異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~ 作:3S曹長
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いよいよ今回から、ミスミドに向けての旅が始まります。ワッカ達の新たなる冒険をお楽しみください。
翌日、ミスミド王国への出発当日となり、ワッカ達は集合場所へと向かった。
「ワッカ殿が一緒で頼もしい限りです。長旅になりますが、何卒よろしくお願いいたします」
「あ、こちらこそよろしくす、オリガ大使」
丁寧に挨拶するオリガに向かい、ペコペコ頭を下げるワッカ。ミスミド王国の大使であるオリガとその妹アルマが丁度帰国する時期だったとのことで、ワッカ達はその護衛団に加わる形になるのだ。無論それは建前で、本当の目的は「ゲート」を使って国王を安全にミスミドに連れて行くために、行ったことの無いミスミド王国へ行くことなのだが。
「ミスミド王国兵士隊隊長、ガルンです」
「ベルファスト王国第一騎士団所属、リオン・ブリッツです」
狼の獣人と、金髪の青年がワッカ達に挨拶する。彼らはミスミド、ベルファスト両国の護衛隊の代表なのだ。リオン・ブリッツはあのレオン将軍の息子である。
「オレはワッカ、ギルド所属の冒険家だ」
「お三方とも、この度はよろしくお願いします」
三人の代表に対し、オリガ大使が改めて頭を下げる。
「は、はいっ!よ、よろしくお願いします!!」
リオンがドギマギしながら大使に挨拶を返す。
「そんなに硬くなるなよぉ。先が思いやられるぜ?ハッハッハ!」
そんな彼の様子を見て笑い声を上げるワッカ。代表達の挨拶も済んだところで、一行はミスミド王国に向けての旅を始めるのだった。
三台の大きな馬車が連なって道を進む。一台目の馬車にベルファスト王国の護衛隊5人、二台目の馬車にオリガ・アルマ姉妹とワッカ一行、三台目の馬車にミスミド王国の護衛隊5人が乗車している。
ワッカ達の乗る馬車の御者はエルゼ・リンゼ姉妹が務めていた。その馬車の中では、ある熱い戦いが繰り広げられていた。
「むむむ…、コレでござる!」
八重がカードをめくる。めくられたカードにはドクロマークが描かれていた。
「ハズレですね。黄色の紋章はコレとコレです」
ユミナが迷うこと無く2枚のカードをめくる。どちらにも同じ黄色の紋章が描かれていた。
「う~ん、記憶の勝負は苦手でござるぅ」
八重が唸った。
彼女たちが遊んでいるのは、神経衰弱である。しかし使用しているのはトランプでは無い。
以前公爵家に遊びに行った時にスゥシィが「楽しい遊びを教えてくれ」とリクエストしてきたのを受け、ワッカが考えたゲームである。神経衰弱の他にも、「隣の相手からカードを1枚貰っていき、手札の絵柄が揃ったら捨て、最後にワッカの絵柄を持っていた人が勝ちになるゲーム」や、「決められた役を5枚の手札で作り、強い役を持っていた人が勝ちになるゲーム」等、様々な遊び方が出来るシロモノだ。
神経衰弱で遊んでいたのは八重、ユミナ、アルマの三人。結果は八重2組、ユミナ12組、アルマ8組で八重がボロ負けだ。もう何戦も行っているが、八重は5組以上揃えられた試しが無かった。
「なあんだ、八重は記憶力が足りねえなぁ」
オリガ大使と「役作りゲーム」で遊んでいたワッカが声をかける。
「そうは言うがワッカ殿、人には得意不得意があって当然でござる」
「じゃあ、こっちでオリガ大使と役作りゲームして遊ぶか?オレと交代だ」
「そ、それじゃあそうするでござるよ…」
ワッカと八重が位置を入れ替えた。
「ワッカ選手登場!ユミナ、アルマ、簡単に勝てると思うなよぉ?」
「臨むところです!」
「よろしくお願いします」
三人が神経衰弱を始める横で、八重はオリガ大使とテーブルを挟んで向かい合う。
「いざ尋常に、勝負でござる」
「はい、よろしくお願いしますね」
八重と大使の「役作りゲーム」が始まった。
「役作りゲーム」はまず、45枚の山札からお互いが5枚ずつカードを引く。その後お互いは自分の手札がより強い役になるように手札を任意の枚数捨てる。そして捨てた枚数と同じ分、残りの山札からカードを引き勝負を決するのだ。
「むむむ…」
八重が自分の手札とにらめっこしている。彼女の最初の手札はドクロ、DOWN、白の紋章、白の紋章、ワッカの絵柄だった。ワッカの絵柄は好きなカードの代わりとして使えるオールマイティーだ。つまり彼女の今の手札に揃った役は、白の紋章のスリーカード。ドクロとDOWNの両方を捨てて白の紋章のフォーカード及びファイブカードを狙うか、手堅く片方を捨ててフルハウスとフォーカードの両方を狙える状態にするか、迷い所だ。
「こ、ここは手堅く…」
八重が捨てたのはドクロのみ。普段の彼女なら迷うこと無く2枚を捨てる勝負に行っただろうが、先の神経衰弱の連敗があったせいか、勝利への欲が勝ったのだった。
彼女は1枚山札からカードを引く。引いたのはDOWNのカードだった。
「やったでござるぅ!!」
絶叫する八重。DOWNが3枚、白の紋章が2枚のフルハウスだ。
「おや、ずいぶん良い役が揃ったのですね?」
「ふっふっふ、拙者の役に勝てるでござるかな?オリガ殿」
「では、私はこれで」
そう言ってオリガ大使は1枚手札を捨て、山札から1枚カードを引く。
「勝負でござる!」
八重が手札を公開する。
「DOWNが3枚、白の紋章が2枚のフルハウスでござる!」
「残念。
オリガ大使が手札を公開する。彼女の役はブリッツボール絵柄3枚、黄色の紋章が2枚のフルハウスだ。フルハウス対フルハウスというハイレベルな勝負になったが、役が同じだった場合は絵柄で勝敗が決まる。ブリッツボール絵柄>2HIT>ドクロ、砂時計、DOWN>赤、青、黄、白>1HIT>MISSの順で強いので、ブリッツボール絵柄を持っていたオリガ大使の勝ちである。
「くっ、くうううううううううぅぅぅ!!」
『うるさいですね…』
八重の絶叫のせいで、気持ちよく寝ていたビャクティスが目を覚ましてしまうのだった。
夜、ワッカ達は森の中にある開けた場所で野宿することになった。
「『この わたしが やられるとは…… しんじられ……ん……2どまでも…おまえに…… …おまえは いった…い な…にもの…… ウボァー』こうして、悪のパラメキア帝国の皇帝はフリオニール達に敗れ去り、世界に平和が取り戻されたのだった」
ワッカが話し終えると、焚き火を囲んだ皆から拍手が起こる。
「面白かったです!ワッカさん」
アルマが頭に生えたキツネの耳を動かしながら、興奮気味に感想を伝えた。
何か話を聞かせて欲しい、というリクエストを受けたワッカは、彼の故郷に伝わる
と、その時、一人のウサギの獣人が耳を動かしながら皆に注意を呼びかける。
「何者かが近づいてきています…。明らかに我々を狙っています」
和やかだった雰囲気が一瞬で変貌する。
『主よ、確かに何者かがこちらに向かってきております。数は20以上、友好的な者達とは思えません』
ビャクティスもワッカに忠言する。召喚獣とその術士はテレパシーのようなもので言葉を発せずとも意思疎通が出来る。キングエイプとの戦いでユミナが、シルバーウルフ達がキングエイプを見つけたことを察知出来たのもこのためである。
一同はオリガ・アルマ姉妹を囲う形で戦闘態勢に入る。二人の一番近くにいるのはユミナだ。彼女が後方支援担当というのも理由の一つだが、それ以前にベルファスト王国の王女である彼女もまた、護衛対象なのだ。ちなみにミスミドの護衛隊には彼女が王女であることは知らされていない。
「ナニモンだぁ…?」
「恐らく、街道に潜伏している盗賊団でしょう。数が多いと厄介ですな」
ガルンがワッカに言う。そこいらの盗賊に負けるほどヤワなワッカ達では無いが、敵が何時襲ってくるか分からない状態が続くのは精神的に良くない。周りを森で囲まれているなら尚更だ。
「うし、アイツを使ってみっか…。ガルン隊長、今から大技をぶっ放すんで、それが攻撃の合図だと皆に伝えてくれ」
「あ、ああ、分かった」
ガルンに伝言を残し、ワッカは皆から距離を取る。そして力を溜め始めた。
ワッカの側に現われたリールが回り出す。敵が待ち伏せしている今、重要なのは時間をかけてでも、確実にリールを揃えることだ。
ブリッツボール絵柄
ブリッツボール絵柄
ブリッツボール絵柄
オーバードライブ技「オーラカリール」のブリッツボール絵柄揃えの成功だ。ワッカは高く跳び、北東の方角に広がる森に向かってボールを叩きつける。
凄まじい音が響いて、森が吹き飛んだ。森に潜んでいた盗賊達が吹き飛ばされる。ワッカの不審な動きを目撃していた彼らだったが、まさかこれほど大きな威力の技がボールから放たれるとは、予想だにしていなかったのだ。
「くそっ、テメエらかかれ!!」
無事だった盗賊達が襲いかかってくる。両国の護衛隊やエルゼ達が相手をする。その間にワッカは南西の方角へと体を向ける。
「させるか!!」
南と西の方角に隠れていた盗賊達も襲いかかってきた。先程と同じ技をこちらにも撃たれたのではたまったモノでは無い。
「出てくると思ったぜ!いくぞぉ!皆ぁ!!」
ワッカのかけ声で戦闘が始まる。結果として大した時間が経たない内に、ワッカ達が勝利を収めたのだった。
「怪我したヤツはいねえか?」
「こちらは大丈夫だ」
「こちらもです。ワッカ殿の大技で敵が動揺していたので、難なく勝てました」
ガルンとリオンがワッカに答える。彼らに負けた盗賊団は全員、縄で縛られ無力化されていた。
「コイツら、どうすりゃ良いんだ?」
ワッカの疑問にガルンが答える。
「この先の町へ、引き取りの警備兵を要請する早馬を出しましょう。そうすれば朝には警備兵がこちらに来れるでしょうから」
「そういうことでしたら、
リオンがそう提案した。彼の言う「オリガ大使達」というワードにはオリガ・アルマ姉妹だけで無くユミナも暗に含まれているのだ。
「リオン殿、お手数をおかけします」
オリガ大使がリオンに微笑みながら礼を言う。
「あ、いっ、いや!これが私の任務ですから!どど、どうかお気になさらずっ!」
リオンが顔を真っ赤にしながら、アタフタと言葉を返した。
「なんだアイツ、ま~だ緊張してんのか」
リオンの様子を見ながら馬車に戻りつつ、ワッカが呟いた。
「青春ね-」
「青春、です」
「青春でござるなー」
「青春ですわね」
彼の横でエルゼ達四人が、木の葉最強の上忍が反応しそうなワードを連呼する。
「青春?オレの青春はブリッツボールだったな~」
「そういう意味じゃ無いですよ、ワッカさん!」
「オリガ殿はリオン殿の気持ちに気付いているのでござるかな?」
「気付いてると思うわよー。どっかの誰かさんみたいにニブく無さそうだし」
エルゼが意味深な視線をワッカに送るが、当の本人は全く意味が分かっていない。
「何だ何だ、何が言いてえんだ?」
「ニブいのもそうですけど、ワッカさんは誰彼構わず優しくし過ぎ、です」
「あ、それは私も思ってました」
「悪いことだってのか?皆に優しいのがワッカさんの良いところだろうがよ!」
「思わせぶりな態度もどうかと思うのでござるよ」
「ちょっと分かってる!?そこに正座!」
「ナンデダヨ!」
「「「「いいから!!」」」」
「おい!
不機嫌なヒロインズに対し、一歩も引かないワッカなのだった。
望月冬夜……ヒロイン達に強く出られない
ワッカ………ヒロイン相手でも自分のペースを崩さない
ルールーに対しては強く出られないワッカですが、それは彼女が幼馴染みだから特別なのであって、ヒロインズに対してはリュックと同じ対応をすると思うんですよね。決して年下にしか強く当たれない情けない男なのでは無いぞ!
皆も遊ぼう、ワッカ特製の「オーバードライブ・リール・カードゲーム」!
え?どこで売ってるのかって?自作して、どうぞ。