異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~ 作:3S曹長
なんて言うか、周りに気を使える良い子っぽく振る舞っているけど、実のところは自分の望む展開まで強引に持っていこうとする言動が多い所が気に食わないんですよね。
「なんで、リフレットの宿に王女様がいるのよ…?」
エルゼは現実を飲み込めないでいた。ワッカ達が拠点としている宿「銀月」はベルファスト王国の町の一つ、リフレットの町に存在する。そのような何の変哲も無い宿に王女がいたならば驚くのは当然だ。
「まあ、何つったらいいんかなぁ…」
困り顔で頭を
「ユミナ・エルネア・ベルファストです。皆様よろしくお願いいたします」
王女が行儀良く自己紹介をする。
「で、なんでお姫様がここにいるのでござる?」
「ワッカさんは今日、公爵家に報告に行ったはずでは…?」
「まあ、そうだな…。今日あったことを順に話してくしかねえよなぁ…。少し長くなるぞ」
こうしてワッカは今日あった出来事をエルゼ、リンゼ、八重の三人に語り始めた。
舞台はワッカが国王の謝罪を受け入れた場面にさかのぼる。
「改めて詫びをしよう。私の態度は確かに、自分の命を救ってくれた恩人に向けるモノでは無かった。ワッカ君の人生を決めるのはワッカ君自身だ」
「おう、こっちも悪かったな。急に
ワッカも国王に謝罪する。
「しかしワッカ君。一度だけ、私に弁明の機会を与えてはくれないだろうか?ユミナの父として、どうしてあのような態度を取ってしまったのか説明をしたいのだ」
「ああ、まあ、いっすよ?」
ストレス発散をしたことで多少なりとも冷静になれていたワッカは国王の話を聞くことにした。
「知っての通り、ユミナは国王である私と
「ユミナには他に兄弟や姉妹もいませんから」
国王の隣に座るユエル王妃が付け加えた。
「そんなユミナも、もう12歳だ。そろそろ結婚相手を考えねばならない。私も妻と婚約したときは14だった」
「ああ、なるほどねえ」
シンという脅威がいたスピラでは人々の平均寿命が短かったため、結婚の時期も早かった。故にワッカは国王の話をすんなりと受け入れられたのだ。
「私の血を継ぐ一人娘だ。結婚相手も慎重に選ばなければならない。そう考えると私としても頭が重かった。そんな時に現われたのが君だったのだ、ワッカ君」
「オレに
「いやいや!断じてそういうことではない!」
国王は手を振ってワッカの邪推を否定した。
「ただ、ユミナが初めて自分から結婚相手として望んだ相手が君だったんだよ。今まで縛られた人生を送ってきた
「へえ、そういうモンっすか…」
物心つく前に両親が死んでいたワッカには、親心というものがよく分からないでいた。幼なじみのルールーも同じような境遇にあったので「女の子を持つ父の考え」についても当然知らない。
「だがユミナはこの国の王女だ。彼女が望む相手だからと言って平気で結婚させるわけにはいかない。だが!私の命の恩人であり、アル…オルトリンデ公爵の恩人でもある君になら安心してユミナを預けることが出来るのだ!そう考えると、それにしか考えが及ばなくなってしまってね。先程のような態度を取ってしまったのだよ」
「なるほどなぁ…」
ワッカも国王の弁明を聞いて、彼の心情を理解した。
「ワッカ君、君に問いたいのだが、君がユミナとの結婚を決められない理由はなんだろうか?遠慮も、言葉を選ぶ必要も無い。君の考えを正直に答えて欲しい」
「え?ん~と、そっすね…」
国王に問われ、ワッカは少し考える。少なくとも「容姿が気に入らない」という理由ではない。ユミナが可愛い容姿をしているのは彼にも理解できた。ブス専でもないのでそこは問題ではない。年の差についても彼にとって気になるところでは無かった。スピラにおいて彼の23という年齢は結婚する時期としては遅い方である。一方ユミナの12と言う年齢は少し早めといった程度で、そこまでおかしい話とは思えなかった。
「……ユミナ王女は確か、『魔眼』だかで人の質が見えるって話だったような?」
「そうだ」
「でもオレにはンなもん無いんで、ユミナ王女がどんな人なのか知らないんすよ。別に悪い人だとは思ってねえけど、オレからしてみれば、初対面の人間に対して結婚を申し込むちょっとヤベェヤツみたいな、そんな感じっすかね。そんな相手と結婚しろって言われても『ハイ分かりました』なんて言えないのは当然じゃないすか?」
「ほうほう」
大分失礼なことを言っているワッカだったが、国王は一切怒らずに相手の意見をまとめた。
「要するに、ユミナのことをもっとよく知る時間が欲しいと。その上で彼女を気に入れば結婚も考えられると、そういうことかね?」
「……、んまあ、そすね」
落ち着いて考え、国王のロジックに何も問題が無い事を確認した上でワッカは答えた。
「そういうことならば、一つ私から提案したい。無論、決めるのはワッカ君自身だ。国王の命令では断じてない。気に入らなければ断ってくれて構わない」
「なんすか?」
「これから二年間、ユミナと共に生活し、彼女について詳しく知っていって欲しい。その上でやはり結婚は無理だというのなら、
「ど、どうって…」
国王の提案を聞き、ワッカは思案する。先述の通り、スピラの常識で言えばワッカはとっくに結婚している年齢だ。「オレに結婚はまだ早い」という考えは無かった。ユミナを預かることについても特段困るようなことは無い。王女なのだから育ちは良いだろうし、余りにも
ならば問題はないだろうかと考えた所で、一つ重大な問題点に気付いた。
「あのオレ、ギルド所属の冒険家なんすよ」
「知っているとも」
「いや、受ける依頼によっては完了まで何日もかかるモンとかもあるんすよね。その間、王女と一緒にいられる時間が減っちゃうんすけど?」
「それならば問題ありません!」
答えたのはユミナ本人だった。
「私もギルドに登録し、ワッカ様にお供します」
「は?あ、あのな…」
ワッカは彼女の返答に対して困惑する。
「オレの受ける依頼ってのは旅行じゃねぇんだぞ?凶暴な魔物と戦う機会だってあるし、その度にアンタを守りながら戦うってのは…」
「ご心配なく!シャルロッテ様から魔法の手ほどきと、弓による射撃訓練を受けております。そこそこ強いつもりですよ、私?」
「えと…、マジすか?」
ワッカがシャルロッテに問いかける。
「はい、姫様の仰った通りです」
「弓術を修めているのも本当だ。貴族の一般教養の一つだからな」
シャルロッテと国王が答えた。
「ちなみに、属性の適性は?」
「風と土と闇です。召喚獣も三種類ですが使役できますよ」
なんと言うことでしょう。ワッカのパーティに丁度不足している属性である。正確に言えばワッカは全属性を使えるのだが、風属性と土属性は苦手とする属性だった。
さらに彼女は召喚魔法も使えるらしい。元々ワッカは召喚魔法について興味を示していた。かつての仲間であるユウナが召喚獣を使役していたからだ。そのユウナと同じ色のオッドアイを持つ彼女もまた召喚魔法を使える。そんな彼女が仲間になる。
最初はユミナのことを困った娘だと思っていたワッカだったが、考えれば考えるほど彼女のことを魅力的に感じていた。結婚相手とまでは行かずとも、仲間としてなら一緒にいたいと思えるほどに。
「…そっか。なあユミナ、お前の父さんああ言ってるけど、お前はそれで良いのか?」
「はい、お父様が決めたことでしたら」
「ワカッテンノカ?もし二年間過ごしてオレがお前を結婚相手として認めなかったら、お前は
「はい、約束します。そもそも私、もう駄々をこねたりする歳じゃありませんし」
さっき自分が怒らなければお前は無理言って結婚しようとしたんじゃねえのか、と思うワッカだったが、これ以上責めるのは止めておくことにする。もし駄々をこねるようなら脇に抱えて無理矢理王城へ返しに行けば良いのだ、と思い直した。
「それに私、ワッカさんが私に夢中になるようにしますから。必ずさせます」
ユミナは笑顔でそう付け加えた。
「…うし!お前の覚悟は伝わった。国王、約束は守ってくれるな?」
「ああ、国王として約束は守る。この場で宣言しよう」
「そういうことなら
「そうか。ありがとう、ワッカ君!」
「良かったですねユミナ。二年の間にワッカさんの心を射止めなさい。それが出来なかった時は、修道院で一生を送ることを覚悟するのですよ」
「はい!お母様!」
「おいおい、責任は取らんぞ!」
「気にしないでくれワッカ君。ただの女性同士の会話だ」
こうしてユミナがワッカの新たな仲間になった。二年間という期限付きだが。
ワッカが三人に、今日あった出来事を全て話し終えた。
「つーわけなんだよ、もしお前らがイヤだってんならそれを理由に帰すことも出来っけど、どうよ?」
「どうって言われても…、私達と一緒に
エルゼが戸惑いながら尋ねる。
「どうか敬語はお止めください。私のことはユミナ、と呼び捨てで構いません。ワッカさんともそのように呼ぶということに決めましたので」
「ユミナは最初オレのことを『旦那様』と呼ぼうとしてたからな。それは止めて、『ユミナ』『ワッカさん』と呼び合うことにしたんだ」
「ここで暮らす事についても問題ありません。私はワッカさんと一緒の部屋にいますから」
「「「は?」」」
「おい!
今のユミナの発言はワッカも初耳だったようだ。
「そ、そんな…」
「そんなもこんなもねえ、決定事項だ。ユミナの部屋はもう別に取ったからな。それがイヤなら王城に帰るんだな」
「分かりました。別の部屋で寝ることにします。でも、いつかは私と一緒に寝たいと言わせてみせます」
「そいつぁ楽しみだな、ハハハ」
ワッカとユミナの様子を見ながら、他の三人が話し合う。
「どうする?」
「とりあえず様子見で、何か依頼を受けさせてみる、というのはどうでしょうか?」
「なるほど、実力を見てから、ということでござるな」
「そだねー。まあ、危なくなったらワッカが護ってあげればいいのか。じゃあキマリね」
「お、結論は出たみてぇだな。まあもう夜だし、ユミナの初依頼は明日だな。頑張れよ、ユミナ」
「はい!皆様の足を引っ張らないよう頑張ります!なにぶん世間知らずでご迷惑をおかけいたしますが、何とぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いしま…、じゃなくてよろしくねユミナ」
「よろしくお願いしますね」
「ちょ、敬語のままなんてズルいわよリンゼ!」
「だって、元々こういうキャラだもん私…」
「と、とりあえずよろしくお願いするでござる」
「はい!よろしくお願いします!」
「うし!挨拶は済んだみてえだな。んじゃ、オレぁ寝るぜ。今日は色々疲れたからな。ついて来んなよ、ユミナ」
「分かってますよ、もう」
こうしてワッカは自室へと引き上げていった。寝間着に着替え、ベッドに横たわりつつ、彼は大変だった一日を
ユミナを仲間にするのは結構大変でした。原作だと望月冬夜が所謂やれやれ系主人公なので
結果として、ユミナとユウナの共通点を見出すことで、ワッカがユミナを仲間にしたいと思う形になりました。
ということで、スピラの仲間達の夢をワッカに見させたもう一つの理由は「ユミナを仲間にする理由付けのため」でした。
さて、ヒロインも4人に増えましたし、そろそろマスコットキャラクターが欲しいところですね?引き続きワッカの物語をお楽しみください。