しましたが、オリガ大使に誰も疑いの目を向けない所ですね。
 馬車の中の公爵の話では「ベルファスト王国はミスミド王国と親交を深めようとしている」という話はあったのですが、「ミスミド王国もその流れに前向きだ」という話は一切無いんですよ。
 なので国王が「ミスミドの大使が私を殺してなんの得がある!?」と言ってますが「それって貴方の感想ですよね?」と反論したくなります。ミスミド王国と仲良くしたいとベルファスト王国が勝手に思ってるだけで肝心の相手は邪魔だと思ってる、なんて解釈も普通に出来ちゃいますし。
 
 二点目は原作の主人公である望月冬夜がサイコ過ぎる所です。望月冬夜は階段で出会ったバルサ伯爵と公爵の会話を聞いて「バルサ伯爵が絶対犯人だ」と決めつけます。そこまでは別に構わないんですが、彼は別れ際に無属性魔法「スリップ」で伯爵を階段から落としてしまいます。そして伯爵が無事だったことを確認すると「ちっ無事だったか」と心の中で毒づく始末です。
 主人公の姿か…これが?
 その後公爵に笑顔で親指を立てるとかもうね、狂気ですよ狂気。仮にこの時伯爵が死んでしまって、その後伯爵が犯人で無かったことが判明する最悪の展開になったとしてもこの男は一切反省しないと思う。「ああ、違ったのか。でも滅茶苦茶怪しかったし疑われても文句言えないよな」と開き直るでしょう。望月冬夜とはそういう男です。
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