異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 今回の話ですが、読む人によってはワッカがキャラ崩壊していると感じる部分があるかも知れません。
 ですが、私の中でのワッカのキャライメージとしては「言いたいことはハッキリ言う」というモノがあります。原作の主人公である望月冬夜は、心の中で文句を言いつつ結局その場の流れに身を任せてしまう部分があるのですが(所謂「やれやれ系主人公」)、少なくともワッカはそんなキャラクターでは無いと思っています。


爆弾発言、そしてワッカの怒り。あとブリッツボール。

「報告によると、実行犯は給仕係と毒見係の二名によるもので、伯爵の家から今回使われた毒と同じ毒が見つかったそうだ。ついでにスゥの誘拐未遂事件の黒幕であることも自白した。これで一件落着だな」

 

「そっすか、ハハ…」

 

 公爵が王宮の一室にあるソファに腰掛けながら嬉しそうに語る。彼の発言に対して色々と物申したいワッカだったが、もはや呆れかえってしまって言葉に出来なかった。

 部屋には公爵とワッカの他に、国王陛下、ユミナ姫、ユエル王妃、シャルロッテ宮廷魔術師、レオン将軍がいた。事件解決後にこのメンバーでお茶を飲む時間が設けられたのだ。

 

「んで、伯爵はどうなるんすか?」

 

「国王暗殺は反逆罪だ。本人は処刑、家は財産没収の上お取り潰しだな」

 

 国王なら「一回ぐらいは大目に見て許してやった」くらい言うのではないかとワッカは危惧していたが、そこは流石にしっかりしているようだ。

 

「じゃあ伯爵の親族とかは?」

 

「一族全員処刑というのは流石にな…。親族は貴族としての身分を失い、国外追放という処置を執ることにする。これで兄上の邪魔をする貴族も大分減るだろう」

 

「そっすか…」

 

 バルサ伯爵と過去の自分を重ねていたワッカではあったが、流石に彼に対して同情する気にはなれなかった。過去の自分もアルベド族を嫌ってはいたが、そのことを理由に誰かを殺そうと考えたことは一度も無い。アルベド族に対しても嫌悪感は抱いていたが、殺意を覚えた事は無い。過去の自分とは違い、バルサ伯爵という男は救えない悪党なのだということが理解できたのだ。

 

「それにしても、そなたには大変世話になったな。余の命を救ってくれた恩人に報いたいのだが、何か欲しいものはあるかね?」

 

 国王が改めて礼を言いつつ、ワッカに問いかける。

 

「う~ん、いや、今欲しいものとか特にないんで気にしないで欲しっす。オレはホント、大したことはして無いんで」

 

ワッカは今の心中を正直に語った。欲しいものが特に浮かばなかったことも、大したことをしていないのも、全て本当だった。

 

「ワッカ殿は本当に欲が無いのだな」

 

「それにしても不思議な方ですね…。身体の異常を治す無属性魔法『エスナ』に加えて、伯爵の目を見えなくしたあの技も無属性魔法でしょう?無属性魔法を二つも使える方など中々いらっしゃいませんからね…」

 

「え?ええと、いやまあ、ハハ…」

 

 シャルロッテの言葉を聞いてワッカは「しまった」と後悔する。「ブラインアタック」は彼にとって何てことの無い特技の一つなのだが、この世界では無属性魔法として見られてしまうのだということは考慮してなかった。

 

「二つだけでは無いぞ。ワッカ殿は私の家に遊びに来る際いつも『ゲート』を使って来るのだ」

 

 公爵が余計な口を挟むので、ワッカは思わず彼を睨みつけてしまう。しかし元はと言えば横着して「ゲート」を人前で使うようになってしまった自分が悪いので、文句は言えない。

 

「本当ですか!?」

 

シャルロッテが当然のように食いついてくる。

 

「あ、あ~、まあハイ、使ってるっす…」

 

「他にも無属性魔法が使えるのですか?あとはどの様なモノを?何種類の無属性魔法を!?」

 

「あ、えと…」

 

シャルロッテに詰め寄られてワッカは反応に困ってしまう。間違ってもここで「無属性魔法なら全部使えます」といった発言は出来ない。逆に「それだけです」とも言いにくかった。この場で誤魔化すことは出来たとしても、後々何かの拍子で嘘だとバレたときに更に面倒な事になるからだ。

 結果として彼は()()()()()()()方法を選ぶのだった。

 

「おい!詮索(せんさく)をつつしめよ」

 

「そうだぞシャルロッテ!陛下の恩人に何という態度だ!」

 

探求者(シャルロッテ)を威圧するワッカに、レオン将軍が援護を行う。先程と立場が逆転してしまっている。

 

「あ!も、申し訳ございません!つい熱くなってしまって…」

 

流石のシャルロッテも大人しく引き下がることにしたようだ。

 

「すまんな。この子は夢中になると他のことが見えなくなってしまうのだ…。魔法に関しては我が国随一の天才なのだが」

 

「あらあなた、そこがこの子の良いところじゃありませんか」

 

 国王が困り顔で謝罪をし、王妃がその横でクスクス笑いながらシャルロッテを擁護する。

 

「ああ、まあ、オレとしても秘密にしたいことはあるんで、そのすんません…」

 

ワッカも言葉を選びつつ返答する。王族達をこれ以上相手にするのは流石にしんどくなってきていた。

 

「じーーーー…」

 

 とりあえず心を落ち着けるために、ワッカは出された紅茶を口にする。

 

「じーーーーーーーー……」

 

公爵家でいただいた紅茶と同じ上品な香りが鼻を抜ける。

 

「じーーーーーーーーーーーー………」

 

自分の隣に座っているユミナ王女が自分を見つめているのには気付いているが、気付かないフリをするワッカ。反応すれば面倒くさい事になることが予測できたからだ。

 

「どうしたのだ、ユミナ?」

 

 逃れることは出来ない。娘の様子を見ていた国王が反応してしまった。

 

「お父様!お母様!私、決めました!」

 

ユミナ王女はソファから立ち上がり、いきなり宣言する。

 

「こ、こちらのワッカ様とっ……けっ、結婚させて頂きたく思いますっ!!」

 

「ブブフゥーーーーーッ!!」

 

 余りにも予想外すぎる王女の宣言を聞き、ワッカは思わず紅茶を噴き出してしまう。

 

「…お゛い゛、言葉(ごどば)を゛、ゲホッ、ゲホッ!」

 

何とか返そうとしたが、むせてしまって上手く言葉にならなかった。

 

「……すまんが、もう一度言ってもらえるかな、ユミナ」

 

「ですから、こちらのワッカ様と結婚させていただきたいのです、お父様」

 

「あらあら」

 

 国王の言葉にもう一度同じ言葉を口にするユミナ。ユエル王妃は目を大きく見開いて自分の娘を凝視していた。この場にいる他の人間も突然の爆弾発言に言葉を失っている。

 

「理由は何だ?」

 

「はい。お父様を救って頂いた、というのもありますが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そのお人柄もとても好ましく、私はこの人と人生を歩んでいきたいと、初めてそう思えたのです」

 

意外なことに、ユミナ王女の発言に間違っている部分は何一つ無かった。

 

「………そうか。お前がそう言うのなら反対はしない。幸せにおなり」

 

「お父様!」

 

 一方で国王は間違いだらけである。何だ、この醜い姿は?一国の王の姿か?これが…。簡単に毒を盛られ、単純なトリックすら見抜けず、娘の申し出を深く考えもせず了承する思慮の浅さ、生き恥。

 

「ちょおっと待ったあああ!!!」

 

むせていた状態から立ち直ったワッカがようやく物申し始める。

 

「な、なんで勝手に決めてんだよ!?」

 

「おお、すまなかったなワッカ君。そういうわけで、娘をよろしく頼む」

 

「そういう問題じゃねえ!教えはどうなってんだ教えは!!」

 

素っ頓狂な返しをする王様に対して、必死にワッカは抗議する。

 

「なんでアンタはそうやって、自分の娘を出会って間もない人間(オレ)に預けようと思えるんだよ!?」

 

「ユミナが認めたならば間違いは無い。彼女はね、『魔眼』持ちなんだよ。人の性質を見抜く力を持っているんだ。君が悪人では無いという『質』が分かるんだ」

 

 彼女がオッドアイなのはそういうことだったのか、と納得するワッカ。しかし、そのことが彼を結婚へ後押しする理由には当然ならなかった。

 

「そもそも、オレの気持ちはどうなるんだ!?」

 

「ワッカ様は私のことがお嫌いですか……?」

 

 ユミナが悲しげな眼でワッカを見つめる。ユウナと同じ色のオッドアイに見つめられたワッカには、嘘でも「嫌いだ」と言うことは出来なかった。ユウナに対して恋慕の情を抱いたことは無いのだが、今朝見た夢の影響か、今日は一段とスピラ(かつて)の仲間達を恋しく感じていたのだ。

 

「いや、別にお前が嫌いってわけじゃねえけどよ…」

 

「でしたら何も問題ありませんね」

 

 コロッと笑顔を浮かべるユミナ。「(はか)られた」とワッカは感じる。それと同時に、自分の中に溜まっていた鬱憤(うっぷん)を抑えることが出来なくなってしまう。今まで我慢してきたモノが限界に達したのだ。

 

「だあああああ!!!いい加減にしろ、お前らあ!!!」

 

 バシンッと大きく机を叩きながらワッカが叫んだ。紅茶の入ったティーカップがガシャンと音を立てて跳ねた。

 

「さっきからオレをおちょくるだけおちょくりやがって!!オレを馬鹿にするのがそんなに楽しいか!!?ああ!?」

 

「そ、そんな、私はワッカ様を…」

 

「いいか?これだけは言わせて貰うぞ」

 

そう言ってワッカは立ち上がる。

 

「お前達が馬鹿丸出しでどんちゃん騒ぎするのは構わねえ。だがな!それにオレを巻き込むんじゃねえよ!!何勝手に俺の結婚相手を決めようとしてんだ?何様だよ?王様だってか!?知ったこっちゃねえ!!オレは他所(ヨソ)から来た人間だ!オレの進む道はオレが決めるんだよ!!」

 

 激怒したワッカは思いの丈を口にした。普段のワッカからは考えられない非常識な物言いだが、3つのポイントを考えると特段不思議なことでは無いだろう。

 まず、ワッカが怒りを我慢する限界に達していたこと。

 次に、ワッカが元いた世界であるスピラには王様が存在しないこと。王様が偉い存在だということは彼も何となく分かっていたが、やはり元いた世界に存在しないモノの偉さを正確に(とら)えることは不可能だったのだ。

 そして最後に、ワッカがユウナのガードとして旅をしていたとき、偉い人に逆らう機会があったことだ。その経験が彼の性格を変えたというわけでは決して無いが、偉い人に対して遠慮せずに物言いが出来るきっかけになったのは確かだろう。

 そんなワッカの激昂を目にし、その場にいた者は皆言葉を失う。()()()()()()()()

 

「ワッカ殿!いくら陛下の命の恩人とは言え、今の言葉は聞き捨てならん!!即刻謝罪せよ!!」

 

 レオン将軍だった。彼だけはワッカを相手に一瞬たりともひるまなかった。

 

「謝んなかったらどうするって?力づくか?やってみろよ…!」

 

ワッカはブリッツボールを構える。同時に将軍も戦闘態勢に入る。彼は何も武器を持たず、ボクサーのように己の拳を構えている。エルゼと同じ戦闘スタイルなのだとワッカは直感する。だとしたならば、考え無しにボールを当てようとしても避けられるのは目に見えている。軽率には動けなかった。

 そんな二人の側で、一番最初に我に返ったのは公爵だった。彼は隣に座る(こくおう)に耳打ちする。

 

「兄上、ここはこちらが謝るべきです」

 

「何?」

 

「ワッカ殿とは何回も顔を合わせていますが、彼が怒っているのを目にしたのは初めてです。彼はスゥがどれだけワガママを言っても常に優しく接してくれていました。我々の態度に落ち度があったと認めるべきです」

 

 ワッカの言葉は反逆罪となってもおかしくないものだった。国王がその気になればワッカを処刑することも出来るだろう。

 

「ワッカ君!すまなかった!!」

 

しかし国王はそうはしなかった。元来心優しい性格だったのも理由の一つだが、今自分の目の前で起きかけている争いを止められないほど愚かな国王では無かったのだ。加えてワッカは自分の命の恩人だ。そんな相手を怒らせたのであれば謝るのは至極当然のことだと考えたのだ。

 

「しかし陛下…」

 

「レオン将軍、拳を下ろしたまえ。こちらがワッカ君の気持ちを一切考えず先行していたのは確かだ。謝るべきは我々なのだ!」

 

「は、ははっ!仰せの通りに!」

 

 国王の言葉を受け、将軍が拳を下ろす。

 

「けっ、分かりゃあ良いんだ」

 

同時にワッカも国王の謝罪を受け入れた。

 

「も、申し訳ございません。ワッカ様…」

 

ワッカの隣にいたユミナも彼に謝罪する。少し冷静になったワッカは彼女を慰める。

 

「ああ、いいんだ別によ。だらしねえ大人達が悪いんだ。オレも含めてな。お前が誰を好きになるかはお前の自由なんだからよ」

 

怒りが完全に消えたわけでは無かったが、少女に当たるほど頭に血が昇っている訳でも無かった。

 

「ワッカ様…」

 

ユミナ姫が一段とワッカに対する想いを強くしたことに、彼は気付いていなかった。




 ベルファスト王国の王族、非常識すぎだろ!優しい性格なら何しても良いってそんなわけ無いんだよなぁ…。
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