異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~   作:3S曹長

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 今回から「ミスミド王国編」開始です。
 ヒロインが四人に増えた上に召喚獣もゲットし、賑やかになったワッカ一行。彼らに待ち受ける次なる冒険とは…?


ミスミド王国編
公爵の依頼、そしてガントレット。あとブリッツボール。


 引っ越し完了から数日後、屋敷のベルが鳴った。家令のライムが来訪者の確認のため玄関に向かう。

 

「来客つっても、大体誰が来たかは見当付くがな」

 

「お父様が会いに来るとは思えませんし、おそらく…」

 

屋敷の中にいたワッカとユミナにライムが告げる。

 

「旦那様、オルトリンデ公爵とスゥシィお嬢様がいらっしゃいました」

 

「やっぱりな」

 

ワッカが頷く。王都の人物でワッカ邸に来るような人物は公爵か国王くらいだ。ワッカに娘を預けている体面上、国王が訪れる可能性は低いだろう。そうなると答えは(おの)ずと絞られる。

 

「いかがなさいますか?」

 

「大事なお客様ってヤツだ。通してくれ」

 

「かしこまりました」

 

 ワッカの指示を聞いたライムが、公爵を屋敷の中に迎え入れた。

 

「やあ、ワッカ殿」

 

「おう!公爵」

 

「引っ越しお疲れ様。これからはご近所だからよろしくな」

 

「近所つっても、区が違うじゃないすか」

 

ワッカと公爵が握手を交わす中、ユミナはスゥシィと挨拶をする。

 

「久しぶりですね、スゥ」

 

「こんにちわじゃ、ユミナ姉様!」

 

「へぇ、並んで見てみるとやっぱ似てんなぁ」

 

ワッカが二人を見比べる。

 

「私と兄上の娘同士だ。似るのも無理は無いだろう?」

 

「そっすね。ああ、庭を眺められるテラスがあるんすよ。そこで一杯どすか?」

 

「良いのかね、ではお言葉に甘えて」

 

 四人は庭を一望できるテラスへと向かう。テラスにおかれたテーブルを囲む椅子に皆が座ると、即座にライムが人数分の紅茶を持ってきた。

 

「ユミナ姉様がワッカ殿と婚約するとはのう。びっくりしたぞ」

 

スゥシィがワッカとユミナを見ながら言った。

 

「スゥ、間違えるんじゃねえぞ?別にオレ達は婚約したわけじゃ無いんだぞ」

 

「ならば…何なのじゃ?」

 

「あーと、わかりやすく言えば、今はユミナがオレに絶賛片思い中で、オレはユミナについて色々知るために一緒にいるわけだ」

 

「片思いって…、もう少し言い方を変えられないのですか?ワッカさん」

 

ワッカの言葉を聞いたユミナは不満そうだ。

 

「スゥを勘違いさせたままにするわけにはいかねえだろ?じゃあ、事実を伝えるしかねえじゃんよ」

 

「ワッカさんは私に対して愛情を持ってないのですか?」

 

「持って無いわけじゃねえ。ただ、恋愛とか言ったモンは持ってねえ。ま、焦らず頑張んだな」

 

「はあい…」

 

「おおう、ユミナ姉様は押しが強いのう」

 

ワッカとユミナのやりとりを目にし、スゥシィが興奮した様子で言う。

 

「全くだ。ユミナが積極的なおかげで、兄上に先を越されてしまった。ワッカ殿はスゥの婿(むこ)にと考えていたのだがな」

 

「そんなことを考えておったのか、父上?」

 

「んなこと考えてたんかよ、公爵…」

 

公爵の爆弾発言を聞き、スゥシィとワッカが反応する。

 

「まあ、ワッカならわらわも大歓迎じゃがな!一緒にいると楽しいでな!」

 

「ユミナはともかく、スゥは早すぎだろ…。教えはどうなってんだ教えは!」

 

最も、二人の姿勢は対照的だったが。

 

「どうだワッカ殿。スゥも乗り気だし、彼女も貰ってくれないか」

 

「冗談きついっすよ。まさか、そんな話をするためにウチに来たんじゃないだろうな」

 

「いやいや、別にそういうわけじゃ無いのだがな。じゃあ、今日の所は引き下がるとしようか」

 

「ハァー、人をコケにしやがって…」

 

「別にコケにしたわけじゃ無いぞ?まあ、そろそろ本題に入ろうか」

 

 そう言って公爵は話を始めた。

 

「実はこの度、我がベルファスト王国とミスミド王国が同盟を結ぶことが決定した」

 

「おお、良かったすね。バルサ伯爵の事件があったからどうなるんだとは思ってたんすけどね」

 

本当は両国の同盟についてなどワッカの頭からはスッポリ抜け落ちていたのだが、ここは話を合わせておく。

 

「全くだ。それで、両国の国王同士で会談を行いたい所なのだが、そのためにはどちらかの国王が相手の国に向かわなくてはならない」

 

この時点で、ワッカは公爵の用件を何となく察することが出来たのだが、とりあえず話を最後まで聞くことにする。

 

ベルファスト(ここ)からミスミドまでは順調にいっても、馬車で10日ほどかかる。その道中には、国王の命を狙う(やから)や魔獣などの危険が生じる。そこで、ワッカ殿の『ゲート』を使えれば、危険を(おか)さず、会談を行えるのだ。だが『ゲート』は一度行った場所にしか行けないのだろう?」

 

「ミスミドまで行けってのか?まさか、ボランティアでやらせるわけじゃないだろうな?」

 

 ワッカはこの前、国王から王金貨20枚を貰ったばかりである。その中に今回の話のお礼も含まれているのでは無いかと危惧したのだ。別に彼はお金にがめついわけでは無いが、片道10日もかかる旅を無償で引き受けるのは流石に勘弁して欲しかった。国王の毒を治すのとは心身の負担も拘束時間も違いすぎる。

 

「そんなことは言わないさ。ギルドを通じて君達に直接依頼する形を取るつもりだ。もちろん報酬も出すし、ギルドランクも上がる。悪い話じゃ無いと思うが、どうだろうか?」

 

ギルドの依頼、という形ならばワッカに断る理由は無かった。それに加え、まだ見たこと無い場所に向かう魅力が彼の冒険心に火を付けた。

 

「それじゃ断る理由は無ぇな!ユミナは…」

 

「当然、ワッカさんに従います」

 

「だろうな!うし!公爵、その話乗ったぜ!」

 

「そうか!では、よろしく頼むぞ」

 

「任しといてくださいよ!」

 

こうして公爵の依頼を受け、ワッカはミスミド王国へ向かうことになった。エルゼ、リンゼ、八重はこの場にいなかったが、三人も文句は言わないだろうと彼は判断したのだ。

 

 その晩、ワッカは三人に公爵からの依頼について話した。

 

「いいじゃない!なんだかワクワクするわ」

 

「私も大丈夫です。ミスミドってどんな所なんでしょうね?」

 

「これも修行の内、でござる」

 

予想通り、三人とも反対はしなかった。出発は三日後である。

 

「しかし、ワッカ殿が『ゲート』を使えることがミスミドに知られても大丈夫なのでござるか?自分の所に誰にも知られず行くことの出来る魔法の使い手、などと知られては危険ではござらぬか?」

 

八重が疑問を口にする。

 

「それに関してはな、問題無えらしいんだ。城みてえな大事な場所には宮廷魔術師ってのがいて、そいつが結界を張っている場所には『ゲート』で向かうことが出来ねえんだと」

 

「そうなのでござるか?初耳でござる」

 

「ま、オレも今日公爵から聞いたんだがな。王城に『ゲート』で向かうときに部屋が決められてんのも、他の場所にはシャルロッテが結界を張っているかららしいぜ。アイツもちゃんと仕事してんだな~」

 

「もう!ワッカさん失礼ですよ!」

 

ワッカの失礼な発言にリンゼが抗議する。

 

「悪い悪い。そういや、リンゼはシャルロッテと話出来たのか?」

 

「はい。とても有意義な時間を過ごせました」

 

「一応聞くけど、オレの魔法については話して無いな?」

 

「話してませんよ。まあ、結構しつこく尋ねられたんですが…」

 

「やっぱろくでもねえな」

 

「聞 こ え て ま す よ ?」

 

「うお!笑顔が怖いぜ、リンゼ…」

 

 兎にも角にも、出発の三日後までは各自準備期間ということになった。準備期間中は万が一の事態を避けるため、他の依頼は受けないということになった。

 

 

 

 

 

 翌日。洗面所で朝の支度をしていたワッカにエルゼが話しかける。

 

「ねえワッカ。今日空いてる?」

 

「ん?まあ空いてっけど?」

 

「じゃあ私の買い物に付き合ってよ。ガントレットを新調したいのよ」

 

「そういや、俺と会った時からずっと使ってるもんな、アレ」

 

「でしょ?お金も貯まったし、新しいのが欲しいのよ」

 

「でもよ、オレはガントレットについて詳しくねえぜ?リンゼの方がお前と一緒にいる分、詳しいんじゃねえのか?」

 

「ア、アンタと、行きたい、のよ…」

 

「ん?聞こえんかった。もっぺん言ってみ?」

 

「ワッカと行きたいの!二度も言わせないでよ…」

 

「おお、わりいわりい」

 

「もう…。準備できたらすぐに行くわよ!」

 

こうしてワッカはエルゼと共に武器屋に行くことになった。

 王都には貴族御用達の武器屋が存在する。貴族か紹介を受けた人しか入れないが、ワッカ達は公爵家のメダルを持っているので入ることが出来る。エルゼはあらかじめ店を選んでいたようで、そこに直行することになった。

 

「本日はどの様なご用件でしょうか?」

 

 メダルを見せた二人に対し、店員が尋ねる。

 

「戦闘打撃用のガントレットが欲しいんです。出来れば魔力が付与されているモノで」

 

 この世界の武器や防具には魔力が付与されている代物がある。ワッカが以前買ったピアスも魔力が付与されている代物だ。しかしそれらは希少な品で、リフレットの武器屋には(ほとん)ど売られることが無い。買いたいならば貴族御用達の店に行くのが確実なのだ。

 

「かしこまりました。こちらでございます」

 

 店員が紹介した場所には、二対のガントレットが販売されていた。一つはメタリックグリーンのカラーリングが施された流線形のガントレットで、店員が説明を始める。

 

「こちらの商品には飛来する矢などを()らす、風属性の魔力が付与されております。遠距離の魔法を防ぐことは出来ないのですが、高い魔法防御を兼ね備えておりますので、受けるダメージを軽減することが出来ます」

 

もう一つは赤と金のカラーリングが施された鋭い形のガントレットだ。

 

「こちらの商品は魔力を溜めることで、強力な一撃を放つことが出来る商品となっております。魔力を蓄積するのに多少時間はかかりますが、威力は申し分ありません。攻撃と同時に硬化魔法が付与されるので、攻撃を行うことで破損する心配はございません」

 

「そうなのね。う~ん、どれにしようかしら」

 

 店員の説明を聞いたエルゼがガントレットを見比べながら、頭を悩ませる。

 

「イケイケなエルゼなら、攻撃特化の方が良いんじゃねえか?」

 

「そう単純じゃないのよ。私の戦い方はリンゼ達みたいに敵から離れて無いからダメージを喰らいやすいの。だから余計なダメージを負わないことも大切なのよ?」

 

「そうなのか?う~ん、やっぱオレにはよく分かんねえわ。悪いな」

 

「謝んなくていいのよ。選ぶまでちょっと待っててくれれば」

 

「ああ、ゆっくり選びな」

 

随分長い時間をかけて吟味していたエルゼだったが、ようやく結論が出たようだ。

 

「よし!決めたわ!」

 

「お、どうすんだ?」

 

「両方買う!左右で別のを付けることにするわ」

 

「おいおい…。んなことしたら付けなかった方が余っちまうじゃねえか」

 

「余った方は予備ってことで!」

 

「なるほどなぁ」

 

「それで良いかしら?」

 

エルゼが店員に尋ねる。

 

「かしこまりました。試着してみて、違和感がございましたらお申し付けください」

 

「……。ん、大丈夫!」

 

試着を終えたエルゼが言った。

 

「それでは二点ともお買い上げということで、ありがとうございます。防御魔法の方が金貨14枚、攻撃特化の方が金貨17枚になります」

 

「分かったわ」

 

 エルゼは(ふところ)から用意していた金貨を取り出す。枚数を数え、ワッカの方を振り返った。

 

「ね、ねえワッカ…。金貨2枚貸してくれない?持ってきた分じゃ足りなかったの…」

 

「しゃあねえなぁ。ほれ」

 

ワッカはエルゼに金貨2枚を渡す。

 

「ありがと!帰ったら返すわね」

 

そう言ってエルゼは代金を店員に渡す。これにて無事買い物終了だ。

 店を出た後、エルゼがワッカに礼を言う。

 

「ありがとね、ワッカ。買い物付き合ってくれて」

 

「いや、オレ金貸しただけだぜ?」

 

「いいの!ワッカが一緒にいてくれただけで…」

 

「そうか?ま、エルゼが納得したなら良いけどな」

 

「フフフフ…」

 

エルゼが嬉しそうに笑った。そんな彼女の顔を見てワッカが尋ねる。

 

「ん?お前顔赤くねえか?具合でも悪いんか?」

 

「なっ!そんなこと無いわよ!ヘーキよ、ヘーキ!」

 

「そっか、ならいいけどよ」

 

「そうだ!お礼にスイーツごちそうさせて!良いお店知ってるの」

 

「金無いんじゃなかったのか?」

 

「金貨が無かっただけよ。小銭ならあるわ。ほら行きましょ!」

 

エルゼは嬉しそうにワッカの手を引いて、王都の道を進むのだった。




 エルゼのガントレット購入の話は、原作では白帝加入と引っ越しの間の話なのですが、ここに持ってきました。ガントレット購入後のゴスロリ服の話は正直キモイのでやりません(直球)。
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