異世界はブリッツボールとともに。 ~異世界ワッカ~ 作:3S曹長
ミスミド王国領のエルドの村は、ベルファスト王国との国境であるガウの大河に比較的近い場所に位置する。北方は崖でふさがれており、西方には牧草地帯が広がっている。崖の上は森になっており、ガウの大河からミスミドの王都へ向かう人々はこの森を抜け、村の北東部に位置する
そんなエルドの村の上空に、1匹の黒竜が飛び交っている。黒竜は空を飛びながら口から火炎弾を吐き、村を火の海にしようとしていた。
その
「作戦通り行くぜ、リンゼ!」
「はい!」
ワッカとリンゼは息を揃えて魔法を唱える。
「「水よ来たれ 衝撃の泡沫 バブルボム」」
黒竜の目の前に突如、5つの泡玉が現われた。今まで見たことの無い物体に気を取られていた黒竜は
「ゴワアアアア!!」
自身が苦手とする水属性の衝撃を受け、黒竜が体勢を崩す。その隙をワッカは逃さない。
「ウォタガ!」
大量の水の刃が黒竜に襲いかかる。慌てて避けようとした黒竜だったが全てを避けきることは出来ず2、3発ほど喰らってしまった。
「ウォタガ!」
ワッカは再び水属性魔法を放つ。しかし今度は全て避けられてしまう。それどころか黒竜は、自身を攻撃していた
「ゴガアァァァアァァァァ!!」
『貴様……!空飛ぶトカゲの分際で、我が主を侮辱するのか!!』
ワッカ達を睨みつけながら咆吼する黒竜に対し、ビャクティスが怒りの声をあげる。
「ビャクティス?アイツの言葉が分かんのか?」
『「我が享楽を邪魔した小さな虫けらめ。その身を八つ裂きにして喰らってくれる」と…!人語も話せぬ鼻たれ小僧め…。これだから《蒼帝》の眷属は気に入らんのだ!!』
知らない単語がビャクティスの口から出てきたが、ワッカはそれが気にならないほど、黒竜の言葉に腹を立てた。
「あんのクソドラゴンめ…!村を襲ったのは自分の楽しみのためだったってのか!?もう勘弁しねえぞぉ!?」
もしも黒竜が村を襲っていた理由が何かのっぴきならない事情があってのことだったならば、ワッカはなるべく双方が傷付かない方法で解決しようと考えていた。しかし理由が「自分の楽しみ」であるならば、容赦する必要は全く無い。必ず、あの
「リンゼ、あのドラゴンをぶっ潰すぞ!」
「分かりました!」
「ビャクティス、オレのブリッツボールを頼むぜ!」
『必ずや!』
ワッカとリンゼはビャクティスから飛び降りる。そして村の西にある牧草地帯に向けて駆けだした。一方のビャクティスは、ブリッツボールの力を感じる方角に駆けていく。
「ウォタガ!」
ワッカは再び水属性魔法で攻撃する。しかし黒竜は当然のように、それらを回避する。
「ゴアアアア!」
黒竜は咆哮を上げながらワッカ達を追跡し始めた。
黒竜がビャクティスでは無くワッカを追い始めた理由は二つある。一つは単純に自分を攻撃してくる
この泡玉を操作しているのはリンゼである。リンゼの役割は「バブルボム」の魔法で黒竜が村に向かうことを阻止しつつ、ワッカ達を追跡するよう仕向ける事である。最初に黒竜に命中した「バブルボム」を操作していたのは当然、ワッカだ。ワッカはこの攻撃で黒竜に「バブルボム」の威力を覚えさせ、
しかしそれは当然、ワッカ達の危険が増えるという事でもある。黒竜は牧草地帯に向かって走るワッカとリンゼに向けて、火炎弾を吐きだした。しかし、2人はそれを避ける素振りを一切見せない。
「リンゼェ!恐れず進め!!」
「はい!!」
ワッカがリンゼを鼓舞し、リンゼがそれに答える。そんな2人に火炎弾が命中してしまう。
そのまま2人は丸焼きに、なんて事にはならず、着弾した炎が燃え盛る中から2人が
「本当に何ともないです!すごい!」
「言ったろぉ?このまま走り抜けるぞ!」
2人は足を止める事無く、牧草地帯へと駆けていった。
ワッカとリンゼが火炎弾を喰らっても無事だった理由。それは2人がビャクティスに乗って崖から飛び降りる前に、ワッカが唱えた魔法にあった。彼が唱えたのは「バファイ」というスピラの魔法だ。この魔法は、味方全体が火属性の攻撃を受けなくなる効果を持つ。この魔法によってワッカは「村の被害を抑えること」と「自分達の被害を抑えること」の両立に成功したのだ。
黒竜は最初、自身の放った火炎弾が外れたのだと思い込んでいた。そのため、その後もワッカ達に向けて火炎弾を放ち続けた。しかし何度当てても効果がまるで現われない。ここでようやく、火炎弾では
火炎弾が効かないならば、直接ひねり潰すまで。そう判断した黒竜はワッカ達に向かって突撃してくる。
「水よ来たれ 衝撃の泡沫 バブルボム」
しかしそんなことは当然、ワッカの想定内だ。突撃してくる黒竜に
「グゴオオオオッ!」
バブルボムに勢いよく突進した黒竜は、もの凄い衝撃によって大きく吹き飛ばされる。衝撃の余波はワッカ達にも及ぶが、何とか持ちこたえる。
「気にするな!とにかく
「はい!」
2人は再び目的地へと駆けだした。目の前には小さな林が広がっている。この林を抜ければ牧草地帯だ。
「グゴアァァァァァ!」
黒竜も体制を立て直し、ワッカ達を追跡する。村へ戻る方向にはリンゼの
ワッカとリンゼは林を抜けて、牧草地帯へと到着する。走り続けたせいか、リンゼは大きく息を切らしていた。しかしまだ安心は出来ない。
「グオォォォォ!」
案の定、黒竜も木々を吹き飛ばしながら林を突っ切ってきた。
「来たな…!だがここまでは思い通りだ。ここでお前を倒す!村の被害も抑える!目標は、快勝だ!!」
「グオォォォォ!!」
ワッカと黒竜の叫びが響き渡る。
最初に攻撃を仕掛けたのはワッカだ。リンゼを自分の後ろに下がらせ、魔法を唱える。
「ブリザガ!」
大きな
シュウウウという音とともに水蒸気を発生させながら、氷柱と火炎弾が相殺する。水蒸気で視界が限られた隙をワッカは逃さない。
「ウォタガ!」
放たれた水の刃を黒竜は避けきることが出来なかった。
「ギャゴオオオ!」
自身の体を裂かれた黒竜が苦痛の声を漏らす。
「ブリザガ!」
ワッカは間髪入れずに攻撃を仕掛ける。黒竜も負けじと火炎弾を吐き出す。
「ウォタガ!」
先程と全く同じ攻撃を予想出来ないほど黒竜は愚かでは無い。飛んで
「水よ来たれ 衝撃の泡沫 バブルボム」
黒竜が予測できなかったのは、息を整え終わったリンゼの
「グゴオオオオッ!」
黒竜は痛みに苦しみながら、一旦ワッカ達から距離を取る。このまま攻撃を喰らい続けていては身が保たないと思ったからだ。
体制を立て直す黒竜に再度攻撃を放とうとするワッカ。そんな彼にビャクティスの声が聞こえてきた。
『主のブリッツボールを見つけました!今から
「でかした!しっかり届けてくれよ、ビャクティス!」
『お任せ下さい!』
心強い報告を聞き、ワッカはリンゼに声をかける。
「ビャクティスがボールを見つけたってよ」
「良かったですね、ワッカさん!」
「ああ。でもまだ気は抜けねぇ。
「はい!」
「うし!ウォタガ!」
攻撃再開だ。ワッカが
しかし黒竜もそんなことは知っている。
「ウォタガ!」
ワッカが再度攻撃、黒竜がこれを躱す。
「ウォタガ!」
黒竜がワッカの魔法を躱す。火炎弾では全ての水を消せないので、回避に専念する。
「ウォタガ!」
ワッカの攻撃は黒竜に躱され続ける。一見無意味な彼の攻撃だが、そんなことは当然無い。
「水よ来たれ 衝撃の泡沫 バブルボム!」
ワッカが魔法を変える。現われた泡玉が黒竜の周囲を取り囲んだ。
新たに現われた
「ブースト!」
「お覚悟!」
エルゼと八重だ。2人は最初の崖で今まで待機をしていたのだった。
崖の上でワッカが皆に伝えた作戦は次の通りである。最初に崖の上で、ワッカが「バファイ」と「ヘイスガ」を最大量かける。補助魔法をかけ終えたら、黒竜の弱点となる水属性魔法を使えるワッカとリンゼが、ビャクティスに乗って村へと降りる。ワッカは攻撃で自分達の存在をアピールし、リンゼは黒竜の進路を塞ぐ。その間にビャクティスはブリッツボールを探しに向かう。ワッカとリンゼは黒竜をおびき寄せつつ、牧草地帯へと向かう。牧草地帯に着いたら、今度はエルゼと八重が待機する崖の近くへと黒竜を誘導し、2人を参戦させるのだ。
ワッカの作戦は無事成功。後はこの牧草地帯で黒竜を倒すだけである。黒竜の背中にエルゼと八重の一撃が炸裂した。
黒竜戦、次回へと続きます。
土曜日は更新をお休みしたので、月曜日は二話投稿したいなと考えています。もし上手く行かなかったらゴメンネ。